5862.日本が世界を助ける時代が来る



日米の経済対話で、日本企業は米国に工場を建て製品を作ることを
要求される。脱工業化で、製造業からサービス産業やIT産業に米
国企業はシフトしたが、再度、工業化を進めることにしたが、製造
技術がなく、トランプ氏は安倍首相に助けを求めることになる。と
いう世界はどうなるかを検討しよう。 津田より

0.米国の脱工業化、日本の匠工業化
1990年代、インターネット革命で米国は金融などのサービス産
業とIT産業に製造業からシフトした。これを脱工業化といい、ス
マートな変身と宣伝した。利益率も上がることで、正当化した。

日本は、米国から厳しい貿易条件を出されても、それを乗り越えて
、製造業を残すことに気を使った。今でもすべての業種で生き残っ
ている工場がある。もちろん、技術レベルの高い工場しか、生き残
れなかったために、数は多くはないが、匠の技術に高めている。汎
用品工場群とその部品工場群を、日本企業はアジアに移した。

しかし、技術的なレベルの高い工場は日本に残した。製造業は、部
品や材料ごとに製造技術が違い、その全てが揃わないと製品が作れ
ない。多様な技能集団が必要なのである。この部品工場をまだ、日
本は持っているので、製造業を復活できるし、他国にそのワンセッ
トを移して、そこで完成品工場を作ることが出来る。

米国は、製造業を捨ててしまったので、このワンセット製造技術を
持っていないことで、米国企業だけでは完成品工場を建てることが
できない。イーロン・マスクのテスラモーターの電気自動車工場で
も、電池はパナソニックなどの日本企業がワンセットで米国に工場
を建てて、助けている。というように、日本企業が必要なのである。

韓国のサムソンでも、部品の多くは日本企業からの調達になるが、
日本との距離が近いので、輸送費があまりかからない。

このように東アジアの中国、台湾、韓国などは、日本の基礎部品や
材料に依存して成り立っている。その上、イノベーションが材料や
基礎部品で起こっている。このため、日本企業がそこでは強い。ナ
ノオーダーの歯車、コンデンサーなど、日本企業の独壇場である。

また、日本企業は、内部留保が過去最高レベルにあり、投資余力を
持っている。2008年のリーマンショックによる不況から抜け出
せない米国製造業とは事情が大きく違う。日本企業には、米国に工
場を建てる余裕がある。

1.ドイツの現状
日本と比較されるのがドイツであるが、自動車などエンジンや化学
産業が強く、このドイツでもマイスター制度で匠の技術を保持して
いる。現状、世界的なワンセットの産業基盤を持つ国は、日本とド
イツであり、中国が急速に日本の技術を吸収してワンセットに近く
なっている。

ドイツも自国通貨より通貨安水準のユーロにより、輸出が大変な活
況にあるが、クーガなどロボットや機械産業は、日本に負けている
。ドイツはEUから多数の労働力も確保できるので、日本のように
中国・EU以外の世界に出て行く必要がない。米国などでは日本企
業との競争になり、不利であるので無理してまで出ようとしない。

このため、メルケル首相は、トランプ大統領に強い口調で注文がで
きるのである。消費規模が米国と同様程度あるEU市場と、米国よ
り大きな中国市場があり、それでドイツ企業は繁栄出来るためであ
る。

このため、米国の誘いに乗らない。EUを守ることになる。米国と
は衝突する可能性がある。また、米国より中国を選択する可能性も
ある。

2.米国の政策
米国が優位なのは、IT産業と航空機・兵器産業であるが、グーグ
ルなどIT企業は、世界から優秀な人を集めて、世界的なソフト分
野を開拓しているが、この分野は、人口の1%程度の論理力がある
優秀な人間を多数、雇用して作るしかない。このため、世界から優
秀な人間を集めてきている。このため、米国の白人は少数になる。

トランプ政権で、今問題にしているのは、白人労働者を多数雇用し
てくれるような付加価値の高い産業が必要なのである。ということ
で、技能の高い外国人技術者を米国に入れるのではなく、IT企業
にも多数の白人労働者を雇用しろということになるが、IT企業の
競争力は大きく落ちることになる。無理をすると、IT企業の米国
離れも引き起すことになる。

米国政治状況は、世界から安価な製品輸入で世界を助けることより
、製品が少し高くても米国の白人労働者を助けることが必要とトラ
ンプ大統領が当選したのだ。

米国は自国生産になり、新興国からの輸入を減らすことになる。今
までは、米国の製品輸入と原材料輸入の中国が世界経済を引っ張っ
てきたが、中国の経済成長も止まり、米国は自国生産になるので、
米国以外の世界的な成長余力はなくなる。新興国の輸出先がなくな
り、成長ができないことになる。米国では、世界的な効率化より自
国が優先ということになる。

米国は、世界の人権とか自由とかのリベラルなことより、自分や家
族や自国民が生きていくことの方が重要であると有権者が考え始め
たことで、米国の政治革命が起こったのだ。日本は昔から、変わら
ずに自国しか考えていないが、米国は本当にグローバルなリベラル
を考え、世界に介入してきた。それを止めるようである。

自国民優先になるので、産業的には非効率化になることもあり、ナ
ショナリズムでありコーポラティズム(統制経済、協調主義)にな
る。これも今の日本である。

しかし、米国は自国産業で製造業のワンセットを持っていないので
、日本企業の技術に頼る事になる。日本は、アジアの産業を興し、
そして今、米国の産業を興すことになる。日本が米国を助ける事に
なる。安倍首相がトランプ大統領から歓待されるのは、日本企業の
工場を米国に建ててほしいからである。

その代わり、日米同盟を完全に履行するし、円安には歯止めが必要
であるが、それほど無理な要求はしないようである。麻生財務相は
、1ドル=120円までの円安はOKという。

そして、円ドルリンクを志向したほうが良いと私は見ている。バー
ゼル3との見合いで、円暴落を防ぐことにもなるためである。早め
に10年先を見据えて準備するべきである。

3.日本企業の今後
ドイツ企業は、世界には出てこない。世界に出て行くのは日本企業
である。それと共に日本文化も出て行き、日本食も出て行く。それ
を現地で見た人たちが、観光客として日本文化を見に日本に押し寄
せることになる。聖地日本のような雰囲気である。

このコラムの当初に、日本のグランドデザインとして拡大日本戦略
を提案したが、最終地点が見え始めているようだ。15年と経て、
この構想が実現化したようにも見える。

今、日本は自国の人口減少をどうしていくのかの議論が起こり、こ
のままでは衰退してしまうと思われているが、日本企業は、どっこ
い、世界で生き残ることになる。日本が世界に出ていくのである。
それに合わせて、英語教育も小学校3年生から始めると政府は言っ
ている。

日本企業が優秀な外人を世界から採用して、世界企業に変貌するこ
とになる。日本から世界に出て、やっと、当初想定した姿に日本が
なっていくようである。日本が世界を助けることになる。

そして、日本は新しいグランドデザインを構築することが必要にな
っている。日本は世界の安全保障を米国に丸投げしてきたが、米国
が内向きになると、輸送路を守るために日本は、その分野にも出て
いく必要になる。今、中国が一帯一路で出てきているので、中国と
の関係も含めて考える必要がある。

4.米国の中東政策
しかし、米国の外交で気になる問題が出てきた。トランプ政権の内
部は、いろいろな考え方の人間がいて混沌としているが、大統領府
で、実権を握るのが上級顧問バノン氏と娘婿クシュナー氏のようで
ある。

バノン氏は、「4th turning」に大きく影響されている
という。米国は危機的な状況にあり、特にイスラム教徒に影響され
て、米国の体制が変化されてしまうことを述べている。この予測が
、911テロ事件で証明されたと考えているようで、このため、イ
スラム教徒に警戒している。入国させないという大統領令は、ここ
から出ている。

この考えと、ユダヤ教徒である娘婿クシュナー氏が中東政策を取り
仕切るので、イスラエルのネタニエフ首相のタカ的な政策を支持し
てしまうことになるが、それは中東に混乱を起こすことになる予感
がする。ヨハネの黙示録を実現させてしまわないかと心配である。

一応、ヨルダン川西岸の入植地拡大を反対したが、あまり、強くイ
スラエルを制約していない。2国共存の従来の方針を固守しないで
、1国2民族共存という選択もありとトランプ大統領は、述べてい
る。

要するに、米国は中東の問題に深入りしないというようである。ま
た、NATO諸国にも軍事費をGDPの2%以上を要求しているなど、
米国の内向きな外交政策が見える。

米国の内向きな感覚での外交政策になると、世界はどうなるのか、
非常に心配なことであるが、日米の経済同盟は成り立ち、次には、
日米軍事協力のレベルを上げる方向に向かうことになる。視野は、
日本ではなく世界になる。

さあ、どうなりますか?

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