ウ軍が第2防衛線を突破して、装甲車が第2防衛線内に展開し始めて いる。第1防衛線突破に3ケ月を要したが、第2防衛線突破には1ケ月で 済んだ。この現状と今後の検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで安値となり、2023年9月15日は34,618ドルで、18日は6 ドル高の34,624ドル、19日は106ドル安の34,517ドル、20日は76ドル 安の34,440ドル、21日は370ドル安の34,070ドル、22日は106ドル安 の33,963ドル。 先週、株価は約500ドルの下落をした。9月20日のFOMCは利上げ据置 きであったが、年内の1回の利上げを見込むことから、10年米国債金 利が4.5%に上がり、S&P500指数は続落して売り転換したし、NASDAQ も下落、エヌビディアも下落した。 この金利上昇で、8月は2009年以来の企業倒産になっている。9月米 製造業PMIは48.9であり、予想の48.2より悪いが、前回の47.9よりは 良い結果である。非製造業PMIは50.2で予想50.7より悪く、前回の 50.5よりも悪い。しかし50以上であり、悪化の方向ではない。 そして、企業の利払い負担は低下している。金利ゼロの時代に大量 の資金を調達して、それを運用したことで金利5%程度の収入があり 、かつ利払いは金利ゼロですので、元本返済分しかない。企業が資 金不足になるまでには平均10ケ月以上もあり、そこまでなら、今まで に借りた金利ゼロ資金で食いつなげるようである。 一方、10年国債を大量に持っている年金財団や銀行は、10年国債の 価格が50%も下落していて、大きな損失が出ているが、満期まで持つ と額面の資金が戻るので、損失に計上しないようである。 しかし、収入がないベンチャー企業は、資金不足になり、倒産が増 えている。金利5%の資金を借りることできない。徐々に米国のベン チャー企業の衰退が起きることになる。 悪いことに、原油価格が上昇していて、インフレが収まる方向では なく、金利の高い水準に長く維持することになる。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、7月3日は33,753円とバブル崩壊後高値とな り、9月15日は33,533円で、19日は290円安の33,242円、20日は218円 安の33,023円、21日は422円安の32,571円、22日は168円安の32,402円 先週、株価は約1000円の大幅な下落になった。日銀政策決定会合で 長期に現在の金融政策を維持するということで、朝方400円安であっ たが、午後には40円高になり、最終的に168円安になった。日銀のフ ォワードガイダンスに変更なしで、「必要なら躊躇なく追加緩和」 ということである。世界の趨勢とは違うが150円以上の円安にもなら ないのが不思議である。 海外投資家が、日本株をショートしていたが、11時30分に日銀は、 金融緩和維持となり、午後一番でショートの解消買いが出て、一時 的にプラス圏になったようである。今週は海外投資家の売りが多く 、1週間を通じて、株安の展開であった。日銀の金融政策を疑問視し て、日本売りの様相でもある。しかし、ドル円は148円をなったが、 それ以上の円安にならなかった。 しかし、8月コアCPIは前年同月比3.1%上昇。伸び率は前月から横ば いで、市場予想(3.0%上昇)を上回った。インフレは収まっていな い。日銀はインフレでは金融政策を変更しないようである。海外投 資の常識とは違う日銀の政策決定に海外投資家は、振り回されてい るようである。 日本は来年からNISAを長年で運用でき、枠も拡大し、インフレの円 安で持続して、インフレヘッジのためにも株式投資が当たり前にな る可能性が高い。また、PBR1倍割れの株が全体の45%程度を占めてい るので割安でもある。岸田首相は米国のウォールストリートで講演 して、日本への投資を呼びかけた。 その上、148円の円安により、日本企業は絶好調な状態が続くことに なる。中国からの輸入を欧米は見直し、東南アジアや日本からの輸 入を増やしている。日本の円安により、東南アジア産より日本産の 方が安くなってきた。 円の実力は過去最低になり 円安など響いて1970年の1ドル=360円 当時を下回っている。このため、日本製品の価格競争力は非常に高 い。どうも、日本のマスコミの報道は、円安の悪さのみが強調され ている。 日本復活の動きが加速する。企業業績が良いことで研究投資やM&Aに 資金を回せることで、複数の企業が世界企業になる可能性がある。 その上、人手不足で機械化自動化投資やトラック・バスの運転手不 足で自動運転需要が高く、地方自治体は自動運転バスの導入をして 、地域交通を維持する必要が出ている。設備投資の需要の大きい。 もう1つが、輸送をトラックに代えて道路整備を優先してきたが、 今は長距離輸送の効率が良い鉄道にシフトするしかない事態であり 、地方の高速道路の建設ではなく、貨物鉄道に国は補助して行く交 通政策の転換が必要である。特に北海道などの鉄道貨物が重要な地 域では、特にそうであるとみる。交通政策の転換が必要になってい る。 日本企業も人手不足に対応した人事政策にシフトする必要がある。 非正規雇用の正規化であり、徐々に非正規社員が正規化しないと、 より正規化してくれる給与の高いきぎょうへの転職が加速すること になる。労働賃金上昇より先に、非正規社員の一掃が急がれる。 国も雇用法の変更をして、非正規社員の禁止などの法的処置をして 、賃金の上昇を後押しするのも重要であるが、根本的な対策に打っ て出るべきである。 植田日銀総裁も賃金上昇が必要であると述べているが、民間企業に 任せるだけではなく、議会・政府も積極的な法体系を作り、賃金上 昇を進めることである。貧富の差を一定程度に納める必要がある。 米国の現状を見ると、貧富の差が拡大すると、民主主義の崩壊にな ることを見せつけているが、それを反面教師にして、日本は貧富の 差を拡大させない施策を打つべきである。 これは、少子化対策でもあり、大多数の若者の賃金を上昇させて、 結婚ができ、子供がいる生活ができるようにすることが重要だ。 貧富の差が拡大した原因は、非正規社員を認めたことである。人手 不足の現状に合わなくなってきて、昔に戻るしかない。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ロ軍最強の第76空挺師団を南部の第1、第2防衛線に投入したが、防 衛戦で負けて損害が大きく、追加で、バフムトを除く東部に展開す る攻撃可能な空挺部隊、バース予備部隊、スペツナズ部隊をすべて 南部に送っている。 このため、南部でのロ軍の地上部隊による攻撃は、ほとんどなくな っている。バフムトを除く南部に展開するロ軍部隊は、弱兵である。 ・クピャンスク・スバトバ・リシチャンスク方面 ロ軍は、防衛のみで攻撃できない状態になっている。 このため、ロ軍は航空優勢であることで、空爆を各地で行っている。 ウ軍も、スバトバ方面のノボセリウシケへの攻撃以外、この地域で は防衛のみで、攻撃をしていない。 ・バフムト方面 北西では、ロ軍はボフダニウカに地上攻撃したが、ウ軍に撃退され ている。 南側では、ウ軍はクリシチーウカ、アンドリーイウカを完全奪還し た。ウ軍は追撃して「T0513」道路に達している。この道路は、バフ ムトへの補給路になっている。この補給路を火器管制下に置いたこ とで、ロ軍の補給が困難になっている。 クルディミウカでもウ軍が激しい攻撃している。ここもまもなく奪 還するであろう。 ロ軍は、失ったアンドリーイウカに攻撃したが、ウ軍に撃退されて いる。 ・ザポリージャ州方面 1.ベルカノボシルカ軸 東では、ノボドネツク、ノボマヨルシケ、シェフチェンコに攻撃を して、ウ軍がノボマヨルシケの市街に入り、市街戦になっているが 前進できずにいる。 中央では、ウ軍は、ザビトネ・バジャンニャを攻撃しているが、ロ 軍も抵抗して、ウ軍は前進できないでいる。 2.オリヒウ軸 ウ軍は、ロボティネの南ノボプロコピウカを攻撃しているが、この ノボプロコピウカで前進できないでいる。コパニ方向へウ軍は向か っている。 オチェレトバテ方向へウ軍は攻撃しているが、166高地のロ軍の抵抗 が激しく前進できていない。前回の情報は誤報であったと思われる。 ベルボベ方向では、一部第2防衛線を越えてウ軍機械化部隊が進軍し ていることで、戦車壕と竜の歯を越えたことが確認されている。ジ ワジワとベルボベに前進している。 この第2防衛線を完全に越えると、今までの歩兵と砲兵主導の砲迫戦 から機甲部隊主導の機甲戦になり、進軍速度が著しく早くなる可能 性がある。その時はこの地域のロ軍崩壊になり、その次に南部地域 全体のロ軍崩壊になっていくことになる。 もう1つが、ベルボベの南東にロ軍第1防衛線沿いにウ軍は前進して 、166高地方向に塹壕を横から攻めている。このため、塹壕の意味を なさなくなる。そして、ロ軍歩兵部隊に対して、なぜかロ軍のTOS-1 がサーモバリック弾で攻撃して多数が死傷している。ウ軍の塹壕横 からの攻撃で、敵味方の区別がつかないようである。 そして、ここオリヒウ軸が両軍の精鋭を集めた決戦場所であり、こ こで、ロ軍精鋭部隊を粉砕すると、ロ軍はロ軍崩壊になる。しかし 、その方向に事態は向かっている。ロ軍の分岐点に差し掛かったよ うである。 この方面のタルナフスキー司令官曰く「ウ軍はベルボベの左翼側で 突破口を開いた。トクマクを奪取できたら、大きな突破を実現した ことになる。最低限トクマクを奪取する。宇軍の攻勢は冬も継続す る。歩兵中心の小部隊で攻撃しているから泥濘は関係ない」とした。 ・その他方面 ウ軍は、クリミア半島にドローンとミサイルよる大掛かりな攻撃を して、10ケ所近い航空基地、海軍基地、関連施設を破壊炎上させた。 ベルベク航空基地、インカーマン海軍基地、カチャ空軍基地、サキ 空軍基地、ジャンコイ空軍基地とセバストポリ地域などでウ軍の攻 撃が報告されている。 特にセバストポリのベルフサドベの黒海艦隊指揮所と通信センタを 攻撃して、22日には、3発のミサイルが黒海艦隊司令部に命中した。 このため、ウ軍情報総局長ブダノフは、「ウ軍の露黒海艦隊司令部 への攻撃で、ザポリージャ方面のロシア軍集団司令官アレクサンダ ー・ロマンチュク大将と第200独立MR旅団司令官ツェコフ中将が重傷 を負って、少なくとも9人が死亡、16人が負傷した。」という。 また、黒海艦隊司令長官ビクトル・ソコロフ提督も死亡したようだ との情報も流れている。 それとバフチサライのロ軍基地付近で爆発があったし、ベルベク基 地の近くの装備配給所を破壊したようである。 クリミアに展開する5基のS-400の内、クリミア北西部タルクハント 岬と西部エフパトリアの2基のS-400を破壊したことで、クリミア西 部の防空に穴ができて、そこからクリミアにウ軍のミサイルやドロ ーンが侵入できるようになり、大きな被害を与えることができるよ うになった。残り3基のS-400は、クリミア橋、ジャンコイなどにあ る。今後ATACMSが手に入ることで、ウ軍は攻撃してくるはずだ。 もう1つが、ウ軍側のECM(電子)戦の能力が、ロ軍のECMを上回った 可能性がある。GDP衛星の電波妨害を乗り越えている。 このような状態になり、黒海艦隊の健在な潜水艦は、ロシア領のノ ボロシースク軍港に退避した。3隻の大型揚陸艦が黒海からアゾフ 海に移動した。クリミアから補給ができなくなり、本土からウクラ イナ南部への補給のためであろう。 この海域に、15隻を超える沿岸警備艇が配備されている。ロ軍とし ても、防空能力がなくなり、クリミアは、現代戦における艦隊・航 空基地や補給基地としてはかなり厳しい環境になってきたようだ。 その他では、メリトポリのエンジン工場にロ軍が司令部を設置した のを発見し、ウ軍のミサイル攻撃で約10名が死亡、数十名が負傷よ うだ。 ドネツク州のデバルテベ地区の2基のS-400も破壊した。これで、こ の地域にウ軍はドローン攻撃が可能になる。 ロシア領内チカロフスキー空軍基地で、何者かが爆薬を仕掛けAN-148 とIL-20を爆破した。ヘリ1機も損傷したようである。 ロシア領内カザンの工場地帯で大きな爆発があった。 ロシア領トーラで電力インフラが破壊されて、停電になっている。 ドネツク市の東ズグレスの火力発電所が大規模火災になっている。 これは、ロ軍が44発の巡航ミサイルと8発のS300の対空ミサイルでウ クライナのエネルギー施設を攻撃した報復である。ウ軍は52発中38 発を迎撃したと発表した。両軍ともに冬に向けて、エネルギー施設 への攻撃が続くことになる。 このため、ウクライナのシュミハリ首相は22日、ロ軍がウクライナ の電力インフラに対する攻撃を再開したことで、「困難な冬になる だろう」としつつ、「我々は昨年より格段に準備できており、強力 になっている」とも語った。 ・ウクライナの状況 ゼレンスキー大統領は、国連総会で演説したが出席が少なく、特に グローバル・サウスの国々の欠席が目立っていた。 バイデン大統領と会談したが、当初、ATACMSのクラスター弾の供与 はなかったと報道されたが、どうも、少量のATACMS長距離ミサイル を提供するようだ。しかし、ゼレンスキー大統領は、バイデン米大 統領のウクライナ関与が揺らぎつつあり、それが他国の指導者にも 影響すると見ているようだ。 事実、WSJ紙によると、米下院議員23名と上院議員6名がウクライナ への追加援助を行わないよう求める書簡を米大統領に送った。特に 共和党議員に反対者が多い。 また、共和党ケビン・マッカーシー下院議長は、ワシントンを訪問 したゼレンスキー大統領に冷たく、議会演説の要請を拒否した。 そして、ウクライナへの援助をめぐる米国の議論は、一方がロシア 寄りの立場をますます強め、もう一方も本当にロシア敗北を望んで いるのかどうか分からないという状況になっている。状況は今後ま すますゼレンスキー氏の心配な方向に向かうことになる。 米国の政治的混乱は、世界秩序にとっても大きなリスクになる方向 だ。米国はモンロー主義に戻っている。 この情勢であり、ウクライナ支援国は非公開の場で、戦後の国造り の方針を明確化するようにゼレンスキー氏に働き掛けてたり、また 、ウクライナで長年の懸案である汚職問題解決のために、将来の財 政支援に反汚職検察局の強化をひも付けする考えの国も多数ある。 戦争の長期化で世界の指導者層は、ウクライナへの緊急対応から、 より長期的な対応にシフトしつつある。そして、ゼレンスキー氏が いつまでロシアと交渉を開始せずにいられるかと言う議論が増えて いる。世界がウクライナ援助疲れになってきているからだ。 よって、2024年11月までにはロシアと交渉を進めて、停戦に持ち込 む必要がある。米国選挙でトランプ派が勝てば、一挙にロシア有利 になるからだ。しかし、ゼレンスキー氏は、自分が提言した「和平 条件」に固守しているので、交渉ができないでいる。 もう1つ、ポーランドは、ゼレンスキー大統領の農産物輸入制限に ついての国連演説に反発して、今後新しい武器援助はしないと述べ たが、両国農業相がこの農産物問題の解決に向けて協議するとした。 このような状況で、ラウ・ポーランド外相は、ウクライナの支援は ポーランドの国益になる。他方、その支援で負担を背負ったのは、 歴史的に戦争をよく知るポーランド東部地域の人々で、農業で生計 を立ててきた。彼らの生活を支えることもポーランドの利益であり 、両方が必要なのであるという。 また、ポーランドのドゥダ大統領は、穀物を巡るウクライナとポー ランドの間の見解相違は両国関係の細部であり、それが両国間の協 力全体に影響を及ぼすことはないとした。 この状況で、ウクライナ穀物輸入禁止したスロバキア農業省は、「 (両国閣僚)はライセンスの発効と管理に基づく穀物貿易システム を作ることで合意した」という。これにより、ウクライナが世界貿 易機関WTOへのスロバキアの提訴を止めることに同意した。しかし、 残りの2ケ国について提訴を継続している。 東欧のハンガリー、ポーランド、スロバキアの3か国で、ウクライ ナ農産物輸入自主規制をしているが、ハンガリーを除く2ケ国は、ウ クライナ支援をしている。ウクライナとしても、この2ケ国との関係 を正常化する必要がある。スロバキアとは調整できたので、ポーラ ンドとも調整してほしいものである。 ウクライナは、東欧3ケ国へ穀物の輸出をする必要がない。アフリカ 諸国や中東諸国が売り先であり、それぞれの国でウ産穀物を通過を させれほしいだけである。 もう1つ、ゼレンスキー大統領は、汚職責任の有無を問われて、 2024年に選挙を行うとしたが、ウクライナの100以上の市民団体が、 全面戦争中に選挙を実施しないよう要請した。ゼレンスキー信任と いうことであろう。 ウクライナは戦争では勝っているが、世界の政治情勢では困難な状 況になってきたように感じる。世界が援助疲れになっていることも 大きい。 ・ロシアの状況 20日の国連安全保障理事会は、ゼレンスキー大統領が、敵国である ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使と同じテーブルで向かい合 う異例の機会となった。 開始早々、ネベンジャ氏が、安保理の理事国より先にゼレンスキー 氏が発言することに反発した。議長を務めたアルバニアのエディ・ ラマ首相が「それには解決策がある」と切り返し、「ロシアが戦争 をやめることだ。そうすればゼレンスキー氏がここに立つことはな い」と一蹴した。 ゼレンスキー大統領は、侵略の不当性を突きつけ、日本や米欧も対 ロ非難を展開。出席した約60ケ国からロシアを擁護する声はほとんど なく、孤立が際立った。 そして、ロシアを国連安保理から脱退させるための国連議会の公聴 会を来週開催されることになった。孤立化の結果、安保理の常任理 事国ではなくなる可能性が出てきた。 そして、ロ軍の分析によると、ウクライナに派遣された動員兵は殺 害されるまで平均4.5ケ月しか生きていないという。動員兵の使い捨 ての状況が続いている。 ロ軍は48個師団をウクライナに展開して、総員約38万人である。海 外派遣のため、補給等の任務が半分の19万人必要であり、戦闘員は 19万人、その内最前線で戦えるのは10万人であり、ウクライナの前 線は1000kmあり、1人が守る必要な距離は10mである。このため、戦 闘前線としてはスカスカの状態である。 このため、第1防衛線に多くの将兵を配置したが、そこを破られて、 第2防御線も破られると、その後方には、ほとんど兵員を配置してい ないことになる、第1や第2防衛線から後退してきた部隊も含めて守 るしかない。非常に苦しい状態になってきた。ロ軍崩壊の一歩手前 とも見える。 このような現状を隠すために、ロシアの野党報道機関メドゥーザは 21日に、ロ大統領府が19日にクレムリン系メディアに対し、「ウク ライナの装備と人員の損失を強調し、ロ軍の砲撃と空爆がウ軍の反 攻を効果的に抑制している」と強調するよう指示を報道機関にした という。負けている戦争を国民から隠すようである。 この状況で、中国は軍事目的に使用可能な高性能無人航空機(UAV) や部品の輸出規制を実施した。中国のドローン輸出業者がライセン ス要件に違反した場合、行政責任を問われ、故意に違反した場合は 刑事責任を問われるという。中国はロシアを見切っている。その一 方、米中は関係改善の協議を行う。米国と中国は、経済と金融の問 題を協議する2つの作業部会を設置する。中国も経済破綻の状況で あり、米国への輸出が必要である。 ロシアは戦争に負けていて、かつ国際政治の場面でも負けている。 残すチャンスは、2024年11月選挙でトランプ氏が選挙で勝つことで ある。これで一発逆転になる。ここにしか勝ち目がない。そこまで ロ軍崩壊だけは避けたいはずである。 3.その他世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− アゼルバイジャン軍が隣国アルメニアとの係争地、ナゴルノカラバ フで開始した軍事行動で、アルメニア側は現地軍の武装解除などを 受け入れ、停戦することで合意した。 アゼルバイジャンのアリエフ大統領も演説で「対テロ作戦の結果、 主権が回復された。重要な成功を収めた」と述べ、戦闘は終結した とした。 ナゴルノカラバフでは2020年にアゼルバイジャンとアルメニアの武 力衝突が起きロシアの仲介で停戦したが、今回、ロシアを後ろ盾に してきたアルメニア側が事実上、敗北した。 ナゴルノカラバフを自治州にもしないでアゼルバイジャン領にする ことで、アルメニア人は長い時間をかけ徐々に出ていくような環境 を作っていくのであろう。もし、カラバフの12万人のアルメニア人 を一度に追い出すと民族浄化だとなるからである。世界も監視する 必要がありそうだ。 このアゼルの軍事行動にロシア平和維持部隊は、行動しなかった。 このため、アルメニアのミルゾヤン外相は、国連の安保理会議の場 でロ平和維持軍を米軍と仏軍からなる国連平和維持軍に置き換える よう要求した。ロシアの影響力の低下が、ここでも出ているし、ア ゼルバイジャンの民族浄化を監視する必要もある。 ロシアは、シリアからもワグナー軍を撤退させている。この穴埋め のために、イラン軍が増強された。次の争点がシリアであろう。 ロシアの抜けた穴を埋める形で、欧米諸国やイスラエルが代替する ことになり、世界の秩序体系は大きな変化が出ている。 もう1つが、中国の経済力が低下して、途上国へのインフラ投資が 減っている。この減少で、中国の影響力も減る方向のようである。 反対に、ドイツ経済も景気後退になり、米国も2024年11月の大統領 選挙でトランプ派が勝利すると、米国はモンロー主義になり、世界 の勢力図に変化が来る。 しかし、合衆国憲法の修正14条(第3節)には「公職追放規定」があ り、「官職にある者として、合衆国憲法を支持する旨の宣誓をしな がら」その後、「合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または 合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者」は「合衆国または各州 の官職に就くことはできない」という条項で、トランプ本人は該当 する可能性がある。ということで、トランプ派の大統領になる可能 性がある。 しかし、バイデン大統領が当選すれば、当分米国を中心とした世界 が続くが、それも長いことはない。米国民の大多数の貧困層の反乱 が続くことになる。 というように、中ロ2ケ国の力が減少することと、欧米の影響力低下 という二重の変化で、世界秩序は大変革期に来ている。 ウクライナ戦争は、世界の大転換を引き起こした可能性がある。 さあ、どうなりますか?