5869.欧米文明の逆襲



トランプ政権のバノン上級顧問は米国第一主義を唱えるが、日本、
中国、韓国などの東アジアの台頭で、欧米の衰退や覇権を中国に奪
われるという脅威から、再度の復活を目指していることが見えてき
た。その検討。      津田より

0.村山節氏の「東洋・西洋800年交代説」
村山節氏は、西洋と東洋が、約800年で文明の主役を交代してい
るという説を提唱した。BC1200年からBC400年までは、東洋の時代で
あり、インダスや隋の文明が栄えた。BC400年からAD400年までは、
ギリシャ・ローマ文明で西洋文明が栄えた。ギリシャのマケドニア
は、インドの手前のアジアまで征服している。400年から1200年まで
はサラセン、唐、宋文明が西洋の停滞の中世に対して、科学技術を
基礎とした文明を作り、栄えた。

1200年から現在までは、西洋はルネサンスを起点として、1820年に
産業革命を起こし、東洋を圧倒し、西洋が東洋を支配した時代でも
ある。1820年以前は、世界の経済大国は中国とインドであり、この
2ケ国で世界のGDPの半分を占めていた。

1940年代に日本が西洋文明の支配を排除するために立ち上がるが、
戦争に負けて西洋化することになった。しかし、1950年から東洋が
西洋の支配から独立して、1960年代から西洋化した日本は、西洋文
明の科学技術を取り込み、工業化して行き、その技術をアジアに広
めていった。

1990年には、米国は脱工業化と言って、IT産業や金融などのサー
ビス業や石油産業などにシフトしたが、それがますます東アジアの
工業化を押し進めさせた。このころからインターネットが世界的に
つながり、グローバル化が進展した。

現在2000年以降、欧米諸国は、金融の量的緩和などの延命策で、な
んとか世界の覇権を維持しているが、現時点、世界の成長率は、3%
以下であるが、その成長に寄与している割合が高いのは、中国の経
済成長率6.5%で半分を占める。

そして、2030年までには中国に米国は経済規模でも抜かされること
が確実である。村山節氏も2000年に、西洋と東洋に逆転が起こると
説いていたが、それが現実化している。

この現状をトランプ政権のバノン上級顧問は、西洋サイドから見て
いるような気がする。文明で西洋と東洋の交代を阻止するべく、行
動を開始したようである。800年も優位が続くと、永遠に優位が続く
と思い勝ちであるが、守りから攻めに行かないとダメということの
ようである。

1.文明交代の原則とは何か?
西洋文明の基礎である欧州は、寒い地方であり農作物が十分できず
に、他国から食料を奪い取るために戦争に勝つことが必要であり、
精神主義にならずに技術や理論を発展させた科学技術の文明になり
、しかし精神主義に陥ると停滞の中世のような状態になる。
そして、いつも、キリスト教の影響を受ける思想を作り、その思想
に縛られることになる。

逆に、東洋は釈迦や孔子などを輩出して、自己を高めることを目指
す精神主義の文明である。東洋は比較的温暖な気候であり、食物に
困らなかったことで、精神的な余裕があり、精神を研ぎ澄ますこと
が可能であったことによる。しかし、科学技術の発展は遅れるし、
人権主義などの思想的な面は弱い。

この2つの違う文明が、相互に交代しながら、世界は発展してきた。
現在、科学技術の著しい発展が止まり、穏健な思想より、精神的な
安定や自己の意味などの方が重要になってきたようだ。

このため、精神文明である東洋の時代になり、バノン氏は、西洋が
中心に世界に強制的な価値観とした人権尊重やグローバル化などを
止めて、今までの西洋文明の穏健な価値観を破棄するようである。

戦略としては、西洋の科学技術の基礎でもある事実より、自分の感
じる事実を基礎に米国を世界の覇権国家として継続させることのよ
うだ。

しかし、この危機感は、西洋文明全体にあり、欧州の極右政党も同
じような思想を持っている。西洋と東洋の文明交代を阻止すること
で、米国のトランプ政権と欧州のルペン氏などの極右政党を繋げて
いる。

経済的な損得というより、文明的な取り組みである。この西洋と東
洋の戦いの中心的な位置にいるのが、日本とドイツである。どちら
も工業化を進めて、脱工業化をしないことで維持して、西洋価値観
の中心点にいるのと西洋と東洋の中間地点にいる。

2.日本とドイツの戦略が違う
米国のバノン氏は、欧州のドイツを今までの西洋の価値を維持する
敵とみているし、日本は東洋文明に西洋文明を融合し、米国を出し
抜いた敵とみている。

中国は本当の敵であるが、うかつに戦うと米国経済にも大打撃を受
けるので、徐々に絞りあげていくようである。中国も当面は戦いを
避けて、米国の要求を受け入れるようである。時間を稼いだ方が得
という読みである。

ということで、当面の敵として、日本とドイツが浮かび上がってい
る。この両国は、米国に負けて当時の米国の価値観を受け入れて、
もっとも、その価値観を発揮している国である。

ドイツは、グローバル化、人権主義など、今までの西洋が世界に強
制的な感覚で押し付けてきた価値観を推進している。その上に安全
などの世界的な基準を作り、温暖化防止という価値観も追加してき
たのが、欧州のドイツである。ドイツは基準が好きである。

このため、世界基準などの国連の活動を止めると米国は言っている
し、国連では米国の要求が遂行できないと述べている。このため、
国連への拠出金を大幅にカットするようだ。

その上にドイツに対して、ロシアとの戦争に備えて、軍事費を拡大
しないなら、NATOから米国は撤退すると脅している。

ドイツは、現時点の西洋的な価値観の中心的な存在として行動して
、中国市場を中心に貿易をすれば、経済は維持できるとみているし、
国連の中心が米国から中国に変わっても、ドイツは米国でなくても
よいと見ているようである。このため、米国が敵というなら、中国
と組むという戦略を立てるようである。しかし、国民の不満が高い
移民政策は、少し制限を付けるという。

これに対して、日本は米国の要求をある程度、受け入れて米国に工
場を建てて、米国人を雇用するようであるが、駐在員のビザが取り
にくくなり、米国の工場の運営を早期に米国人に渡す必要性がある
ようだ。

しかし、日本の工場技術を早期に転移させて、米国人を育成しても
らい、その人を引き抜いて米国企業の復活を図りたいようである。
しかし、一番問題なのが、米国の教育システムであり、考えること
が中心で知識教育をしないために、工場労働者としては使えないよ
うだ。このため、再教育が重要な課題になる。

また、米国工場の幹部・中堅クラスは他社から引き抜きされて、再
教育してもいなくなることが多い。給与を他社並に引き上げること
になり、幹部クラスではその会社の社長より高いことになる。

もう1つが、仕事が修行という感覚がないことで、改善提案などが
少ないことである。そのために、日本の母工場がいつまでも必要に
なる。技術移転が一方向であるようだ。もちろん、日本なら米国へ
である。

3.日本はどうすればよいか?
中国という大国がそばにいて、米国という今までの大国が隣にいて
、その両国から睨まれる位置にいるのが、日本である。そして、米
国は日本を属国を見て、無理な要求をしてくるし、中国は米国以上
過酷な領土的な要求をしてくる。しかし、この2つの大国は、敵対
関係にはならないということで、日本は、いつも損する立場になる
ようだ。

日本の損を解消するには、新しい時代にあった戦争を想定して、戦
争に勝てる準備をすることである。その準備があれば、無理な要求
を跳ね返せるが、現時点では、両国と戦争で勝てるようには見えな
い。

ということで、中国との戦争に勝てる準備をしていくことである。
これしか、日本が取り得る道はない。しかし、勝てるからと言って
、戦争することではないことは、もちろんである。

さあ、どうなりますか?


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トランプ政権、WTOに意見書 友好ムード演出も“先制攻撃”
2017.3.11 05:54SB
 トランプ米政権が世界貿易機関(WTO)に意見書を出したこと
で、日本の自動車と農産物の市場開放が経済対話の主要課題に上る
見通しとなった。日本政府は10日から関係各省の幹部を訪米させ
、インフラ整備やエネルギー開発などの協力事業を提案して友好ム
ードを演出する構えだっただけに、米側に手痛い“先制攻撃”を受
けた形だ。
 ◆経済対話で協議も
 「首脳会談で合意した3本柱の枠組みの中で、日米連携の在り方
、経済協力の在り方を議論すると思う」
 世耕弘成経済産業相は10日の記者会見でこう述べ、経済対話で
はインフラ・エネルギーなど安倍晋三首相とトランプ大統領が2月
に合意した3分野に沿って協議を進める考えを示した。
 経産に加え財務、外務、国土交通省の次官級幹部は同日訪米し、
米国での高速鉄道新設や、シェール由来の米国産ガス輸出など、日
米共通の利益になる経済協力や貿易ルールを包括的に協議する構想
を提案。自動車や農産物といった米側が関心を示す個別市場の開放
圧力をかわす狙いがある。
 対する米側は今月、不公正貿易と認定した国に対し米通商法301
条に基づく高関税などの制裁を科すと表明した。一方的な制裁は
WTO協定に違反するが、国内法を優先する構え。2016年の
対日貿易赤字は対中国に次ぐ2番目の大きさで、格好の標的になる。
 米新政権の通商政策を立案する国家通商会議(NTC)のナバロ
委員長は、対日赤字の削減に向け、日本にトウモロコシなどの農産
物や飛行機、潜水艦などの購入を求めるとしている。
 米国が相次いで強硬姿勢を示し始めたのは、ロス商務長官が2月
28日に就任するなど通商政策を担う政権幹部が固まり、主導権争
いが本格化したことが背景にあるとも指摘される。蜜月関係を強調
した首脳会談から一転、経済対話は厳しいものになる恐れがある。
 ◆“煙幕”作戦は不発?
 日本は「求められれば自動車や農産物も協議対象にせざるを得な
い」(経済官庁幹部)。協力事業を前面に出し農業などを守る“煙
幕”作戦が不発に終わった場合、序盤戦から米国に押し込まれる展
開も予想される。(田辺裕晶)
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トランプ政権の修正版・入国禁止令より、日本人が注目すべき問題
2017年03月08日 09:30
安田 佐和子
かねてから報じられていた通り、トランプ米大統領は1月27日に署名
した入国禁止に関する大統領令の修正版に発令しました。トランプ
大統領は記者会見に姿を見せず、代わりにティラーソン国務長官、
セッションズ司法長官、ケリー国土安全保障長官が説明責任を果た
しています。質疑応答は受け付けませんでした。
注目点は5つ。
1.イラクを入国禁止対象から除外し、イスラム圏6ヵ国(イラン、
リビア、シリア、イエメン、スーダン、ソマリア)の6ヵ国に対し90
日間にわたり入国禁止(難民は120日間)
→イラクはイスラム国(IS)との戦いに従事するだけでなく、ビザ
審査の強化や情報共有で米国政府に協力的だったため対象外に。
2.シリア難民の無期限入国禁止を90日に変更
→他国より厳しい措置を緩和。
3.対象国の宗教少数派の受け入れ優先規定を排除
→イスラム圏国家でのキリスト教徒を優先する宗教上の差別的措置
を撤廃。
4.ビザ取得者、有効な米国永住権(グリーンカード)保有者は除外
→1月27日に署名した入国禁止は、6万件に及ぶビザが一時的に無効
とされる事態に。
5.3月16日から発効
→即時発効での混乱を回避。
1月27日以降、入国禁止令をめぐりワシントンD.C.をはじめ西や東で
デモが頻発したものです。
日本でも大いにメディアで取り上げられたこの米大統領令、確かに
目を引きます。しかし、日本人にはもっと深刻な事態が発生してい
たのです。
2月28日の議会演説でトランプ米大統領は移民政策について多くを語
らず、就労ビザへの言及はゼロでした。演説では語られた言葉より
口にしなかったトピックにこそ意味があると言われますが、まさに
その通りです。
何かと申しますと、特別技能者向け就労ビザH1Bです。今年は移民局
が4月3日から応募を開始し、一般枠で6万5,000人、修士号枠で2万人
、合計で8万5,000人のみに支給される狭き門。さらに自由貿易協定
(FTA)の条件を受けてシンガポール人とチリ人向けに6,800件が割
り当てられるため、正確には7万8,200人のみパスできるビザですね
。2017年度(2016年4月に応募受付、同年10月に勤務スタート、*米
国での会計年度開始は10月なので2017年度)は23万6,000件もの申請
が寄せられたといいますから、約3割しか米国での就労を認められま
せんでした。
しかも設定枠いっぱいまで申請者を受け入れるとも限らず、倍率が
さらに上がってしまうことも。運命を決めるのは神の手・・ならぬ
コンピューターで、4?5月に無作為の抽選方式で行われ、審査を経て
当選すれば移民局から書類が届き、落選すれば書類と申請費用が返
ってきます。気になる費用は企業の規模ごとに変わり、ざっと1,600
ドル?7,400ドル。これに弁護士費用のほか、審査期間を通常の2ヵ月
から15日以内に短縮するプレミアム・オプションを希望する申請者
は特急審査費用1,225ドルを別途支払う仕組みとなっています。ちな
みに申請基本料は、従来の325ドルから460ドルへ引き上げられまし
た。
今回、このH1Bビザをめぐりトランプ政権下で移民局が発表した変更
はといいますと・・。
特急審査費用の廃止です。
1,225ドル支払えば15日以内に審査結果が把握できたところ、一時停
止に追い込みました。2016年時点で特急審査費用を支払った申請者
でも結果は約1ヵ月半後の5月16日までお預けになっていたので、特
に問題なしという解説もあります。
しかしながら、審査に6ヵ月近くかかる場合もあり申請者やスポンサ
ー企業にとっては時間が浪費されかねません。企業にとっては必要
な人材獲得の障害に、個人にとっては就職先の確保が困難となり互
いにアンハッピーな変更なんですね。
トランプ政権は特急審査費用の廃止だけでなく、その他の変更も検
討中とも報じられています。1)抽選方式の撤廃(博士号取得者など
高学歴を優先)、2)H1Bビザ取得後の最低年収を6万ドルから13万ド
ルに引き上げ、3)ビザ発給の20%を中小企業、ベンチャー企業に割
り当て、4)職業訓練後に祖国へ帰すアウトソーシング企業の取り締
まりを強化、5)H1Bビザ取得者、あるいはL1ビザ取得者が50人以上
の従業員を有する企業に対し追加でH1Bビザ取得者を雇用することを
禁止、6)米国人を雇用する努力をした証拠提出??などが盛り込まれ
る見通し。最後のL1ビザは駐在員ビザなので、日本企業に該当する
というわけです。
ビザ発給の厳格化はまだ草案段階とはいえ、いつ署名されてもおか
しくありません。H1Bビザ取得の約7割はインド人でIT企業の問題と
認識されてきましたが、米国勤務を希望する日本人や駐在員を置く
日本企業にとっても無視できない問題へ変化しつつあります。



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