5855.トランプ政治革命は黒船



トランプ政権の政治は、米国の革命であり、そして米国から日本へ
の黒船でもある。それを考察したい。  津田より

0.トランプ氏の思想は何か?
トランプ氏は、米国を日本のような国家にしたいのである。日本は
自国民を守るために、犯罪が多くなるとして、多くの難民も移民も
受け入れないで来たし、自国製造業を守るために、日米貿易摩擦で
も結局のところ、米国の自動車を受け入れていない。

自国産業を米国からは守ったが、米国からの要求で日本での製造か
ら、台湾や韓国、中国、今はベトナムなどに日本企業が進出して、
それぞれの国で製造した製品を米国や日本に輸出したことで、アジ
アは日本の技術移転で発展したのである。

日本の製造業を守るために、日本の官僚も企業人も一丸になって、
やったのは、自国民の富を守ろうとしたことである。企業は、自社
の社員を守るために、海外で製造をしたのである。これによりコス
トが減り、価格競争力も手にした。

しかし、この日本企業を見ていた米国企業は脱工業化やコスト削減
として海外に移転して、自社の労働者を首にして、コストを下げて
企業利益を上げて、資本家と企業経営者だけが豊かになった。米企
業には自社の労働者を守るという概念がない。このため、格差が拡
大してしまったし、貧困白人層の自殺者が急激に増えてしまった。

その上に、それを一歩進めて、世界から優秀な人を米国に呼び込み
、国際化を推し進めて、IT企業が繁栄した。異文化主義や多元性
、多様性という考え方で、それが正義であるという考え方に立って
いる。

そして、これを裏付けるために、多様性がある企業の労働者の収入
が高くなることを言っているが、元の白人社員や労働者たちを首に
して、その人たちは忘れ去られて、落伍者として扱われた。

しかし、トランプ氏の思想は、自国民というか自民族保護という考
え方に立ち戻ることになった。これは日本の考え方である。このた
め、トランプ氏は、日本と同じようなに頑強に国際化を拒否するの
である。守るべき自民族の人たちは、非国際化を賛成するはずであ
る。

日本の考え方としては、政府は日本国民全体を、各企業はそこに勤
める社員全員を守るために、マネージする文化である。明らかに米
国の企業文化とは大きく違う。それでも、世界第3位の経済大国の
位置にある。今のところ、没落はしていない。

日本の考え方を米国に根付かせようとしているのが、商務長官にな
ったウィルバー・ロス氏である。日本とのビジネスや交渉で日本の
ような国家運営を理想として、日米交流団体の会長にもなったので
ある。

このロス氏が、対外通商交渉の司令塔になるとトランプ氏も述べて
いる。

トランプ氏が目指しているのは、日本の自民族を優先する国家運営
なのである。よって、安倍首相はトランプ氏にとっては戦友であり
、同じ考え方の同士なのだ。だからといって、日本の思い通りには
ならない。日米の利害対立が待ち構えている。

トランプ政権では、自民族とは白人であり、その白人を優先した国
家運営となる。このため、白人至上主義者バノン氏を全体の司令塔
にしているのだ。

しかし、今までの正義からすると、とんでもない政権である。猛反
対が出て当然である。マスメディアは、もちろん正義の味方であり
、トランプ政権を嫌うことになる。

また、国際的なIT企業は、トップ自体がインド系の人たちであり
、白人優先思想には猛反対することになる。しかし、H1B(技術
者)ビザの審査を厳格化することになり、米国に技術者は入れない
ことになる。

そして、トランプ大統領の任期は4年であるが、1年で終わるので
はないかという掛けも出てきた。ケネディ大統領と同じで暗殺やク
ーデターの計画も出てくる可能性がある。

1.日本の置かれた状況
米国が日本と同じような自国民優先にシフトするとき、日本は、ど
ういう状況かというと、自国民を守る政治が持続性を失いかけてい
る。1990年から20年以上も年間20兆円もの国債発行で、と
うとう国家債務が1000兆円にもなってしまい、持続不可能とい
う状態で、一部の日本人が貧困層になっている。

2020年のプライマリーバランスも危うくなり、国債依存の自国
民保護もできなくなり、最後の拠り所をして米プリンストン大学の
クリストファー・シムズ教授による「物価水準の財政理論」(FT
PLに頼るという状況である。

しかし、シムズ理論でも、十分な需要のあることを前提としている
が、日本の現状は、老齢人口増加と人口減少などで需要不足が起こ
り、これを解決しないとハイパーインフレになり、国民全体が貧乏
になり、国民を守ることとは反対の方向になる。

もう1つが、主要国全てが金融緩和を続けていたら、近隣窮乏化の
ような議論は出てこないが、米国が出口を迎えて利上げになり、日
本やEUだけが金融緩和を続けることで、米国は為替操作と批判し
て、関税を高めることになり、日本は製造業も守れなくなる。

江戸時代の幕府と同じで、米国の自国優先という黒船が来て、日本
の財政事情や自国優先という今までの心地いい考え方では、立ちい
かない状態になってしまったのである。

米国が自国優先と日本の考え方にシフトしたとき、日本は逆方向の
開国して移民や難民を受け入れ、十分な需要を増やさないといけな
い事態になっている。

それと、悩ましい問題は、米国から為替操作と言われる日銀の国債
買取オペをしないと、国債の金利が急上昇して、円高金利高になり、
需要もないのにインフレになり、スタグフレーションと最悪なこと
になることだ。このように変動相場制の問題が露わになっている。

国民を守る政治に必要ことは、日本にとって良いことの全てを追求
しないで、選択をして最悪なことにならないようにすることである。

米国の要求に屈して、円ドル相場を固定化して、日銀の国債買取オ
ペを行うと、一番の問題は金利差があり、円で貯金するよりドルで
貯金したほうが得であり、円からドルに皆が替えるので、為替介入
を行わないといけないことである。

人民元とドルとの弱いリンクでも、人民元の流出が続きドル売り介
入をしたことで、大量の米国債を売り、ドル売り人民元買い介入の
原資にしている。ドルが大量に必要になる。

円ドル間も無限の為替介入になる。というように通貨マフィア間で
は、問題点の大きさに気づくことになるが、トランプ大統領は、大
量の米国債を発行して、米国債の金利を上げる方向にある。という
ことは、日銀が金利ゼロ付近に固定した国債買い取りをすると、一
層の円安ドル高になり、トランプ大統領の文句が来ることになる。

日銀は、そろそろテパーリングと言わないで、国債買い取りオペを
調節して、金利差を縮めて円ドル為替水準をある範囲に収めるとい
う暗黙の了解を取り付けることである。その水準値と範囲幅を日米
通貨担当者が話すことであるように思う。暗黙のドル円リンクであ
る。

2.将来的な方向は
ITやAIなど、今後の方向はグローバリズムであるが、国民軽視
で進めると、反対方向に国民が向くということになる。当分、英米
の両国は反グローバルに政治が向いていく。日本は徐々にグローバ
ル化していくことで、現時点、日米英の3ケ国は同じ位置にいるよ
うな気がする。

米国のIT企業は技術者の入国が難しくなり、米国から他の国に出
る決断をすることになる。その時には日本が選択されるような状態
を作ることである。特に東京・大阪などは交通機関もあり、商業施
設も充実しているし、医療機関も十分であり、来てもらうには最適
なようである。経済特区で英語での日常会話をできるような環境を
整えることが必要なのであろう。

IT企業は、インド系の人が多く、米国とインドの中間にある日本
が最適であり、それに加えて、日本は自由な経済活動も保証されて
いるので、一番居心地が良いはずである。

米国は反グローバルに向かい、日本はグローバル化と逆位相にある
ことで、日本に多くの外国人雇用ができることが重要なのである。

その雇用に、多くの移民が押し寄せてきて、日本全体の需要規模を
増やすことである。需要不足の日本はグローバル化で、需要を作る
必要があり、日米は共同市場化して、お互いに利害を調節すること
である。

さあ、どうなりますか?


参考資料:
米国における保護主義とポピュリズム
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/290203.htm

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2つの「トランプ研究」 アベノミクスの行方を左右 
2017/2/3 6:30日本経済新聞 電子版
 安倍政権が2つの「トランプ研究」を進めている。一つは「トラ
ンプ景気」で、米国経済の好調がいつまで続くかが関心事だ。もう
一つは「トランプ現象」。米大統領選や英国の欧州連合(EU)離
脱でみられた「置き去りにされた中間層」の反乱が日本でも起こる
のかを探る。いずれもアベノミクスの行方を読み解く材料になる。
■菅官房長官が主導
 トランプ研究は官房長官の菅義偉が主導し、関係省庁が調査を始
めた。まずトランプ景気について菅は「レーガン大統領登場時と似
ているという人が多い。当時の好況は4年ほど続いており、今回も
それなりに続くのではないか」と話す。
 1981年就任のレーガンは大型減税や高金利政策で世界経済をけん
引したが、過度なドル高で双子の赤字を膨らませ、85年のプラザ合
意でドル高を修正した。米経済はトランプ政権の経済政策への期待
から底堅く、当面は円安・ドル高傾向が続くとの見方が多い。ただ
円安へのトランプの不満は根強く、ドル高修正への懸念は残る。
 首相の安倍晋三が自民党総裁3選を果たせば任期は残り4年7カ
月。プラザ合意による急激な円高は日本経済にバブルとその崩壊を
もたらした。トランプ景気がいつまで続き、ドル高の修正がいつ起
こるかはアベノミクスの行方を左右する。
 昨年の円高株安局面で、安倍は菅に「為替をしっかりみてほしい
」と指示した。菅は円相場は投機筋に揺さぶられてきたとし、政府
が強い意思を示せば「彼らは怖くて仕掛けられない」とみる。政治
が為替に口を出すのは前時代的とされるが、グローバル化に逆行す
る自国利益第一主義の広がりで「為替は重要な危機管理の対象にな
った」との認識だ。
■日本の中間層への強い配慮
 一方のトランプ現象。「米国で起きたことは日本でも起こるとい
う人もいれば、保守的な日本はそこまではいかないという声もある
」(菅)と見方は定まっていない。ただ安倍政権は既存政治への不
満からトランプ現象を生んだ中間層への配慮に気を配る。最も熱心
なのが安倍自身だ。
 非正規労働者の給与を正社員に近づける同一労働同一賃金の指針
をまとめた昨年12月の働き方改革実現会議。終了間際、安倍は「私
から一言」と予定にない発言を求めた。
 「非正規の方はボーナスでのけ者にされているという感覚を持ち
、同一賃金を取り入れた会社は非正規の働く意欲が増したという。
私はこの議論で確信した。労働者も使用者も利益が得られる形を作
ることができる」
 安倍の中間層への強い関心は、社会分断の芽を摘むため、労働者
階級の社会保障を重視した英首相のチャーチルや祖父の元首相、岸
信介の国家観が底流にある。
 岸は個人の創意と自由を基本としつつ、経済や企業活動に一定の
制約を設ける「計画的な自主経済」を提唱、満州国や戦時下の統制
経済で実践した。第1次大戦後、列強が保護主義的な自国利益第一
の傾向を強める中「現実の政治的な必要からこれを用いた」(岸信
介証言録)としている。
 再び自国第一主義が広がる中、安倍は「企業の収益を国民が分か
ち合えば国の一体感は強まる」という信念を強めているようにみえ
る。企業が期待する為替安定に強い意思を示すアメと、賃上げなど
のムチで企業活動への関与を強めているからだ。当初「親ビジネス
」に映ったアベノミクスだが、トランプ政権発足後の国際情勢は安
倍政権に企業活動への関与を一段と促す可能性がある。
=敬称略
(政治部次長 斉藤徹弥)
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2017年 02月 3日 15:43 JST 
インタビュー:日本の金融緩和継続、問題視する素地生まれている
=福田東大教授
[東京 3日 ロイター] - 東京大学大学院の福田慎一教授は、ロ
イターとのインタビューで、トランプ米大統領による円安批判に関
連し、主要国全てが金融緩和していた状況から、米国が出口政策に
入ったことで、日銀の金融緩和継続への視線が以前に比べて厳しく
なる素地が生まれていると指摘した。円安に支えられてきた日本経
済にとって、日銀の緩和拡大は難しくなっているとの見方を示した。
財政政策に関しては、米プリンストン大学のクリストファー・シム
ズ教授による「物価水準の財政理論」(FTPL)を安倍晋三政権
が採用することは、非現実だとの見方を示した。
将来の増税を想定させずに財政赤字を拡大し適度なインフレを起こ
すことは、現実には難しく、基礎的財政収支(PB)の黒字化目標
も堅持すべきだとした。
インタビューの詳細は、以下の通り。
──トランプ米大統領の言動も踏まえて、金融政策の今後の展望は
どうか。
「これまでは主要国全てが金融緩和を続けていたため、近隣窮乏化
のような議論は出てこなかった。だが、米国が出口を迎えて利上げ
していく中で、特定の国だけが緩和を続けることの問題が議論にな
る素地が生まれつつある。トランプ氏の言い方は過激ではあるが、
理屈上は一方の国だけが緩和を止めれば、アンバランスが発生する
ということはあり得る。これに対して日本がどうやって理解を求め
ていくのか、議論が必要になってくる」
「日銀がこれ以上、緩和を拡大することも難しくなるだろう。政府
も日銀も否定しているが、円安がそれなりに日本経済に恩恵をもた
らしたことは事実。それが為替操作かどうかは解釈の問題だが、為
替を通じて日本経済がそれなりに支えられていることは事実だ」
「物価目標2%は、何のために設定したのかと問い直すことは必要
。日本経済が長きにわたる停滞状況から脱却すればいいということ
が目的であり、潜在成長率を大きく超える2%にこだわるべきでは
ないと思う」
──シムズ教授の理論では、財政赤字を拡大すると同時にインフレ
期待を醸成させ、政府債務の一部をインフレで相殺しようというよ
うに聞こえるが、どこがポイントなのか。
「財政をいかにバランスさせるのかという目的において、伝統的な
経済学では、財政赤字が拡大した場合には将来の増税や歳出削減に
より返済するという考え方だ。それに対しシムズ教授の理論は、全
く異なるメカニズムであり、前提としているのは将来の増税あるい
は財政削減をしない場合、何が起こるのかということを示すものだ」
「実際、発展途上国での実例があるが、政府が赤字を返済する手立
ても返済する気もないことを人々が認識し始めるとさまざまな現象
が起こる。インフレはその一形態であり、国債価格の下落や利子の
暴騰、あるいは外貨建ての債務があれば通貨の暴落などの現象が起
こりうる」
「そのような現象は通常、財政破綻国や、政府への信頼感のない国
で起こり得るとされる。だが、シムズ教授は、それが平常の国でも
起こすことが可能であるというのが1つのポイントだ。財政赤字を
増税でない別の形で解消できると国民に信じさせることができれば
、ある程度のインフレ状況を作り出せるということがポイントだ」
──安倍政権は財政拡大方向に傾く兆しも見えるが、シムズ理論を
採用する可能性はあるとみているのか。
「将来の増税があると思い込まれたら、インフレは起こらない。し
かし、財政赤字を野放しにしてしまえば、ハイパーインフレに陥る
こともある。政府への信頼を残しながらインフレを適度に抑制する
には、微妙な舵取りが必要であり、現実には難しい」
「金融政策のように人々の期待を細かくマネージできるような政策
ではないため、実験室でやるならまだしも、一国の政府が試しに実
施するような性質のものではないと思われる」
「最近は、クルーグマン氏やサマーズ氏なども深刻なGDPギャッ
プを埋める必要があると主張しており、日本の場合も財政拡大の可
能性はある。だが(将来の増税を想像させずに適度なインフレを起
こすというような)シムズ理論の採用を決断をすることは難しい思
われる」
──PBの2020年度の黒字化目標を外すことについて。
「私は反対だ。財政赤字はかなり深刻だ。日本ではGDPギャップ
はまだ残っており、需要不足を補う必要がある。金融政策の限界が
ある中で、マクロ政策で補うというのが伝統的な政策であるとはい
え、日本の場合、社会保障費がこれからむしろ大変になることもあ
り、財政赤字解消のめども立っていない。財政危機の認識は持たな
ければいけない」
(中川泉 伊藤純夫 編集:田巻一彦)



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