6319.ロシアの工作潰し



戦争の規模や範囲が拡大している。ロシアの工作が成功して、全世
界を巻き込んだプレ戦争期の様相である。このロシアの工作潰しの
現状と今後を検討しよう。          津田より

0.米国と世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2023年12月15日は37,305ドルと過去最高値になり、18日は0ドル高の
37306ドル、19日は251ドル高の37,557ドルと最高値更新、20日は475
ドル安の37,082ドル、21日は322ドル高の37,404ドル、22日は18ドル
安の37,385ドル。

先週、株価は横バイでした。クリスマスシーズンで、本来なら取引
数が大幅に減る時期であるが、株高で取引数が減らない。米GDPは、
7-9月期確定値は前期比年率4.9%増加したことで、楽観ムードにな
っている。しかし、最高値更新後、高値警戒感があり、上値は重い
。しかし、F&Gインデックスは、強気の79である。

米西部コロラド州の最高裁は、24年大統領選の候補を選ぶ同州予備
選にトランプ氏が出馬する資格を剥奪する判断を下した。トランプ
氏が21年の議会襲撃事件に関与したと認定、憲法擁護を宣誓しなが
ら反乱などに関わった者の官職就任を禁じる憲法修正第14条第3項に
抵触したとしている。トランプ氏側は連邦最高裁に上訴する方針を
表明した。

しかし、米連邦最高裁は22日、トランプ氏に大統領の不起訴特権が
適用されるか否かに関する判断を当面回避した。

これを受けて、コロラド州以外でもミシガン州、オレゴン州、ニュ
ージャジー州、ウィスコンシン州、アラスカ州、アリゾナ州、ネバ
ダ州の7州で訴訟が起きている。アリゾナ州とミシガン州では訴訟が
却下されている。また、他の民主党知事の州でも訴訟が起きる可能
性がある。

もし、トランプ氏が大統領選挙に多くの州で予備選ができないと、
、共和党候補者にはニッキー・ヘイリー氏(元国連大使)が選ばれ
ることになりそうである。共和党主流派もそれを望んでいるようだ。

もし、トランプ氏、およびトランプ風候補者が共和党候補でないな
ら、2024年以降の世界情勢はあまり変わらないかもしれない。しか
し、民主国家として、国民の支持を多く受けている候補を排除して
も良いのかという議論が起こるし、米国の分裂にまで発展する可能
性も出てくると思う。どちらにしても、米国は覇権国ではなくなる。

フーシ派が、紅海からアデン湾に抜ける海峡をバブ・エル・マンデ
ブ海峡で、航行する商業船舶を攻撃するために、このルートを使わ
ずに、多くの商業船舶は、喜望峰周りの航路を選択している。これ
による運賃上昇で、EUでの物価が上昇する可能性がある。

このため、米国など10ケ国が護衛警備のために、艦船を派遣するが
法律の制限があり、日本は参加できない。これは、早く法体系を変
更しないといけない。ここで、最初に攻撃を受けたのは日本郵船の
船であり、日本も被害を受けている。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、2023年7月3日は33,753円とバブル崩壊後高
値となり、12月15日は32,970円で、18日は211円安の32,759円、19日
は、460円高の33,219円、20日は456円高の33,625円、21日は535円安
の33,140円、22日は28円高の33,169円。

先週、株価は200円ほどの上昇でした。植田総裁の金融緩和維持とい
う発言で、円高と株価下落を止めた。現時点は142円台である。

日本製鉄によるUSスチール買収が発表された。米国の産業立て直
しに日本企業を使うようであるが、米組合からのクレームが出て、
審議予定という。

日米の産業別すみ分けができると、日米は強固な同盟関係になるの
で、この買収の動向は重要である。米国産業の立て直しにもなる。

岸田政権は、ライセンス生産の軍用品をランセンス国に輸出するこ
とを許可したことで、パトリオットのPAC3を米国に輸出することに
なった。

また、BAEからのライセンス生産をしている155mm砲弾も英国に輸出
できることになった。この輸出もまもなく始まることと思う。

この2つの製品の輸出は、そのまま、米英の支援でウ軍に供与される
。このため、ゼレンスキー大統領も松田邦紀駐ウ大使に感謝を述べ
ている。特に、155mm砲弾の不足が前線で深刻であり、日本の間接的
な支援はウクライナにとっては、大きな助けになると思う。

徐々に、日本の体制を整えて、トランプ氏が米国大統領になったか
米国分裂になったときの準備をすることである。岸田首相は、来年
の総裁選挙までに、世界の中での主導国・日本を作ってほしいもの
である。

すでに、プレ戦争の時代であり、本格的戦争に備える時期に来てい
る。国民は安穏と暮らしているが、政治家は戦争の時代に向けて、
政策を推進する必要がある。それが国家指導層の役割だ。

2.ウクライナ戦争推移と世界秩序構築
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ロ軍は、損害無視の大攻勢でジワジワとウ軍を圧倒している。しか
し、ロ軍は毎日1,000名程度の戦死者を出している。

現時点の情勢は、アウディーイウカ以外にも、バフムト北西部で、
ロ軍が優勢になっている。おびただしいロ軍の人海戦術で、戦死者
は膨大であるが、ウ軍の1個大隊に対して、ロ軍の3個旅団が攻めて
くるので、どうしても人員が不足して、攻め込まれている。

少ない人数で防御するには、要塞が必要であり、要塞ができたとこ
ろでは、そこまで下がって防衛するようである。このため、下がっ
た所では、ロ軍が前進してくることになる。

どちらにしても、早くウクライナは動員をして、兵員の補充をする
必要である。もう1つの問題が砲弾不足であり、こちらは、欧米日の
支援が必要である。

・クピャンスク
ロ軍は、シニキウカのウ軍陣地に対して、波状攻撃を行ったが、ウ
軍に撃退された。

・スバトバ・クレミンナ・リシチャンスク
ロ軍は、各所を攻撃しているが、小規模の攻撃ですべて撃退されて
いる。そして、ロ軍は航空優勢であることで、ロ軍の地上攻撃は、
航空近接支援を受けた地上攻撃も増えてきた。

・バフムト方面
ロ軍は、一時に比べると、攻撃が緩やかになっている。ボフダニウ
カ、クリシチーイウカ、アンドリーイウカに対して、航空支援を受
けて7回攻撃しているが、ウ軍に撃退されている。

クロモベがロ軍に占領されている。ウ軍が奪還したバフムト北西部
はロ軍の支配下になっているようだ。

ウ軍は、ロ軍のアンドリーイウカ攻撃を撃退し、その後にロ軍を追
撃して、線路を越えて前進した。南東部方向ではまだ、維持してい
る。

・ドネツク市北側方面
ロ軍は、アウディーイウカの南東、ノボバフチウカの北東、ステポ
ベ、コークス工場、ペルボマイスケ、セベルネの南で、航空支援を
受けて、地上攻撃をしているが、ウ軍に撃退されている。ここでも
攻撃圧力が低下している。

・ドネツク市南側方面
ロ軍は、マリンカ全域を占領し、マリンカの北とノボミハイリウカ
に対して、航空近接支援を受けた地上攻撃を行っているが、ウ軍に
撃退されている。ここの圧力は増している。

・オリヒウ軸
ロ軍は、ベルボベの西と北西で地上攻撃をしているが、ウ軍は撃退
している。ウ軍は攻勢から守勢に作戦を転換した。

ウ軍は、ロボティネの南西でロ軍撃退後、攻勢に出て押し戻した。

・ヘルソン州
ウ軍は、ヘルソン戦線でロ軍Su-34攻撃機3機を撃墜したと発表。
どうも、パトリオット防空システムをヘルソンの近くに設置したこ
とで、ドニプロ川東岸に接近したロ軍su-34を迎撃できたようだ。

・その他の方面
ロ軍は、連日、ウ全土にシャヘドUAVを発射している。そのシャヘド
UAVのほとんどを撃墜している。

・米国後の世界秩序体系を構築
米国の追加援助は、1月9日までに議会を通るようである。バイデン
政権は、移民政策で共和党に譲歩して、移民の資格を厳しくする。

このため、ウクライナ支援予算(1050億ドル=15兆2千億円)は1月中旬
までには通過する可能性が出てきた。

ウクライナは、支援の遅れが「敗北の大きなリスクになる」(政府
高官)として、支援継続を訴えているが、本当に1月中旬までに予算
が通るのか、不安が尽きない。もう1つが、兵員不足であるが、在
外ウクライナ人も動員対象に含めるとした法案を準備する。

「オランダは、ウクライナにF16戦闘機を当初18機供与する」とルッ
テ首相は確約したことで、60機のF-16戦闘機がウ軍にもたらされる
ことになった。オランダ、デンマーク、ノルウェー、ベルギーがす
でに、2024年末までにウクライナにF-16を供与する。

ロ軍SU-24、SU-34など爆撃機からの滑空弾で、大きな被害が出てい
るが、F-16で、その爆撃機を撃ち落すことができることになる。

ロシアのウクライナ侵攻を受けてショルツ首相は、メルケル時代に
軍を縮小していたが、ドイツ軍の再建に乗り出し、2031年までに戦
力規模を18.3万人から20.3万人に拡張するという。それと、リトア
ニアにドイツ軍を常駐させることにしている。ドイツも米後のNATO
に対して、軍増強を打ち出している。

もう1つ、移民政策でEUが分断されていることで、移民の受け入れ
厳格化へ方針を変更する。極右政党が各国で勢力を伸ばしているの
で、それを抑える必要もある。EUも変わる。理想ではなく、国民の
幸福に寄与するリアリズムであるべきなのである。EV戦略も見直し
になっている。

それと、ウクライナのNATO加盟、EU加盟に反対するのは、ハンガリ
ーだけでなく、スロバキアのフィコ首相も表明した。これで、ハン
ガリーのEUからの締め出しも不可能になった。この2ケ国に対して、
ロシアの工作活動が成功している。

これにより、加盟国のほとんどが、NATO自体から脱退して、新NATO
を作り、スロバキアとハンガリー、トルコは加盟させないようにす
るしかなくなった。

新NATO構想を岸田首相が、現時点G7議長国であるから、提案してい
くことが重要である。勿論、日本は新NATOに加盟する方向で法体系
を整えるべきである。日本が主導して、世界を変えることが重要に
なっている。米国がいなくなった後の世界秩序を構築しないと、世
界的な混乱に拍車がかかるからだ。

その構築にも、ゼレンスキー大統領をサポートするべきであり、米
国が支援しないなら、ドイツと日本、英国が民主国群を守るしかな
い。

ロシアは、世界混乱工作を多方面で行っているので、それを潰して
行く必要になっている。

日本国民は、安穏としているが、世界は第3次世界大戦前夜の状況で
あり、米国が抜ける穴を埋めるために、日本がロシア工作の防止に、
動かざるを得ない状況である。世界をリアリズムに見ていくことで
ある。

・ロシアの工作潰し
ロシアは、ベネズエラ軍を強化するために、戦車や戦闘機などを提
供するとともに、軍事訓練もして、ガイアナの領土を取れるほどの
軍事力を持っているが、米国もベネズエラへの制裁を解除し、ベネ
ズエラとの関係を修復して、拘束されていた米国人も解放された。

このことで、ガイアナとベネズエラに仲介して、武力による領土併
合はしないという合意をした。ベネズエラからの原油が世界に売れ
るようになり、中国に安値で売る必要がなくなったことで、ベネズ
エラの経済面でも大きなメリットがある。

このように、ロシアの力による国際秩序を作るための世界への工作
を民主国陣営が潰して、第3次世界大戦にならないようにしていくこ
とである。

ロシアは、ウクライナ人とは同じスラブ系民族で、同根であり、こ
の民族には核を使わないようであるが、それ以外の民族には核を使
用するようである。この話で、スロバキアのフィコ首相は、ウクラ
イナのNATO加盟を拒否するという。しかし、ウクライナ停戦後では
、NATO加盟すれば、ロシアは戦争を起こせないことで、このフィコ
首相の話はおかしい。

しかし、親ロ派のフィコ首相は、何でもよいのであり、ウクライナ
をNATOに加盟させるなとロシアから言われているのである。

この工作も潰すしかない。

3.パレスチナ戦争
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フーシ派が大規模動員を開始した。ハマスを支援するための動員と
しているので、ガザに現れる可能性がある。エジプトもガザにいる
パレスナ人がシナイ半島に逃げるしかなくなったら、行動を起こす
と述べている。この2つは繋がっている。

ハマス幹部はエジプトに飛び、エジプトの仲介で人質40人と引換え
に一週間の停戦を提案したが、人質の解放が先だとイスラエルは要
求したことで、停戦は実現しなかった。

フーシ派のバブ・エル・マンデブ海峡での商業船舶攻撃に対応して
、当初米国は、フーシ派を攻撃しようとしたが、サウジは賛成しな
かったために、米軍は攻撃を見送った。アラブ世界がまとまり始め
ているように見えるが、どうであろう。

イスラエルのガラント国防相は、ハマスへの軍事作戦がまもなく「
次の段階」に入り、パレスチナ自治区ガザ地区の住民らを帰還させ
始めるとの見通しとした。住民の帰還は、北部のほうが南部より早
く実現できるだろうと述べた。

一方、国連安保理で、22日、ガザでの人道支援拡大を求める決議を
、日英仏中など13ケ国の賛成多数で採択した。米国とロシアは棄権し
た。安保理決議は法的拘束力を持つがイスラエルはガザへの攻勢を
強めており、人道状況改善につなげられるかは見通せない。

しかし、バイデン米大統領は23日、イスラエルのネタニヤフ首相と
電話協議したが、戦闘停止を求めなかったとした。

4.中国対応
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11月の米中首脳会談で、習近平主席がバイデン大統領に、「中国は
台湾と統一するが、時期はまだ決めていない。」と語り、さらに、
「武力ではなく平和的な占領を望んでいる」とも語ったという。

しかし、台湾が独立宣言したら、即座に武力を使い、統一するとし
た。

この報道を聞いたリンジー・グラハム上院議員は、「中国に地獄の
制裁を課す」と述べ、米国議会は中国からの輸入品全体に関税をか
けて、貿易を止める方向にいく。

EUも中国輸入品への補助金を問題視して、関税をかける方向である。
中国への締め付けも徐々に強化されている。資金流出も大きいが、
日本の銀行も香港向け債権の量を減らしている。欧米諸国の金融機
関も香港から逃げ出している。

中国はロシアにEVなどを輸出して、経済の落ち込みを食い止めるよ
うである。また、欧米に対抗するために、中国からのレアアースの
輸出規制とレアアースの抽出や加工に関する技術の持ち出し禁止も
含まれている。資源武器化で対抗するようである。

それと軍事的な対応が必要であり、バイデン米大統領は22日、2024
会計年度(23年10月〜24年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限
法案に署名し成立した。総額は約8860億ドル(約126兆円)。バイデ
ン氏は「将来の紛争を抑止するために必要な軍備を構築する」とし
た。

中国に対応する抑止力を強化するための基金「太平洋抑止構想PDI」
に147億ドルを計上した。

さあ、どうなりますか?


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