イスラエルは、ガザを分断し、難民キャンプにも爆撃して民間人の 多数の死傷者を出し、国際世論は人道的な停戦を求めているし、米 国もイスラエルに人道的な停戦を要求している。この現状と今後の 検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで安値となり、2023年10月27日は32,418ドルで、30日は 511ドル高の32,928ドル、31日は123ドル高の33,052ドル、11月1日は 221ドル高の33,274ドル、2日は564ドル高の33,839ドル、3日は222ド ル高の34,061ドル。 先週、株価は約1600ドル以上の上昇で3万4000ドル台回復になった。 FOMCで利上げせず、FOMC政策金利は5.25%-5.50%となり、10年国債 金利は下がった。 その後、米新規失業保険申請件数(10/28までの週)は21.7万件とな り、前回21.0万件より増え、景気が後退しているようである。 そして、11月3日の雇用統計で、10月米失業率は3.9%で前回の3.8% より高いし、米非農業部門雇用者数は15.0万人増で、前回33.6万人 増に比べて非常に弱い。 それも雇用増加の34%は、政府職員であり、製造業では3.5万人減で 支出が増え、生産が減ることになった。物価が上がったので、支出 が増えたようにも見える。 このため、12月のFOMCでの利上げ観測は一気に弱まり、米長期金利 は4.5%台まで低下した。ドル円も149円台になっている。 そして、中国の経済成長の原動力であった海外からの直接投資が7- 9月に初のマイナスになり 景気後退がさらに進むことになる。欧州 もすでに景気後退になっているので、米国の景気が減速すると、世 界の景気は、全体的に後退の方向になる。 もう1つ、10月17日の米半導体規制強化は、スペックの低いDUV露光 機であっても直接輸出管理の対象とするとしたことで、低レベルの DUVすら中国は得られないことになる。どんどん、米国は、中国を追 い詰めていく。中国の暴発に注意が必要である。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、2023年7月3日は33,753円とバブル崩壊後高 値となり、10月27日は30,991円で、30日は294円安の30,696円、31日 は161円高の30,858円、11月1日は742円高の31,601円、2日は348円高 の31,949円。 先週、株価は約1000円の上昇をした。10月31日の日銀金融政策決定 会合で上限1%の柔軟化をしたが、マイナス金利は変えなかったので 、一時ドル円は151円台後半まで円安が進んだ。しかし、FOMCでも利 上げをしなかったことや雇用統計で、149円まで戻している。 企業決算が出てきて、149円の効果が出ている。最高益になる企業が 多発している。日本景気は上昇している。海外からのホテル投資も 盛んであり、インバウンド需要が強いことがわかる。 このような中、上川外相が、急遽、イスラエルと中東諸国を訪問す るが、石油に不安がある日本は、イスラエルに人道的停戦を提案で きるのか? 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ロ軍はアウディーイウカの包囲を目論み、大損害でもゴリ押しして いる。ウ軍は逆包囲を意図した反撃や補給ラインの破壊をしている。 ・クピャンスク方面 ロ軍は、シニキウカとイバニウカに激しい地上攻撃をしているが、 地雷原に、無理してロ軍は前進するが、無数の歩兵が攻めてくるの で、ウ軍は数で劣勢になっている。このため、ウ軍陣地近くまで、 攻められている。 ロ空軍は、ペトロパブリウカ、クピャンスク、クリリウカに空爆を している。ロシア領内に近いので、補給ラインを破壊されることが ないので、多くの新兵と重火器を多数持ち、攻撃してくるが、訓練 されていない新兵であり、成果は出ないが実地訓練のような攻撃を しているようである。 ここで生き残った兵をアウディーイウカなどに持っていくのであろ う。次の新兵が来ることになる。 ・スバトバ・クレミンナ・リシチャンスク方面 ロ軍は、各所を攻撃しているが、小規模の攻撃ですべて撃退されて いる。 このため、ロ軍は航空優勢であることで、空爆を各地で行っている。 ウ軍は、防御だけで攻撃を行っていない。ロ軍の地上攻撃は、航空 近接支援を受けた地上攻撃も増えてきた。 ・バフムト方面 ウ軍はクリシチーウカ、アンドリーイウカ、クルディミウカで掃討 作戦を行い、アンドリーイウカの東で鉄道線路を越えているが、そ こでも掃討作戦を続けている。 ロ軍は、クリシチーウカ、アンドリーイウカで失地回復の地上攻撃 をするが、撃退されている。 ・ドネツク市北側方面 10月20日から11月上旬も大攻勢をかけている。ロ軍は1個旅団以上を 失ったが、アウディーイウカの北側で少しの成果は出ている。しか し、ウ軍は地雷原に地雷を多数設置して、ATGM、自爆ドローン、精 密砲撃で、ロ軍の猛攻撃を撃退して続けている。 ロ軍は、アウディーイウカの北にあるコークス工場を狙っているが 、そこは、ウ軍も要塞化している。その隣に炭鉱クズ山があり、今 はそこを奪取しようとしている。 しかし、この方面で、ロ軍は攻撃を止めた。ウ軍がケラミクの東側 に集結し、H20号線沿いに南下してきた。 ウ軍は、ロ軍側面を守る守備隊を撃破して、クラスノホリウカ方向 に1km以上前進し反撃に成功した。ウ軍はクラスノホリフカ付近の線 路の一部を奪還し、ロ軍を押し戻したようである。 この攻撃を行うために、ウ軍はオリヒウ軸から攻撃部隊をこちらに 回したようだ。レオパルト2A6がアウジーイウカ周辺に現れた。レオ パルト2A6を運用するには第47旅団のみであり、この旅団がアウジー イウカ北側に出てきていることになる。 このため、ロ軍は、攻撃されていないアウディーイウカの西側のセ ベルネ、プレボマイシケの東に地上攻撃を行ったが、ウ軍に撃退さ れている。 ロ空軍は、ノボカリノベ、オルリウカ、ラストチケネ、アウディー イウカに空爆をしている。 ・ドネツク市南側方面 ロ軍は、ノボミハイリウカとマリンカに対して、航空近接支援を受 けた地上攻撃を行ったが、ウ軍は撃退している。 また、ヴフレダールにロ軍が地上攻撃したが、装甲車十数両が撃破 されて撃退されている。 ・オリヒウ軸 ウ軍は、ベルボベの北にある高台をウ軍は包囲しようとして攻撃し ているのと、コパニ方向で攻撃しているが、前進なし。 完全にロ軍陣地を前に、ウ軍は攻撃できない状態になっている。こ のため、ロ軍は予備兵力をアウディーイウカに持っていける状態に なっている。 ウ軍も海兵旅団をドニプロ川西岸に移動させている。このため、ウ 軍もこの地域の攻撃戦力を他に回している。アウディーイウカの防 衛にも、精鋭部隊を回している。 ・ヘルソン州方面 ウ軍は、アントノフスキー鉄道橋付近から、ピシチャニウカ、ポイ マ、ピツテプネ方向に前進している。クリンキ付近で渡河した部隊 は、クリンキ村を奪還して、砂丘にいる。ウ軍は、中隊レベルから 大隊レベルに侵攻部隊を増強している。このため、本格的な渡河作 戦準備のために、4個の海兵旅団をここに集めている。 このクリンキの部隊に対して、ロ軍は南の森から攻撃したが、ウ軍 に撃退された。 ロ軍は、ドニプロ川一帯が泥濘状態であり、戦車が近づけない状態 であり、重火器が使えない。このため、川岸から離れた森の所まで しか装甲車が行けずに、ウ軍の軽火器部隊を駆逐できないでいる。 ロ軍ヘリで、攻撃できるが、ベルジャンスク飛行場がATACMSの攻撃 で、そこにあった稼働可能なヘリをロシア領タガンログ飛行場に退 避した。 このため、飛行場からドニプロ川まで430kmになり、有効な航空支援 もできない状態である。ロ軍の空爆はできるので、ドニプロ川西岸 には、盛んに空爆をしている。 ・その他の地域 11月3日の夜、ロ軍は、ウクライナ全土に大規模なシャヘド攻撃を開 始した。敵は約40機のドローンを使用し、24機は防空によって破壊 されたが、特にリヴィウとオデサ地方では、インフラに被害が出た。 この報復として、クリミアのセバストポリの火力発電所をミサイル 攻撃して、火災になっている。 それと、ウ軍はヘルソン州のブリリブカのロ軍飛行場とドニプロ司 令部をストームシャドーで攻撃したようである。 11月4日に、ウ軍はクリミアのケルチ港に停泊中のロシアのコルベッ ト・アスコルドをミサイル攻撃で破壊した。 ・ウクライナの状況 トランプ支持の福音派で共和党マイク・ジョンソン氏が、新下院議 長になり、一切の予算法案は通らないようである。下院はイスラエ ル支援の143億ドル支援案を可決したが、上院とバイデン政権は、ウ クライナとイスラエルなどの支援をパッケージした1060億ドルを求 めている。もし、下院案が上院でも通ったとしても、バイデン大統 領は法案への署名を拒否するとした。ということで、支援の予算は どれも通らない可能性が高い。 この状況で、ウ軍のザルジニー総司令官は、ロ軍と互いの陣地を奪 い合う消耗戦に移行しており、軍事力を回復できるロシアにとって 有利な状況が生まれるとした。局面打開のためには、空軍や通信妨 害などの電子戦の強化が鍵になると訴えた。さらに、ロ軍の人的損 失は甚大だが武器備蓄では今後も優位性を保つとして「ロ軍を過小 評価すべきでない」と強調した。 そして、ザルジニー総司令官はF-16が2024年春に来るが、それでも 局面の打開は難しいという。 要は、欧米の援助がこれからも必要であると訴えているのであるが 、ウ軍支援に積極的なメローニ伊首相でさえ、ひっかけ電話で「ウ クライナ疲れ」を述べている。 ドイツは、少なくとも2034年まで、ウクライナを支えるという。 2024年トランプ政権になれば、米支援ゼロになるが、独仏英伊蘭な どや東欧諸国は、ウ軍を支えることになる。しかし、ハンガリーと スロバキアは、支援せずであり、EUとしての支援もなくなる。 戦えなくなることを見越して、停戦に向けて、英国とは安全保障協 定の協議を開始したが、オランダとも安全保障協定の協議に入ると した。この2ケ国の軍隊が入り、そこにロ軍が攻撃すると、自動的に NATOも参戦することになる。 しかし、ゼレンスキー大統領は対ロシア戦勝利に固執し、新たな戦 略や方向性を打ち出すのが難しくなっているとのウ高官発言があり 、波紋を広げている。侵攻が長期化し、国際社会の支援継続が不透 明さを増す中、政権内部の不和を示唆する。特殊作戦軍のホレンコ 司令官解任を唐突に発表した。ウ高官発言は、ホレンコ司令官とゼ レンスキー大統領は考えたのであろう。 ゼレンスキー大統領は「誰も私のようには我々の勝利を信じていな い。誰もがだ」とし、「支援国にその信念をしみこませるためには 私の全てのエネルギーが必要だ」とした。 事実、米国とEUはウクライナにロシアとの和平交渉開始の圧力をか けているが、ゼレンスキー大統領は拒否しているようだ。 このゼレンスキー大統領の姿に、EU委員長のフォンデアライエンも 心配して、キーウに駆けつけて「ウクライナのEU加盟の道筋につい て話し合うために来た」という。停戦後のロシア攻撃をどう防ぐの かが重要なテーマになってきたようだ。 そして、米国とEU当局者は、ロシアとの和平交渉について、合意に 達するために、ウクライナに何をあきらめさせるか密かに協議して いるようだ。 そろそろ、勝利にこだわらずに、停戦を見据えた動きを取る必要が あると私も思う。米国の支援がなくなっても戦えるが、道のりは果 てしなく遠くなる。こうなる前に、有利な条件で停戦した方が良い。 このような状況で、ウクライナは短距離弾道ミサイルHRIM-2を開発 して、実戦配備するようである。射程距離は500kmであり、モスクワ を狙えるようである。徐々に外国の支援がなくとも、戦える準備を 進めているが、戦費と兵員不足が問題である。 ・ロシアの状況 「仮にプーチン大統領がウクライナとの戦争停止を決めた場合、そ の決定を支持するか」とロシア国民に尋ねたところ、70%が「決定を 支持する」と回答したことが、露独立系機関「レバダ・センター」 の10月の世論調査で分かった。今回の調査結果は露国民内での厭戦 機運の高まりを示唆した。 「仮にプーチン大統領がウクライナとの戦争停止と、併合したウク ライナ領土の返還を決めた場合、その決定を支持するか」との質問 でも世論調査を実施。この場合、「完全に支持する」「おおむね支 持する」とした回答者の割合は計34%まで低下した。 半数超の露国民が領土の返還を条件とした戦争の停止は支持できな いと考えていることが明らかになった形だ。 ロシアの備蓄兵器も尽きそうであり、これ以上の戦争は兵員の消耗 を多くした戦いになると、ロシア国民も気が付き始めたようである。 まだ、負けてはいないので、現状での停戦が主流になっている。 この中、北朝鮮は、ロシアに対し100万発以上の砲弾を供与したよう であり、短距離弾道ミサイルと携帯式地対空ミサイルをロ軍に供与 している可能性もあるという。 戦争に負けそうであり、プーチンは、包括的核実験禁止条約CTBTの 批准を撤回する法案に署名した。またもや、核の脅しを使うようで ある。 しかし、SVR将軍は10月26日にプーチンは死んだと言う。今は影武者 がプーチンを演じて、パトリシェフ書記が実権を握っているとした。 米ロは密接に頻繁に協議をしているので、その中で今後の停戦交渉も 協議している可能性がある。徐々に米国もトランプ政権になった時を 考えて、ロシアと接しているような気がする。 そして、戦争下にあるロシアとウクライナが、来年の国家予算で巨 額の国防関連費を計上する見通しとなっている。ロシアは2024年予 算案で国防関連費に計14兆2千億ルーブル(22兆7千億円)を計上。 歳出全体の4割に達する規模だ。一方、ウクライナも歳出の5割以 上に当たる1兆7千億フリブナ(約7兆円)を国防関連費に充て、戦闘 のさらなる長期化に備える構えだ 。 ロシアとウクライナの予算案は、国の総力をつぎ込んででも戦場で 勝利し、相手に譲歩を迫ろうとする両国の方針を改めて示したが、 両国の消耗をし続けて、国力を削ぐことになる。特にロシアであり 、多民族国家のロシアは、分裂の危機に直面することになる。 3.パレスチナ戦争 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− イス軍はガザを南北に分断した。中部から侵攻したイス軍は海岸線 まで到達した。このため、ガザ市内を包囲したことになる。しかし 、イス軍も350名以上が戦死している。 ハマスもトンネルを利用して反撃をしているが、ガラント国防相は トンネルを解体する有効な方法があるとして、ハマス殲滅を徹底的 に行うという。 ハマス軍事部門報道官は、このイス軍のトンネル攻撃により人質60 人以上が死亡。瓦礫の下に23人の死体が埋まっていると発表した。 真偽のほどはわからない。 それ以上に世界が反発するのが、イス軍が、ジャバリア難民キャン プへの爆撃を3日も実行し、400人以上の死者を出していることだ。 そして、ガザ包囲後、イス軍はガザを攻撃して、ガザ市民の死者が 増え続け、食料や水は枯渇し、医療も崩壊している。 ネタニエフ政権は、「ガザ全住民をシナイ半島に排除」という政策 文書を作成して、そのシナリオを実行するようである。ガザ住民を 難民化することになる。 このため、米政府内および議会からイス軍による民間人に対する攻 撃に厳しい声が上がっている。レイヒー法により、米政府は重大な 人権侵害をした外国軍への軍事支援を禁じられているので、支援は できないことになる。 これを受けて、ブリンケン国務長官がイスラエルに飛んで「人道的 停戦」をネタニエフ首相に要求しているが、「人質解放が含まれな いハマスとの人道的停戦を拒否するとブリンケン国務長官に伝えた 」と述べた。 日本の上川外相も「人道目的の一時的な戦闘の休止」をイスラエル に求めたが、ブリンケン国務長官と同じように無視されている。 このため、イスラエルの国際社会での孤立化が鮮明となっている。 イスラエルは、ロシアの敵対的な発言で、シリア空爆の際のロシア への事前警告をやめると発表した。ロシアも敵に回した。このため 、ロシアのワグナー軍がミサイルなどを持ち、ヒズボラを支援する ようである。とうとう、ロシアも入ってきた。ウクライナと停戦し て、イスラエルとの戦いに向ける可能性も出ている。 シリアに展開するイラン系民兵組織もレバノンに入って、ヒズボラ を支援するようである。 イエメンのフーシ派は、10月31日に宣戦布告し、ボリビアは断交し 、チリとコロンビア、ホンジュラス、ヨルダン、トルコは大使を召 喚した。エジプトは、ガザ地域との国境線に戦車と装甲車を配備し た。 このフーシ派をけん制するために、米空母アイゼンハワーはスエズ 運河を渡り、東地中海から紅海に入った。 この状況で、トルコのエルドアン大統領も、イスラエルを支援する 米国を非難している。イスラエルとは険悪な関係になっている。 そして、人道的停戦を要求する国が増えている。国連も難民キャン プの爆撃を戦争犯罪であると言っている。ガザ市内への攻撃はなお さらである。 イスラエルのエルサレムで安息日明けの土曜夜に行われた人質解放 求めるデモが、先週から比べると集まったのが10倍以上と盛況であ る。停戦してでも命を守らなければならないといけないと言う。 この中、ラファ検問所から多数の外国籍の人たちがエジプトに逃れ た。その中には日本人10名もいた。イスラエルからは40名以上の日 本人が帰国した。やっと、ヨハネの黙示録の状態になることを、日 本人たちも知ったようである。 しかし、イラン革命防衛隊の司令官とヒズボラのナスララが会談し たが、その後のナスララ演説は、ハマスの抵抗は応援するが、それ 以上にイランが米軍との直接衝突を恐れている可能性があり、この ため、ガザでの停戦を提案した。中東全域への戦争に歯止めをかけ る必要で述べている。 このため、現時点では、イラン派武装勢力の本格的な参戦はないよ うである。このナスララの演説で、この戦争は中東全域に拡大しな いことになり、石油価格が大きく下げた。 この背景は、ハマスはスンニ派なのでシーア派のヒズボラとは本当 はあまり関係ないが、対イスラエルで共闘している。しかし、その ハマスをイランが支援しているので、ヒズボラは、イランにお伺い を立てたが、イラン自体も戦う意思がないので、これ以上の攻撃を しないということのようである。 サウジから資金を貰っているスンニ派の武装勢力は、ハマスを助け ないようである。ハマスとパレスチナ人は見殺しにされることにな る。賢明なるスンニ派アラブ諸国は、パレスチナ紛争に巻き込まれ て自国の石油ビジネスに影響が出ることを恐れるのであろう。 本当に、これでよいのであろうか? そして、この状況で、中国の立場が微妙である。イスラエルを積極 的に非難しないで、中立的な立場を維持している。イスラエル軍事 技術の中核的な部品を多数、イスラエルから輸入している。このた め、イスラエルを非難できないようである。 その中国は、東アジアでの覇権を取りに来ている。その正面が日本 、台湾、フィリピン、ベトナムなどであり、インドネシアは中国か らの支援が多く、親中に傾いている。 日本は準同盟国として、フィリピンを遇し、沿岸監視レーダーなど の無償供与で海洋監視能力を向上させ、自衛隊との共同訓練も拡充 するという。南シナ海での中国への危機感が東南アジア諸国で共有 されつつあることで、この枠組みを拡大していくことになる。 中東での戦争と、東アジアも同時に戦争になると、米国は三正面作 戦になるので、それを恐れている。11月に米中の首脳会談を行い、 現在、極東に空母カール・ヴィンソンが来ていて、空母レーガンと 合わせて一時的に2隻体制にして、中国の暴発を防いでいる。 4.国際機関の無力化 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− この2つの戦争で、国連、OSCE、IAEAといったあらゆる国際機関が、 何もできない無力な存在であることが判明した。国際機関は、懸念 を表明する以外に何もできないでいる。 1945年以降、国際的に人道主義や戦争時のルールを決めてきたが、 いざ、戦争になると、当事者は、それを無視して民間人を殺戮して いる。イスラエルの登場で、多民族国家で独裁国のロシアや中国だ けではないことになっている。単民族国家で民主国のイスラエルで も同じである。欧州でジェノサイドにあったユダヤ人は、今後は、 アラブでパレスナ人をジェノサイドしている。 このため、無意味な国連は、お役御免になるような気がする。この 代わりにNATOの世界化をして、人道主義を守る国などを中心に集団 的安全保障体制の枠組みを作るしかないように感じる。 そのNATOについては、米国も関与を弱めるということで、費用など の問題で日本などの参加が必要になっている。 トランプの米国の孤立主義により、世界は大きく変革することにな る。安全保障で米国が頼りにできないことで、安全保障の枠組みも 大幅な変更をしないと持たないことになる。日英独仏伊蘭印などが 協力して、非人道主義国と戦うしかない。NATOからハンガリーやト ルコなどの非人道主義国を支援する国は排除しないといけない。 ということは、新NATOを作り、今のNATOは潰すことである。 さあ、どうなりますか?