5871.米国の経済復活戦略



米国のトランプ政権が進める経済復活戦略が徐々に見えてきている
。これを見ていこう。            津田より

0.世界経済の現状
世界で大きなイノベーションが枯渇して、有効な大型の需要増加を
生み出せないでいる。1990年代のインターネット革命以後、大
きな革命的な技術がなく、世界経済は低成長以下のサマーズは長期
停滞の時代と言うが、そのような時代になっている。マイナス成長
ではないが、1%程度の停滞経済になっているという。

このため、世界の主要国は、まず金融緩和で金利をゼロ%にして、
投資を促したが、2008年リーマンショックのバランスシート不
況で、資金を借りる人がいなかった。

このため、中央銀行は、国債や債券を買い、資金を無理やり市場に
投入したが、その資金のほとんどが銀行に滞留して、中央銀行の預
金になっただけになり、このため、銀行の資金貸出を促すために、
中央銀行の預金をマイナスにして手数料を取ることにした。

しかし、このマイナス金利政策で、貸出先のない民間銀行の経営は
苦しくなり、日本では地方銀行が淘汰されている。欧州でもドイツ
銀行など、無理な拡大策をした銀行が経営難になった。

要するに、世界的な総需要量を増やすことができず、ユーロで実質
通貨切り下げをして近傍貧困化政策をしたドイツと、移民増大の需
要で経済規模を増やした米国、インフラ投資で仮需要を作り経済成
長を維持した中国、量的緩和政策を推し進め円安にして輸出で経済
規模を維持した日本と、主要国はこのような経済政策をしてきた。

1.トランプ政権で
しかし、一層の経済成長と国内産業の育成を目指す米トランプ政権
ができて、世界で合意した経済政策を破棄したことで、世界は新し
い経済政策を目指す必要になっている。

要するに、米国が金融政策の中心である量的緩和による通貨安政策
を認めないことで、各国は新しい経済政策が必要になっているが、
大きなイノベーションもなく、世界的なフロンティアがアフリカと
中央アジアにしかないことで、そこの取り合いが起きているのと、
米国は自国内での不満が強く、経済成長とともに国内の不満解消と
いう方向である。

ドイツは、移民増加政策を取り一層の需要増大を図るとともに、ア
フリカ開発を中国に続き行うことで経済成長をする方向であり、中
国は中央アジアやアフリカに中国人を大量に移住させて、インフラ
投資と地下資源開発で経済成長を図る方向である。このため、AI
IBも作り、本格的に取り組んでいる。ここ数年で投資額は70兆
円と膨大である。

2.米国の経済産業政策
トランプ政権は、移民の追い出しを行うので、その分の総需要の増
大を望めないが、雇用確保の製造業を復活させることと国防費増額
で代替するようであるが、脱工業化により芸術家や研究者、投資家
などを輩出する高等教育にシフトしているので、工場労働者に向か
ない人材を教育機関は生み出している。

このため、この弱点を補強する経済政策として、インフラ投資や減
税やドル安政策、保護貿易政策などを取り、弱点をカバーさせて投
資拡大、消費拡大を目指すことになる。

世界の総需要が増えていないので、米国の供給量が増えると、どこ
かの供給量を減らすしかないことになる。金融政策とは別の形の近
傍貧困化政策である。

この供給量を落とす地域が、ドイツ企業と日本企業の米国外工場と
いうことのようである。GMは欧州から撤退しているし、フォード
は日本から撤退している。米国車には競争力がない。このため、競
争力がある日本とドイツ企業が米国内に工場を建設することを狙っ
ている。

もう1つが、ドル安にして輸出を増やしたいので、量的緩和などの
金融政策を世界的に封鎖したいようであるし、輸入が増えないよう
に国境調節税などを導入するようである。このため、WTOの自由
貿易ルールには反対ということになる。

3.エネルギー産業が中心
米国産業で世界的な競争力のあるのは、エネルギー産業で、これを
米国経済の中心に位置づけて、シェールガス、再生可能エネルギー
を推進するとともに、石炭なども復活して輸出の中心にエネルギー
を持ってくることを狙っている。

この考え方の基盤にあるのが、石油で米国は世界の覇権を握ったの
で、その化石燃料を制限すること自体が米国の覇権力を落とすこと
になると、ようやく気が付いたことだ。このため、米国では環境技
術への投資も大幅な削減をすることになる。もちろん、パリ協定か
らも脱退という。京都議定書に続いて米国は参加しない。

しかし、世界的なイノベーション推進で、世界はエネルギー転換を
進める方向であった。パリ協定などでCO2排出量の削減を通じて
、再生可能エネルギーへの転換を推進しようとしたが、それを米国
が阻止したことになる。

しかし、日本は再生可能エネルギー推進で、その中核技術である水
素社会への全面的な技術開発をして、今まさに実用化して社会全体
を改造しようとしている段階にきている。この分野での研究開発で
は、日本と米国や進んでいたが、米国が撤退すると、日本の独壇場
になる。徐々に日本の時代が見えてきている。

しかし、米国マスク・イーロンなどは、水素社会はコストが高く実
現性がないとして、電気自動車が中心の電池社会になると日本の水
素社会化をけん制した発言をしている。

4.外交政策
議会の多数派であり与党の共和党は、財政均衡主義者が多数を占め
ている。このため、インフラ投資や国防費増大、産業政策を進める
経費を他の予算から捻出することになる。

その捻出先が、30%削減の国務省と環境省予算という形になって
いる。外交政策は、国防費が増えるので、軍事力が中心になり、海
外援助はなくなる。アフリカなどへの援助がなくなることで、ドイ
ツと中国がアフリカ開発を行うことが確実になっている。米国は、
フロンティアの1つであるアフリカへの参入はない。

もう1つ、ボランティア活動資金もなくなり、米国のNGOなどの
活動も一切なくなることで、紛争地域を中心に米国民間人がいなく
なる。この穴を埋めるのが、ドイツと中国ということになる。世界
への影響力は、米国からドイツと中国ということになりそうである。

このため、国務長官のティラーソン氏が日韓中を訪問したが、トラ
ンプ政権内の位置は高くないし、重要視もされていない。米政権は
海外に関心がないようである。外交がおざなりになっていく。

欧米社会の中心、取りも直さず世界の中心はドイツのメルケル首相
になると早くも評論家は言い始めた。中国とドイツの2ケ国が中心
になるようだ。

5.トランプ政権目玉政策は
そして、このようなトランプ政策が株価を押し上げている。相当に
株価が高い状態であり、政策の期待値が高い状態である。トランプ
政権の政策で市場が一番期待しているのが、インフラ投資と減税政
策である。

しかし、インフラ投資と減税を行うためには、それを補う税収が必
要であり、それは国境調節税であるが、この国境調節税は、ウォー
ルマートなどのスーパーなどの小売企業が大反対している。

税金分価格がアップすることになり、消費を減らしかねない。米国
ではGDPの70%が消費であり、この減少は経済成長率を下げて
しまい、マイナス成長にもなりかねない。雇用増加から雇用減少に
なる可能性もあり、国境調節税の審議が始まるのは、来年ではない
かという。

共和党ではドル高政策にして、税金UP分のドル高にして、消費者
には負担を感じさせないことが必要であるというが、政府はドル安
政策で企業の工場を誘致させたいというので、この調整が必要にな
っている。

ということで、インフラ投資も減税も国境調節税の決着を見ないと
実行できないことになる。

ということで、政策期待が下がり、いつまで株価が維持できるのか
という疑問も出てきた状態である。それを維持しているのが、景気
回復という評論家がいるが、失業率や雇用増加数の数字的には数か
月前と変わらない。

経済状況に変化がないのに、この上に、FRBは政策金利を利上げ
してきている。利上げすると債券市場に資金が流れて、株価の下げ
る効果があるので、この面でも心配な状況になっている。

しかし、やっと、正常な経済論理でトランプ政権の評論ができるレ
ベルになってきたようである。期待や願望や言葉だけの状態では、
徐々になくなり、実務家の時代にきている。

それとともに、思想家のバノン上級顧問の影響力がなくなるとみる
がどうであろうか?

さあ、どうなりますか?



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