ウ軍はバフムト、ドネツク西部、ザポリージャ州で、本格的な攻勢 に出た。現状と今後の検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで2022年年初来安値となり、2023年6月2日は33,762ドル で、5日は199ドル安の33,562ドル、6日は10ドル高の33,573ドル、7 日は91ドル高の33,665ドル、8日は168ドル高の33,833ドル、9日は43 ドル高の33,876ドル。 先週、株価は上昇した。しかし、13日発表のCPIや13-14日のFOMCに よる政策金利の発表を控え、様子見のムードであり株価変動は少な い。それでも、ハイテク株への買いが引き続き相場の支えとなった。 F&Gインデックスは78と強欲であり、買いの気分は強い。 6月のFOMCでは、据え置きをなる公算が強いが、オーストラリアとカ ナダ中銀は、0.25%の利上げを発表したことで、まだインフレが世界 的に収まっていない。 そして、当分、利上げフェーズであり利下げにはならない。大きな 景気後退もまだ先であり、当分は株高が続くが、景気後退になった ら利下げになり、株が下落するが、まだ先であろう。 トルコリラは、最安値を更新した。今までは対ドル防衛で、介入し てきたが、外貨準備高がマイナスになり、これ以上の介入ができな くなり、世界の動向を無視した利下げができなくなり、今後は利上 げに向かうと思われる。 このため、世界で金融緩和姿勢なのは、日本だけになる。 もう1つ気になることが出ている。サウジのムハンマド・サルマーン 皇太子は、米国が備蓄石油の放出や石油の増産などの石油減産に報 復すれば、サウジは数十年来の米国との関係を根本的に変え、米国 に多大な経済的コストを貸すと脅したという。 オイルダラーの終焉が近いことになる。ドル基軸通貨の終焉となり 、米国債の買い主体がなくなり、不人気化して金利の急上昇もあり 得ることになる。そろそろ、債務上限を決めて、米国債発行を止め るしかない。予算の縮小か増税するしかない。 一方、中国は物価上昇率が2.3%と非常に低く、デフレの状況である 。米国への輸出が少なくなり、消費も落ちている。米中対立は中国 ではデフレで、米国はインフレの様相である。 このため、米中対立を緩和する方向で、米国は動き始めた。デカッ プリングからディリスキングに方向転換するようである。 中国との経済的結びつきも強い日欧諸国の間でも、対中強硬路線の 見直しを求める動きが出始めたことから、西側陣営として対中強硬 的な取組みはしないとなった。 しかし、中国にとっては、ディリスキングも従来のデカップリング 的思考と実質的に大差なく、対立を深めることに変わりない、と受 け止められている。 このため、中国株の値下がりも経済対立が深刻化するとみて、中国 の投資家が中国株を売って、日本株を買っていることによる。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、2023年6月2日は31,524円で、5日は693円高 の32,217円、6日は289円高の32,506円、7日は593円安の31,913円、 8日は272円安の31,641円、9日は623円高の32,365円。 先週、株価は上昇した。今週は日経平均の下値は31,500円であり、 上値が32,500円とボラの大きな展開になっている。 そして、6月21日の国会会期末間際に、岸田首相が衆院解散・総選挙 に踏み切るかどうかが焦点になっている。少なくても、そこまでは 日経平均を維持する可能性が高い。米株価も上昇している。 植田日銀総裁は、2025年までは金融緩和を維持するというので、円 安方向になることが確実であり、世界的な金融引締とは、真逆な展 開である。このため、円安であり、ドルべースでの日経平均株価は 割安に見えることで、海外投資家は大挙、日本株を買っている。 しかし、現物買いで、先物売りのポジションになっている。そろそ ろ、変化する可能性も出てきたようだ。 円安効果とインバウンド需要の効果が出ているし、対中経済締付な どの効果もあり、日本経済の成長力は高いとみるが、しかし、大幅 で急な株高であり、利益確定の売りが出てくる可能性はある。 しかし、アジアの1%の金持ちは、日本の不動産価格が相対的に割安 であり積極的に買っている。このため、不動産価格も上昇している。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は、形成作戦を終え、本格的な攻勢のフェーズに入ったようで ある。3つの地域で攻勢に転じている。バフムト、ドネツク西部、ザ ポリージャ東部であり、特にザポリージャ東部がメインのようであ る。 ・ハルキウ方面 ベルゴロド州ノバヤ・タボルジョンカとシェベキノに親ウ派軍団が ウクライナ領に撤退した。 ロ軍は、大規模な増援部隊をシェベキノやノバヤ・タボルジョンカ に送ってきたことを確認して、撤退した。 この侵攻目的がロ軍の分散を謀ることであり、目的は達したことに なる。 ・バフムト方面 ウ軍はバフムト北西郊外で、M03号線を市内方向に進撃して、ロ軍は 潰走して、市内に向かっている。M03号線の北側にもウ軍は攻撃して 確保している。ウ軍戦車がバフムト方面への攻撃でロ軍を断ち切っ て前進を続けていると、シルスキー司令官は言う。 ベルキウカ貯水池に向けて攻撃してるウ軍は、ベルキウカ市内に到 達して、市街戦になっている。一部ウ軍部隊は、パラスコビウカに 向けて攻撃中である。 ロ軍はこの地域に増援を送っているが、ウ軍戦車の前進を止められ ないでいる。 トリボボバシュリフカにいるロ軍は孤立する危険性があり、撤退す るべきであるが、オリホボバシュリフカに攻撃して、ウ軍に撃退さ れている。 ベルキウカに向かうウ軍の一部が、ヤヒドネに攻撃をしている。 バフムト市内のロ軍は攻撃なしで、防備を固めている。 バフムト南西のウ軍第24と第3突撃旅団はクリシチウカやアンドリウ カ方向に攻撃しているが、とうとう、クリシチウカからバフムトの 連絡道路を切断した。このため、ロ軍は、ウ軍攻撃部隊にテルミッ ト焼夷弾を打ってきたが、野原では効果が薄いようである。 毎日1Km程度の前進をしているので、バフムト包囲が近いようである。 ・ボハレダラ方面 ボハレダラ南東のノボドネツクをウ軍は奪還して、オキチャブルス クに向けて攻撃をしている。もう1つがウ軍はブラホダトネを奪還 している。 そして、ドネツク州の州境に近いヴェリカ・ノボシルカ付近のロ軍 の防衛線が、およそ約20キロが後退したというが、攻撃開始は6月4 日であり、一週間での成果である。しかし、今のところ、ここがメ インではないようである。 しかし、まだ、メイン部隊が投入されていないことで、まだ、分か らない。 ・ザポリージャ方面 ロ軍陣地が準備している3重構成防御網のザポリージャ東部にウ軍は 攻撃した。このため、大きな損害を出している。 ウ軍のザポリージヤ攻勢に伴い失った兵器は、現在のところ 3x Leopard 2A6 (破壊1 , 放棄2) 4x M2 Bradley (放棄) 1x VAB APC (放棄) 1x Oshkosh M-ATV MRAP (放棄) であり、防御の厚い所を攻撃するので、損害は出る。まだ、初期段 階で、この被害であるから、今後も大きな損失になることが確実で ある。 放棄車両は、砲撃でやられた車両のそばを通り、地雷でやられたが 兵員装甲車は、対地雷対策があり、兵士は生存している。最初の部 隊は、地雷原突破で地雷除去後で塊になって進撃中に砲撃を受けた ことが原因である。しかし、レオパルド2の1両はロ軍戦闘ヘリの 対戦車ミサイルを受けた可能性がある。 攻撃地点の1つが、ウ軍はストジョベを南を進行中で、機甲部隊と 機械化部隊が進撃している。 もう1つが、リビノピリを攻撃中であるが、ロ軍の踏ん張りでウ軍 は陣地を突破できずに、苦戦中。 もう1つが、ノボダリウカの南にウ軍が攻撃して、ロ軍陣地を攻略 中。 もう1つは、ロボティネを突破して、市内に入った。ネスチリアン カとコパニはロ軍陣地を突破できていない。 もう1つは、ロワコベに入り、夜襲をかけて市全体を奪還した。 最後に、オリヒウから東に向かったウ軍であるが、マラトクマテか ら南東に向かったが、8日、逆襲に合い、電子戦でレーダーをかく乱 され、無人機を無効化され、ウ軍防空部隊を叩かれて、砲撃着弾点 に入ったところで砲撃に会い、装甲車両を4両、レオパルド2を2両 、地雷除去車2両を失った。 それと、戦闘ヘリがスティンガーの射程外から対戦車ミサイルを打ち 、もう1両のレオパルト2戦車が被弾して、乗員も戦死したようで ある。砲撃と地雷損傷のブラッドレーの乗員は逃げられたようだ。 このため、2個小隊の損害が出た。 8Km先の多数の戦闘ヘリからミサイルが飛んできた。ウ軍の想定外の 数であり、電波妨害のレベルも高く、防空システムのレーダーを無 効化されたようだ。ドローンの運用もできなかったようだ。 このため、部隊を後退させたようで、この方面での第1攻撃は失敗で あったことになる。プーチンも「ウ軍を撃退した」と述べている。 その後9日は、この陣地を迂回して、夜間攻撃などでノボカリウカ、 ノボクロフカ、ベルボブ付近で、激しい戦闘になっている。 今の所、この方面がメインようであるが、一番難しいコースであり 、ここを進むと、トクマクからベルジャンスクのルートになる。 ロシア側から見て、ザポリージャ戦線でウ軍の車両約50両が前進し てきているとの報告がある。 このため、ロ軍は、増援部隊として、第10軍団の9個機甲旅団を送っ てきている。ポロフィーに到着したという。 このため、戦車戦になり、大激戦になることが確実である。 ウ軍は航空優勢がなく、攻撃するのでロ軍戦闘ヘリの待ち伏せ攻撃 に合い被弾した。これはF-16の供与が遅れて、損害が大きくなるこ とは事前にわかっていたが、それでもウ軍に大きな損失を与えてい る。 もし、F-16数十機のエアカバーがあれば、ロ軍戦闘ヘリなど前線か ら数十km以内に近寄れなかったのですが、残念ですね。 トクマクは鉄道の拠点であり、トクマクを奪えば、ロ軍の東部から ザポリージャやヘルソン南部への補給を断つことができる。トクマ クの奪還は大きいことになる。よって、ロ軍も全力で反撃してくる。 この状況で、プーチンは9日、ウ軍の大規模な反転攻勢が「間違いな く始まった」とし、しかしロ軍の応戦によりウ軍は「どの戦線でも 目標を達成できていない」と強調し、撃退に自信を見せた。ウ軍は 予備兵力を投入し、反攻が続くとみて兵器増産を急ぐと表明。 また、攻勢をかけるウ軍に、ロ軍の3倍を上回る「著しい損失」を与 えたとした。 しかし、「確かに現代的な兵器が足りない」と述べ、ロ軍に高精度 のミサイルや新しい戦車などが不足していることも認めた。 一方、英国防省は10日、過去48時間に同国の南部で大規模な作戦を 実施し、「いくつかの地域では前進し、ロシアの第1防衛線を突破し た可能性が高い」とした。 ゼレンスキー大統領も10日、「ウクライナで反攻と防御の軍事行動 が取られている」と述べ、ロシアに対する反転攻勢を開始したこと を初めて認め、作戦に自信を示したが、一方で「どの段階にあるか は明言しない」とも述べ、作戦の詳細には言及しなかった。 ・カホフカ水力発電所のダム破壊 カホフカダムが、6月6日に破壊された。ウクライナ保安局は9日、カ ホフカ水力発電所のダムをロシアの「破壊工作グループ」が爆破し たことを証明する通話を傍受したとし、証拠とする1分半の音声デ ータを投稿。2人の男がダム破壊についてロシア語で話し合っている。 また、米当局者は、赤外線センサーを搭載した衛星が大爆発と一致 するレベルの熱を検知していたという。 さらにノルウェーの研究財団によると、ルーマニアの地震観測所の データは爆発があったことを示しており、ダムが決壊したという報 道と一致するタイミングという。 ダム破壊には内部からの爆発が必要と米構造専門家は言うので、ど んどん、ロ軍が破壊したことが証明されつつあるようだ。 このダム破壊で4万5千人が避難必要となっているが、ウクライナ側 の住民は避難ができるが、東岸のロシア支配地オレキシの住民の避 難が、ロシア占領当局の外出禁止でできない事態になっている。 その上、ロシア非常事態省は、ロシア占領地ヘルソン州オレシキへ のボランティアの立ち入りも拒否している。 さらに、洪水中で避難したヘルソン市内の人に対して、ロ軍は砲撃 をしているため、少なくとも2人が死亡し、9人が負傷した。ウ軍は ロシア占領地オレキシの住民の避難も進めているが、砲撃があり苦 渋している。 今後、このダム破壊で、クリミアやヘルソン南部の農業地帯に水が なくなり砂漠化する危険性と、ザポリージャ原発の冷却水が数か月 後になくなることが心配である。 このダム破壊で、ザポリージャ戦線での反攻に合わせて、ウ軍は渡 河作戦を計画していたが、当面渡河ができなくなるが、10日も過ぎ れば水は引くので、その時はロ軍陣地もなく、前線突破ができるこ とになり、ウ軍はザポリージャの前線より、こちらの攻撃の方が成 功率が高くなる可能性もある。 その上、ドニプロ川の渡河はできないと、ヘルソン州に展開するロ 軍をザポリージャ州に回すので、狙い目ではある。 また、キエフ市長クリチコは、「大型飲料水タンク、フィルター、 食料キットなど、1億フリヴニャの量でヘルソン地域への財政援助の 割り当てに関する決議案を提出するという。 日本も約7億円の被害援助をすると表明した。赤十字や国連もこの災 害に援助をするになるが、一番のネックがロ軍の砲撃であろう。 ・その他方面 クピャンスク方面で、ロ軍はマシュティフカを占領後、南に攻撃を 続けているが、撃退されている。 リシシャンスク方面では、ロ軍は、ビロホリフカへの攻撃を中止し た。ここの部隊をベルゴロド州の防衛に転用した可能性がある。 反対に、ウ軍がヤコブリフカに攻撃をしている。ロ軍は撤退してい るので、T1302号線を通り、バフムト方向に向かう可能性がある。 アウディーイウカ方面で、ロ軍は要塞とプレボマイスクに攻撃した が、撃退されている。 マリンカに、チェチェン軍を投入して攻撃したが、撃退されている。 チェチェン軍に大きな損害が出ている。そのチェチェン軍には、中国 製の「タイガー」という11人乗りの装甲車が配備されている。中国は ウクライナ侵攻に対し中立の立場を強調していて、ロ軍にもウ軍にも 武器を提供していないと主張している。 ロ軍占領地である港湾都市ベルジャンシクでは、連日大規模な爆発 が複数回、発生している。8日は燃料備蓄所が爆発・炎上した。 ルハンスク市では、工業地帯をストームシャドーで攻撃されて、軍 車両の修理工場が爆破された。 ロシアのウファでは鉄道駅付近で火災が発生、約60立方メートルの 燃料が燃えている。 逆に、10日朝未明のロ軍によるウクライナへのミサイル、ドローン 攻撃で、ウ軍は巡航ミサイル6発中4発、イラン製自爆ドローン16機 中10機の撃墜を報告した。キーウの防空は相当なレベルに達してい るものの、他は西側の防空ミサイルも足りず、被害が大きくなって いる。 イランで製造されたドローンはカスピ海に面するアミラバードから 、ロシア南部のマハチカラに海上輸送され、ウクライナの北部と東 部に近いロシア領内の各拠点に運ばれ、首都キーウ(キエフ)への 攻撃に使われているという。この輸送経路を空爆しないと、ロ軍の 空襲はなくならない。 ・ウクライナの状況 ウ軍へ米国は、最大21億ドル相当の新たな支援策を発表。パトリオ ット、防空システム、HAWKミサイルの追加弾薬、砲弾、プーマドロ ーンが含まれる。しかし、一番必要なのが、F-16などの戦闘機であ る。 ウ軍の大攻勢は、7月のNATOサミットまでには、成果が欲しいが、現 時点で見ると、ザポリージャ戦線の突破は、そう簡単ではないよう に見える。 カナダのトルドー首相がキーウを訪問し、76両のセネター装甲車を 含む5億ドルの援助のほかに、カナダがロシアから差押さえたAn-124 輸送機をウクライナに引き渡すとのこと。 また、ロシア領内を攻撃するために、ウクライナは、射程1000キロ 以上のミサイルを独自に開発製造するという。西側兵器の供与には ロシア領内への攻撃に使用しないという条件があるためだ。 ・ロシアの状況 ベルゴロド州知事が、ロ軍の増援部隊がなく、プリゴジンに援助依 頼をしたことが問題視されて、6月4日にクレムリンで会議が開かれ 、地方自治体に対する完全な統制が導入されることになった。自由 な発言もできなくなったことになる。 プーチンは、ベラルーシへの核兵器の配備は7月7日から8日の準備完 了後に開始されると述べた。その代わりに、ルカシェンコ政権は、 年間で131.5千トンの弾薬をロシア連邦に渡した。 アイスランドは、モスクワの大使館を閉鎖するとした。国交断絶と いうことになる。ロシアの負けが近いので、多くの国がロシアから 離れていく。 ドイツのショルツ首相は10日、プーチンとの近々話をするつもりだ と発言した。同時に同氏は、公正な平和の前提条件はロシアによる ウクライナ領からの軍の撤退でなければならず、それは理解せねば ならないことだと強調した。 ザポリージャでのロ軍の負けが確定したら、停戦交渉になるという ことである。どこかで、停戦の交渉を開始しないといけない。 ウ軍は、今の兵器を用いてはロシアへの本格的な侵攻はできないこ とで、ロシアを全面的に負かすことはできないので、ロ軍がウクラ イナ領内からいなくなれば、停戦となるしかない。 さあどうなりますか?