ウ軍はバフムト、ドネツク州西部、ザポリージャ州で、本格的な攻 勢を開始したが、主攻撃軸はどこなのであろうか。この現状と今後 の検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで2022年年初来安値となり、2023年6月9日は33,876ドル で、12日は189ドル高の34,066ドル、13日は145ドル高の34,212ドル 、14日は232ドル安の33,979ドル、15日は428ドル高の34,408ドル、 16日は108ドル安の34,299ドル。 先週、株価は上昇した。14日6月FOMCでは金利据置きになり、しかし 、7月は利上げをほのめかしたので、年内の利下げはないと市場は観 測している。パウエルは、利下げは2、3年先というというので、市 場予想とは大きく違う。 FRBが公表した金融政策報告で、FOMCは、インフレ率を2%へ戻すのに 適切な追加の政策引き締めの程度について、会合ごとに判断すると し、行き当たりばったりの状態であるようだ。予測などをしないい うことである。 そして、6月ミシガン大学消費者信頼感指数も63.9と上昇し、1年期 待インフレ率も3.3%と落ち着いてきた。 これらを受けて、F&Gインデックスは82と強欲であり、買いの気分は 強い。しかし、16日は利益確定の売りが出て、株価を下げた。 利上げ停止から利下げ迄の時期が一番株価が上げるとみられている ので、その時期に到達したようである。BofAの調査によると14日ま での1週間はキャッシュファンドから株式ファンドに資金が移動し た。個人投資家の心理が過去19カ月で最高の水準にあると。 しかし、株価上昇の大きな部分はAI関連株であり、エヌディデアや マイクロソフトなどである。 米国は金利を上げるが、FRBも財務省も銀行への資金提供は行い、量 的緩和を行っていることで、銀行は資産運用のために株や不動産な どを運用するしかないようである。このため、金利上昇時の株高に なっている。 この金利を上げることで、中国が借りているドル建債務の金利負担 が増えている。16日には、ECBは0.25%利上げになって、ユーロ建債 務でも利払いが増えることになる。 中国は、不動産債権や途上国債権などで、回収不能になり、100兆円 以上の損失が出ている。 この状況で、米国は金利を上げている。米中対決で、経済より政治 の方が上であることがわかる。欧米は、経済的に中国をつぶす政策 を行っているようだ。 自国の金融機関には、資金を供給して、流動性を確保しているので 、当分は景気後退を防ぐことができる。 しかし、キッシンジャー元米国務長官は、中国と台湾の緊張状態が このまま続けば、中台間で軍事衝突の可能性が高いとの認識を示し た上で、緊張緩和につながる対話を引き続き期待していると述べた。 米中関係は経済にも大きな影響が出るが、イーロン・マスク氏やビル ・ゲイツ氏などが中国を訪問して、中国指導部と会話をして、緊張緩 和の糸口を探しているようだ。 そして、米政府は14日、ブリンケン国務長官が16-21日の日程で中国 と英国を訪問し、18-19両日に北京で中国高官と会談するとした。 台湾でも、第3政党「民衆党」が勢いを増して、支持率で国民党を上 回ってきた。中国に強硬な与党・民進党、中国に融和姿勢の国民党 とは一線を画し、中国とは「現状維持」の姿勢であるが、戦争にな らないようにする主張が、台湾国民に受け入れられている。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、2023年6月9日は32,365円で、12日は168円高 の32,434円、13日は584円高の33,018円、14日は483円高の33,502円 、15日は16円安の33,485円、16日は220円高の33,706円。 先週、株価は1400円の上昇と大幅な上昇になった。日経平均は 33,700円と33年ぶりに33,500円以上に到達した。 1つの要因が、世界でも日本だけの金融緩和であり、円安になってい る。141円台になり、円での売上高や利益が膨らむことになる。 このような円安でも、米国は、為替監視から日本除外した。これは 16年の指定開始後で初である。 このため、円安は公認されたことになり、これとあいまって、企業 が商品価格を上げているので、売上高と利益が増加することが見え ているので、名目での日本経済は拡大する方向である。その上にイ ンバンド需要が乗るので、大変なことになる。 日本だけのマイナス金利は、バブルを生み出しているとも見えてく る。少なくともゼロ金利までは戻す必要になっていると思う。YCCも 上限幅の拡大をして調整した方が良いし、日銀は、株価上昇を抑え る意味でも、ほんの少しづつETFを売った方が良い。バブル抑制にシ フトするべきである。 宮田直彦氏によると、エリオット波動的にも、サード・オン・サー ドの状態であり、日経平均は、「不安の壁をよじ登る」状態になっ ているという。このため、35,000円程度はいくことになるという。 これは、バブルの発生になるということである。 バブルが起こっていると見えるのは、新規の個人投資家が大量に、 株式市場に入り始めていて、株価上昇をけん引しているようである からだ。 もう一方で、中国の景気が落ちていることで、中国人富裕層は、日 本に資金を退避してきている。中国の景気が落ちたことで、東南ア ジア経済も影響を受けていくようであり、富裕層は資金の退避場所 として、日本に投資する方向である。 日本人の賃金が低く、相対的にも日本に工場を建てた方が、儲けら れると見ているようだ。 それと、日本だけが金利がなく、いくらでも銀行が貸し出すので、 投資資金も日本で借りた方が良い。しかし、欧米以外の企業や人に は、日本の銀行は日本国内での投資にしか貸し出さない。 世界で金利を上昇させないのは日本しかないことのメリットであり 、このため、世界から投資資金が集まることになる。このため、日 本経済は拡大して、その結果で株も上がるようだ。 政治的には、岸田首相は解散総選挙を見送った。広島サミット後で は支持率も上がったが、その後、長男の首相官邸での行動やマイナ ンバーカードの不備などの問題が出て、支持率が落ちた。 その上にLGBT法案のゴリ押しで、コアな保守層の支持も失くしてい る。しかし、秋口での選挙でも、増税を言うと、自民党への得票は 大きく減ることになる。 増税なしでの防衛費増額と少子化対策費の捻出が必要になっている が、1つには経済拡大での増収があり、もう1つは議員定数の削減 が必要になる。この議員定数の削減は維新の会が大阪で行っている ので、維新の会は、それを総選挙でも公約にするはずであり、この 部分での自民と維新の会の公約で大きく違うことになる。 議員定数削減の公約ができないなら、自民党は、地方交付金削減な どの支出削減のメニューが必要になる。都市部支出削減は、企業業 績UPでの増収効果を下げることになるので、できない。 支出と増収の効果を図り、どこを切るのか見極めることである。 高齢者福祉も見直しが必要であるが、やりすぎると得票減の結果に なる。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は、本格的な攻勢のフェーズに入ったが、バフムト、ドネツク 州西部、ザポリージャ州での戦闘では、進軍速度が遅く、まだ、本 格的なロ軍防衛線にも達していない。それと、6月前半は雨が多く、 戦車などの装甲車が自由に移動できなかったことも大きい。 現状では前線でのロ軍航空力が、ウ軍の防空能力より上であり、こ のままでは機甲部隊の力が発揮できない。 防空能力の拡充が絶対に必要であり、その確保をおこなうか、もう 1つは奇襲作戦で、ロ軍が思ってもいない方向からの攻撃をするし かない。 ・バフムト方面 ウ軍はバフムト北西郊外で、M03号線を市内方向に進撃して、ロ軍は 潰走して、市内に向かていたが、ヘルソン州から最強の増援部隊が 到着して、ウ軍の攻撃を防御し始めた。このため、ウ軍の進撃速度 が下がっている。 ベルキウカ貯水池に向けて攻撃しているウ軍は、ベルキウカ市内に 到達して、市街戦になっていたが、前進が止まり、ロ軍増援部隊と の戦闘になっている。 逆に、ロ軍がオリホボバシュリフカへの攻撃をしたり、ウ軍の奪還 したベルキウカやヤヒドネに反撃している。どちらもウ軍は撃退し ているが、ロ軍も攻撃している。 このため、トリボボバシュリフカにいるロ軍は孤立する可能性があ ったが、現時点でも維持しているし、攻撃できるほど補給も大丈夫 のようである。 バフムト市内のロ軍は攻撃なしで、防備を固めている。 バフムト南西のウ軍独立第24突撃大隊と第3突撃旅団はクリシチウカ 方向に攻撃しているが、まだクリシチウカを占領できずにいる。 しかし、バフムトでの攻勢は、ロ軍部隊のザポリージャ方面への転 戦をさせないためであるが、新しくヘルソン州から最強部隊もバフ ムトに投入されたことで、ここのウ軍の目的は達していることにな る。 もう1つ、ロ軍はバフムト攻勢用の囚人を中心としたストームZ突撃 中隊を解体して正規軍への配置転換を進めている。この囚人兵の日 常行動が軍組織に合わず、解体することになったようである。 ワグナー軍を真似て囚人兵を使ったが、正規軍では手に余ったよう である。 ・トネツク州州境方面 ボハレダラにウ軍は攻撃して、複数のロ軍陣地を奪っている。この けん制のために、ロ軍はボハレダラの東ボディアングに攻撃したが 、撃退されている。 ノボマイロスクやノボドネツクにウ軍が攻撃中であるが、前進でき ずにいる。ウ軍は海兵旅団が担当している。 ベルカノ・ボシルカの南のウジョイナとスタロマイオルスクをウ軍 は攻略中である。リビノピりやノボダリウカの南では、ウ軍の攻撃 でも成果なし。フリアポールでのウ軍は本格的な攻撃に出ている。 しかし、あまり、一週間前と変わりがない。攻めあぐねている。 やっと、地雷原の除去を終わった段階であり、今後本格的な攻撃に 移るという。 この地域に8個旅団と1個大隊を投入している。これを見て、ロ軍は この方面が主攻撃軸と見て、増援部隊を送り込んでいる。 ・ザポリージャ州方面 ロ軍陣地が準備している3重構成防御網のザポリージャで、ウ軍は 、苦戦している。 オレホポの南ロボティネで戦闘中であり、ここにウ軍は3個旅団を 投入している。 カムヤンスクでは、南にあるピアトハーティキーで戦闘中である。 この地域には、ロ軍の電子戦システムにより、ウ軍のドローンが運 用できないことと、GPS誘導弾の誘導ができないこと、ウ軍の衛星通 信ができないことなどの問題が起き、有効に攻撃できない状況にな っていた。 このため、まず、ウ軍は、ロ軍の電子戦システムの破壊を優先して 行った。その後は、ウ軍はHIMARSを対砲兵戦で使い始めた。今まで は弾薬貯蔵施設や指揮所への攻撃でったが、この2つは、HIMARSの 射程外に移動したことで、砲兵を狙い始めたようである。 それと、ロ軍戦闘ヘリが有効であることをロ軍もわかり、ベルジャ ンスクに新たに20機以上の戦闘ヘリを追加した。 もう1つが、ウ軍に航空優勢がないことであり、防空システムも不 足しているし、その上にロ軍の徘徊自爆ドローンは、優先的に防空 システムのレーダーを狙い破壊されている。 これにより、ロ軍の戦闘ヘリが自由に飛べることになっている。こ れでは、ウ軍は機甲部隊を前進できないことになる。攻撃手段が限 られることになり、前進できないことになっている。 もう1つが、地雷原であり、この地雷除去が重要であるが、その地 雷原除去も進んでいるようだ。 これらより、ロ軍の士気の低い部隊はルハンシク・ドネツク方面に おり、南部のロ軍空挺部隊の士気は、比較的に安定している。そし て、準備された陣地でウ軍に抵抗しているロ軍は、パニック状態に なっていない。 しかし、ウ軍の損傷した装備の半数以上を回収・修復し「戦闘に復 帰」させることは可能なようである。このため、ポーランドやウク ライナには、修理工場がある。 このため、ゼレンスキー大統領は、露軍の激しい抵抗に直面してい ると述べ、米欧諸国に防空能力強化を中心にした追加支援を呼びか けた。防空システムの供与数が増えて、それを前線に移動させてい る。 このような状況で、ザポリージャ州ではロシアの第35軍参謀長セル ゲイ・ゴリャチェフ少将が前線で12日に死亡した。 やっと、ピアトハーティキーでウ軍は、2kmの前進ができたようであ る。ロ軍防備への対応が完了したようである。 ・ヘルソン州方面 ノバカホフカで砲撃音が響いていると、ロ軍事ブロガーは騒ぎ、ウ 軍の反撃が開始したと述べている。ここの最強空挺部隊は、バフム トとザポリージャ州に移動したことで、ロシア側は民間軍事会社「 コンボイ」の約5000人で、ヘルソン州の防衛にあたることになるが 、いかにも少ないし、戦闘ヘリや電子戦兵器などの重装備もない。 ドニプロ川の洪水も引き始めて、川を渡ることができるレベルにな ってきた。このため、ウ軍は、ポトーン橋を掛けて、重量の軽いト ラックや兵員を渡河させているという。そして、オレシキーを渡河 して、橋頭保を確保したという。 今後、重量の重い戦車まで渡河することになれば、本格的な渡河作 戦となる。これを、ロ軍事ブロガーは心配している。 ここで、ウ軍が渡河作戦が成功すると、ロ軍の手薄な地域に攻撃で きることになる。 もう1つ、ヘルソン州とクリミアのロ軍部隊は、コレラの流行に襲 われ、「戦闘効果を失っている」可能性があるという。 ウ軍反撃の最大チャンス到来のようである。 そして、マリャル国防次官も「この戦争の敵へのカウントダウンが 始まった。」と述べて、本格攻勢に出たようである。主攻撃軸は、 ザポリージャ州なのかドネツク州か、ヘルソン州かは分からないが 、準備していた攻撃用戦車旅団を投入したようである。 ・その他方面 クレミンナ方面 ウ軍とロ軍が激しい砲撃戦を行っている。ロ軍第20諸兵科連合軍の 将兵200人が、朝の訓示を待っていた所をウ軍のHIMARSで攻撃されて 、100名死亡し、100名が負傷したようである。 リシシャンスク方面では、ロ軍はベゼルとブイエムカに攻撃したが 、撃退されている。 反対に、ウ軍がクラスノポリウカに攻撃をして、ロ軍陣地を一部取 っている。 アウディーイウカ方面で、ロ軍は要塞を攻撃したが、撃退されてい る。逆にウ軍はオプトネとプレボマイスクを攻撃しているが、前進 はできず。 マリンカに、ロ軍は攻撃しているが失敗している。そして、ここの チェチェン軍は、ベルゴロド州に転戦している。ここで、大損害を 出し、軽装備のチェチェン軍では、攻撃は無理ということのようで ある。チェチェン軍はベルゴロド州のカジンカ検問所を守るよう指 示されたが、前線配備を拒否して、後方配備を要求している。 ロ軍兵が、ベルゴロド州でロシア人の家に押入り、強盗をしたこと でロ軍兵に代わり、チェチェン軍を投入したようであるが、チェチ ェン軍は、戦闘能力がないのか、前線に出るのを拒否する。 モスクワのアレクセーエフスカヤ通りにあるモスエネゴの火力発電 所に隣接する地域で大規模な火災が発生した。停電も発生している。 モスクワ郊外にあるチカロフスキー空軍基地で火災があったが、こ の基地にはII-80、II-82などの空中指揮機6機が駐機している。被害 のレベルは現時点では分からない。 15日、ウ派パルチザンは、メリトポリ北部の鉄道を爆破した。この ため、鉄鉱石を積んだ車両5両が脱線した。 逆に、ロ軍は、ウクライナへのミサイル、ドローン攻撃を頻繁に行 っている。これは、防空システムを都市に貼り付ける必要があり、 前線に展開できないようにするためである。 そして、ウクライナ政府は16日、ロシア軍がキーウに対してミサイ ル攻撃をしたが、ウ空軍は、極超音速ミサイル「キンジャル」6発 、巡航ミサイル「カリブル」6発、偵察ドローン2機を破壊とした。 16日は、南アフリカ、セネガル、ザンビア、コモロの大統領や、ウ ガンダ、エジプト、コンゴ共和国の代表らが出席する協議がキーウ で行われたが、一時防空壕に避難した。 アフリカの首脳が滞在中のキーウに向けロ軍のミサイル攻撃につい て、ゼレンスキー大統領は、「ロシアの指導者であるプーチン大統 領が軍を統制していない証拠だ」と非難した。 ・ウクライナの状況 和平を促進する試みとして、アフリカの指導者がキーウを訪問して いるが、BRICSの一角である南アのラマポーザ大統領も含まれている。 ゼレンスキー大統領は16日、そのアフリカ諸国の代表団と会談し、 ゼレンスキー氏は、ロシアとの和平交渉はロシア軍がウクライナか ら撤退して初めて可能になるとした。 この見解を受けて、アフリカ諸国代表団がウクライナとロシアへ提 示すると思われる和平案では、 ・ロ軍のウクライナ領内からの撤退 ・ベラルーシへの戦術核配備取消 ・プーチンに対する国際刑事裁判所の逮捕状停止 ・対ロシア制裁の緩和 とのようである。 この案はウクライナでは受け入れ可能であろうが、ロシアは現時点 では受け入れられないでしょうね。これからロシアに向かうが、ロ シアの条件を聞いて、変更する可能性も高い。 スペイン政府は15日、ウ軍に、追加で装甲車20台、主力戦車「レオ パルト2A4」4両、野戦病院施設を供与するとしたが、レオパルト2 が破壊された台数は4両であり、これを補充することになったようで ある。ブラッドレーは15両破壊されたが、米国は新規にブラッドレ ーを15両供与するという。デンマークとオランダは、ウ軍供与のた めに独ラインメタル社から主力戦車「レオパルト2」14両を購入す る。 これで、破壊された車両の代替ができたことになる。今回の戦闘で 示されたウ軍の問題点を解決することが必要である。 イスラエルのメルカバMK2、MK3戦車200両を2つの外国に売却すると したが、1つは欧州だという。この欧州の国がウ軍に供与する可能 性があるという。メルカバ戦車は、乗員生存率が欧米戦車より高く 、今のウ軍には、最も欲しい戦車である。 ドイツは戦車「Leopard1」をベースにした地雷除去装甲車両「Wisent 1」2台をウクライナ軍に引き渡した。地雷除去も大きな問題である。 スウェーデンは、グリペン戦闘機のウ軍パイロットを訓練する予定 であり、整備士も独自の訓練コースを設ける予定だとした。空軍力 が弱点であるが、この弱点をカバーすることになる。 今までに、F-16、F/A-18などの供与前提で、訓練が開始しているが それにグリペンも加わることになる。ウクライナはオーストラリア に対し、F/A-18戦闘機40機以上の譲渡を求める要請書を送った。 しかし、レズニコフ国防相は、「ウクライナは2024年年初にF-16を 入手できるだろう」と述べて、2023年の攻勢には間に合わないとし た。 英国がウ海軍に引き渡すチェルニヒフ号とチェルカシー号が、スコ ットランドの港町ロサイスから出発した。これで、ドニプロ川を渡 る船が手に入ったことになる。補給には必要である。 米英、ドイツ、オランダ、デンマーク、カナダ、イタリアは、ウ軍 に優先度の高い防空システムを供与するという。 ドイツは、このためパトリオットの追加ミサイルを64弾を供与する。 オランダはウクライナに1億5000万ユーロ相当の4つのVERA-EGレー ダーシステムを提供する。イタリアは、SAMP/T防空システムの追加 供与をしている。 このように、防空システムの大幅な供与で戦闘ヘリの活躍を抑える ようである。S-300防空システムの代替ができるかどうかだ。 ウ軍戦車旅団12の旅団のうち3つだけが戦闘に参加しているので、 メイン部隊が何処に向かうのか、まだ判明していないようだ。 NATOは、旧ソ連崩壊後のロシアがもはや脅威ではなく、数十年にわ たり大規模な防衛計画をとりまとめる必要性がないとみていたが、 ウクライナへの侵略で、新地域防衛計画を策定することで根本的な 転換となる。 しかし、この新地域防衛計画が、NATO会議で合意できなかった。ロ シアへの見方に異論が出ているようである。恐らく、反対なのは、 ハンガリーとトルコであろう。 このハンガリーのオルバン首相に、リッシュ上院議員(外交委員会 メンバー)は、スウェーデンのNATO加盟を拒否するハンガリーへの 罰として武器売却を中止しようとしている。 このため、急遽ハンガリー議会は、NATO首脳会議直前の7月7日まで に、スウェーデンのNATO加盟に向けた国内の批准手続きを実施する という。 ・ロシアの状況 プーチンは、バフムトを維持に固守しているようだ。この件では、 ショイグ国防相とは意見が合わずに、一時的に関係が気まずくなり 、ショイグ国防相は、即座にヘルソン州の最強部隊をバフムトに送 っている。 この結果、プーチンがワグナー軍などの民間軍事会社に軍への契約 を促し、プリゴジンもプーチンの説得を受け入れてが契約するよう だ。 ロ軍の組織体制がやっと、正規軍の近代戦に対応してきた。戦術大 隊編成から諸兵科連合師団に再編して、機甲戦への対応ができて、 かつ地雷原の防衛線と砲撃キルゾーン、電子戦、戦闘ヘリなどを複 合的に組合せた戦術が可能になってきた。 これで、ウ軍の近代的機甲部隊に対応できるようである。ソ連流の 戦い方に変更したことで防衛線を有利に守れることが可能になった。 ゲラシモフ総参謀長官の戦術や戦略構想が実現化しているが、1つ 気になるのが、プーチンの戦術への介入であろう。このため、兵力 の分散が起き、兵力の集中ができない。もう1つが、欧米兵器の質 の高さであろう。 防衛線で有利になったことで、プーチンは16日、ウクライナ侵攻で ロ軍の優勢を強調し、国際社会が懸念している核兵器使用について 「必要性がない」と否定したが、「最初の核兵器がベラルーシ領内 に移された」と述べた。 しかし、サンクトペテルブルクとモスクワの市議会議員は、ウクラ イナからの即時撤退を求める書簡を公開した。理由は、すべての人 にとって戦争の代償は高くつくからだという。徐々にロシア国内で も、即時撤退論が出てきているようだ。 さあどうなりますか?