5845.トランプ大統領の目的を達する経済政策は?



トランプ氏が言う「アメリカ・ファースト」での目的は、米国の中
産階級の復活である。下流階層の仕事は今でも人手不足であり、い
くら増やしても中産階級ができない。労働賃金が高い、言い換える
と高付加価値な仕事を増やすことである。そのための政策を米国指
導者になったつもりで考えてみよう。   津田より

0.今の問題点
現在、米国では、製造業の仕事がなくなり、代わってサービス産業
の仕事が増えている。このため、米国は景気が良くなったと言うが
、サービス産業の賃金は低く、元中産階級の人たちは、就職活動さ
え諦めている。このことで労働参加率が低いことになっている。

この元製造業労働者が、トランプ氏を大統領にしたので、この人た
ちの仕事を増やして、アメリカの復活を成り遂げるのがトランプ氏
の仕事・目的である。これを就任演説でも強調している。

もし、できれば歴史に名を残すことになる。名として良いか悪いか
は分からないが、実現できたらすごいことである。今までの政治家
ではできなかったことは間違いない。

そして、米国元中流階級の人たちから絶大な支持を寄せられること
になる。そのような政策があるのかどうかだ。これをトラン大統領
になったつもりで考えていこう。

1.現状の経済状況
2008年のリーマンショックで、金融機能が麻痺して、世界的な
経済的危機が来た。このため、政府は当初、財政出動をしたが、許
容限度を超える財政赤字で、その赤字幅を縮小させるために、中央
銀行は金融緩和でゼロ金利にするが、それでも足りずに通貨量を増
やす量的緩和を行う。EUは、それでも足りずにマイナス金利にも
踏み出した。

しかし、サマーズ氏が指摘したように米国を含む先進国は長期停滞
現象が続いている。この原因は中央銀行が銀行に大量の資金を送り
込む金融対策では、民間の需要を作れないことである。現在の経済
学は、社会に需要が常にあると仮定した学問であり、需要がない状
態を理論化していないことで、学問的に対処処置を提示していない。

このため、需要不足状態が続き、製造会社は製品価格を下げる競争
をして自社の製品が他社より多く売れることを目指すことになる。
イノベーションが起こらずに、製品の性能は各社、ほとんど同じで
、価格競争になっているからである。そして、この競争はゼロサム
ゲームであり、よって熾烈になる。

このため、コスト削減競争になり、コストの中でも大きな比重を占
める労務費の削減をし始めた。この労務費を下げるために、労務費
が安い新興国に工場を移したことで、先進国の製造業労働者が首に
なり、新興国の労働者が増えたのである。

多くの工場労働者を首にしたことで、先進国の元労働者たちが騒ぎ
始め、トランプ氏が当選し英国のEU離脱が起きたのだ。

もう1つ、先進国の工場労働者はクビになったが、企業はコストが
下がったことで、利益が増えて企業自体の利益は上がり、株価は上
がり、経営者に多額の報酬を払えることになり、資本家や経営者は
潤い、労働者はクビというように貧富の差が大きくなってしまった
のである。このことが政治的な混乱を招いた理由である。

2.工場を戻せば、それで良いのか?
工場労働でもアセンブリから部品など工場も階層構造になっている。
一番、付加価値の大きいのが製品開発と販売で、この2つだけを米
国企業は行い、製造部門は新興国や発展途上国にしたのである。

この製造部門を米国に強制的に持ってくると、製品価格は上がり、
新興国で製造した製品との競争に負けることになる。

もし、関税を上げて、新興国の同じ製品が米国産製品と競争できな
い状態にすると、米国国内では米国産製品は売れるが、海外での競
争には負けることになる。このため、輸出補助金を出すなどの処置
が必要になる。

関税と輸出補助金はWTO違反になるので、法人税体系の変更とい
う関税調整という名目にすると共和党議会は言っているが同じこと
である。

しかし、税収は減税で減り、インフラ投資で支出が増えるので、輸
出補助金が多くなると財政が持たない。

もう1つ、工場を米国に戻しても機械化やIT化で、工場労働者が
少数しかいらない。特に最先端分野の機械化は付加価値が高いので
コスト的にペイする。しかし、工場労働者を増やす目的なので、こ
の工場を増やしても目的を達しない。

よって、ロボット化が出来ない単純労働のアパレルの服装・カバン
・靴・装飾品製造、部品製造など複雑な工程で指先を使う機械化が
コスト的にできない工場で、中国・東南アジア、中南米の工場を米
国に戻し、白人が最低賃金の時給$8で取って代わることになる。

もう1つ、相手も米国製品に関税をかけるので、米国が得意とする
最先端分野の製品が売れなくなる。

中国は貿易戦争になったら、米国企業の中国での活動を止めると宣
言している。中国市場は10億人と巨大であり、その市場へのアク
セスもできなくなると、米国企業にとってはチャンスがなくなる。

このため、単純に工場を戻せば、米国の景気は上昇することもない。
トランプラリーというような株価上昇もなくなる。しかし、トラン
プ政権の経済閣僚中核には投資銀行のトップが着いている。この人
たちは米国株価の上昇を目指しているので、単純な工場の米国戻し
はしないと見ている。

3.米国の真の狙い
米国の雇用を取り戻した政権としては、クリントン政権がある。こ
の時の国家経済会議の議長が、ローラ・タイソン女史であり、その
当時最先端のインターネットなどの電子分野を米国が独占できるよ
うに、日本に独自OSの開発を止めさせて、米国がOSを独り占め
した。

これと同じようなNEC議長にナバロ氏がなったが、タイソン女史と同
じことを目指すはずである。

要するに、米国が最先端分野を独占して、その分野の製造業を米国
が持つことである。マスク・イーロン氏とトランプ氏が会談したが
、EVや宇宙などのイノベーションを通じて新しい産業を起こし、
その製造業を米国が占めることが米国の再生に必要なことのように
思う。イーロンCEOは、パナソニックと一緒にリチウムイオン電
池工場も米国に立てたように、主要部品も米国生産にこだわる。こ
れが一番、米国製造業再生の道であると思う。

このため、米国が狙う分野とは、AI、自動運転、宇宙、医療薬品
などでしょうね。

しかし、日米通商摩擦では、日本の競争条件が不公平であることと
、貿易赤字が問題視されて、多くの分野で自主規制をさせられた。
特に最先端分野が狙われたが、今回もそうなるはずだ。

米国が目指すのは、この最先端分野商品を貿易赤字が大きな中国な
どに、無関税で送り込み貿易を均衡にすることである。これは日本
とて同じことになる。しかし、日本が強い素材などの分野では米国
は、パナソニックのように日本企業に米国での生産を呼びかけるの
で、日本企業はビジネス・チャンスに結びつく可能性もある。

その交渉過程では、米国と中国は貿易戦争一歩手前、もしくは貿易
戦争になり、トランプ政権が安全保障も取引材料にしたら、本当の
戦争一歩手前まで行くと思う。交渉からいち早く、米中FTAがで
きる可能性も高い。

4.日米FTAについて
米国貿易担当者からは、日本も同様に狙われていると思われる。そ
れは、対日貿易赤字も大きいためである。日本は何を譲り、何を取
るか検討する必要になる。ここでも覚悟する必要がある。

まずはエネルギーの輸入を促進することである。それと農産物の輸
入関税をゼロ化や削減することになる。自動車や自動車部品などの
輸出が問題視されるが、これは自動運転車など最先端分野に直結し
ているからである。

自動車のアセンブルは米国で行い、多くの部品も米国で作るしかな
いが、キー部品だけは日本からの輸出ができるように関税をゼロ化
してもらうことである。機械も同様である。

日本は農業分野を捨てて、製造分野を取るしかない。農業分野は、
農協改革や流通改革をして、農家など生産者と消費者を直結して、
仲買を減らす努力が必要になる。仲買がなくなると、その分新鮮度
が増すことにもなる。日本で流通革命を成功させて、食の革命を起
こすことが必要になっている。

農産物を安くすると、今後日本の衰退で多くなる低所得者でも健康
に生きていくことができるようになる。

このため、日本の将来にも必要なことである。一方、日本の農産物
は高値で外国に売ることである。

さあ、どうなりますか?

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トランプ大統領就任演説 日本語訳全文
1月21日 6時12分NHK
アメリカの第45代大統領にドナルド・トランプ氏が就任しました。
以下はトランプ新大統領の就任演説の日本語訳全文です。

ロバーツ最高裁判所長官、カーター元大統領、クリントン元大統領
、ブッシュ元大統領、オバマ大統領、そしてアメリカ国民の皆さん
、世界の皆さん、ありがとう。私たちアメリカ国民はきょう、アメ
リカを再建し、国民のための約束を守るための、国家的な努力に加
わりました。私たちはともに、アメリカと世界が今後数年間進む道
を決めます。私たちは課題や困難に直面するでしょう。しかし、私
たちはやり遂げます。私たちは4年ごとに、秩序だち、平和的な政
権移行のために集結します。私たちは政権移行中の、オバマ大統領
、そしてファーストレディーのミシェル夫人からの寛大な支援に感
謝します。彼らは本当にすばらしかったです。

しかし、きょうの就任式はとても特別な意味を持ちます。なぜなら
、きょう、私たちは単に、1つの政権から次の政権に、あるいは、
1つの政党から別の政党に移行するだけでなく、権限を首都ワシン
トンの政治からアメリカ国民に返すからです。

あまりにも長い間、ワシントンの小さなグループが政府の恩恵にあ
ずかる一方で、アメリカ国民が代償を払ってきました。ワシントン
は栄えてきましたが、人々はその富を共有していません。政治家は
繁栄してきましたが、仕事はなくなり、工場は閉鎖されてきました。
既存の勢力は自分たちを守ってきましたが、国民のことは守ってき
ませんでした。彼らの勝利は皆さんの勝利ではありませんでした。

彼らが首都で祝っている一方で、闘っている国中の家族たちを祝う
ことはほとんどありませんでした。すべてが変わります。いま、こ
こから始まります。なぜなら、この瞬間は皆さんの瞬間だからです
。皆さんのものだからです。ここに集まっている皆さんの、そして
、アメリカ国内で演説を見ている皆さんのものだからです。きょう
という日は、皆さんの日です。皆さんへのお祝いです。そして、こ
のアメリカ合衆国は、皆さんの国なのです。本当に大切なことは、
どちらの政党が政権を握るかではなく、私たちの政府が国民によっ
て統治されているかどうかということなのです。

2017年1月20日は、国民が再び国の統治者になった日として
記憶されるでしょう。忘れられていた国民は、もう忘れられること
はありません。皆があなたたちの声を聞いています。世界がこれま
で見たことのない歴史的な運動の一部を担う、数百万もの瞬間に出
会うでしょう。この運動の中心には、重要な信念があります。それ
は、国は国民のために奉仕するというものです。アメリカ国民は、
子どもたちのためにすばらしい学校を、家族のために安全な地域を
、そして自分たちのためによい仕事を望んでいます。これらは、高
潔な皆さんが持つ、当然の要求です。しかし、あまりにも多くの国
民が、違う現実に直面しています。母親と子どもたちは貧困にあえ
ぎ、国中に、さびついた工場が墓石のように散らばっています。教
育は金がかかり、若く輝かしい生徒たちは知識を得られていません
。そして犯罪やギャング、薬物があまりに多くの命を奪い、可能性
を奪っています。このアメリカの殺りくは、いま、ここで、終わり
ます。私たちは1つの国であり、彼らの苦痛は私たちの苦痛です。
彼らの夢は私たちの夢です。そして、彼らの成功は私たちの成功で
す。私たちは、1つの心、1つの故郷、そしてひとつの輝かしい運
命を共有しています。

きょうの私の宣誓は、すべてのアメリカ国民に対する忠誠の宣誓で
す。何十年もの間、私たちは、アメリカの産業を犠牲にして、外国
の産業を豊かにしてきました。ほかの国の軍隊を支援する一方で、
非常に悲しいことに、われわれの軍を犠牲にしました。ほかの国の
国境を守る一方で、自分たちの国境を守ることを拒んできました。
そして、何兆ドルも海外で使う一方で、アメリカの産業は荒廃し衰
退してきました。私たちが他の国を豊かにする一方で、われわれの
国の富と強さ、そして自信は地平線のかなたに消えていきました。
取り残される何百万人ものアメリカの労働者のことを考えもせず、
1つまた1つと、工場は閉鎖し、この国をあとにしていきました。
中間層の富は、彼らの家庭から奪われ、世界中で再分配されてきま
した。しかし、それは過去のことです。いま、私たちは未来だけに
目を向けています。きょうここに集まった私たちは、新たな命令を
発します。すべての都市、すべての外国の首都、そして権力が集ま
るすべての場所で、知られることになるでしょう。この日以降、新
たなビジョンがわれわれの国を統治するでしょう。

この瞬間から、アメリカ第一となります。貿易、税、移民、外交問
題に関するすべての決断は、アメリカの労働者とアメリカの家族を
利するために下されます。ほかの国々が、われわれの製品を作り、
われわれの企業を奪い取り、われわれの雇用を破壊するという略奪
から、われわれの国を守らなければなりません。わたしは全力で皆
さんのために戦います。何があっても皆さんを失望させません。ア
メリカは再び勝ち始めるでしょう、かつて無いほど勝つでしょう。
私たちは雇用を取り戻します。私たちは国境を取り戻します。私た
ちは富を取り戻します。そして、私たちの夢を取り戻します。

私たちは、新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、そして鉄道
を、このすばらしい国の至る所につくるでしょう。私たちは、人々
を生活保護から切り離し、再び仕事につかせるでしょう。アメリカ
人の手によって、アメリカの労働者によって、われわれの国を再建
します。私たちは2つの簡単なルールを守ります。アメリカのもの
を買い、アメリカ人を雇用します。私たちは、世界の国々に、友情
と親善を求めるでしょう。しかし、そうしながらも、すべての国々
に、自分たちの利益を最優先にする権利があることを理解していま
す。私たちは、自分の生き方を他の人たちに押しつけるのではなく
、自分たちの生き方が輝くことによって、他の人たちの手本となる
ようにします。

私たちは古い同盟関係を強化し、新たな同盟を作ります。そして、
文明社会を結束させ、イスラム過激主義を地球から完全に根絶しま
す。私たちの政治の根本にあるのは、アメリカに対する完全な忠誠
心です。そして、国への忠誠心を通して、私たちはお互いに対する
誠実さを再発見することになります。もし愛国心に心を開けば、偏
見が生まれる余地はありません。聖書は「神の民が団結して生きて
いることができたら、どれほどすばらしいことでしょうか」と私た
ちに伝えています。私たちは心を開いて語り合い、意見が合わない
ことについては率直に議論をし、しかし、常に団結することを追い
求めなければなりません。アメリカが団結すれば、誰も、アメリカ
が前に進むことを止めることはできないでしょう。そこにおそれが
あってはなりません。私たちは守られ、そして守られ続けます。私
たちは、すばらしい軍隊、そして、法の執行機関で働くすばらしい
男性、女性に、守られています。そして最も大切なことですが、私
たちは神によって守られています。

最後に、私たちは大きく考え、大きな夢を見るべきです。アメリカ
の人々は、努力をしているからこそ、国が存在し続けていけるとい
うことを理解しています。私たちは、話すだけで常に不満を述べ、
行動を起こさず、問題に対応しようとしない政治家を受け入れる余
地はありません。空虚な話をする時間は終わりました。行動を起こ
すときが来たのです。できないことを話すのはもうやめましょう。
アメリカの心、闘争心、魂を打ち負かすような課題は、存在しませ
ん。私たちが失敗することはありません。私たちは再び栄え、繁栄
するでしょう。私たちはこの新世紀のはじめに、宇宙の謎を解き明
かし、地球を病から解放し、明日のエネルギーや産業、そして技術
を、利用しようとしています。新しい国の誇りは私たちの魂を呼び
覚まし、新しい視野を与え、分断を癒やすことになるでしょう。私
たちの兵士が決して忘れなかった、古くからの知恵を思い起こすと
きです。それは私たちが黒い肌であろうと、褐色の肌であろうと、
白い肌であろうと、私たちは同じ愛国者の赤い血を流し、偉大な自
由を享受し、そして、偉大なアメリカ国旗をたたえるということで
す。そしてデトロイトの郊外で生まれた子どもたちも、風に吹きさ
らされたネブラスカで生まれた子どもたちも、同じ夜空を見て、同
じ夢で心を満たし、同じ全知全能の創造者によって命を与えられて
います。だからこそアメリカ人の皆さん、近い街にいる人も、遠い
街にいる人も、小さな村にいる人も、大きな村にいる人も、山から
山へ、海から海へと、この言葉を伝えます。あなたたちは二度と無
視されることはありません。あなたの声、希望、夢はアメリカの運
命を決定づけます。そしてあなたの勇気、善良さ、愛は私たちの歩
む道を導きます。ともに、私たちはアメリカを再び強くします。私
たちはアメリカを再び豊かにします。私たちはアメリカを再び誇り
高い国にします。私たちはアメリカを再び安全な国にします。そし
て、ともに、私たちはアメリカを再び偉大にします。ありがとうご
ざいます。神の祝福が皆様にありますように。神がアメリカを祝福
しますように。
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Masa Okumura 2017/01/22
 トランプの「米国第一主義」でアメリカに製造業、工場を取り戻す
夢はIT革命やロボット化が出来ない単純労働のアパレルの服装・
カバン・靴・装飾品製造で、中国・東南アジア、中南米の工場が米
国で白人が最低賃金の時給$8で取って代わる時代。
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日本の命運を握るトランプ政権「貿易3人組」
貿易上最大の「敵国」は日本ではないが…
ダニエル・スナイダー :スタンフォード大学APARC研究副主幹 
2017年01月21日TK
「米国がもっと日本みたいだったら…」
トランプ大統領の貿易チームには、「(過去に)日本と交渉した体
験がしみ付いている」と、レーガン政権時に貿易交渉の米国側責任
者だった、クライド・プレストウィッツ氏は話す。同氏は、トラン
プ大統領の経済戦略チームの中に、何人か親しい関係者がいる。そ
のひとり、米通商代表部(USTR)に指名されたロバート・ライトハ
イザー氏は、かつて副通商代表を務めていたとき、米国の半導体産
業を、日本との競合から守る役割を果たしたことで知られる。
「彼が副通商代表に任命されたとき、日本は米国にとって貿易問題
の中心的存在だった」とプレストウィッツ氏は振り返る。同氏もま
た、レーガン政権時、ライトハイザー氏とともに貿易交渉を担当。
「私たちは日本と交渉しながら、米国がもっと日本みたいだったら
、とつねに思っていた」。略
ライトハイザー氏は、トランプ大統領と長い付き合いがある経済ナ
ショナリスト3人組のひとりであり、彼らは貿易と製造業の重要性に
関する明確な考えを共有している。この3人組のほかのメンバーは、
カリフォルニア大学アーバイン校のエコノミストで、新設の国家通
商会議(NTC)のトップに指名されたピーター・ナヴァロ氏と、米国
の衰退した製造業を再生させて富を築いた投資家で、商務長官に指
名された元銀行家のウィルバー・ロス氏だ。
貿易チームの政策の展望は、2016年9月29日に「Scoring the Trump 
Economic Plan: Trade, Regulatory, & Energy Policy Impacts(ト
ランプ経済政策の成功法:貿易、規制、エネルギー政策の影響)」
と題した文書によって明らかにされている。ナヴァロ氏とロス氏に
よって書かれたものだが、発表された際にはほとんど注目を集める
ことはなかった。略
いずれにしても、日本はもはや「敵国リスト」のトップにはいない
。ナヴァロ氏たちの意見では、その地位にいま君臨しているのはも
っぱら中国で、不公平な貿易に関与する手段として、世界貿易機関
に加わり、その協定を利用している。ナヴァロ氏は大統領選中、こ
れによって7万以上の米国の工場が閉鎖に追い込まれた、と主張して
いた。中国は不法な輸出補助金、通貨操作、 知的財産窃盗、強制的
な技術移転、保護主義的な非関税障壁といったおなじみの対抗手段
を使っている、と。
米企業も中国に対しては懐疑的?
しかし1980年代と異なり、米国は貿易戦争の相手国に圧力をかける
手段として、安全保障同盟を利用することができない。「米国は中
国に対して影響力を持っていない」とプレストウィッツ氏は話す。
「中国はまともじゃない。日本は半分だけまともだったが」。
中国はまた、巨大な市場および製造拠点としての中国の役割に頼っ
ている外国企業の支援も得ている。ただし、アジア貿易政策に影響
力のあるネルソン・リポートの編集長、クリス・ネルソン氏による
と、アップルのような米国の多国籍企業が、米政府から中国を守る
姿勢は明らかに弱まっている。中国は不公平だとの認識や、相互依
存性が低下しているとの見方が増えており、「(米企業が)中国で
思うように稼げていないと考え始めている」。
中国に対して講じるべき最も効果的な対抗手段は、為替レートかも
しれない。これはトランプ政権の財務省が、中国は「通貨の不正操
作者」であると公言することを含んでいる。ナヴァロ氏とロス氏が
共著した先の計画では、もし中国が通貨の不正操作をやめなければ
、この手段により、「米国は防衛的で(為替操作に対する)対抗策
となる関税をかけるとができる」と書いている。
米国によるこうした「対抗策」は、より多くの国へ影響を与えるこ
とになる。「中国は貿易チームの3人組にとって、最も頭の痛い存在
だろう」とプレストウィッツ氏は話す。「しかし日本、韓国、ドイ
ツなどほかの国々との問題がないわけではない。通貨は重要な問題
だ」。同氏は、国際通貨運営の新体系を作り出す試みとして、再び
プラザ合意を行うことさえ検討されるかもしれない、と予見してい
る。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のような多角的経済連携協定に
関していえば、貿易3人組の関心は低い、というより、価値を見いだ
していない。政権移行チームに近い情報筋によると、ナヴァロ氏ら
は、TPPが、中国の台頭を妨げる手段には決してならないと考えてい
る。複数の情報筋によると、それよりは、日本などと新たに2国間の
貿易協定を交渉するほうがより現実的のようだ。
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2017/01/21 20:00fobes
トランプ新政権で最も不安が増す10か国 4位に日本
Kenneth Rapoza
ドナルド・トランプ米新大統領が新たな商務長官と新設する国家通
商会議(NTC)のトップに指名した人物を見れば、トランプが大統領
選中の約束を本気で守ろうとしていることが分かる。米国人の雇用
と、米国企業に有利な政策を実施するという約束だ。
英国の資産運用会社スタンダード・ライフ・インベストメンツのエ
コノミストは、「投資家らは、保護主義的な政策を取るという脅し
を真剣に受け止めた方がいいだろう」と指摘する。
英ファンド運用会社アシュモア・グループのリサーチ部門責任者、
ヤン・デーンによると、トランプが自国企業を守るためにこれら19
か国に関税を課せば、特に影響を受けるのは次の10か国だ。
1位: 中国
2位: メキシコ
3位: カナダ
4位: 日本
5位: ドイツ
6位: アイルランド
7位: フランス
8位: ベトナム
9位: タイ
10位: マレーシア
そして、米国は1位の中国を次の3つの方法で攻撃することができる。
・関税を課す
・為替操作国に認定
・「市場経済国」としての認定の拒否
だが、市場が投資家らの慎重な姿勢を反映している2位のメキシコと
は異なり、中国は米国に対して厳しい報復措置を取る可能性がある。
米国の新大統領が中国やメキシコとの貿易戦争に打って出ることは
ないという保証はどこにもない。ただ、アシュモアのアナリストら
は、米国がこれら各国にけんかを売ることは、競争力のない自国企
業を助けることになる一方で、各国と貿易を行い、各国内に重要な
サプライチェーンを構築している米国企業には損害を与えことにな
ると指摘する。
トランプがタカ派の反中派を長官らに指名したことを、歓迎しない
人たちもいるだろう。だが、経験豊富な貿易交渉の担当者たちは、
交渉とは巧妙な駆け引きなのだと言うだろう。つまり、最良のシナ
リオにおいてはこれらがまさに、トランプの(自伝のタイトルにも
なっている)「art of the deal(取引の技)」なのかもしれない。
前出のデーンによれば、トランプは輸入相手国に貿易戦争の脅威は
確実にあると思わせることで、互いに譲歩し合うなら決裂を避ける
用意があると言うことができる。自らにとってより有利な結果を引
き出すこともできるのだ。


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