自由ロシア軍団とロシア義勇軍団は、ロシアのベルゴルド州とクル スク州に侵攻した。ウ軍の反転攻勢の一環であろう。現状と今後の 検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで2022年年初来安値となり、2023年5月19日は33,426ドル で、22日は140ドル安の33,286ドル、23日は371ドル安の33,055ドル 24日は255ドル安の32,799ドル、25日は35ドル安の32,764ドル、26日 は328ドル高の33,093ドル。 先週、株価は下落した。債務上限問題が解決できていないことで、 債務不履行の可能性があることによるが、米債務上限の引き上げを 巡る交渉が合意に至らないとの懸念が続いているにもかかわらず、 米短期金融市場ではFPMCが6月に利上げを実施するとの見方が強まっ ていることも影響している。 イエレン米財務長官は26日、米債務上限の引き上げもしくは適用停 止が講じられない場合、財務省は資金繰りを続けるための特別措置 を6月5日までに使い切るとした。しかし、26日は上昇した理由は、 バイデン大統領が米債務上限引き上げは、共和党と合意が近いとし たからである。 このような下落相場であるが、エヌビディアやマイクロソフトなど のAI関連株は上昇している。 米国の債務上限問題は、簡単ではない。 米国の累積債務は33兆ドルもあり、4600兆円であり、金利5%とする と、230兆円の利子支払いが必要になる。債務上限問題は、米国債の 金利支払いの問題でもあり、インフレを必要としていることでもあ る。このため、共和党の緊縮財政派の人たちも簡単には折れないし 、民主党内でも問題意識はあるので、この部分は何かの合意ができ る。 最後の問題として、より厳しい労働条件に対する要求を取り下げな いことを断固として共和党が主張したことである。 世界の問題としては、G7でも米中の経済分離が中心議題になり、中 国の金融市場に逆風が強まり、景気回復の鈍化もあり、海外資金の 逃避が起きている。この資金が日本に向かっているのかもしれない が、中国は世界的な中国経済圏の確立を急いでいる。 人民元の国際化、反米英の構築であるが、インドはG7サミットに出 席し、かつG20の開催を中印紛争のカシミールで行うことで、中国は 出席できなくなった。グローバルサウスをまとめて反米化すること は、所詮無理である。 この対立で大きな恩恵を受けるのが、日本のようである。米国は、 日本への技術協力を開始して、中国の技術移転を阻止し始めた。 アジア圏も親中派のタイやカンボジアなどからも欧米企業は投資を 引き上げる可能性が出てきた。アジア諸国が、米中の踏み絵を踏ま されることになる。 このため、アジア圏の親中国への投資もできなくなる。徐々に日本 企業は、日本に戻るしかない。または、アジアの親米国や反中国に 投資をシフトするしかない。 徐々に冷戦体制が構築されることになる。日本企業もその方向で準 備が必要である。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、2023年5月19日は30,808円で、22日は278円 高の31,086円、23日は129円安の30,957円、24日は275円安の30,682 円、25日は118円高の30,801円、26日は115円高の30,916円。 先週の株価は横バイであり、利益確定の売りも出てきた。 日経平均の横バイ理由は、海外投資家の2兆7千億円の買越し、自社 株買いの1兆2千億円の買越しなどと、銀行など国内機関投資家の3兆 円の売越しと個人投資家の2兆8千億円の売越しで、株価は上がらな かったようである。 しかし、日経平均はバランスしているので、下落にはなっていない。 どうも、1982年から始まったグローバリゼーションと、それに伴う デフレ経済から、1982年より前の冷戦構造とインフレ経済にシフト したようである。インフレは続くことになる。事実、4月の輸入物価 は下落しているに、都区部物価3.2%も上昇した。 そして、1-3月期の名目GDPは、570.1兆円で「過去最高」になってい る。日本経済は、世界的な冷戦構図の経済環境で、息を吹き返して いる。円安の追い風もある。 円安もあり、欧米諸国の観光客も戻り、インバウンドも復活した。 欧米の国民は、中国ではなく、日本に好感して来るようである。 G7でも米中の経済分離が中心議題になり、ウクライナとロシアの戦 争で、中国の台湾武力統一の動きも警戒して、より大きな分離の方 向に世界は向かっている。経済安全保障が大きな議題になり、特に 中国に対する最新半導体製造装置や半導体の輸出規制である。 しかし、マクロン仏大統領は、「欧州は台湾問題に関し米中対立に 巻き込まれてはならず、戦略的自律性を維持しなければならない」 と述べるなど、米英の味方ではないし、仏国内では「フランス・フ ァースト」のルペン氏が支持率を上げている。 日本の役割は、英米の味方をして、その経済圏でAI以外の工業製品 を供給する役割になりそうである。米国も日本の工業力を必要とし て、米艦船の修理や造船を行う方向のようだ。日米共同国家化が進 むことになる。 1980年代の日本と同じ役割を日本に期待していることになる。1990 年以降、日本の技術力を落として、その技術を中国に移転したが、 経済力ができたことで、中国は強大になり、米国の言うことを聞か ないことに、やっと気が付いて、中国の工業力を落として、日本の 工業力を上げる必要になっている。 米国の国内は、工業力の復興はすでにできずに、海外メーカーの助 けを借りる必要になっている。米国の技術力はAI分野と半導体設計 分野しかない状態である。 半導体の製造技術は台湾と韓国にある。しかし、この2ケ国は紛争 当事国になる危険があり、危険の少ない日本に半導体製造技術を移 す必要になっている。 米国は金融分野の競争力を高めたが、それは結果的に資金のバラマ キになり、それが基で、米国工業力をつぶし、貧富の差を生み、最 後には、インフレを招き、米国の荒廃が進んでいるように感じる。 共和党のトランプ氏と民主党のケネディ氏という大統領候補が、共 に米国軍事力の縮小と述べている。米国の軍事費は年間100兆円であ り、この予算で国民保険もない状態にしている。軍事費が大きいこ とで、貧富の差を埋めることもできない。日本の国家予算全体と同 じ規模である。 よって、近々に、日本にも大きな問題になってくるし、世界は米国 の現状を見ているので、簡単に米英の言うことを聞かないことにな る。本当に日本しか、英米の味方はいない。 一方、日本国内では、自民党と公明党の主張に大きな違いが出てい ることも影響して、連立政権を維持できない状態になっている。 創価学会の婦人部を中心に、自民党の憲法改正に違和感が出ていて 、選挙協力を反対しているようである。 しかし、世界は戦争の時代になり、日本も欧米と協調して、戦争の 準備をする必要になっている。 もう1つが、増税を進める自民党に、国民は違和感を持っている。 「社会保険料上乗せ、扶養控除縮小」で、国民や企業などの負担率 は47・5%に達し、五公五民では、江戸時代の悪代官と同じだ。 その上、大企業しか賃上げができず、中小企業の賃金はあまり上が っていない。この点を「日本維新の会」が争点にして、かつ憲法改 正賛成という主張をすると、これは、次の選挙は自民党が負ける可 能性もある。 経費削減で一番、大きいのが議員定数の削減であり、比例代表の数 を絞る必要があるが、これに反対しているのが公明党である。 よって、自民党が維新の会に勝てるのは、議員定数見直しを公約化 することであり、このためにも、公明党との連立政権を止めること である。 維新や国民民主党などとの連立政権にして、議員定数を削減し、憲 法を改正することである。この部分で一致することで、争点化でき なくなり、次の争点は公的負担の軽減策の戦いになる。地方への配 分見直ししかない。 ここは、維新の会も言っていないことで、都市で勝つ方向で自民党 は勝負するしかないが、もし逆に維新の会が、それをすると自民党 は負けることになる。 よって、これができないと、国民は維新の会に得票して、自民党は 再度、野党になる可能性も出ることになる。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は反転攻勢に出ていたが、バフムトでの反撃も、ロ軍のザポリ ージャからの援軍で、膠着した事態になっている。このため、ウ軍 ではなく、自由ロ軍を使い、ロ軍の手薄な国境沿いに、ロシア国内 への攻撃を仕掛けた。 また、全体的にウ軍の地上攻撃は下火になっている。ウ軍の反転攻 勢はどうなったのであろうか、という事態である。 ・バフムト方面 ウ軍はバフムト郊外で本格的な反転攻勢に出ているが、ロ軍の守備 が整い、そう簡単には撃破できなくなっている。 ベルヒウカ貯水池で、ロ軍は強固な陣地を構築して、ウ軍の攻撃を 防いでいるので、膠着状態である。逆に、ロ軍が市内から、クロモ ベ方向に向かった攻撃を、ウ軍は撃退している。 バフムト市内のワグナー軍は、5月25日から撤退を開始して、6月1日 まで完全撤退するとプリゴジンは言う。今、ウ軍はワグナー軍の撤 退を待っているようにも見える。 しかし、25日を過ぎても、ISWによる映像確認ではワグナーはバフム ート市街を出た様子がない。単に、DNR旅団などが入ってきて、配備 兵力が増大しているだけである。 イワニフスク方向にロ軍は攻撃したが、ウ軍は撃退している。 ウ軍第3突撃旅団はクリシチウカやアンドリウカ方向に攻撃している が、こちらの前進も、ロ軍陣地を1つ1つづつ潰していくので、時 間がかかっている。 クリシチウカに向けて、第24と第3突撃旅団が攻撃しているが、前進 速度は遅くなっている。このクリシチウカの後方のイワノハラドの 弾薬庫が大爆発した。地域の中核的弾薬庫であったようだ。 一方、市内ではロ軍とワグナー軍が、ほぼ全地域を占領した状態で あり、ウ軍は、南の一角を残して撤退した。ウ軍は市内でゲリラ戦 を行っている。 このバフムトの戦いでは、ザポリージャ州のロ軍を増援でバフムト に投入したことで、ザポリージャ州の兵員が若干少なくなったよう だ。バフムトの反撃が、本格的な反転攻勢の前哨戦の位置づけなの であろう。 もう1つが、バフムトのワグナー軍交代要員として、ロ軍部隊が入 るが、その部隊もドネツクからの移動であり、アウディーイウカ方 面の部隊のようである。 しかし、ウ軍の反撃がなくなったことで、この地域の戦闘は少なく なり、ロ軍の戦死者数も500名以下程度と今までと比べると、非常に 少なくなっている。 ・自由ロシア軍のロシア領内への攻撃 5月22日、自由ロシア軍とロシア義勇軍が、ロシア西部ベルゴロド州 で、ロシア政府機関の現地本部などが襲撃し、ロシア治安部隊と戦 闘になった。 4台の装甲車、70人以上の兵員と5台のトラックで攻撃したが、ロシ ア国境には20名程度の訓練されていない兵員しかいないことで、簡 単に国境を突破したようであり、龍の歯などの障害物も難なく越え ている。 コジンカを制圧、国境から9Km先のグライボロンまで侵攻したが、ロ 軍4千人が投入されて、24日夜までに国境線付近まで撤退したが、現 時点でも、ベルゴロド州内で爆発音や銃声がしているようである。 マイスキイ村でもドローンによる攻撃で爆発が起きているので、ド ローンの撃墜を試みて、ロ軍が銃撃している可能性もある。 ベルゴロド州には、他に2ケ所で侵攻し、クルスク州でも奇襲攻撃を している。こちら側は撤退したようである。 自由ロシア軍団は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから数 週間後の2022年3月に結成された。所属するのは、ロシア軍からの離 反者のほか、ロシア人やベラルーシ人の志願兵で攻勢されている。 もう1つのロシア義勇軍団は、2022年8月に結成された組織だ。極右 論者として知られるデニス・ニキティンが率いている。 この攻撃は、ロ軍の手薄な国境線を複数箇所で侵攻して、ロ軍の国 境防備を固めさせて、その分、ザポリージャ州の兵員を分散させよ うとする試みである。 ロ軍が国境地帯に配備されたことで、所定の目的を達成したようで ある。 そして、ロシア人のロシア義勇軍団のトップが24日、今後も同様の 襲撃を繰り返すと表明した。 しかし、この侵攻で米国製装甲車を使ったことで、米軍制服組トッ プのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、「ウクライナはロシア国 内で米製兵器を使うべきでない」と、ウクライナにくぎを刺した。 ・その他方面 クピャンスク方面で、ロ軍はマシュティフカを攻撃したが、失敗し ている。 アウディーイウカ方面で、要塞やイボクリノベ、プレボマイスクに ロ軍は攻撃したが、失敗している。ロ軍は25日にアウディーイウカ 西のS300ミサイルでカルリブスキー貯水池ダムを破壊して、アウデ ィーイウカへの補給路を封鎖しようとしたようである。 ウ軍は、トネツク市の科学研究所、補給拠点、ロ軍基地など複数個 所に砲撃を行っている。今までとは違う動きであり、後方地域を叩 き、反撃の準備をしているようにも見える。 それと、ドネツク市にあるツインタワーをGMARSで破壊に成功してい る。このタワーにある計測装置で砲撃の位置を測っていたので、ロ 軍の砲撃精度が落ちることになる。 マリンカに、ロ軍は強い攻撃に出て、市内中央通りを占領した。ウ 軍は市内で抵抗している。クラスノホリフカへのロ軍は攻撃したが 、ウ軍に撃退されている。 ロ軍偵察艦「イワン・フルス」に3隻の無人艇で攻撃して、少なくと も1隻は衝突したようであり、大きな損傷を受け、曳航されているよ うである。ロ軍黒海艦隊は、無人艇の攻撃を受ける可能性があり、 相当な距離をおいても、危ないことになる。 港湾都市ベルジャンシクで25日夜、「アゾフカベル」ケーブル製造 工場で大規模な爆発が複数回、発生したが、この工場は露の軍事基 地として使用されているという。この攻撃は、ストーム・シャドー であろう。 26日朝、クリミア大橋から東へ約200kmの位置にあるロシア連邦クラ スノダールの中心部で大きな爆発が発生した。この攻撃は、ドロー ンUJ-22による可能性がある。ロシア領には、ストームシャドーを使 えないことで、ウクライナ製ドローンで攻撃するしかない。 ロシア連邦ロストフ州のロストフ市でも倉庫が大火災にしている。 ウクライナ南部マリウポリでも、ウ軍は26日、ストームシャドー2発 で攻撃した。 ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、ウ軍の大規模な反転攻勢 に関し、「敵の補給拠点の集中的な破壊が含まれる」と説明してい た。 逆に、ロ軍は、ヘルソン州ベリスラフ付近でKAB(FAB-500の派生型) 爆撃を2回実施した。もう1つが、ドニプロにもロ軍の攻撃があり、 病院が爆撃されて、1名が死亡、16名が負傷したという。前線のウ軍 兵の治療にあたっている病院だとロ軍は言う。 それと、ロ軍は25日と26日、ウクライナ全土で大規模なミサイルと ドローンによる攻撃を実施した。ウ軍は、ロ軍巡航ミサイル10発と S-300ミサイル8発、シャヘド-131/136ドローン31機の飛来を確認。 うち、巡航ミサイルすべてとドローン23機を撃墜したと発表。 ・ウクライナの状況 すでに、12個旅団中、欧米で訓練された9個旅団がドニプロ市郊外に 集結していて、戦闘開始に向けて、最終調整をしているという。こ のため、ロ軍もドニプロ市への砲撃を強化している。 当初、ヘルソン市とドニプロ市近郊の2方面に展開していたが、ド ニプロ川の渡河作戦が、ロ軍の砲撃で無理となり、全面的にドニプ ロ市郊外に集結したようである。 ということで、メルトポリ攻撃をメインで、マリウポリへの攻撃が サブということのようである。この攻撃は数か月続くことになるが 、攻撃開始から数か月後には、F-16の参戦もあり得ることになる。 この集結地にロ軍は空爆をして、事前に叩く必要があるが、それが できないようである。 SU-24がザポリージャ州のウ軍陣地を空爆しようとしたが、対空ミサ イルで撃墜されている。ウ軍のS300防空システムのミサイルが枯渇 して、ロ軍の航空機を撃ち落せない状態であるが、集結地付近の防 空体制は欧米防空システムで盤石なのであろう。 ゼレンスキー大統領のG7参加で、F-16の供与が確実になり、F-16の 訓練も開始したので、4ケ月後の9月にはF-16の供与が始まることに なる。12機を1つの塊として提供されるという。事実、オランダはパ イロット訓練終了直後にF-16戦闘機をウクライナに移送するという。 スウェーデンは、グリペン戦闘機へのパイロット訓練を行うとして 、ウ軍への供与を行うようである。このグリペンは、多目的戦闘機 であり、使い勝手が良い。 そして、F16の兵装として、AMMRAM中距離対空ミサイルやマーベリッ ク対地ミサイルの供与とカナダはAIM-9サイドワインダー43発を供与 するという。これで、防空能力と、攻撃力は大きくなる。 ロ軍では、F-16以上の性能を持つ戦闘機はSU-35などの最新鋭戦闘機 になるが、ウ軍の防空システムとの組み合わせで、勝つ可能性が高 まるようだ。 もう1つ、ロシア占領地へのウ軍攻撃時には、ロ軍攻撃機の攻撃を 受けるので、そのロ軍攻撃機基地への無人機による攻撃を強化して いる。 ロストフ州のタガンログ空軍基地やモストフ空軍基地がドローンUJ- 22により攻撃を受けている。これらの基地からウ軍部隊へ空爆をす るロ軍攻撃機が飛び立っているので叩く必要がある。 しかし、6月には、レオパルト1A5が110両がウ軍に供給されるし、 9月にはF-6が供給されることになる。ウ軍のいつ、本格攻勢に出る のかは、まだわからない。 EUは、ロシア凍結資産1966億ユーロの内、ロシア中央銀行資産の 1800億ユーロをウクライナに移動させるという。日本円で約27兆円 であり、ウクライナの年間予算が11兆円であるので、2年分の予算に 匹敵することになる。 ・ロシアの状況 エフゲニー・プリゴジンは、「エリートは自分たちの子供を戦争か ら守り、庶民の子供が死んでいく状態が続けば、ロシア革命(1917 年)がまた起こる。まず兵士たちが立ち上がり、その家族たちが立 ち上がる」と言い、「我々はウクライナを非武装化しようとした。 結果は逆だ、ヤツらを武装集団に変えてしまった。今のウ軍は最強 だ!」とし、これまでに「ワグナー軍の兵士2万人以上が死亡した」 と明かしている。 そして、「激戦地バフムトから撤退を始めた」と発表した。 プリゴジンは、ロシアの国境守備が脆弱であると不安感を煽って、 その対応ができるのはワグナー軍だと強調した。 それと、ロシアのベルゴロドでプリゴジンの選挙キャンペーンのポ スターが貼られ始めているようだ。塹壕に籠ってばかりの臆病なリ ーダー、プーチンとは違い、リーダーとして戦争の前面に立つ姿が あるからだ。もう1つが、ロシアの現状を正確に見通していること である。 これに対して、プーチンは26日、クレムリンで開かれた経済団体代 表らとの会合で、欧米制裁や欧米企業撤退で打撃を受けた経済を立 直す「5カ年計画」作成を提案した。5カ年計画は、国家主導の計画 経済の手法で、冷戦下の経済封鎖に対抗したソ連時代の経験を基に 生き残りを模索する。 長期の戦争に備えるためには、ロシア経済の立直しは不可欠である し、中国などの友好国を1つでも多く獲得する必要がある。 経済面でのプリゴジン氏は、無力であるから、そこをプーチンは、 大統領選挙戦で強調するのであろう。 しかし、クレムリンの安保会議構成員である、パトルシェフ安保会 議書記、ボルトニコフFSB長官、ナルシキンSVR長官などは、戦争に 負け始めて、国内が混乱したら、プーチンに退任を進める可能性が ある。この時、ロ軍のゲラシモフ参謀総長も一緒に退任を求めるこ とになる。 また、FSB内の若手などのシロビキは、プリゴジンにクーデターの口 火を取ってもらい、その後、FSBを中心に事態を変革することも考え ているようだ。 このような中、プーチンは、ワグナー軍がバフムトを完全占領した ことに祝辞を述べている。現実を見ると、ウ軍との戦闘に勝ててい るのは、ワグナー軍しかない。このため、ワグナー軍のトップのプ リゴジンを切れないでいる。 もう1つが、ロシアとベラルーシ両国は、ロの戦術核兵器のベラル ーシ配備する協定に署名した。 ・世界の情勢 欧州歴訪中の中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は26日、最後 の訪問地モスクワでロシアのラブロフ外相と会談したが、西側当局 者の話として、ロシアがウクライナ東・南部を占領した状態での即 時停戦を呼び掛ける「和平案」を、李氏が仏独などに提示したと言 う。 ロシアのミシュウスチン首相が訪中した際も、習近平主席も、中ロ 相互の「核心的利益」を重大とみて支持するという。中ロが、欧米 を中心とする国際的包囲網に対して、対応していくことが確認され たようである。ロシアと中国の関係は、かつてないほど高レベルに あるという。 これに対して、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、「ウクラ イナ全土の解放を想定しない妥協のシナリオ」だと指摘し、「民主 主義の敗北、ロシアの勝利、プーチン政権の存続、国際政治での衝 突急増を容認するのに等しい」と批判した。 とうとう、中国のロシア寄りが鮮明化したことになる。これにより 、欧米と中国の対立が明確化して、欧米対中ロの構図になることが 、より鮮明になったようだ。 一方、ミリー統合参謀本部議長は25日、「ロシアが軍事的に勝つこ とはない」が、同時に、ウ軍がロ軍の占領地域を解放することも「 軍事的に達成可能かもしれないが、短期的には無理だろう」とも述 べ、戦闘の長期化に懸念を示した。 このため、停戦後、どうウクライナの安全を保証するかの議論が出 ている。今回のウ軍攻勢で、ウクライナ全土の解放は無理であり、 どこかで停戦となる。その時、ウクライナとNATO加盟の「西ドイツ 」型するか、自衛力増強の「イスラエル」型かの議論になる。 もう1つが、欧州議会、ハンガリーのEU議長国としての不適格性に 関する決議案を作成し、その決議案は、「ハンガリーがEU法および 欧州連合設立条約第2条に明記された価値観、さらには誠実な協力の 原則と相容れないことから、2024年にこの任務を確実に遂行できる かを問う」ものだそうだ。 これによりハンガリーのEUにおける投票権が剥奪される可能性があ る。もう少し行くと、欧州議会で、ハンガリー追放の議題が出る可 能性が高まっている。 さあどうなりますか?