ウ軍は、諸兵科連合作戦を放棄して、消耗戦に路線を変えた。ロ軍 の防御と反撃の作戦も大きな損耗になっている。この現状と今後の 検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで安値となり、2023年7月28日は35,459ドルで、31日は 100ドル高の35,559ドル、8月1日は71ドル高の35,630ドル、2日は 348ドル安の35,282ドル、3日は66ドル安の35,215ドル、4日は150ド ル安の35,065ドル。 先週、株価は下落した。アップルの決算が悪く、主力製品であるス マホの回復が鈍く、売上高は3四半期連続で前年同期を下回ったこと により、アップルは5%近い下落をしたことで、4日の全体の株価も下 落した。また、アップルの時価総額が歴史的な3兆ドル(約426兆円) 水準を割り込んだ。 8月1日に、フィッチは米国債を格下げして、最上位の「AAA」から 「AA+」に1段階引き下げた。これにより、2日の株価は下落。 フィッチの判断は、米国の債務は32.7兆ドルになり、この上に年末 までに1.5兆ドル増になるということで、財務破綻の心配が出てきた ということだ。 4%金利とすると、1.36兆ドルの金利支払いが必要になる。190兆円の 支払いである。米国の税収は8兆ドルで、米国防費は8864億ドルであ り、それより大きいことになる。この状態では、米債務は今後10年 間、毎日5.2億ドル増加するということで、持続の不可能であり、ど こかで歳出を削減する必要になる。 ローマ帝国の財務破綻の最後を見ているような感じだ。それより債 務率の大きな日本は、長期金利の低下などの対応策を打って、徐々 に衰退する方向になっている。 8月1日に、米ISM製造業指数は7月46.4となり、市場予想の46.9を下 回って9ケ月連続で活動縮小を示した。8月3日に7月米ISM非製造業指 数も出て、52.7と前月の53.9から低下し、市場予想の53.0も下回っ た。 その上に、4日、7月雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月に比べ 18.7万人増で、市場予想の20万人増より低く、かつ5月と6月の雇用 者数の伸びが下方修正されたことで、インフレの上昇が穏やかとの 見方から、朝方は買いが入った。 日本の超低金利政策で、日本人の米株買いが多くなり、米株は上昇 している。 しかし、バフェット氏は、4%の短期米国債を積極的に買い、米株に は魅力がないという。配当利回りが4%以下であり、利回りからする と米株投資はおいしくない。 そして、日銀はYCC修正に動き、一時的に利上げかと思われたが、2 日後には、臨時の国債買いをすることで、何も変わっていないと、 安堵されている。 この中、バイデン米大統領が14日にも、主要な技術分野での中国へ の投資を制限する大統領報を発令する見通しであり、米中分断も一 層、明確になる。 このため、花王の製品が中国で売れなくなっている。トヨタなどの 日本の自動車も売れなくなり、トヨタは、中国工場の非正規社員を 1000人リストラした。米国のテスラのEV車も30%以上減で売れなく なり、アップル製品も売れない。グッチなどの欧州企業の売り上げ も落ちている。 中国の消費者も自国製品を買い、欧米日の製品を買わなくなってい る。分断は、欧米日の製造業の売上でも影響がある。早く、日本企 業も、中国市場から撤退するべきであると思う。 中国は、スパイ防止法で、いつでも外人たちを捕まえられる体制に した。これでは、商売はできない。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、7月3日は33,753円とバブル崩壊後高値とな り、28日は32,759円で、31日は412円高の33,172円、8月1日は304円 高の33,476円、2日は768円安の32,707円、3日は548円安の32,159円 、4日は33円高の32,192円。 先週、株価は下落した。8月1日のフィッチの米国債格下げをトリガ ーとして、利益確定売りが出たことで、大幅な株価の下落になった。 1%までの長期国債金利を許容すると思われたが、日銀は0.6%で国債 買取をおこなったことで、実質的には何も変わらないと市場は見だ した。このため、円安になり138円台から143円台に円安になってい る。 しかし、145円では財務省の円買い介入になるので、これ以上の円売 りもできない。円安の限度があり、株価も限度があるということに なる。 株価も限度を作り、GPIFは株価が高くなると、株売りで株価を冷や し、株価が下がれば、株を買い株価を上げることで、株価も操作す る。その上、年金資金の確保もできるので、一石二鳥である。 円も株価も国債金利もすべて、管理する完全統制経済主義国家に日 本をして、その統制経済にしている間に、企業の育成を行い、工業 国家として再生させる必要がある。 この統制経済の施行で、今の自民党政権は権力が強いことになって いる。しかし、それだからこそ、木原官房副長官のような疑惑のあ る人を政権中核に置いてはいけない。 政府の権限が強くなる時は、権限を傘に着た横暴や乱用をするべき ではない。木原さんは、少なくとも身体検査時点でダメな人のよう な気がする。 殺人事件をうやむやにすることは、国民感情としても許しがたいこ とである。倫理として論語以前の問題である。政府要人の善悪の基 準がおかしくなっている。自民党の横暴は、必ず国民の反発を招く ことになる。 防衛力増強のためには、武器を海外に売り、防衛産業を一大産業に する必要もある。ウクライナ戦争に武器を提供して、日本製武器の 優秀性とウ軍と共同で最先端武器の開発をするべきである。特に遅 れているドローン+AIの統合兵器開発をするべきだ。 しかし、これ以上の増税は無理がある。国民負担が大きすぎである。 議員数を削減し、地方人口を減少が避けられないが、大規模農業に シフトさせて農業収入を増大させることで、日本の農産物の自給率 を上げていくしかない。結果、地方への補助金を減らすことである。 地方の産業は、農業と農産物加工業を中心として、中核都市を作り 、そこに海外からシフトする製造業の工場を作ることである。しか し、雪の多い地域の冬の都市維持経費が大きく、農業と林業、水産 業が中心になさざるを得ない。今の北海道のような産業構造に、東 北や山陰の日本海側もするしかない。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は、諸兵科連合作戦が行えないようである。ウ軍の下士官の多 くがロシア式の訓練を受けているので、諸兵科連合作戦の指揮がで きずに、欧米で訓練してきた兵員のいうことが理解できないようで 、作戦実行が無理のようだ。 このため、ロ軍と同様な消耗戦での戦い方になっている。砲兵戦で 、敵の砲兵を叩き、その後、敵陣地の砲撃を行い、その後地上部隊 を前進させて、敵陣地を攻略する手法である。 ロ軍は、砲兵戦で負けて、砲撃での敵陣地の消耗ができないことで 、航空攻撃にシフトして敵陣地への空爆を行い、その後地方部隊を 突入させる方向になっている。 ロ軍には誘導弾もないので、無誘導弾での空爆になり、低空飛行を 行っている。もし、スティンガーがあれば、撃ち落せするが、東部 戦線にスティンガー携帯ミサイルが配備されていないようである。 どちらも消耗戦へのスタイルになってきた。ウ軍に機甲部隊の電撃 戦を期待したが、それはできないことになっている。 ・クピャンスク方面 ロ軍はシンキフカに攻撃したが、撃退さえている。その東のペルシ ョットウブネバ付近では、南に前進している。 また、ロ軍はペトロパブリフカとキシリフカのウ軍陣地に空爆を行 っている。 ・スバトバ方面 ロ軍は、カジマジニフカでゼレバッツ川を渡河し低地帯を占領した が、ウ軍は高地から低地の露軍を砲撃し、そこ後、ウ軍増援部隊が 低地に攻撃して、ロ軍をゼレベッツカ川の西側から完全に追い出し た。 しかし、ロ軍はノボセリフカの市内に攻撃して占領した。 ・クレミンナ方面 ロ軍は、ディプロバの南からセレブリャンスキーの森方向に空爆後 地上部隊で、ウ軍陣地を突破して、ドネツ川に到達したようだ。 逆に、ウ軍は、ディプロバの西で攻撃を行い、わずかに前進してい る。どうも、ロ軍は先に地上部隊の攻撃をせずに、空爆後の攻撃に シフトしたようである。 ・リシチャンスク方面 ロ軍は、激しく空爆をビロホリフカの北側に行い、その後、地上部 隊の攻撃で、高台にあるウ軍陣地のいくつかを占領したようである。 ロ軍の攻撃パターンができつつあるようだ。もう1つ、ロ軍はテル ミット焼夷弾から白リン焼夷弾に切り替えたようであり、構造の簡 単な白リンの方が製造が楽なのであろう。 このため、ウ軍は、ロ軍空爆を阻止する必要になっている。英国は ASRAAM空対空ミサイルをトラックに搭載した急造対空兵器をウクラ イナに供与することで、ロ軍空爆を阻止するようである。 ・バフムト方面 市内南側では、ウ軍は、クリシチウカ付近や線路の西側一帯からロ 軍は撤退した。代わりに、この一帯にロ軍は激しい砲撃を行ってい る。アンドリウカ付近のウ軍は、線路の東側に偵察隊を送り、ロ軍 砲兵の位置を見つけている。 クデュミウカは市街戦になって、西側をウ軍、東側をロ軍という配 置で攻防戦をしている。 ウ軍は、北西方向の攻撃部隊を南に回して、南で攻撃を加速してい るようである。ロ軍も同様に南に予備兵力を回して、防御するよう である。 ・ドネツク市周辺 ロ軍は、アウディーイウカ要塞とプレボマイスクを攻撃したが撃退 されている。 ロ軍は、マリンカに攻撃したが、ウ軍に撃退されている。 ウ軍は、ミキルスク付近、ノボミハイリフカの南、ボロデミリウカ の北、ボハレダラの南で攻撃を開始している。この付近のロ軍は、 予備兵力をベルアノボシルカ軸やオリヒウ軸に取られて、手薄にな っていることを、ウ軍が突き止めて、攻撃を開始したようだ。 ・ザポリージャ州方面 1.ベルカノボシルカ軸 中央では、ロ軍は、スタロマイオルスクとウロジョイナのウ軍を攻 撃したが、事前に分かり、待ち伏せて反撃したことで、ロ軍に大き な損害を与えたようである。 2.オリヒウ軸 ウ軍は、ロボティネの東側一帯を奪還して、ベルポベ方向、ノボポ クロフカ方向に進軍して、この地域の地雷原が除去し、マリャル国 防次官によると、この地域のロ軍の第1防衛線を数カ所で突破したが 、ロ軍は、主要な高地にコンクリートの要塞を建設し、これ以上の ウ軍の突破が難しいという。しかし、ウ軍は、ロ軍の弱点を見つけ たようだ。 南部作戦司令部のフメニウク報道官は、「南部戦線でロ軍は砲兵の 優位性を失いつつある。主導権は、非常にゆっくりと、しかし非常 に自信をもって、ウ軍に移っている。弾薬庫の破壊の為に、ロ軍は 弾薬の数量で負け、領土的にも負け始めている」とした。 これは、ロ軍の兵站を止めたことによる。クリミアと南部メルトポ リを結ぶチョンガル道路橋を6月22日に攻撃・破壊し、7月29日には チョンガル鉄道橋も破壊した。このチョンガル橋経由の補給が7割を 占めるので、それを破壊されたことで、前線への弾薬・食糧の補給 が遅れているようだ。その上に、ストームシャドーで、後方の兵站 拠点や弾薬庫を叩いたことも大きく影響している。 その上にクリミア大橋も破損しているので、南部戦線への補給は、 東部からマリウポリ経由で行うか、クリミアとヘルソン州を結ぶア ルムヤンスク橋経由で行う必要がある。 補給が少なく、砲兵戦でもロ軍はウ軍に負けていることで、ウ軍は 徐々に前進している。 ・ヘルソン州方面 ロ軍は、ここでも空爆を増加させ、ウ軍は砲撃を強化して、ロ軍砲 兵隊を潰している。 それにより、ウ軍は、アントノフスキー橋の橋頭保、南西に第2の橋 頭保を構築したが、更に南西に第3の橋頭保を構築して、そこから偵 察部隊をロ軍占領地に送っている。ウ軍は本格攻撃を準備している ようにも見える。 ウ軍は精密砲撃ができる利点を最大限活用して攻撃をし、ロ軍は航 空勢力優位の利点を活用して攻撃するという、両方ともに、自軍の 優位を最大限活用した攻撃になってきた。 ・その他方面 5日、ロシアの商業タンカーがケルチ海峡付近でウ軍の水上ドロー ンに衝突され爆発して、航行は困難となっているようだ。 航続距離の長いウ軍の水中ドローンができて、4日にノボロシスクの ロ海軍基地で、揚陸艦オレネゴルスキー・ゴルニャクが、このドロ ーン攻撃を受けて、深刻な損害を受けた。 ロ海軍は、クリミア半島セバストポリからロシア領内のノボロシス クに移したが、それも攻撃されることから、ソチにロ海軍基地を移 すしかない可能性がある。 特に、この水中ドローンの発見は難しいようであり、特に夜間攻撃 時には、より難しいようである。ロ軍は対水中ドローン用に水雷防 御網を復活させたようだ。 この他、モスクワ地方のアハカソポ村の酸素電池倉庫が爆発炎上し た。クリミアのベルジャンスク空港も弾薬庫が爆発、フェオドシア の大規模な石油貯蔵施設を攻撃、モスクワ・シティの政府関連機関 の入るビルをドローンで2日連続で攻撃した。 ・ウクライナの状況 F-16戦闘機の訓練を行う西側プログラムに参加するウクライナ人パ イロット8人が選ばれたが、訓練開始日はまだ決まっていない。さら に英語が多少できる20名は今月から語学コースを開始できる見込み であり、さらに32名が訓練予備軍に指名した。ウ軍は、早くF-16が 欲しい。 しかし、デンマークも退役するF-16を、アルゼンチンに売却するこ とが決まり、ウ軍への供与はなくなったようである。次にオランダ とベルギーのF-16がF-35と入れ替えになるが、このF-16の供与にな るのであろうか。 そして、5月のゼレンスキー大統領のベルリン訪問後、約束された 110両のレオパルド1戦車のうち引き渡されたのはわずか10両のみで 、20台のマーダー歩兵戦闘車とアイリス-T防空システムはまったく 引き渡されていない。というように、西欧の「ウクライナ支援疲れ」 が見えてきている。ドイツではウクライナ支援を止めるという政党 の支持率が上昇している。 ウ軍が機甲戦から消耗戦にシフトしたことで、戦車より弾薬の方が 優先度が高くなってきたことにもよるが、トルコからウクライナは DPICMクラスター弾の供与を受けている。もう1つが、防空システム であり、リトアニアがNASAMS発射装置をウクライナに供与のようだ。 その上、ブルガリアは、ウクライナへの装甲兵員輸送車ほぼ100台の 供与が決まった。ロシアの脅威を感じる東欧諸国の供与が多くある。 ウクライナは、8月5-6日のサウジで開催される和平会議で、グロー バル・サウスの支持を得る方向で、準備をしている。40ケ国が参加予 定で、中国も参加する。 もう1つが、停戦・和平後のウクライナの安全保障の協定作りを開 始した。まず、米国との間で行うが、そこでの協議で決まったこと をEU全体にも拡大する思惑であろう。この戦争の終わり方に米EU共 に目を向き始めている。 西欧の「ウクライナ支援疲れ」や2024年11月の米国大統領選挙でト ランプ大統領が当選すると、ウクライナも米国の援助を受けられな くなることも考慮する必要があるからだ。 その上、ポーランドとの関係もおかしくなっている。ウクライナの 穀物をリトアニアの港から積み出すことが決まり、ポーランドを貨 物列車で通過するだけであるのに、ポーランドはウクライナ産穀物 の自国内への持ち込みを拒否した。 これに対して、ウクライナ外務省は、ポーランドの拒否はおかしい と述べたが、ポーランド政府はポーランド農民の利益のためにそう するという。 ポーランドとしても、ウクライナ産穀物が輸出できないことで国際 穀物価格が上昇することを望んでいることがわかる。 ということで、リトアニアの港の利用もできないことになった。 ウクライナ産穀物の輸出阻止は、ロシアだけではなく、ポーランド などのEUの農業国も望んでいることがわかる。 トルコのエルドアン大統領も、プーチンと話し穀物合意への復帰を 持ちかけたが、条件が整えば、復帰するという。 ロ農業銀行へのSWIFT接続が条件であり、ウクライナもその条件を飲 むしかないと思われたが、その途端に、イスラエル船など6隻がウク ライナの港に到着した。 ロ海軍は、黒海で、ウクライナに向かう船を攻撃するとしたが、ウ 軍の水上、水中ドローンの攻撃を受けるので、手出しができなかっ たようである。トルコ海軍艦艇もいるし、トルコとの関係も悪くな り、ロ海軍は、口だけの攻撃しかできないようである。 一方、ウクライナでのドローン技術が発展して、モスクワの特定ビ ルにドローンを2度も突入させている。空中ドローン「ビーバー」 の航続距離は、1000km程度であり、モスクワに到達可能である。 ノボロシスクのロ海軍基地まで届く、水中ドローン「マリッチカ」 も開発した。 S200ミサイルを地対地ミサイルと活用して、ロシア領内を攻撃して いる。この戦争でウクライナの軍事技術は大きく進展している。ソ 連時代の一大軍事産業地域だけはある。その開発スピードも早い。 それでも、長期の消耗戦になると、ウクライナが不利になる。ロシ アの防衛産業の規模は、西側全体の防衛生産量を仰臥している。こ のため、ウクライナに支援できる量もロシアが使用できる量と比べ ると少なくなる。 ・ロシアの状況 ロ国防省は、ベルゴルド州とクルスク州の領土防衛隊に武器と車両 を供与したが、武器は猟銃であるという。プーチンは、領土防衛隊 が反乱することを恐れているのであり、チェチェンのアフマド軍を ベルゴルド州の国境に配備したが、地元民の家に押し入り、その家 の住民を追い出している。 このため、領土防衛隊を組織しているが、これは反乱のリスクがあ るということで、プーチンに忠誠を誓うチェチェンのアフマド軍を 使うことになる。すると、狼藉をチェチェン軍はするので評判が悪 い。このため、反乱のリスクも高まるということになる。 一方、ウ軍参謀本部は、ロ軍が同国の戦闘損失の規模を隠すために 自らの死者を焼いているとし、ロ軍はザポリージャ州メリトポリに 火葬場を設置したという。ロ軍内では負け戦であることを認識され 始めている。ロ軍は手一杯で、兵站、物資、人員、武器に問題を抱 えている。特にウ軍の後方補給拠点への攻撃で物資が足りない。 このため、ウ南軍報道官のフメニュク氏は、ロシア占領軍・政府の 家族や財産はすでにクリミアから避難している。これらはすべて、 ロシア上層部が将来の和平交渉の準備をすでに整えていることを示 す兆候だという。 負け始めたロシアは、ベラルーシに対して「スバウキ回廊」への攻 撃を指示しているのはないかということで、ポーランドとラトビア は、ベラルーシとの国境の防衛を強化している。そして、ワグナー 軍が、スバウキ回廊付近にいることである。 ロ軍は人員不足であり、早く追加の動員をしないと前線が維持でき ない。しかし、7月29日から8月2日までの5日間で、ロシア国内の徴 兵事務所や関連施設への放火や放火未遂が少なくとも28件発生した 。ロ情報機関「連邦保安局FSB」職員を名乗る人物から電話で放火を 強要されたともいうが、この裏には国民の動員に対する嫌悪感が大 きいことも分かる。 そして、今年の国防予算は当初4兆9800億ルーブル(540億ドル)から 9兆7000億ルーブル(1050億ドル)に倍増し、国防予算は国家予算全体 の3分の1である。 戦闘における「ロシア劣勢」との報道、民間軍事会社ワグネルの武 装蜂起などをきっかけに、ルーブルの下落が止まらず、対ドル94ル ーブル、対ユーロ105ルーブルになっている。 ロシア中央銀行は、自国通貨の下落によって輸入物価はさらに上昇 し、インフレ懸念が高まる展開を懸念し、7月21日、予想外の大幅利 上げで8.50%にした。 その上、ロシアから海外へ、ヒト・モノ・カネの流出は増加してい る。ヒトは100万人も流出した。それによっても通貨安になり、輸入 物価は上昇している。 しかし、「プーチンは、トランプが自分を助けてくれることを知っ ている。来年の米国選挙は事態を複雑にする。プーチンによれば、 トランプが勝てば、ウクライナへの政治的支援は損なわれる」とダ ニエル・フリード前駐ポーランド米国大使は言うが、2024年大統領 選挙で、トランプが選挙に出られないように、または選挙で勝たな いように、バイデン政権は、国会議事堂襲撃事件などの訴訟を起こ している。 これに対して、トランプ前大統領は、2021年1月6日の国会議事堂暴 動と2020年の大統領選挙を覆すための捜査に関連した連邦政府への 無罪申し立てをした後、多くの法廷闘争に時間と費用を費やしてい る状況に不満を漏らし、最高裁による「仲裁」を求めた。 このようなトランプ氏の行為に対して、トランプ氏の弁護士ジョン ・ラウロ氏は、トランプ氏がマイク・ペンス氏に法律を破るよう圧 力をかけたことを認めた。ペンス氏もトランプ氏は大統領選挙に出 るべきではないと言っている。 しかし、トランプ当選の希望がある限り、ロシアは戦争を止めない ことも確かである。2024年11月までは続くことになる。 さあ、どうなりますか?