5850.トランプ政権のアメリカ第一主義とは



トランプ大統領のツイッター砲が火を噴いているが、それにより、
何を目指しているのか徐々に明らかになり始めている。前回に続き
、トランプ政権が目指している目標を明確化して、その政策を予想
し日本が取りえる対抗策を検討しよう。     津田より

0.アメリカ・ファーストの意味は何か?
米国の中心にいる白人中産階級の再建を雇用を取り戻すことで実現
することである。その方法が保護主義。もう1つが、米国の世界覇
権を再構築することである。目的は2つであることを肝に銘じる必
要がある。

今までのアメリカは、普遍的価値や多様性重視で、人権重視やマイ
ノリティが優遇されてきたが、その分、白人中産階級の富が失われ、
かつ軍事力の劣化が起きたので、再度、白人中産階級の富を復活す
ることと軍事力の再構築をすることであり、その分、人権重視やマ
イノリティの優遇には気を使わないことになる。

ということで、白人中産階級の構築には、前回述べたとおり、付加
価値の高い製造業の雇用が必要になる。この付加価値のある一番の
製造業は、自動車や機械産業で、これの強い国は日本とドイツにな
る。ここから高付加価値製造業を奪い返すことが必要になっている。

米国は現在強いIT、AIなどの分野と自動車、機械を組み合わせて、
新製品を作り、優位な位置にすることが復活につながると見ている
のだ。

もう1つが、米国の覇権を脅かす軍事力を持ち、貿易赤字が大きい
のは、中国であり、経済力があるので軍事力が大きくなっている。
このため、経済力を衰退させることが必要と、ナバロ・国家通商会
議議長はいう。

よって、日本と中国、ドイツが米国の当面の敵になる。というよう
に、日本も敵になっていると思ったほうが良い。

メキシコが米国の敵のように思われているが、大間違いで、その裏
には、日本やドイツ企業の工場があるだけで、メキシコには技術が
ない。このため、メキシコより工場を米国に作るメリットが大きけ
れば、米国につくることになる。このため、法人税減税と投資優遇
をおこなうという。

このため、NAFTAの交渉で、原産地規定の見直しをメキシコと米国で
合意できることになる。メキシコの日本とドイツ企業工場の製品に
は日本やドイツ製造の部品が多いので、関税をかける方向のようで
ある。というように、敵は日本とドイツなのである。

日本とドイツは自国生産の方がサプライチェーンの質が良いので、
米国より自国での生産になりやすい。その製品やキー部品を米国に
輸出して貿易黒字を出し、そして、米国企業の製品はその製品に負
けている。

1.奪い返す方法
米国の覇権を維持する上で、ドル基軸通貨制度は維持したい。よっ
て、自由貿易制度を逸脱しないように、保護主義ではあるが、貿易
交渉で何とか相手をねじ伏せたいようである。

ここで、目をつけたのは、ドル安にして米国製品が価格上優位にす
ることである。自国市場を保護主義で守っても、ドル高では輸出が
できないと雇用数は増やせない。ドル安ということは円高にするこ
とであり、ユーロ高にすることである。

まず、トランプ大統領は20%の国境税を提案したが、これはWT
O違反であり、共和党議会は国境調整という税制制度でトランプ大
統領の国境税を代えるようだ。まずは、米国輸入品には税制控除が
なくなり、輸出には相手国消費税分の税制控除が可能になるという
税制であり、これは明確なWTO違反ではないが、WTOの精神に
は反している。

この国境税を逃れるためには、2国間FTAを結ぶ必要になり、そ
の協定には、通貨安誘導禁止の条項があるという。

もう1つ、日本にもドイツにも大きな欠点がある。それは米国に安
全保障の大きな部分を依存していることである。核兵器だけなら良
いが、通常戦争まで依存していることが問題になっている。この安
全保障カードも米国が持っている。

2.日本とドイツの通貨安実現方法と米国の対策
通貨安の方法として、ドイツはユーロ圏という途上国を巻き込んだ
通貨にして、ポンドより大分通貨価値の低い通貨で通貨安を実現し
ている。

日本は、日銀の金融政策で、国債買い取りで国債の金利を抑えて、
米国との金利差により円安を実現している。

このような通貨安を止めることを米国は考える。一番良いのが固定
相場に戻すことである。ドルリンク制度を日本やドイツに要求する
と見ているが、すぐには実現しないので、ドイツに対しては、EU
崩壊で、ユーロ圏を潰し、ドイツやベネリックス諸国など先進国だ
けの通貨にして、通貨の価値を上げる方法である。

このため、トランプ政権は、フランスのルペン女史を応援して、
EU崩壊を仕掛け、英国にもEU離脱をさせることになる。ロシア
と組み、ドイツを圧迫して安全保障カードを高くすることもする。

日本に対しては、日銀の金利政策を止めさせる可能性もあり、金利
の急上昇も起こり得ることになるので、いやならドル完全リンクに
すると脅す。日銀とFRBが通貨を相互融通して、ドル・円為替を
完全に押さえ込む。1ドル=105円になれば日本は了解するしか
ない。もし、1ドル=100円以下であれば、問題が出てくるので
了承できないかもしれない。

こうなると、日本は安心して過激な金融政策を実現できるために、
ヘリマネをしてもハイパーインフレにもならないことになる。日本
にとっても、非常に良いことになる。ということは、日米共同国家
になったようなものである。よって、日本の安全保障も確約すると
いう。

これにより、ドル基軸通貨制度も強化できる。

3.中国対応
中国の軽産業を米国に戻しても、雇用が増えるが賃金は増えないの
で、白人中産階級の雇用を生まないので、中国の産業を米国が取り
込むことはない。あくまでも中国の経済力を奪うことに目的がある
。軍事力増強は、経済力があることで実現しているので、早く経済
力を奪うことである。膨大な貿易赤字を解消して、かつ製品価格は
安い他国製品に代替させることである。

このために、中国製品に、反ダンピング課税、反補助金課税で対応
することになる。WTOでも認められている。

同時に、米国軍事力を増強して、中国との戦争でも勝てることが重
要であり、日本にも軍事力の一層の増強をさせて、米国製兵器を買
ってもらい、日米共同戦線を増強して、それを実現させることであ
る。

日本が兵器を買うことで米国兵器産業も拡大したいということのよ
うである。

この部分は、ナバロ議長とマティス国防長官の任務であり、中国を
どう押さえ込むか、もう少し見ると分かる。

あまり、対中国にはトランプ大統領は関与しないかもしれない。ト
ランプ大統領の大きな関心は、国内産業の復活や国内治安の確立で
あり、外交問題には深入りしない。ティラーソン、マティス、ナバ
ロ氏に任せるように見る。

4.日本は、どう対応するか?
米国経済は、当面力強く上昇していく。日本企業も米国に工場を作
り、製品を米国から世界に供給することである。

同時に、日本は自由貿易を推進して、TPPも米国抜きで進めるべ
きである。ドイツと日本は、自由貿易で利益を得ているので、努力
をすることである。

中国に対しては、米国輸出分が日本に回り低価格で輸出ドライブを
掛けてくるので、反ダンピング課税などで止めるしかないと思う。

さあ、どうなりますか?


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米、通商協定に「為替操作防止」
トランプ大統領、不公平なら破棄
2017/1/27 09:50
 【ワシントン共同】トランプ米大統領は26日、TPPの代替と位置付
ける新たな2国間の通商協定に「TPPにはなかった極めて厳しい為替
操作防止の規定を入れる」と述べた。輸出増を目的とする貿易相手
国の通貨切り下げを断固阻止する決意を示した。「米国が公平に扱
われないなら協定を破棄する」とも述べ、交渉には強硬姿勢で臨む
考えも示した。
 東部フィラデルフィアでの演説で言及した。
 トランプ氏は日本で米国車の売れ行きが悪いことを「不公平」と
し、日本に是正を迫る考えも示している。安倍政権が協議に応じれ
ば、米国の要求を受け入れるかどうか、難しい判断を迫られそうだ。
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2017年 01月 26日 13:53 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:トランプ氏の「国境税」と「国境調整」の違いは
Gina Chon
[ワシントン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米
新大統領が海外移転企業からの輸入に「国境税」を課す方針を示し
ているのに対し、議会共和党は法人税の「国境調整」という、より
複雑な措置を提案している。両者の違いと、これらの税制改革によ
る勝ち組と負け組を検証した。
●トランプ氏の提案とは
トランプ氏は、メキシコなど諸外国で製品を製造する企業を批判し
、米国に輸出する製品に最大35%の関税を課すと脅している。こ
れとは別に、標準的な法人税率を現在の35%から15%に引き下
げるとも述べている。
●下院共和党案との違い
トランプ案の主な標的は、国内で製造していない米企業だが、対象
をどこまで広げるかは明確でない。これに対し、ライアン下院議長
(共和党)を筆頭とする議員らは、より幅広い税制改革に国境調整
を盛り込みたい意向。標準的な法人税率の20%への引き下げと、
企業が利益を出した場所で課税する制度への移行も提案している。
提案では、米国で使用、あるいは販売する輸入部品や最終財を税控
除の対象から外す一方、輸出で得た収入は課税対象の所得から除外
する。企業が節税のため、異なる法域間で製品を移動させたり、本
社を海外に移転するインセンティブ(誘因)を減らすのが狙いだ。
現在、米企業が外国で稼いだ利益は国内で課税される(多くの場合
、海外でも課税される)が、米国に利益を還流させなければ課税さ
れない。輸出による収入と輸入コストはいずれも、米国での納税義
務に算入されている。
トランプ氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の
インタビューで国境調整は複雑すぎるとの考えを示したが、その後
、議会共和党議員らと協議すると述べた。
●本当にそれほど複雑なのか
ある意味では確かに複雑だ。企業は減税によるメリットと輸入品の
税控除廃止によるコストを天秤にかけ、課税対策を見直す必要が生
じる。国境調整が世界貿易機関(WTO)の規則に抵触するか否か
を巡っても議論がある。WTOは付加価値税(VAT)のような間
接税について国境調整を認めているが、さまざまな輸出補助金と同
じく、所得税のような直接税の国境調整は禁じられる可能性がある。
定義上、国境調整税はVATとは認められない。賃金に関する経費
が税控除の対象ではないからだ。米国の税制では、国内製品にはこ
の税控除が適用されるため、企業はこの点も考慮して対策を練る必
要が生じる。
●勝ち組と負け組
トランプ氏と共和党議員は共に、国内の製造業を支援したいと述べ
ている。トランプ氏の単刀直入な方法は、ほぼ確実にWTOの規則
に抵触するだけでなく、貿易の流れを大幅に損ないかねない。他国
が報復関税を掛ければなおさらだ。
国境調整なら、二重課税を撤廃することによって米国内で製造する
企業に平等な競争環境が提供できるというのが、この方式の提唱者
の言い分だ。輸出についてVATを免除する一方で輸入に課税して
いる国は他にも数多くある。トランプ案に比べて報復措置を招くリ
スクも小さい。
しかし、各社にとっての便益とコストは五分五分ではない。輸入し
た衣料品や電子製品などを売る小売業者は、国境調整によりコスト
が増えると主張している。確かに、企業によっては実質的に利益よ
り売上高に近い部分に課税する形になるため、法人税率の引き下げ
による恩恵をコストが上回りそうだ。輸入部品に頼る自動車などの
産業も悪影響を受ける可能性がある。石油輸入にも税が適用される
ため、ガソリン価格も上がりそうだ。
半面、米航空機大手ボーイング(BA.N)など輸出規模の大きい企業は
恩恵の方が大きくなるだろう。純粋に国内で事業展開している米企
業は、法人税率の引き下げによって素直に恩恵を受ける。
●共和党は財政支出を懸念
共和党議員による国境調整案の核心には、財政問題がある。法人税
率を引き下げれば税収は減る。ライアン議長のような財政保守派は
、他の財源を確保せずに減税するのを嫌がっている。タックス・フ
ァウンデーションによると、国境調整は今後10年間で1兆ドル以
上の連邦税収を生み、財政赤字の縮小に寄与しそうだ。
これに対し、トランプ氏が提案する国境税による新たな税収は推計
が難しい。貿易そのものが縮小する恐れがあるからだ。ただ、トラ
ンプ氏が「米国第一」主義を強調しているため、共和党議員らもこ
れまでほど声高に財政赤字の危険性を語ろうとしなくなるだろう。
●他に案はあるか
ホワイトハウスと議会が意見の一致を見ない場合でも、ライアン議
長らは代替的な財源探しをあきらめないかもしれない。英国で試み
られた銀行業に対する課税が一つの選択肢。
いずれにせよ、トランプ氏が一方的に国境税を課すのは難しく、議
会の合意が必要になる。国境調整の例から分かる通り、トランプ氏
が望むような単純な解決策はなさそうだ。



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