ロ軍は、誘導弾もなく負けているが、最後の反撃を試みたナチス・ ドイツ軍と同じバブジの戦いを行っている。ウ軍はクラスター弾で 砲撃して、ロ軍に大きな損害を与えている。この現状と今後の検討 をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで安値となり、2023年8月4日は35,065ドルで、7日は407 ドル高の35,473ドル、8日は158ドル安の35,314ドル、9日は191ドル 安の35,123ドル、10日は52ドル高の35,176ドル、11日は105ドル高の 35,281ドル。 先週、株価は上昇した。CPIの上昇率はエネルギー・食品を除くコア が前年同月比4.7%と市場予想(4.8%)を下回った。前月比では0.2% 上昇と6月から横ばいで、市場予想に一致した。7月米生産者物価指 数は前月比0.3%で予想0.2%より高く上昇が加速したが、9月FOMCで は利上げはないと市場は見たようだ。 米政府は9日、米国の企業・個人による中国への投資を規制する新制 度を導入。先端半導体や人工知能(AI)、量子技術を対象にする。 政府に届け出を義務付け、中国の軍事開発などに結びつく案件は禁 じる。米国の対中規制がモノだけでなく、カネの流れにまで発展し た。 しかし、中国技術開発会社によると、米国が特定の技術への投資を 禁止しても、この分野での米資金への依存度が低下しているため、 影響は限定的だろうというが、中国への直接投資は4-6月で、87%減 になっている。 中国への貿易制限から投資制限に向かっても、米国は、インフレよ り賃金上昇の方が高いので、米国経済は不況入りはしない可能性が 高い。しかし、AIなどや半導体企業の業績には影響が出ることにな る。このため、NASDQAは下落している。 中国の7月CPIは、前年同月比0.3%下落した。21年2月以来、2年5カ月 ぶりに低下した。雇用などへの先行き不安に伴う消費の弱さから、 自動車やスマートフォンなど耐久財が値下がりした。 もう1つ、先月来、北京に近い河北省や東北部の複数の省で大雨に よる被害が出ているが、中国東北部、旧満洲地域といえば穀倉地帯 であり、中国が穀物類の輸入を増やすことになる。 このため、ウクライナからの穀物輸出ができないことと合わせると 、今年後半からは、食糧危機になりそうである。 中国の経済の弱さにより、世界に影響するし、中国離れも出てくる ことになる。一番心配なのが、習政権の安定性が失われて、国民の 目を国内から海外に向けるための強硬外交になることであろう。 日本への影響が出ることになる。安全保障への備えを整えておくこ とが重要である。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、7月3日は33,753円とバブル崩壊後高値とな り、8月4日は32,192円で、7日は61円安の32,254円、8日は122円高の 32,377円、9日は172円安の32,204円、10日は269円高の32,473円。 先週、株価は下落した。中国経済の落ち込みで、日本企業への大き な影響が出ることになる。しかし、企業決算は良かった企業が多く まだ、影響が出ていないようである。 日米の金利差の拡大が意識されて、円売りが広がり、円相場は1ドル =144円台後半になっている。このため、日本企業の業績には良い影 響が出ることになる。 6月の経常収支は1兆5088億円の黒字で、貿易収支でも430億円の黒字 となり、黒字は23カ月ぶりである。円安により輸出が復活している。 そして、国の借金は1276兆円で、過去最大を更新したが、名目GDPが 600兆円であるので、対GDP比では200%と低下した。 時事通信の8月世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比4.2ポ イント減の26.6%だった。3ケ月連続の下落で、5ケ月ぶりに政権維持の 「危険水域」とされる2割台に転落した。マイナンバーカードの問題 、木原副官房長官の疑惑、少子化対策費用や防衛費増額のための増 税問題、秋本真利議員の洋上風力汚職、女性局フランス研修問題な どが出て、支持率は落ちている。 「青木の法則」は、「参院のドン」と称された故青木幹雄元官房長 官が提唱した、時の内閣の安定度を示す経験則である。その法則で は、内閣支持率(%)と自民党支持率(%)を足して、50%を割ると 「政権はもたない」というものだ。政党支持率は自民党が21.1%であ るので、現時点で、47.7%と50%を割り込んでいる。 岸田首相の思想の柱が見えないことで、世論や側近たちの意見に流 されてフラフラして、帝王学がないように見えてしまう。心配して いた岸田首相の使命感のなさが明確化してきた。しかし、自民党に は、次の首相候補が見えないことも問題である。河野太郎は、マイ ナンバーカード問題の矢面にいるので、今は無理である。 岸田首相には、物事の善悪をサポートする故安岡正篤先生のような 人が必要な気がする。岸田首相は、善悪の判断基準が希薄すぎるよ うに感じる。日本の顔である首相をサポートしないと、中国にバカ にされかねない。首相は、サムライ日本を体現する存在であってほ しいからだ。 そして、政権が安定しないと、株価も安定しないので、日本の今後 が心配である。そして、1年程度は衆議院解散はできないようであ る。追い込まれ解散だけにはしないでほしいものだ。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は消耗作戦で、ロ軍の後方兵站、橋などの補給線などを攻撃し 補給の絶ち、かつ、前線に近いロ軍砲兵部隊との砲兵戦で砲門を破 壊している。 その上で、ロ軍前線部隊には、クラスター弾を使い損害を与えた後 に、突撃してロ軍陣地を制圧している。 ウ軍は、地雷除去、対戦車壕を埋め、竜の歯を除去して、一歩一歩 の積み重ねで、前進している。この積み重ねで、ロボティネの東側 で第1防衛線を突破した。 ロ軍は南部戦線で、ウ軍に勝てないために、総動員できない現時点 での最後の反撃を、東部戦線クピャンスクで行い始めた。 ロ軍には誘導弾もないので、航空機に損害を出さないために遠隔か ら滑空無誘導弾で空爆しているので、効果は限定的になっている。 1日80回もウ軍陣地に空爆をしているが、ウ軍の損害は多くない。 ・クピャンスク方面 ロ軍はシンキフカとペルショットラブネバの間のウ軍陣地に無誘導 滑空弾を使い空爆を行って、その後、ロ軍の大量の地上部隊で攻撃 している。この攻撃に対して、ウ軍はクラスター弾での砲撃で、ロ 軍部隊に大量の戦死者を出している。 しかし、ロ軍は損害を物ともせずに繰り返し攻撃して、シンキフカ の市内に入り、市街戦になっているようだ。ロ軍は、現存する重装 甲部隊で温存していた第2親衛戦車軍を投入して、ウ軍を叩きたいよ うである。 まるで、ナチス・ドイツ軍最後の戦いであるバルジの戦いのようで ある。この第2親衛戦車軍が敗退すると、ロ軍には、優秀な重装甲部 隊がなくなる。 ウ軍も増援を送り、このロ軍の攻勢を止めるしかない。ウ軍シリス キー大将も「敵の目標は、我が軍の防御を突破し、クピャンスクに 到達することだ。戦闘は非常に激しいが、いくつかの陣地は、ここ 数日で何度も入れ替わった。我が軍の兵士は、敵の進撃の試みをす べて撃退している」と述べている。そして、クピャンスクの住民に 避難命令が出された。 というように、増援をウ軍が送り、ロ軍の攻撃を撃退し始めている 。各地でウ軍は善戦して、増援部隊投入後は、ロ軍は前進できなく なっている。ロ軍は同地域へのウ軍増援誘引に成功したと述べた。 ウ軍はバフムト方面からの増援部隊であり、ロ軍の言うことは正し い。 このため、ロ軍は空爆を強化している。また、ロ軍攻撃では戦車隊 と装甲部隊を前面に攻撃しているが、精密砲撃と対戦車ミサイルで 、多数のロ軍戦車と装甲車がウ軍に破壊されている。この戦いで分 かることは、戦車や装甲車の機動攻撃の時代は過ぎ去ったことだ。 誘導ミサイルとドローンと電子戦の時代になっているようだ。新し い戦略・戦術の時代が来たようである。この理論の確立が必要であ る。 ・スバトバ方面 ロ軍は、カジマジニフカでゼレバッツ川を渡河し低地帯を占領した が、ウ軍は高地から低地の露軍を砲撃し、ウ軍はライトホロトカ、 コバリウカ、カジマジニフカで反撃して、ロ軍をゼレベッツカ川の 西側に追い出し、ウ軍はゼレベッツ川を渡河して、コバリウカの北 東まで前進している。 そして、ロ軍はノボセリフカの市内にテルミット焼夷弾を打ち込ん でいる。ということで、ウ軍はノボセリフカ市内を保持している。 ここでのロ軍の大攻勢は失敗したようであるが、この大攻勢は陽動 作戦であった可能性が高い。本命はクピャンスク方面なのであろう。 このため、ここのウ軍攻撃部隊は、早くクピャンスク方面に転戦す ることになるとみる。 ・クレミンナ方面 ロ軍、ウ軍ともにこの地域での攻撃がないようである。守備隊を残 し、攻撃部隊はクピャンスク方面に送った可能性が高い。 ・リシチャンスク方面 ロ軍は、ビロホリフカに北と東から攻撃したが、ウ軍に撃退されて いる。 他に、ロ軍は、スピルネの北と南で、ウ軍陣地を攻撃して、北のウ 軍陣地の一部を占領した。 ・バフムト方面 市内北西側では、ロ軍がベルキウカの南側とベルキウカ貯水池の北 側沿岸で支配地域を広げている。 市内南側では、ロ軍はクリシチウカ北、アンドリウカ東を攻撃した が、ウ軍に撃退されている。その南のドルジバとザイテベ付近をロ 軍は攻撃したが、ウ軍に撃退されている。 ウ軍の攻撃がなくなっている。ここのウ軍攻撃部隊もクピャンスク 方面に送った可能性が高い。 ・ドネツク市周辺 ロ軍は、アウディーイウカ要塞とノボカリノベの東、セベルネの南 を攻撃したがウ軍に撃退されている。 ロ軍は、マリンカとノボミハイリフカに攻撃したが、ウ軍に撃退さ れている。 ウ軍は、ミキルスク付近、ボハレダラの南で攻撃している。 ・ザポリージャ州方面 1.ベルカノボシルカ軸 中央では、ロ軍は、スタロマイオルスクのウ軍を攻撃したが、ウ軍 に撃退されている。ウロジョイナのロ軍陣地の複数をウ軍が奪取し 、市内中央に戦車隊を突入させた。もう1つ、ウ軍はウロジョイナ の南に回り込み、ウロジョイナのロ軍を包囲し、13日朝までにウロ ジョイナを奪還した。 東のプリュトネにもウ軍は地雷原を除去して攻撃を開始して、街の 北側ロ軍最終陣地を攻撃中。ということで、ウ軍は前進している。 2.オリヒウ軸 ウ軍は、ロボティネの東側一帯を奪還して、ベルポベ方向で第1防 衛線を突破したが、ロ軍に反撃されて、ウ軍は一度、第1防衛線外に 追い出されたが、再度、ウ軍は攻撃して、第1防衛線を越えている。 ロボティネでは、最終防衛線を突破して、3方向から市内に突入し て、北半分を奪還した。徐々にロ軍の戦力が枯渇してきているよう である。増援部隊を送らないと、この戦線はウ軍に突破される可能 性が出てきた。 ・ヘルソン州方面 ウ軍は、アントノフスキー橋の橋頭保、南西に第2の橋頭保を構築し たが、ドニプロ川上流のコザチ・ラヘリの西で、ドニプロ川東岸の ロ軍の防衛陣地のない地域から、ロ軍陣地の背後に回り、ロ軍陣地 の無効化をウ軍は目指している。ウ軍特殊部隊と海兵隊が、ロ軍の 後方一帯でも奇襲攻撃を行い、ロ軍に大損害を与えている。 このため、この地域を守備するモスクワで編成された第1822大隊の 部隊が、2週間で40%の兵士を失ったようだ。 ロ軍の装甲車部隊が、ドニプロ川を渡河したウ軍軽歩兵部隊に負け るということになっている。 もう少しで、ウ軍は重火器の渡河作戦の開始であろうか?それとも 、ロ軍の増援部隊の到着が先かの状態のような気がする。 しかし、ロ軍はザポリージャ州方面でも負けているので、増援部隊 というとクピャンスク方面から送るしかない。 ・その他方面 チョンガル道路橋を6月22日に攻撃・破壊し、7月29日にはチョンガ ル鉄道橋も破壊したが、8月6日にはチョンガル道路橋とヘニテェス カ橋の破壊して、クリミアとヘルソン州東部を結ぶ橋をすべて破壊し て、補給をできにくくした。 残すはクリミアとヘルソン州西部を結ぶ橋であるが、激戦の続くオ リヒウ軸へは、遠回りになる。このため、ロ軍は浮き橋をチョンガ ル橋の近くに敷設した。 そして、12日もクリミア橋にS200ミサイルを複数発打ち込んだよう であるが、ロ占領軍のアクショノフ首長は、橋に損傷はないという。 もう1つが、モスクワでウ軍無人機飛来が常態化している。モスク ワのソビャーニン市長も連日、モスクワや近郊の州に相次いでドロ ーンが飛来してきたことを明かした。いずれも防空システムが迎撃 したと説明されている。 このドローン飛来後に、特にモスクワや近郊で軍需工場などの火災 が頻発している。モスクワ近郊のオディンツォボでは倉庫が炎上し たり、モスクワのカラミシンスキー水力発電所付近で爆発事故が発 生したりしている。11日はモスクワ近郊のカルーダの変電所で火災 が起きている。 その中でも、特に、モスクワの北東70kmセギエフ・ポサードのザコ ルシキー光学機械工場が爆発炎上した。自爆型ドローン「ランドセ ット」の重要な部品を製造し、かつ次期爆撃機「ツポレフ95」を 開発していた工場であり、爆発により6棟が全壊、4棟が半壊した。 70人以上の死傷者が出ていて、まだ12人が行方不明ようだ。 ウ軍のドローンにより、モスクワのドモジェドヴォ空港とブヌコヴ ォ空港でもたびたび、飛行停止になり、トルクメニスタン航空がモ スクワ便を運行停止した。そして、ドローン飛来後、空港付近で何 かが爆発炎上した。 しかし、空襲警報が事前に鳴らないようであり、防空システムで警 報が作動しない。このことから、ウ軍ドローンは、超低空飛行をし てモスクワに到達しているようである。 目標はモスクワ市内の「オスタンキノTV塔」であろうと推測する が、GPSではなく慣性誘導で飛び、高い目標物を目指し、そこから真 の目標物に向かうようである。これにより、電波妨害を受けない。 このようなドローン攻撃のウ軍の目的は、ロシアの国民に対して「 戦争はひとごとではないのだ、自分たちも危険なのだ」と思わせた いということだと防衛研究所の高橋杉雄氏はいう。 一方、ロ軍はウ空軍のスタロコスティアニフ空軍基地をミサイル攻 撃した。基地は大きく破壊されたが、戦闘機などは回避したとウ軍 報道官は言う。11日もキンジャール弾道ミサイル4発を発射し、イバ ノ・フランキウスク州のコロミア飛行場付近に3発着弾した模様。被 害は不明。ストーム・シャドウミサイルの保管庫が同飛行場にある とされている。 また、ロ軍は、モスクワへの無人機攻撃の報復として、ウクライナ の民間人やインフラを狙って、ウクライナ各地をミサイルで攻撃し ている。それと、南部地域の都市への無差別砲撃も始めている。 これを阻止するために、ドイツはさらに2基のパトリオットランチャ ーをウクライナに引き渡した。 ・ウクライナの状況 現在のウ軍および準軍事組織は111個旅団および143個独立大隊で構 成され、人員は60万人であり、さらに50万人、32個旅団が訓練中と のことであり、ロ軍に比べて3倍以上の人員である。 そして、ゼレンスキー大統領は、多くの責任者が不正をしていると して、徴兵の責任者である軍事委員会のトップをすべての州で解任 するとし、前線の戦いで負傷したウ将兵を割り当てるとした。 この情勢で、サウジアラビアでの和平会議で、領土一体性の原則が 合意されたようであり、中国もその原則を支持したというが、合意 文書もなく、声明も発表されなかった。 それと、米国元高官とロシアの有力者やラズロフ外相は、月2回のペ ースで協議を続けている。この中でロシアはクリミアを失うことに なったら、核を使うと述べているようである。 米国から、その情報を提供されて、ウクライナ側も和平交渉をおこ なうことには合意したが、ゼレンスキー大統領は「ロシアと対話す る用意はあるが、プーチンとは行わない。」という。 もう1つが、最新の世論調査結果で、ウクライナに対する軍事援助 などについて、米国民の55%が連邦議会はさらなる資金援助を提供す べきではないとし、逆の意見は45%であった。トランフ氏の主張が米 国民に影響していることがわかる。 これに対して、バイデン政権は、ウクライナへの追加軍事援助131億 ドルを議会に要請し、また、経済・人道支援に85億ドルを追加要求 している。この要求に議会がどう出るかが見ものである。 ということで、米国も世界の秩序安定のためより、自国民優先とな り、米国の覇権も終了することになり、世界秩序安定の仕組みを日 欧で作る必要がある。日本も周辺事態への関与を米国から求められ るし、米国は台湾戦争時に駆けつけない可能性もある。 その上、EUやNATO加盟欧州諸国の政治家たちは、すでにトランプ再選 は織り込み済みで、2025年1月就任後のトランプ政権の外交への対応 を検討し始めている。特にドイツは対ロ政策で弱腰になっている。 米国でもウクライナへの支援は、恐らく、2025年1月以降はできなく なると見た方が良いかもしれない。そこまでに、ウ軍はどこまで領 土を奪還できるかということになる。徐々に米国民の感覚は大きく 変化しているようだ。 米国は、日本にウ軍への武器援助を要請するが、時事通信の8月世論 調査でも、防衛装備品の輸出ルール緩和を巡り、殺傷能力のある武 器輸出を認めることへの賛否を尋ねたところ、「反対」が60.4%に上 り、「賛成」の16.5%を大きく上回った。「どちらとも言えない・分 からない」は23.1%となり、時期尚早のようである。 このため、ウ軍も急ぐ必要になっている。秋が来ると泥濘になり、 装甲車の移動が困難になる。 そして、ウ軍パイロット6名は来年夏までしかF-16の訓練を完了でき ない見込みだという。このため、F-16の供与も2024年夏以降になる ということである。早期のF-16供与は期待しない方が良い。 米国防省も、現在、月産約24,000発の155ミリ砲弾を来年からは月産 80,000発に増産する予定であり、ウ軍への供与量を増やすことになる。 しかし、現在、ウ軍は毎日8000発を使っているので、全然足りない が、西側全体の砲弾の生産量が少なすぎである。今は備蓄分を出し ているが、それも尽きる可能性がある。 どちらにしても、2024年末までには、和平交渉になると見ておくこ とが必要であろう。 穀物輸出について、ウ海軍は黒海で民間の船舶が航行出来る暫定的 な海上回廊を設置した。ウクライナ産穀物輸出協定からロシアが先 月離脱したことを受けた措置で、ウ海軍は、「この暫定的な回廊を 通じ商船はウクライナの港湾への出入りが可能」との通達を出した。 トルコ海軍が、この回廊を守る意向があれば、よりよいと思うが、 トルコの状況は分からない。 そして、ロシアが及ぼす軍事的な脅威や機雷の危険性は全ての航路 沿いに存在し続けているして、ロシアとの合意はない回廊であると した。ロ海軍が出てきたら、水上ドローンやハープン・対艦ミサイ ルでロ軍軍艦を攻撃するようだ。 ・ロシアの状況 追加の動員ができないことで契約兵主体で募集をしているが、2019 年の時点では、典型的な契約兵には兵役経験があることが前提で、 額面で月3万8000〜4万2000ルーブル(約5万6000〜6万2000円)の給 与をもらっていた。死亡した場合、その家族は300万ルーブル(約 445万円)の補償金を受け取ることができた。当時のロシアの平均給 与が月4万7500ルーブルであった。 しかし、今は、2022年末の契約兵になると、待遇はまったく違って 、給与は月19万5000ルーブル(約29万円、平均給与の3倍以上)で、 さらに兵士が死亡した場合には、大統領一時金だけで500万ルーブル (約740万円)が支給される。それ以外に兵士の家族は保険金を受け 取る。その金額は296万8000ルーブル以上だ。 ということで、現在のロシアにおける戦死は「名誉ある運命」であ るだけでなく、自らの命を「有益」に失うことでもあるのだ。 このように、ロシア兵の待遇は良いが、給与が支払われていればの 話になる。 事実は、給与は約束の3分の1以下であり、行方不明として戦死一時 金も支払われないようである。しかし、今でも、このうまい話に乗 る貧しいロシアの人たちがいるようである。 もう1つ、ロシア周辺国の移民たちである。この移民たちを強制的 に契約させている。兵員は無限にいると思っている。 そのため、ロストフの飛行場では、飛行機から負傷兵が降ろされて 、滑走路に寝かされている。受入先のモスクワの軍病院から受入れ を拒否されたようだ。クピャンスクや南部ザポリージャ州戦線での 負傷兵が多く、多くの病院が受け入れできない状態になっていると いう。ロ軍兵は、死を前提とした消耗品扱いである。 それでも、この戦争の戦費は、ロシア経済に大きな重しとなって、 ルーブルが通貨安になっている。それによるインフレも起きている。 最低でも2024年3月までは、今の状態を続ける必要がある。その後は 、総動員法を発令する必要になるが、それまでは、占領した領土を 保持する事だと思うが、ロ軍は大攻勢をかけてくる。ロシアの世界 第2の超大国としての意地やプーチンの妄想がそうさせているようだ。 カディロフは、「我軍はウ軍より100パーセント優れている。なぜ交 渉するんだ。奴らをやっつけるんだ、それで終わりだ」と、キエフ との交渉に断固反対している。これは、プーチンの意見でもあるよ うだ。 もう1つが、ウ軍に叩かれている弾薬や軍装備の不足がある。ロ軍 はカザフスタンからロシアに軍事装備を移している。ロシアのトラ ックが戦車、ミサイル、半導体、マイクロチップ、その他の物資を ロシアに向けて輸送している様子が映っている。物資をかき集めて いることがわかる。北朝鮮やイランからの兵器だけではなく、ロシ ア周辺諸国からも、かき集めている。 その証拠として、ブリヤート地方最大の軍用装備の保管基地として 知られるヴァグジャノヴォでは、古いソ連製戦車と装甲兵員輸送車 の40%以上が倉庫から運び出され、残る60%は装備がほとんどない状 態のもので、すぐには使用できいことで、兵器の不足が出ているの がわかる。 さあ、どうなりますか?