5881.トランプ大統領の変質



トランプ大統領が選挙中に公約として掲げた政策、国益に関係しな
い海外紛争に関与せず、米国の経済を中心に復活するとしたが、そ
の政策はほとんど実現せずに、クリントン候補が主張した米国の覇
権維持とグローバル化に向かっている。今後の政策を検討したい。
              津田より

0.戦略変更ができない
政権発足時には、オバマ政権での親中反露戦略から、親露反中戦略
になり、中国包囲網を形成すると期待したが、この戦略立案者であ
るフリン安全保障担当補佐官が辞任して、マクマスター補佐官にな
り、大きく戦略の見直しが行われている。

現在、中国とロシアのどちらにも寄らずに孤立主義ではなく、グロ
ーバル志向戦略の方向のままである。人道主義的な方向でもある。
大きく戦略の変更が行われた。しかし、トランプ氏が確固たる思想
を持たないので、戦略の大きな変更を気にしていないようで、とい
うより、今までのオバマ戦略に修正をかけた程度の戦略に復帰した
ようでもある。ということで、タカ派クリントン候補が主張してい
たような人道主義的な外交戦略になっている。

この原因は、戦略変更をするための国務省、国防省など政府機関の
高級人事の遅れで、ほとんどの政治任用ポストがオバマ政権からの
政治任用ポストより下の人が暫定的についていることと、国務省で
は予算の30%削減ということで、ポスト自体がなくなっているの
で、戦略変更に伴う戦術レベルでの変更ができないことによるよう
だ。今まで通りの戦略でしか運用が回らないので、高級人事が決ま
ってからしか戦略の変更はできないということである。

シリアのミサイル攻撃は、事前にシリアでのIS攻撃を行う予定で、
米軍を中東地域に展開していたことで、目標は違うが、軍備的には
整っていた。

1.バノン辞任か
米国を孤立主義にする方向で戦略を立てたバノン上級顧問は、もち
ろん、アサド政権の化学兵器攻撃に対するミサイル攻撃に反対を主
張したが、逆にNSCメンバーを外されている。

バノン氏の国内政策も、すべて裏目に出て、イスラム教国からの入
国禁止もできず、オバマケア代替案も取り下げになり、バノン氏が
関わる国内政策は共和党保守派議員団の反対ですべてうまくいかな
い。

今後の国内改革案である国境調節税も流通系企業からの反対で見直
しを余儀なくされているし、この国境税ができないと減税も無理で
ある。インフラ投資もできない。財政均衡派が共和党にいるので、
予算案では、大幅な赤字予算は通らない。このため、2017年の
修正予算案にも、メキシコ国境の壁の予算もインフラ投資の予算も
ついていない。しかし、この修正案にも共和党保守派、財政均衡派
は反対している。

アンチ・ワシントンのバノン氏の行動は、共和党議員でも頭にきて
いるので、バノン氏がかかわる法案にすべて反対と共和党のパトロ
ンであるコーク兄弟と共和党の保守派議員団は言っているようだ。

トランプ氏は、預金を扱う商業銀行業務と投資銀行業務の分離を定
めた大恐慌時代の法律、グラス・スティーガル法の復活を明言して
いるが、これも共和党保守派からの反対で無理のようである。

国内改革は、すべて頓挫するようだ。トランプ政権に期待したトラ
ンプラリーとも言われたダウ平均株価も低迷しているし、それより
も大きく日本株はドル安円高で、1万8500円まで下げて調整局面にあ
る。

また、公約の政策が実現できないことでトランプ政権の支持率34
%と急降下で下がるので、バノン氏を止めさす方向のようである。
これを、娘婿クシュナー氏がトランプ大統領に進言しているという。

そのため、支持率上昇になる政策が今必要であり、議会とは関係な
い政策というのは、外交と通商問題しかないので、この部分で国民
受けを狙うしかないというのが、トランプ政権の現状である。

人道主義的な外交政策はリベラルも保守派も賛成であるので、その
方向に踏み出したようにも見える。しかし、もともとの支持者であ
る白人下層階層では反対も多く、支持率が上昇するかどうかは未知
数である。

どちらにしても、今までの支持者がトランプ政権支持から離れる方
向になる。遠回りをしたが保護貿易で当選したオバマ前大統領の当
初と同じことになりそうな雲行きだ。

2.クシュナー上級顧問
クシュナー氏は、自分のビジネス上でもグローバル志向である。ユ
ダヤ教徒でもあり、中東問題には無関心ではいられない。このクシ
ュナー氏に、中東戦争に関わったマティス国防長官とマクマスター
補佐官が味方して、バノン氏を排除したようである。今回の攻撃を
進言したのは、娘のイバンカさんとも言われているが、その希望を
実際行動にしたのが、マクマスター補佐官とマティス国防長官であ
る。

優秀な官僚が戦略を戦術に落とすために、その前に準備が必要なの
である。米ダンフォード統合参謀本部議長とゲラシモフ参謀総長(
ロシア)は、アゼルバイジャンで事前に接触し、軍事機関同士のホ
ットラインができていたことで、ロシアに事前通知して、反撃を受
けない体制を作り上げていたし、11日にテラーソン国務長官は、
ロシアのプーチン大統領との会談をセットしたのである。

このような準備ができているので、ミサイル奇襲攻撃ができるので
ある。戦略を建てるには優秀な官僚の力が必要なのである。バノン
氏のような官僚嫌い、議員嫌いでは、何も実現しない。

3.米中首脳会談
中国はニューヨークの不動産を通常価格の4倍で買うという賄賂を
クシュナー氏に与えて篭絡したが、貿易不均衡や北朝鮮問題などで
、米中主張の隔たりが大きくて、共同声明もできずに次回以降に、
懸案を持ち越した。

この米中首脳会談の最中にシリア攻撃をして、中国の習近平国家主
席の立場が微妙であったことがうかがい知れる。米国の発表では、
習主席は、米国の行動に理解を示したというが、中国の外交部記者
会見では、シリアの化学兵器使用も米国の軍事行動も非難した。

特に、北朝鮮問題では、中国が北朝鮮への援助を継続するなら、米
国は単独の攻撃を行うと中国に警告したが、中国は従来の主張に固
守して対案を出せないでいる。

4.北朝鮮攻撃
米国と中国は、どの線までの攻撃なら黙認するかのラインを決める
ことになりそうである。北朝鮮崩壊を中国は認めないので、限定的
な攻撃になる可能性が高い。

その時に、ターゲットとして、金日恩委員長の殺害を許すかどうか
であるが、中国はその線までは認めると思う。しかし、地上軍が北
朝鮮に侵入して、多くの領域を占領することは抵抗感があるはずで
あり、しかし、ある程度の領域まで占領しないとソウルに砲弾が飛
ぶので、この駆け引きが起こるような気がする。

どちらにしても、米中が合意したら、北朝鮮攻撃の実行は遅かれ早
かれ、行われることになるとみる。

この時、韓国にいる3万人以上の邦人の退避が重要な問題である。
このため、長嶺安政大使をソウルに戻した。この準備が必要で戻し
て、韓国大統領代行に挨拶に行ったら面会拒否になったが、戻した
ことの意味を知っているので、韓国側としても拒否できるのである。
拒否しても再度、帰還というわけにはいかない。

そのほかには、難民が主に中国に押し寄せることになるが、日本に
も海上から数万の難民が来ることが予想できる。この準備をするこ
とが必要である。もう1つが、日本国内でのテロが起きることも予
想していくことも必要であるし、ミサイルが原発に飛んでくること
も予想しておくことである。

日本も北朝鮮の米国の限定的な攻撃であっても、準備が必要になる。

さあ、どうなりますか?

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2017年04月07日01:16 広瀬隆雄
いまホワイトハウス内では二つの派閥が形成されようとしています。
ひとつのグループ(バノン派:Bannonites)は:
スティーブン・バノン首席戦略官
ジェフ・セッションズ司法長官
スティーブン・ミラー大統領補佐官
ケリーアン・コンウェイ大統領顧問
スティーブン・ムニュチン財務長官
ウィルバー・ロス商務長官

もうひとつのグループ(親族派)は:
イヴァンカ・トランプ補佐官(長女)
ジェアード・クシュナー上級顧問(娘婿)
ゲイリー・コーン経済担当大統領補佐官
ディナ・パウエル国家安全保障副補佐官
です。
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2017.4.7 11:57サンケイ
米軍、シリア軍施設を巡航ミサイル50発超で攻撃 ロシアに事前
通告か
 【ワシントン=加納宏幸、パームビーチ=黒瀬悦成】米軍は6日
(米国時間)、シリアにあるアサド政権の空軍基地を巡航ミサイル
で攻撃した。化学兵器の使用が疑われるアサド大統領への対抗措置。
米CNNテレビが当局者の話として伝えたところによると、地中海
に展開する2隻の米海軍駆逐艦から50発以上が発射された。
 トランプ米大統領は6日、滞在先の南部フロリダ州パームビーチ
で記者団に対し、アサド政権軍の飛行場への軍事攻撃を命じたと述
べた上で、「化学兵器の拡散と使用を阻止し抑止することは、米国
の安全保障にとり死活的に重要だ」と強調した。
 トランプ氏はまた、「アサド大統領の態度を変えさせようとする
過去の試みは全て失敗し、そのせいで地域の不安定化が進んだ」と
指摘。その上で国際社会に対し、「シリアでの流血を終わらせ、あ
らゆる形のテロを終結に導こう」と呼びかけた。
 NBCテレビによると、米軍の攻撃では、シリア中部ホムスにあ
る空軍基地が標的となった。この基地は、化学兵器による空爆で使
われたとみられている。
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中山俊宏2017年4月7日
そうか、この介入決定はバノンがNSCの任を解かれたこととも関係が
ある可能性ありか。
Kazuto Suzuki? 
しかし、トランプ大統領、これまでの「アメリカ第一主義」による
孤立主義、国益に関係しない紛争への介入拒否といった見方は完全
に否定されたな。実際はイエメンなどではオバマ政権以上に積極的
な政策をとってきたトランプ大統領なので、全く孤立主義などでは
なかったのだが。
トランプ政権の安保担当は軍人が圧倒的に多く、バノンの退場でNSC
もマクマスターがコントロールするようになった。なので軍事的解
決のオプションは大統領の手元に豊富にあるはず。後は大統領の判
断次第で行動に移すことが出来るようになった。北朝鮮に関しても
同様なのではないかと推測する。
中山俊宏2017年4月7日
 ロシアへの事前通知は、ハイレベルの接触ではなく、軍と軍とのチ
ャンネルを通じて行われたという報道。
中山俊宏2017/04/08
昨日のシリア攻撃は、CW攻撃の凄惨な光景を目にした大統領自身の
判断によるところが大きい。そこに13年から机上にあった対シリア
武力行使の作戦計画がうまく合致した。おそらく武力行使オプショ
ンの中では最も限定的なもの。トランプが、本来オバマが実施すべ
きだった作戦を実行したかたち。
deepthroat2017/04/08
 アサド政権の化学兵器攻撃に対し、トランプ政権内ではバノンが介
入反対を主張したが、トランプの娘婿クシュナーはアサドを罰する
べきと主張、トランプ大統領はミサイル攻撃を決断。バノンとクシ
ュナーの対立は決定的となり、トランプ大統領はバノン排除に動い
ている。
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日経新聞・秋田浩之氏の「トランプ論」はデタラメ
2017年04月08日 11:09
渡瀬 裕哉
日経新聞のトランプ政権論評のデタラメぶりが際立つ
シリア攻撃、処方箋なき劇薬  コメンテーター 秋田浩之
という日経新聞の記事が掲載されました。この内容があまりにも事
実誤認に基づくデタラメであるため、日経新聞のクオリティーペー
パーとしての信頼性が揺らぐのではなかと驚きました。
しかし、秋田氏の名前を見て納得、以前にトランプが極右 !? 日経
新聞へのエール(笑)でも書いたように、現地取材もろくにせずに
伝聞と想像だけでトランプと共和党保守派をディスる文章を書いて
いるのだから仕方がないかと思います。
話にならない事実無視、そして取材不足の論評
今回のシリア空軍基地へのトマホークによる攻撃について、同記事
中では
<秋田>
こんな体制で強行された今回の攻撃は、長期の中東戦略を描き、満
を持した末の行動のようにはみえない。
<事実>
⇒トランプ大統領は1月27日に軍備の即応体制を整備するように大統
領覚書を発し、その翌日にはシリアとイラクのISISを一掃する大統
領覚書にもサインしています。その結果としてマティス国防大臣か
ら1か月後に中東における軍事計画がトランプ大統領に提出されてお
り、イラクとシリアへの地上軍の派兵が小規模ながら進みつつあり
ます。(この計画内に今回の件もオプションとして入っていたと見
るべきです)
⇒また、ダンフォード統合参謀本部議長とゲラシモフ参謀総長(ロ
シア)はアゼルバイジャンで事前に接触し、軍事機関同士のホット
ラインもできています。今回、米軍はロシア軍に対して事前に連絡
していたのもこのためです。
⇒当然ですが、トマホークを積んだ艦船を思い付きで中東に配備し
ているわけでもなければ、何の計画もなくシリア空軍基地を攻撃す
ることは有り得ません。
<秋田>
それでも、今回の行動は性急すぎると言わざるを得ない。正当な攻
撃であることを証明するための事前の努力が、あまりにも足りない
からだ。シリアが化学兵器を使ったのなら、国際法違反であり、人
道的にも許されない。ならば、国連安全保障理事会に証拠を示し、
少なくとも議論を交わすべきだった。
<事実>
⇒シリアでは2013年にアサド政権が化学兵器を使用しており、当時
もオバマ大統領がレッドラインを越えたら軍事介入すると明言(し
かし、ほぼ何もしなかった。)
⇒国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の調査で、シリア軍が2014年と
2015年に3度、化学兵器を使用していることは明らかになっている。(BBC)
⇒2011年のシリア内線勃発以来、国連における非難決議は7回。(ロ
シア・中国が拒否権発動)直近は今年の2月28日。
⇒ニッキー・ヘイリー国連大使は国連安保理でサリンで倒れた子ど
もの写真を掲げて演説し、米英仏は化学兵器使用を批判し、真相究
明に向けた調査に関する決議案を提出。(少なくとも議論は行われ
ている。アサドを守るロシアが聞く耳を持たないのは前提)
<秋田>
この攻撃はさまざまな副作用も生みそうだ。まず考えられるのが、
中ロによる一層の接近だ。両国には根深い不信感が横たわるが、米
国に対抗するため、静かに枢軸を強めるだろう。
<事実>
⇒中国報道官が「冷静さと抑制した対応を維持し、情勢をさらに緊
張させないよう求める」と述べ、シリアで猛毒のサリンとみられる
化学兵器が使用されたとみられる空爆については「厳しく非難する
」と述べ、 真相解明に向けて国連機関による独立した調査が必要だ
との考えを示した。(産経新聞)
⇒ロシアは化学兵器は反体制派が保有していたものであり、空爆の
際にそれが飛散したものとしているため、中ロの立場は異なるもの
となっています。米中首脳会談に被せたこともあり、中国の反応は
極めて抑制的です。(ロイター)
<秋田>
こうした問題を精査し、トランプ氏に進言できる側近は少ない。テ
ィラーソン国務長官や、最側近の娘婿であるクシュナー上級顧問は
ビジネス界出身だ。2人を知る元米高官は「実務や交渉力は優れて
いるが、外交経験はない。危機への対応力は未知数」と語る。
<事実>
⇒本件はマティス国防長官とマクマスターNSC議長主導のものであり
、両氏ともに中東政策を専門とする戦略家です。また、キャスリー
ン・マクファーランド副補佐官も中東に強く、NSCに復帰したCIA長
官のマイク・ポンぺオも中東問題に熱心な下院議員でした。
⇒ティラーソンやクシュナーは中東政策について一定の影響力はあ
るものの、この問題を精査し、トランプに進言できる側近が2名しか
いない、というのは、トランプ政権に対してあまりに無知。
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トランプ政権の本気度疑うウォール街−グラス・スティーガル法復活
Zeke Faux、Donal Griffin
2017年4月7日 08:37 JST
トランプ米大統領と大統領顧問らは預金を扱う商業銀行業務と投資
銀行業務の分離を定めた大恐慌時代の法律、グラス・スティーガル
法の復活を明言している。しかしウォール街はこれが実現するとは
みていない。
  コーン米国家経済会議(NEC)委員長は5日の議員らとの非
公開会合で、グラス・スティーガル法を支持するトランプ政権の立
場をあらためて示した。しかしアナリストらは、抜本的な規制改革
が行われる可能性は低いと指摘。6日の米株式市場では、同法が復
活した場合、最も大きな影響を受けるとみられるバンク・オブ・ア
メリカ(BofA)とJPモルガン・チェースが上昇した。
  1930年代の銀行危機の際に作られ、99年に廃止されたグラス・
スティーガル法を復活させるには、米銀行ルールの改定が必要にな
る。ドッド・フランク法(米金融規制改革法)の際は議会が1年強
、改定作業に取り組んだ。トランプ政権はまだ計画の詳細を明らか
にしておらず、下院共和党が提案した修正案はグラス・スティーガ
ル法復活に言及していない。
  キャピタル・アルファ・パートナーズのアナリスト、イアン・
カッツ氏は「グラス・スティーガル法に似た法律で成立しそうなも
のはなく、想像しにくい」と述べ、「単純に議会の優先議題ではな
いということだ」と説明。上下両院で多数派の共和党は銀行規制の
強化ではなく緩和を望んでいると指摘した。
原題:Wall Street Doubts Trump Wants to Split Up Big U.S. 
Banks (1)(抜粋)
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