東部バフムトでは、市内をワグナー軍とロ軍空挺部隊が前進して、 郊外南と北西でウ軍が反撃して、領土を奪還している。現状と今後 の検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで2022年年初来安値となり、2023年5月12日は33,300ドル で、15日は47ドル高の33,348ドル、16日は336ドル高の33,012ドル、 17日は408ドル高の33,420ドル、18日は115ドル高の33,535ドル、19 日は108ドル安の33,426ドル。 先週、株価は上昇した。債務上限問題が解決方向であり、バイデン 大統領も広島G7サミットに出席する。しかし、金曜日にホワイトハ ウスと債務上限の妥協を交渉する共和党のトップ議員は、会談は「 一時停止」中であるとした。まだ、債務上限問題は解決できていな い。バイデン大統領は広島であり、帰国後の対応になる。 そして、雇用者数の伸びは予想を上回り続け、4月の自動車販売台 数は約2年ぶりの高水準、3月の新築一戸建て住宅販売件数は1年 ぶりの高水準で、製造業も安定化の兆候が見られることで、FOMC参 加者が23年の実質GDP伸び率見通しを中央値で1%前後と、3月の前回 予測(0.4%)から上方修正し、失業率見通しは4%前後と前回予測の 4.5%から下方修正する公算が大きいと見込んでいるので、6月利上 げはあり得るとした。 しかし、19日、パウエルFRB議長が利上げ停止の可能性を示唆したこ とから、市場が織り込む6月FOMCでの利上げ確率は25%に下がり、銀 行株が売られ反落した。また、債務上限問題が解決していないこと でも株価は下げた。 もう1つ、イエレン財務長官は、銀行業界で"さらなる吸収合併"の 可能性を示唆したことでも、銀行株を下押しした。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、2023年5月12日は29,388円で、15日は238円 高の29,626円、16日は216円高の29,842円、17日は250円高の30,093 円、18日は480円高の30,573円、19日は234円高の30,808円。 先週の株価は大幅に上昇して、17日は3万円台に乗せ、19日は日経平 均3万795円超え バブル期の1990年8月以来、33年ぶりの高値になっ た。 日経平均は4月末比で7%上昇で、18日までに米ダウ工業株30種平均が 2%下落、欧州ストックス600がほぼ横ばいにとどまるなか、独歩高 の様相である。 というように、日本株は米国株に比べて非常に強い。バフェット氏 も日本株は買いであるというし、海外投資家が大挙して日本株を買 って、4兆円越えの買越しになっている。 日本企業の業績は円安の影響で、国際競争力を取り戻して、企業業 績は非常によく、最高益になっている所もある。今後も130円台の円 安水準であれば、企業業績は維持できるようだ。 もう1つが、国際情勢が緊迫化したことで、台湾人、香港人、中国人 の富裕層が大挙、日本の不動産を取得して、日本への移住を始めて いる。また、円安の効果で、インバウンドも好調であり、このため 、都会だけではなく、地方の旅館やホテルなども中国系富裕層が買 っている。 インバウンド消費も盛んになり、日本全体の景気を押し上げている。 しかし、4月の全国消費者物価指数コアCPIは104.8と、前年同月比 3.4%上昇した。伸び率は前月の3.1%を上回った。このため、日本人 は、物価高騰であり、消費を控えだしているようである。「無印良 品」の店舗に行くと、少し前はごった返していたのに、最近はあま り多くの客を見かけない。どうも、中間層の消費が押さえられてい るような気がする。 そして、安売りスーパーの「オーケー」の混み方がすごいことにな っている。節約志向の人が多いことがわかる。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は反転攻勢に出て、バフムトで本格的な反撃をおこなっていて 、他地域の反撃をあまり行っていないようである。 また、ザポリジャー州やヘルソン州などの複数地点でも偵察に出て いたが、下火になっている。特にドニプロ川の渡河を目論んだが、 ロ軍の砲撃が厳しくなり、諦めたようだ。しかし、それも騙しの可 能性がある。 ・バフムト方面 ウ軍はバフムト郊外で本格的な反転攻勢に出ている。ウ軍の攻撃は 北西方向では、オリホボ・バシュリフカを奪還して、トホボ・バシ ュリフカに向けて前進している。ベルヒウカ貯水池まで、ロ軍は撤 退して、そこに強固な陣地を構築して、ウ軍の攻撃を防いでいる。 このため、この方面ではウ軍は前進できない状況であるが、クロモ ベ方向に向かった部隊が、市内の北西部分を攻撃し始めた。 ソルダーの近くのサッコ・イ・ヴァンテッティをウ軍第30機械化歩兵 旅団が攻撃している。ロ軍は退却している。ソルダーにワグナーの 補給基地があるためであり、補給を止めることで、バフムト市内の ワグナー軍の勢いを止めたいようである。 プリゴジン氏も「ロシア軍はバフムート北のサッコ・イ・ヴァンテッ ティで後退し側面を無防備にさせた」と批判している。 ザリジネンスクでもウ軍が攻撃を開始したという情報もあり、バフ ムト周辺でのウ軍の攻撃は大規模になってきた。 イワニフスクでもウ軍第24突撃旅団がロ軍陣地を攻撃して、ロ軍を 後退させている。そして、クリシチョウカ方向に前進している。 もう1つが、ウ軍第3突撃旅団で、運河を渡河してクリシチョウカ方 向に攻撃しいる。ロシア側情報源は「この方面でロ軍部隊は、多く の陣地を失ったが、依然として重要な高地を我が軍が保持している ため敵の前進を阻止し続けている」と述べているが、ウ軍部隊がク リシチョウカ市内に入り、市街戦になっているようだ。 イワニフスクのロ軍突出部は、完全になくなり、クリシチョウカに 向けて、第24と第3突撃旅団が攻撃している。この方面にはロ軍空挺 部隊が市内南側から移動してきて、防衛にあたっているが、ウ軍に 砲撃されて足場を築けない。 この状況で、マリャル国防次官は、「バフムト南西部を制圧した」 と述べている。 一方、市内北側では、第2市立病院を超えてロ軍は、ユビリア通りま で前進している。ウ軍はユビリア通りまで後退した。東側でもワグ ナー軍に押されて、ウ軍は郵便局からユビリア通りまで後退してい る。 ここで、クロモベからウ軍がロ軍側面を攻撃したことで、ロ軍は小 児病院に前進していたが、側面からの攻撃で大損害を被り、前進を 中止して、ウ軍の側面攻撃に備える必要が出ている。ここにロ軍は 増援部隊を送り、ウ軍の攻撃を防御したようであり、ロ軍の前進は 止まっていない。 もう1つが、市内北側で広範な地域にテルミット焼夷弾を複数回使 用し、ウ軍は焼夷弾地域から撤退していることで、ロ軍は前進して いる。 市内南側は、工業大学当たりで、ロ軍は止まっている。ここの攻撃 部隊であるロ軍空挺部隊は、クリシチョウカ方向に移動したことで 攻撃力がなくなっている。 しかし、ロ軍はバフムト市内の99%を制圧、ウ軍はMiG-17モニュメ ント付近の一画を保持しているだけになった。プリゴジンも20日、 「本日われわれはバフムトを掌握した」とした。そして、ワグナー 軍は、経験豊富な戦闘員をバフムトからスーダンに送り、優秀な戦 闘員を失わないようにし始めている。 しかし、市郊外ではロ軍の降伏者が急増しているが、これに対して 、プーチンは、捕虜の兵士の自発的な降伏は、犯罪行為と同等で10 年以下の懲役に処するとした。 ウ軍発表のロシア軍戦死者も20万人を突破して、直近3ヶ月間で6万 人増である。ロシアの負け戦であることは、この数字でもわかる。 マリャル国防次官は、「ロ軍は予備兵力の大部分をバフムート地域 に投入しており、他の地域のロ軍予備戦力を減衰させる可能性が高 い」と述べた。 事実、ザポリージャ州のロ軍兵もバフムトに移動させているようだ 。バフムトの反撃が、本格的な反転攻勢の前哨戦として、必要だと いうことのようだ。 その結果、欧米当局者は、ウクライナのロ軍はひどく枯渇している ため、ロ軍は、今後数週間でウ軍からの大規模な反撃に効果的に対 応するための予備を欠いているとした。 そして、まだ、ウ軍は機械化歩兵旅団中心の反撃あり、ウ軍の攻勢 主体である戦車旅団が登場していない。 ・その他方面 クピャンスク方面で、ロ軍はマシュティフカを攻撃したが、失敗し ている。 スバトボ方面では、ノボセリフスクにロ軍は攻撃したが、ウ軍に撃 退されている。 アウディーイウカ方面での攻撃はなかった。 ロ軍は、マリンカに戦車隊で攻撃して来たが、ウ軍はT-90戦車10両 をHIMARSで破壊した。このため、ロ軍は、攻撃を止めて撤退した。 ロシア支配地のルハンシク市が長距離攻撃された。ウ軍は「ストー ム・シャドウ」を使用した可能性が高い。攻撃されたのは、機械製 造工場と弾薬保管拠点と石油貯蔵所、ロ軍司令部などで、連日の攻 撃になっている。この攻撃で、イーゴリ・コルネはルハンスク人民 共和国の内相ですが、理髪店に訪れた際、店が爆発したことで重傷 を負ったようだ。 19日、ロシア支配の都市マリウポリのロ軍基地にヘリ部隊が到着し たがそれを狙って複数回の爆発が起きた。これも「ストーム・シャ ドウ」での攻撃であろう。 どうも、ロ軍の防空システムがほとんど破壊されて、後方の重要拠 点にも配備されていないようである。 18日、クリミア半島では、鉄道が破壊されて、貨物列車が脱線して いる。これはパルチザンである。 ロシアのベルゴルド州のラジオ放送に、ウクライナへの支援を呼び かける声が流れた。ロシア内反政府勢力とウ軍側で戦う自由ロシア 軍が結託して、ロシア国内でも活動を活発化させているようだ。 ドニプロ川東岸や中州のウ軍拠点をロ軍は砲撃している。ドニプロ 川をウ軍は渡河しようとしたが、砲撃がすごいので、中止したよう である。 ロ軍は、16日朝にかけて巡航ミサイルなど23発をキーウなどに発射 したが、その内には極超音速ミサイル「キンジャール」6発があった が、すべて撃墜したとウ軍は発表した。 パトリオット対空迎撃ミサイルで、キンジャールを仕留めている。 ということは、弾道弾ミサイルも迎撃可能ということになり、核ミ サイルをウクライナに打ち込もうとしても、ロシア国内で撃ち落さ れる可能性がある。核攻撃を防止できる可能性があることになる。 このようなことになり、パトリオットで全弾迎撃されたキンジャー ルの開発者3人が反逆罪で逮捕されていたようだ。キンジャールの 技術を学会で発表したことが機密漏洩罪になるというが、この論文 は事前審査されているはずである。 その後も、毎日のように巡航ミサイルでウクライナを攻撃している。 ロ軍は、ウクライナのエネルギー部門を再び攻撃して、5つの地域で 停電が発生している。17〜18日夜にかけてもウクライナ全土で大規 模ミサイル攻撃を実施。キーウ、オデーサ、ムィコラーイウの各都 市に、巡航ミサイル28発、イスカンデル地対地巡航ミサイル2発を発 射した。ウ軍のザルジニー司令官はミサイル29発、ドローン4機撃墜 したと。 米国がPAC-3迎撃ミサイルを提供し続ける限り、ロ軍はキーウを攻撃 して成果を上げることはない。パトリオットを約20台受領したが、 PAC-3とPAC-2を半分ずつ使用すると、ミサイル迎撃ミサイル160機、 航空機迎撃ミサイル40機を発射できることになるからだ。 しかし、これしか、ウクライナを攻撃できなくなりつつあるようだ。 地上戦でも負け、空軍力でもF16が導入されると負け、パトリオット の配備されていない地域をミサイルで攻撃するしかない状態である。 ロシアは、カリバーを月産約25機、Kh-101を35機、KINZHALOVを2機 、弾道ミサイルイスカンデルMを5機生産しているので、毎月のよう に攻撃できる。 もう1つが、ロシア国内の陣地に、ウ軍が戦車で砲撃している。こ れにより、ロ軍は国内の国境線沿いに、ロ軍兵を配置せざるを得な い状況にしている。 13日のロシア・ブリャンスク州で、SU35、SU34、Mi8ヘリ2機の4機が 同時に撃墜されたが、4機はジャミング部隊で、Mi8ヘリにはECMが搭 載され、半径150kmをジャミング出来る。この部隊はHIMARS専用ジャ ミング部隊で、GPSが狂いHIMARSの命中率が悪くなっていた。 このため、米軍がウ軍に囮のミサイルを渡し、改造されたMIG29に囮 の空対空ミサイルを装備させ、ロ軍の航空機が帰還する時に、囮ミ サイル発射して、ロ軍の防空システムは、これを誤認して、ロ軍の 4機を撃墜した。当初5機撃墜としたが、1機は囮のミサイルというこ とのようだ。 ・ウクライナの状況 F-16戦闘機をウクライナは要望している。ゼレンスキー大統領は、 これを得るために、欧州諸国を歴訪して、英国のスナク首相とオラ ンダのルッテ首相が、ウクライナのF-16戦闘機調達を支援する「国 際的な連合」を構築した。 現在運用している欧州の国は、ベルギー、オランダ、デンマーク、 ギリシャ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニアであり、オランダ は200機以上を運用して、F-35に交代するようであり、供与可能であ るようだ。ポルトガルやデンマークも「国際的な連合」参加し、ウ 軍のパイロットやエンジニアに訓練を提供するという。 MIG29のパイロットをF16へ機種変更の訓練期間は4ケ月で済むようで あり、英国、オランダ、ポーランド、ポルトガル、デンマークなど がウ軍パイロットの訓練を行うとした。 サリバン補佐官は広島で、「同盟国に米国が供与したF16を、ウクラ イナに供与するにあたっては米国の許可が必要だが、米国は『容認 』する」とした。そして、米国は欧州での訓練を支援するという。 すでに、パイロット養成終了後、デンマークとオランダのF-16AM/BM 戦闘機45機がオーバーホールと近代化の後にウクライナ空軍に引き 渡されるという。 これにより、西側の多様なミサイルを搭載できることになり、ロ軍 のSU-34などの戦闘機を大きく仰臥することになる。 これにより、ウ軍が広範囲に制空権を確立したら、ロ軍戦闘機はウ 軍制空権内を飛べなくなり、ウ空軍機が地上部隊の支援を今以上に 可能になり、ロ軍を制圧できることになる。このため、これにより 、戦況は根本的に大変革が起こり、早期にウクライナ国土の奪還が できることになる。 これに対して、ロシアのグルシコ外務次官は20日、バイデン米政権 が欧州の同盟国による米国製F16戦闘機の対ウクライナ供与を容認す る方針に転換したことについて「状況をエスカレートさせるものだ 」と批判、「欧米自身にとって重大なリスクになる」と警告した。 そのゼレンスキー大統領は、国内の戦闘指揮をザルジニー軍総司令 官とシルスキー陸軍司令官に任せて、今後も援助依頼と外交攻勢を 掛けていくようである。 そのゼレンスキー大統領がまず欧州訪問したことで、F-16の調達を 前進せたことが大きいが、もう1つ、欧州評議会は17日、ウクライ ナがロシアの侵攻による損害の補償を将来的にロシアに要求するこ とを想定し、損害の証拠などを記録するための「損害登録機関」を 設立した。この「損害登録機関」に日本も参加する。 次に、19日、サウジアラビアを訪れ、アラブ連盟首脳会議に出席し 、ウクライナの和平案への支持を呼び掛けた。 20日、広島のG7サミットに直接参加。ここでは、印モディ首相とゼ レンスキー大統領が個別会談して、「インドは可能な限りの支援を する」ことと、解決に向けて「できる限り手を尽くしたい」と表明 した。 ロシア制裁に加わらず、原油を大量に輸入しているインドは「グロ ーバル・サウス」の代表格で、親ロ的なインドを外交的に切り崩し たことは大きい。 ロシアの大統領府・国際関係会議で、プーチンは、原稿を片手に、 前屈みで苦痛に歪んだ表情で、時々、カメラに顔を向けながら、絞 り出すように、「西側はロシアの解体を狙っている。」と演説。 頼みのインドからも袖にされ、中国は中央アジア諸国をロシアから 切り離し、徐々に孤立化が進んでいる。精神的に追い詰められてい るようだ。 そして、ゼレンスキー大統領は、G7諸国には、ウクライナへの財政 支援の拡大とロシアへの一層の制裁を求めるようだ。 ゼレンスキー大統領のG7参加に合わせて、日本政府は新たな対ロシ ア制裁として、制裁の回避・迂回に関与したロシア関係者を含む約 100の個人・団体の資産を凍結すると表明。合わせて、約80の軍事関 連団体などへの輸出禁止、ロシア向け建築サービスおよびエンジニ アリングサービスの提供禁止を内容とする措置を講じるというが、 中古車の輸出禁止は述べられていない。トヨタの意向が強いことが 見て取れる。 ゼレンスキー大統領に「今後、どんな支援を期待するか」との問い に、「医療システムの構築、そして復興には『日本の指導力』に期 待している」とした。外交面でも援助拡大でも、大きな成果を得た ようである。 ・ロシアの状況 プーチンは17日、ロ連邦保安庁(FSB)の権限を拡大する規則改正を行 なう法令に署名し、ウクライナ侵略行動への批判を、さらに厳しく 取り締まる体制が強化した。旧日本の特高警察と同じである。 それと、クレムリンや地方の政府高官が辞任を禁じられている。何 人が辞任しようとしたが、許されなかった。辞任禁止の目的は二つ で、もし多くの人々が辞任すれば、行政が機能しなくなるためと、 もう一つは、政府が団結し全員が所定の場所にいて、誰も逃げ出さ ないということを国民や部下に示すことだという。それだけ、辞任 希望者がいることである。 2023年1月から3月までに、志願兵を11万人新規に集めたという。こ の志願兵を訓練して、戦場に投入することになるが、戦局は厳しい。 ロシア連邦統計局が17日発表した2023年1〜3月期のGDは、前年同期 比1.9%減だった。西側諸国の制裁などが響いたとみられ、4四半期 連続のマイナス成長となった。 このため、通貨ルーブルが4月に入ってから急落した。ルーブル安の 背景の一つとみられるのがロシアの財政悪化で、1月から4月の財政 収支は3兆4000億ルーブル(日本円で6兆円)を超える赤字に陥って いる。政府支出の対GDP比率は18.7%から19.9%に急上昇した。同年10 ー12月期には20.1%にまで上昇している。ロシアの外貨収入の大半を 占める石油や天然ガスへの制裁で価格が下落した影響のようだ。 これにより、ロシアのUAZトラック工場の労働者は、数ヶ月間適切な 給与を受け取っていないため、ストライキに突入した。平均して月 に250ドル程度しか受け取っていないという。 徐々に戦時経済も行き詰まりになってきたようである。 それと、クラスノダール地方のゲレンドシクにあるプーチンの「宮 殿=地下シェルター」の地下部分の図面や絵図が出てきた。長さ40 メートルと60メートルの2つのトンネルがあり、幅は6メートル。居 住スペースの総面積は603m2だというが、モスクワへのドローン攻撃 を受けて、プーチンはこの防空壕での生活を送る羽目になる可能性 がある。負け戦の結果は、ヒトラーと同じ運命を暗示している。 ・世界の情勢 ウクライナ外務省は、和平仲介をする中国の李輝ユーラシア事務特 別代表に対し、ロシアとの停戦について、ウクライナが領土を失う か、紛争が凍結されるような提案は受け入れられないと伝えたと明 らかにした。中国は、次にポーランドに向かったが、和平提案がで きるのか疑問である。 ウクライナのクレバ外相は、どの国でもロシアとウクライナの戦争 を仲裁する役割を担うことができるが、「基本原則」には従わなけ ればならないとした。 仲裁は「ウクライナ領土の完全な回復につながる」べきで「紛争を 凍結」してはならないと指摘。「この2つの原則を尊重し、誠実に 行動すれば、誰もが役割を果たすことができる」とした。 中国の李輝ユーラシア事務特別代表は19日、ワルシャワでウクライ ナの情勢を巡りポーランド高官と協議した。ポーランド側は「ロ軍 の撤退と占領した領土の返還が唯一の受け入れられる解決策」だと 伝えたという。 そして、G7サミットでは、ウクライナ支援に向けて対ロシア制裁を 強化することで一致し、他方、中国への貿易依存度を低減させる必 要性に言及した。 G7招待国は、インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、クッ ク諸島、コモロ、ブラジル、ベトナム、ウクライナである。 G7対抗で、中国の習近平国家主席は中央アジア5カ国(カザフスタ ンとキルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン )の首脳を招き陝西省西安で開いた初の「中国・中央アジアサミッ ト」で、習主席は5カ国の安全保障と防衛強化を支援する用意があ ると表明した。 しかし、2023年1〜3月の中国の自動車輸出台数が日本を抜いて世界 首位となった。電気自動車(EV)など新エネルギー車の輸出が伸び て全体の4割弱を占め、日本車を逆転した。日米欧などの自動車メー カーが撤退したロシア向けの輸出も伸びた。というように、中国の 経済力は増している。 その分、中国の影響力は増していくことになる。この対抗軸は日韓 台の3ケ国が協力して、その裏に欧米がいる構造を構築する必要があ るはずだ。 ということで、日本の重要性が欧米で認識される方向のようである。 さあどうなりますか?