6288.ウ軍は形成作戦を完了



ウ軍はストームシャドーとHIMARS、親ウ派ロシア軍団などを用いて
、形成作戦を実行している。現状と今後の検討をしよう。
                        津田より

0.米国と世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は
29,202ドルで2022年年初来安値となり、2023年5月26日は33,093ドル
で、30日は50ドル安の33,042ドル、31日は134ドル安の32,908ドル、
6月1日は153ドル高の33,061ドル、2日は701ドル高の33,762ドル。

先週、株価は大幅に上昇した。週前半は米債務上限の問題で株価は
下落したが、6月1日に下院で議決され、2日は上院でも可決されて、
解決したことで、デフォルトの危険性はなくなった。

1日の5月のISM製造業総合指数は46.9と、前月の47.1から悪化し、7
ケ月連続で拡大・縮小の分岐点となる50を下回った。このため、景気
後退の可能性があると見た。

しかし、2日発表の雇用統計で、5月米国の非農業部門雇用者数は、
33.9万人増となり、予想の19.5万人増や前回の25.3万人増を上回っ
た。景気後退懸念がなくなったことになる。しかし、失業率は予想
より上回っている。予想は3.5%であったが、実際は3.7%である。こ
のため、利上げもできないようである。

このことで、2日は、株価が大幅な上昇でした。そして、「世界同時
株高」の様相である。1つに米債務上限通過、2つに6月の米利上げ
見送り観測、3つに5月の米雇用統計の堅調、4つに空売り勢の踏み上
げで買戻しになったことで、大幅な株高になっている。

この原因は、FRBの金融危機での資金4800億ドルという供給があり、
利上げとQEを同時に行っていることで、資産価値が上昇して、株価
が上昇している。インフレも収まらない。5月の米雇用統計での時給
は、前年同月比4.3%増の33.44ドルであり、4月より低くなったが賃
金の上昇が続いている。

一方、中国では昨年少なくとも102の都市が債務返済コストの管理で
困難に直面したようであり、財政政策を通じた景気支援が難しくな
っている。景気後退局面であり、政府としても不動産市場の活性化
が必要となり、対策を打つことになった。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、2023年5月26日は30,916円で、29日は317円
高の31,328円、30日は94円高の31,328円、31日は440円安の30,887円
、6月1日は260円高の31,148円、2日は376円高の31,524円で、1990年
7月25日以来約33年ぶりの高い水準となり、バブル経済崩壊後の最高
値を更新した。

先週、株価は大幅に上昇した。米国の債務上限問題が解決したこと
で、世界の金融市場が混乱するとの警戒感が収束して、上昇した。
上昇していた半導体株に加え、26日は内需関連銘柄の多くでも買い
先行になり、幅広い銘柄が上昇した。

週前半は、半導体株を中心としたハイテク株しか上昇していなく、
歪な相場であったが、26日はその歪な相場が正常化してきた。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウ軍は、形成作戦を行っているようだ。ウクライナは、専守防衛で
はなく積極防衛であり、ロシア領内への攻撃も加速させている。

形成作戦の1つの目的は、ロシア全体を混乱にして、クーデターなど
の体制崩壊を目指すロシア人達を立ち上げらせることである。

そして、もう1つがウ軍は、後方基地の破壊と、突破する地点を見
つけて、そこに一点集中攻撃することだ。

このため、ロ軍占領地の後方基地をストームシャドーで攻撃し、ロ
シア領内には、UJ-22ドローンを用いて攻撃、ベルゴロド州などの国
境地域には、自由ロシア軍団やロシア義勇軍団などの親ウ派軍団を
侵攻させている。

・モスクワ方面
5月30日、32機のドローンがモスクワを目指し、内8機がプーチンが
住むモスクワ市の高級住宅街に飛来した。5機を撃墜し、3機を制御
不能にしたとロ軍は発表したが、2機はレーニン通り内側で爆発した。

この高級住宅街の近くのフラシハには、戦略ロケット部隊の司令部
があり、そこを狙った可能性もある。このドローンは、UJ-22ドロー
ンであり、航続距離は800Kmなので、ウクライナ領内から飛ばした可
能性が高い。しかし、速度は120Km/hと遅いし、載弾量は20kgと少な
い。GPS誘導では、モスクワ近郊はGPSを狂わせる「スプーフィング」
があり、誘導方式でも北斗やグローナス誘導の可能性もある。

このドローンをモスクワまでに発見できないということは、ロシア
国内での防空体制はスカスカのようだ。S-400などの防空システムを
前線に配備しているので、国内では配備がないようである。しかし
、ベラルーシ方向からドローンが飛んでくると、敵認識ができなか
った可能性がある。

これに先立ち、5月3日には、クレムリンに2機のドローンが到達して
、防空体制の強化をプーチンは指示していたにも関わらずに、また
しても、ドローン攻撃を受けたことになる。

プーチンは、「ウ軍はテロ攻撃をしてきた」と述べて、報復を示唆
したが、大量のミサイルやドローンなどのキーウ攻撃は既に行って
いるが、ほとんど迎撃されている。核攻撃以外に報復の手段がない。

しかし、このモスクワ攻撃に対して、ポドリャク大統領顧問は「直
接の関与をしていない」としている。

しかし、5月24日に前回のドローン攻撃を「ウクライナの特殊軍事部
隊か情報部隊が計画した可能性が高い」との複数の米当局者の新た
な分析をしたことが報道されている。この秘密工作の背後にいると
みられているのが、キリロ・ブダノフ国防省情報局長である。

自由ロシア軍団のベリヤ・ポノマリョフ氏は、「最終的には、モス
クワを解放する」としたように、自由ロシア軍団が関与した可能性
はある。そして、ポノマリョフ氏は、「プーチンはキーウに攻撃が
できます。なぜウクライナがモスクワを攻撃することがだめなので
しょうか。(このような西側の要望は)愚かであり、偽善的です」
と述べている。

モスクワ郊外の蒸留所でも火災があり、モスクワ市内でバスなど32
台が火災にあっている。こちらは放火のようである。これにも自由
ロシア軍団が関与している可能性がある。

この自由ロシア軍団には、ロシアで数千人の応募があるという。

・ハルキウ方面
ベルゴロド州ノバヤ・タボルジョンカとシェベキノに親ウ派軍団が
5月22日と同様に6月1日にも再度、侵攻した。シェベキノにある市庁
舎や電子機器や光電子産業のハイテク用途の合成サファイアを生産
するモノクリスタル工場がウクライナ領内からの砲撃で火災になり、
行政府は書類を火で燃やすなど占領された後の対応に追われた。

ロシアメディアによると、14人がけが、そのうち4人が重体だとい
う。その後でも、シェベキノで爆発後大規模な火災が発生している
。ロ軍集結地に打撃を与えたと親ウ派軍団は言う。

攻撃を受けて、シェベキノの住民は、自動車で避難している。また
、ベルゴロド州全体から子供たちの疎開も始めた。

ロ軍は、急遽増援部隊をシェベキノに送り、TOS-1で親ウ派軍団を攻
撃し、全滅させたと述べているが、残存住民も巻き添えにしている
ようで、ウクライナ側が人道回廊を作ると提案している。そして、
シェベキノ地区での列車運行が停止している。

しかし、シェベキノとノバタボルジャンカ村で親ウ派軍団はロ軍と
活発に衝突しているようだ。

6月1日には、ベルゴロド市でもUJ-22のドローン攻撃を受けている。

クルスク州のカジンカやクリモボでも砲撃があり、SU-34数機が破壊
されたようである。

ベルゴロド州では、ウラゾボやソボレフカでも砲撃や侵攻があり、
多数の離れた地域に、親ウ派軍団が侵攻しているが、その組織を特
定できていない。ロシア領内の反政府組織の可能性もある。

ロシア人も今までは、軍隊だけのヒトゴトであったが、自分ゴトに
なったことになる。危険が自分の身にも押し寄せるということで不
安な状態にした効果は大きい。

しかし、この侵攻に対しても、ポドリャク大統領顧問は「直接の関
与をしていない」としている。

頻繁な侵攻をする親ウ派軍団の対応に、ロ軍は、士官候補生200人を
ベルゴロド州の国境近くに送るとした。

この侵攻目的がロ軍の分散を謀ることであり、目的は達している。

ブダノフ国防省情報局長は、2023年2月24日に、モスクワを含むロシ
アへの大規模攻撃を計画していたことが、流出した米国の機密文書
で明らかになっている。ブダノフ氏は「情報局の総力を結集し、大
規模攻撃を準備せよ」と部下に指示したとある。

攻撃対象はモスクワのほか、ロシア黒海艦隊の一部が移動した港湾
都市ノボロシスクなどだったというが、その一部が、既に始まった
ようである。

もしかすると、ロシア国内でもウ軍スパイ部隊の秘密工作が進んで
いて、ロシア国内でも味方する人たちが立ち上がる可能性がある。
日露戦争時の日本の明石大佐と同じような工作をしているはずであ
る。汚職と腐敗したプーチン政権に絶望している人は多いはずだ。

そして、驚いたことに、ワグナー軍の一部が、親ウ派軍団に参加の
意向であるという。今のロ軍幹部や体制に不満であるワグナー軍の
兵員のロシア義勇軍への参加はありえる。

プーチンは2日、特定の「悪意ある者」がロシアの不安定化工作を強
めているとし、閣僚に対し「いかなる状況下でも」これを許さない
よう呼びかけた。ということは、ウ軍スパイ部隊の工作が成功して
いるということになる。

しかし、米国はロシアの核使用を誘発するので、ロシア本土への攻
撃を危惧している。しかし、ブダノフ氏は、「ロシアは、単なる軍
事的敗北ではなく国家崩壊を招くことになる核攻撃を行うことはで
きない」と述べている。

反対に、ロ軍がハルキウ郊外のベゼルに中隊規模の侵入を行った。
ウ軍の反撃で、すぐに撤退をしたが、一矢報いるという感じであろ
うか?

・バフムト方面
ウ軍はバフムト北西郊外や市内での反転攻勢を弱めている。ロ軍も
守備に徹して、攻撃は少ないが、砲撃はある。

バフムト市内のワグナー軍が撤退を開始して、6月2日まで完全撤退
するとした。ワグナー軍の交代要員として、ロ正規軍が入っている
が、ワグナー軍の後方陣地への道路に、地雷をロ正規軍は仕掛けた
ようであり、プリゴジンは、このことと怒っている。

バフムト南西のウ軍第24と第3突撃旅団はクリシチウカやアンドリウ
カ方向に攻撃しているが、こちらの前進も、ロ軍陣地を1つ1つづ
つ潰していくので、時間がかかっている。

一方、市内ではロ軍とワグナー軍が、ほぼ全地域を占領した状態で
あり、ウ軍は、南の一角を残して撤退したが、この一角をロ軍は攻
撃しない。

しかし、ウ軍の反撃がなくなったことで、この地域の戦闘は少なく
なり、ロ軍の戦死者数も500名以下程度と今までと比べると、非常に
少なくなっている。

・ボハレダラ方面
ボハレダラ南東のポロドミウカにウ軍が攻撃をして、ロ軍が後退し
た。ウ軍はロ軍の弱い場所を見つけたようである。ウ軍はパブリフ
カに向けて前進するとみる。

ザポリージャ州のロ軍陣地は3重構成であり、ここを攻めても大きな
損害が出ることは、ウ軍も分かっているので、どうするのかと見て
いたが、ドネツク州のボハレダラ周辺は、ロ軍が攻撃を仕掛けてき
ていたことで、防備の面では薄いようである。

やっと、攻撃地点を発見した可能性がある。

・その他方面
クピャンスク方面で、ロ軍はマシュティフカを占領後、南に攻撃し
ていたが、失敗している。

スバトボ方面では、ノボセリフカに攻撃して、市内に入り、市街戦
になっている。

クレミンア方面では、マキーイウカにロ軍は攻撃したが、失敗して
いる。

リシシャンスク方面では、ビロホリフカの西側にロ軍は攻撃して、
陣地を確保した。スペルネにロ軍は攻撃したが、失敗している。

アウディーイウカ方面で、バフムト方面にロ軍部隊を移動させたこ
とで、攻撃ができなくなったようである。

マリンカに、ロ軍は市内中央通りを占領したが、それ以上の攻撃は
ウ軍の抵抗で失敗している。

ロ軍占領地である港湾都市ベルジャンシクでは、連日大規模な爆発
が複数回、発生している。ロ軍の軍事基地や集積所などを、ストー
ム・シャドーで攻撃されている。2日はベルディアンスク港では、少
なくとも8回の爆発が鳴り響いた。

ロシア連邦クラスノダールの製油所にドローンUJ-22攻撃で爆発が起
きて火災になっている。

ウクライナ南部マリウポリでも、ロ軍基地が連日、ストームシャド
ーで攻撃されている。

逆に、5月、ロ軍は、24回のミサイル攻撃とドローン攻撃をほぼ毎日
、主にキエフにした。この1ヶ月の間に、ウ防空軍は130発以上の巡
航ミサイル、7発のKinzhal防空ミサイル、10発以上のIskander弾道
/巡航ミサイル、371機のShahed-136/131自爆ドローンを迎撃した。

・ウクライナの状況
欧米で訓練された9個旅団がドニプロ市郊外に集結していることは、
前回にも述べたが、やっと、突破攻撃地点を定めた可能性がある。
ロ軍が攻撃されると思い、準備しているザポリージャ州ではなく、
ドネツク州からのようだ。

ということで、マリウポリへの攻撃がメインとなるようである。

6月3日、ゼレンスキー大統領は、「ロシアに対する反転攻勢の準備
が整った」と述べた。そろそろ開始のようだ。

このように、戦闘開始が近くなり、ウ軍の報道管制が一段と厳しく
なり、何も見えない状態になってきた。ロシアのミルブロガーの情
報で、推測するしかないようである。

この中、ゼレンスキー大統領は、モルトバで開かれた欧州連合(EU
)の加盟国と非加盟国で構成する「欧州政治共同体」の会合に出席
した。

そこで、ゼレンスキー氏は、「ウクライナの(NATO)加盟への明確
な招待と、加盟が実現するまでの間の(NATOからの)安全保障が必
要となる」と訴えた。

もう1つ、ゼレンスキー氏は、欧州の首相たちと、ウクライナへの
新しい防空システムの提供や、F-16戦闘機によるウクライナ人パイ
ロットの訓練について話し合って、多くの供与を得た。

これにより、ウ軍が負けることはなくなったという。パトリオット
やF-16、自走砲、歩兵装甲車、戦車も多数得て、その上に大量の弾
薬も供与されるようである。軍備の面ではロ軍以上になったことは
確かである。

しかし、NATO諸国はウクライナ支援に必要な弾薬が不足している。
加盟国は防衛企業とさらに多くの契約を結ぶようストルテンベルグ
NATO事務総長は求めたようだ。

これに対して、米国は日本にウ軍供与弾薬用火薬の製造を依頼して
きた。朝鮮戦争並みの特需が始まるようである。西側諸国は平和の
配当で、軍需産業への予算を1990年以降、減らしてきたことで、軍
需産業の規模を落としてきた。

このため、一貫して軍需産業を拡大してきたロシアや中国との戦争
になると、弾薬不足に陥ることになる。西側全体でもロシア一国に
生産量がかなわないことになっていたようだ。

このため、日本まで、火薬の製造を請け負うしかない状態であり、
韓国は戦車など、ロシア代替兵器製造で一躍世界に飛躍した。西側
の軍需総生産体制になる。

しかし、これにより、世界景気は後退をするはずが、後退にならず
に済む可能性が出てきた。戦争経済に世界はシフトしてきたようだ。

ポーランドのモラヴィエツキ首相は「ウクライナでの結果が一つの
時代の終わりを決定づけ、ロシアの終焉となるのか、西側文明の黄
昏となるのかは我々次第だ」と述べた。西側文明全体の問題である。
そして、「この戦争で欧州に新たな地政学的秩序が生まれる」と主
張した。

英国のウォレス国防相は、2023年中にクリミアをウ軍は奪還できる
と述べている。ロ軍の軍備や兵器や弾薬がなくなり、特に5月中に、
ロ軍の火砲を490基も破壊したことで、火砲もロ軍になくなりつつあ
るという。大攻勢の前に前線や後方にある火砲を破壊してくことが
、損害を少なくするので、必要なことであるが、これが十分にでき
ているということのようだ。

しかし、心配な点もある。ドイツ国内世論が、かなり潮目が変わっ
てきたことだ。ウクライナへの戦闘機供与、賛成28%、反対64%。ウ
クライナへの武器供与、やりすぎ37%がちょうどいい43%に迫ってき
て、不十分は14%にダウン。外交努力が足りない55%となっている。

ドイツ国民の支援疲れもあると見た方が良い。

このような中、親ロ派的なハンガリーのオルバン首相のウクライナ
停戦案は「クリミアは諦めろ、ただしザポリージャ、ヘルソン、ド
ンバスは全土をウクライナに返せ」とロシアとウクライナに要求し
ているので、この停戦案であると、マトモである。

少なくとも、後に述べる中国やインドネシアの停戦案よりは良い。
マクロン仏大統領も同じ案になる可能性がある。ウクライナも受け
入れ可能だとみる。しかし、現時点ではロシアは受け入れない。

このため、この案が有効になるのは、ウ軍が攻勢に出て、少なくと
もザポリージャ州を奪還する必要があるのでしょうね。しかし、オ
ルバン首相を親ロ派とみていたが、マトモであるようだ。欧州全体
もこの停戦案で合意できそうである。

・ロシアの状況
ウ国防省情報局長ぼブダノフ氏が描く「未来のロシア地図」は、ウ
クライナ戦争後にロシアは大きく3つに分裂し、極東とシベリア東部
は中国に吸収され、中央の広大な部分には“中央アジア共和国“が
誕生。そしてロシア自体はモスクワとサンクト・ペテルブルクを中
心としたウクライナと同規模の国になるということである。その方
向でウ軍スパイ部隊が暗躍しているのであろう。

プーチンは、ウ軍の攻撃に対して報復の手段がないことと、ロシア
内強硬派の総動員を行う要求に対して、有効な方策をなくしている
ようである。2024年4月大統領選挙なので、国民に評判の悪い総動員
令をしたくないようである。

それと、FSBがプーチンに戦場の事実を伝えていないことで、プーチ
ンがロ軍の現実を見ていないことで、判断ミスを繰り返しているよ
うである。

その点、エフゲニー・プリゴジンは、戦場の一線に立ち、事実を知
っていることで、ロ正規軍の不甲斐なさを知っている。
それと、プリゴジンは、ロシアの国境守備が脆弱であるとして、ワ
グナー軍を国境防衛に当ててくれと要求している。

さらに、プリゴジンは、「今のウ軍は、昔のようなビビリじゃない
。相手が弱いと甘く見ていたら、ボッコボコにぶちのめされて、リ
ングを降りることになるぜ」という。

このため、大統領選挙を視野にロシア全土を巡るプリゴジンは、「
総動員令の早期発出」「(凍結中の)死刑執行の復活」「計画経済
の導入」などが喫緊の課題だと訴えた。また、ロ軍のウクライナ侵
攻について「東部ドンバス地方解放に2年、首都キーウ(キエフ)
到達に3〜4年かかる」と長期化を予想した。

このプリゴジンの野望に対して、カディロフ軍の幹部は、プリゴジ
ンを批判し始めた。イゴール・ガーキンもプリゴジンを批判してい
る。というように、反ロ軍強硬派が分裂している。

それと、クリミア大橋の柱にビビが入り、強度不足が心配な状態で
あり、ドイツが射程500Kmの「タリウス」をウ軍に供与すると、今の
時点で攻撃できることになる。バイデン米大統領も射程300Kmの
ATACMSの供与を仄めかしている。

ドイツはロシア内自国領事館を4つ閉鎖したが、ドイツ内ロシア領事
館も4つ閉鎖を要求している。ドイツとロシアの外交関係は厳しくな
る。

孤立化が激しいロシアのプーチンは、ICC締約国である南アで行われ
るBRICS首脳会議に出席することを狙っている。「外交免責」を与え
るための法改正を行うとしている南アは、今のままでは逮捕する義務
がある。

カザフスタンのトカエフ大統領は、ドイツに対し、制裁を受けてい
る露のロスネフチの代わりに、現状の6倍となる百万トン以上のガス
や石油を輸出できるとして、ロシアの石油・ガス代替を求めた。カ
ザフスタンもロシア離れが確定した。

続けて、アルメニア・パシニャン首相は「ウクライナとロシアの戦争
において、我々はロシアの味方ではありません。この戦争は私達の
様々な関係に影響を与えている為、不安を感じています」と。

・世界の情勢
中国の李輝ユーラシア事務特別代表は、「中国は、我々が本当に戦
争を終わらせ、人命を救い、平和を確立したいのであれば、戦場へ
の武器の送付をやめることが重要だと信じている。そうしなければ
、緊張は高まるだけだ」という。ロシアのウクライナ領土からの撤
退を述べていない。

これで、仲介するとした中国のロシア寄りが鮮明化したことになる。
この案にインドネシアも同調しているので、ASEAN諸国が親中的
であることがわかる。

もう1つ、中国で「反スパイ法」が施行されて、「スパイ行為の疑
いのある人が国外に出ることを許可しない」と定めた。これで、米
国人200名が中国から出国できない状態になっているし、自国の親米
派の人たちもスパイ容疑で捕まえられることになる。

とうとう、欧米と中国の対立が明確化して、欧米対中ロの構図にな
ることが、より鮮明になったようだ。

この上に、米軍偵察機の前をJ-22戦闘機が横断して、危険な行為を
したと米軍が申告すると、中国は偵察機は中国領土侵犯であり、許
せないと回答、米国がシンガポールでのアジア安全保障会議で米中
国防相会議を提案したが、中国は拒否した。

このように、米中対決が一層深まっている。

この影響は日本企業も受けて、中国への半導体材料や半導体製造装
置の輸出が審査されることになり、多くが輸出負荷になるようであ
る。

この中、バーンズCIA長官が隠密訪中した。米中の不測の事態回避と
いう文脈であるが、中国が米国と関係改善に動く可能性がある。

それが、日本の半導体材料や半導体製造装置の輸出規制の緩和との
引き換えに米国人200人の出国であろう。成立するかどうかはわから
ない。

もう1つが、国境の街サランジで、イランとタリバンが戦闘状態に
なり、タリバンは宣戦布告した。紛争の原因が水資源分配問題であ
るが、宗教上の違いもあり、紛争が拡大している。

イスラエルは、ISやアルカイダとの関係は良好であり、当然タリバ
ンとの関係もよい。ということで、こちらも注意が必要である。

さあどうなりますか?


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