ウ軍大攻勢が始まり、まずは東部バフムトでの反攻作戦が開始した ようである。現状と今後の検討をしよう。 津田より 0.米国と世界の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2022年10月10日は 29,202ドルで2022年年初来安値となり、2023年5月5日は33,674ドル で、8日は55ドル安の33,618ドル、9日は56ドル安の33,561ドル、10 日は30ドル安の33,531ドル、11日は221ドル安の33,309ドル、12日は 8ドル安の33,300ドル。 先週は1日も上昇せずに、株価は下落した。11日の米経済指標では、 先週の新規失業保険申請件数は2021年10月以来の高水準となり、4月 の生産者物価指PPIは予想を下回る伸びにとどまった。米金融当局は 物価抑制を図りながら景気の腰折れを回避するという綱渡りを強い られているが、両指標は金融引き締めがようやくインフレに影響を 及ぼしている可能性を示した。 10日に発表された4月のCPIも4.9%と、インフレは落ち着いてきたが 、今後は景気後退を意識し始めて、株価の下落になっている。 その上に、金融不安が起こり、米地方銀行持ち株会社パックウェス ト・バンコープは預金が9.5%減少したことで、パックウェスト株は 一時34%安と急落した。銀行預金金利は非常に低いので、金利4%の MMFへ資金が流出し続づている。このため、地方の中小銀行は、手元 資金が枯渇して、資金ショートになる可能性が出ている。 インフレが落ち着いたことで、6月は利上げ停止になるようであるが 、金利5%以上での資金貸し出しになるので、企業の設備投資などが 、大きく落ちる方向である。 一番大きな問題は、大量の政府債務、そして企業の債務、それより は少ないが家計の債務が積み上げられたことだが、この買い替えが 金利上昇でできないことだ。もう1つが、借金の裏は債券であり、 金利が上昇すると、この債券価格が暴落することになり、米国の政 府債務は31兆ドルも積み上がっており、それは誰かの資産であり、 その資産価格が大きく下落していることになる。 この米国債を持っているのは、米銀だけではなく、世界の保険会社 もそうだ。世界中で同じことが起こっている。ヨーロッパでも、そ して日本でもドル建ての債券を持っている人は大損になっている。 金融引き締めがドミノを倒そうとしている。これから更に問題が生 じることになるとレイ・ダリオ氏は言っている。 その上、米ミシガン大学の5月消費者調査速報値によれば、長期のイ ンフレ期待は予想外に加速し、12年ぶりの高水準に達したことで、 6月の利上げもあり得るとの見方が浮上している。インフレも起きて いる。スタグフレーションになる可能性がある。 この結果、世界の高級住宅価格も下落している。債券を持っていて 大損をした富豪たちが別荘を買わなくなった。 このような動向で、バフェットも、現金比率を増加して、暴落を待 っているようである。「信じられないような良い時期」が終わろう としていると年次総会でバフェットは言っている。 米国株で上昇しているのは、AI関連株だけであり、エヌビディア、 マイクロソフト、アルファベット、メタ、AMD、アップル、アマゾン などである。 もう1つが、米国債務上限問題であり、米議会予算局CBOは、12日、 連邦債務上限を引き上げなければ、6月前半にも債務不履行(デフォ ルト)となる「重大リスク」に直面すると警告した。これに関して、 バイデン大統領の19日開幕のG7広島サミットに欠席する可能性がある としたが、バイデン大統領は出席する方向のようである。 とうとう、バイデンも腹を決めたようであり、公的債務に関する合 衆国憲法修正第14条の発動を検討していたが、発動するのであろう。 12日に予定されていたバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院 議長ら議会指導部との債務上限問題を巡る協議は来週初めに延期さ れた。マッカーシー氏によると「トップが再協議するほどの進展は まだない」という。 1.日本の状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、2023年5月2日は29,157円で、8日は208円安 の28,949円、9日は292円高の29,242円、10日は120円安の29,122円、 11日は4円高の29,126円、12日は261円高の29,388円。 先週の株価は上昇して、12日は年初来高値になった。日本株は米国 株に比べて非常に強い。バフェットも日本株は買いであるというこ とで、現物・先物で4607億円と5週連続の買い越しと、海外投資家が 大挙して、日本株を買っている。 日本は、世界と違って金利はゼロであり、ベンチャー企業にも資金 を貸出することで、米国企業も日本での開発を望んでいるし、米中 対決色が強くなり、日本企業も日本に生産拠点を移している。 このような状況を海外投資家は見ているから、日本に投資しようと するのだ。 その上に、政府は企業にPBRを1倍以上にすることを求めている。企 業は、配当性向の向上や自社株買いをして、株価を引き上げること を求められている。 日本は、昔から民主主義統制経済であり、安倍政権時代だけが自由 放任主義経済であったが、失敗したことで、昔の統制経済に戻し、 政府が中心になって、経済を変革していくことにしたのだ。 そうしないと、人口減少などの大きな問題で日本は衰退する可能性 が高いからである。 もう1つが、戦争の時代になり、日本は近くに中国という専制主義 の国家が周辺地域に拡大する戦争を始める可能性があるからだ。こ の面でも変革が求められている。 そして、最後に、米国の一国主義化が近未来に起こりそうであり、 そのことにも対応する必要になっている。 日本も世界も問題が多い時代を迎えている。政府はこれらの問題に 即応しないといけないことになっている。自由主義を守れるのは、 日欧しかいない。 このため、海外投資家も日本を応援してくれているのである。その 期待に応える必要があるのだ。 2.ウクライナ戦争の推移 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ウ軍は反転攻勢に出て、バフムトやアウディーイウカやボラレダラ などで、威力偵察や本格的な反撃をおこなっているようだ。特に、 本格的な反転攻勢に出たのがバフムトであり、ロ軍の弱い所を攻め ている。 また、ザポリジャー州やヘルソン州などの複数地点でも偵察に出て いるし、攻撃準備をしている。 ・バフムト方面 ウ軍はバフムト郊外で本格的な反転攻勢に出ている。ウ軍の攻撃は 諸兵科連合軍作戦であり、前線部隊にもパッドでウ軍全体の動きが わかるようにして連携を取る。これでロ軍は対応できない速度で攻 められている。 郊外のクロモベのO0506道路の近接地域のロ軍陣地をウ軍第92機械化 旅団が攻撃・奪還し、ロ正規軍は後退している。この方面には、ワ グナー軍はいないという。ロシア国防省も12日「(バフムート北の 部隊は)防衛ラインの安定性を高めるためベルヒフカ貯水池周辺の 有利な位置を保持している」と後退を認めた。この方面では、ロ軍 が総崩れの状態になり、立て直するかが問題である。 イワニフスクでもウ軍第24突撃旅団がロ軍陣地を攻撃して、ロ軍を 後退させている。ウ軍の戦車が至近距離で砲撃し制圧、その後歩兵 がBMP-1から下車展開して、塹壕を掃討している。歩兵だけでは、戦 車に対抗できないし、RPGは持っているが、戦車に当てるのは難しい ようであり、ジャベリンのような優れた対戦車ミサイルをロ軍は持 っていないようだ。これでは、戦車で蹂躙されるだけである。 もう1つが、ウ軍第3突撃旅団が、運河を渡河してクリシチョウカ方 向に攻撃して、進撃中であり、ここを守っていたロ軍第72自動車化 狙撃旅団の2個中隊が壊滅して、第72自動車化狙撃旅団全体が2Kmほ ど後退した。取り残されたワグナー軍の500人も全滅したが、第72自 動車化狙撃旅団がワグナー軍に撤退の連絡もないことで、孤立した からだとプリゴジンは言って、側面のロ軍旅団は、戦わずに逃亡し たと、怒っている。 しかし、第3突撃旅団とはアゾフ連隊のことで、そこの指揮官は「真 っ先に逃げ出したのはワグナーの兵士達で第72旅団の兵士達は包囲 され降伏を受け入れるまで懸命に戦っていた。プリゴジンは嘘つき だ」と述べている。 ウ軍第3突撃旅団の一部は、クリシチョウカ市内に到達しているよう である。このため、イワニフスク近郊の第72自動車化狙撃旅団全体 は、既に包囲されている状態になっている。数千名のロ軍兵は、絶 体絶命の状態である。ウ軍第3突撃旅団は、戦車T64や装甲車M113な どで構成されている。 ここまでで、今年の2月に、ロ軍が手に入れた地域が、たった1日で 取り返されたことになっている。ロ軍の弱さや装備のなさが、どう しようもないレベルであることがわかる。ロ軍が3ヶ月かかってとれ た土地も、後数日で取り返される運命にあるようだ。 市内北側では、ウ軍は第2市立病院までロ軍を押し戻している。東側 はワグナー軍は前進できずにいる。ヘッドマンスーパーマーケット でもワグナー軍は停滞している。 市内南側は、ウ軍の攻撃で、工業大学を取り戻している。しかし、 工業大学の南側では、ウ軍がワグナー軍を押し戻したが、再度、ワ グナー軍は第2小学校まで前進してきた。 プリゴジンは、市内攻撃兵力をバフムト郊外側面の防衛に回さない と、逆包囲される可能性があると、危機感を持っているようである。 このため、兵力不足で攻撃ができないようだ。 ウ軍は、西と南から市内のワグナー軍を逆包囲する作戦であり、プ リゴジンの心配は当たっている。ウ軍がバークヒフカを取れば、バ フムトを徐々に包囲し始めるだろうとプロゴジンは言う。 そして、攻撃の主役であるレオパルド2戦車隊が、バフムトに到着 した。ここからが、春の攻勢を開始することになる。 しかし、米軍の高官は「ウ軍は待望の反攻作戦に向けて形成作戦を 開始した」と述べているが、形成作戦自体は「敵を欺くためにも行 われる」と付け加えており、一般人が「戦場で何が起こっているの か」を予測するのは本当に難しい。ということだそうだ。 バフムトでの反転攻勢は、欺くために行い、ザポリージャ州に展開 するロ軍をバフムトに応援で送ると、今後はザポリージャ州が手薄 になる。 前回からの続きでは、ワグナー軍は、ロ軍から弾薬が提供されるこ とになり、バフムト攻撃を続行していたが、要求の10%程度しか弾薬 が届かないとプリゴジンはクレームを付けた。 しかし、プリゴジンは9日、「我々が(バフムトの)陣地を離れたら 、祖国に対する国家反逆罪になると明確に書かれていた」とロ軍幹 部から言われて、渋々、バフムトにいる状態である。 これに対して、プリゴジンは、ロシアの戦勝記念日に公開した動画 で「一人の幸福なじいさんがロシアによるウクライナ侵攻はロシア の勝利で終わると確信している。このじいさんが最終的にクソ馬鹿 であることが明らかになれば、国はどうすればいい?戦争にどうや って勝てばいいのか?」と述べたが、バフムトでの戦闘を見ると、 それが実感することになる。 プリゴジンは、後援者の一人である、ロシアの億万長者にしてプー チン大統領の「個人銀行家」ユーリー・コヴァルチュク氏と連絡が 取れなくなったというが、この動画が影響している。 プーチンは、プリゴジンの言葉を聞いたら激怒すると思うが、しか し、これまでプーチンを支持していた戦争推進派が、幻滅している 。そして、プーチンに愛想をつかした極右勢力が、最前線で勇敢に 戦うプリゴジンを支持するようになっている。 しかし、ウ軍の大攻勢を受けて、バフムト死守の方向にワグナー軍 はなっているようだ。プリゴジンの政治生命も危うい。それと、英 国は、ワグナー軍をテロ組織に指定する方針だという。金融制裁を 科すとされ、ワグナー軍の資金調達にも影響が出るとみられる。 このため、プリゴジンは、ジョイグ国防相に「バフムトに来て、ロ 軍の状況を見ろ」と要求している。 それと、ロシアのミルブロガーによると、「ソレダル方向では、ウ 軍は接触線全体(長さ95キロメートル)に沿って攻撃作戦を実施し た。ウ軍は1000人以上の軍人、最大40台の戦車と特殊装備を用いて 26回の攻撃を開始した。」ロ軍は逃げ出すものがいるという。 ということで、ボダニウカからウ軍第56歩兵旅団が、ロ軍陣地を攻 撃し、ここをロ軍第200独立親衛自動車化狙撃旅団が守っているが、 後退するロ軍兵士に対して督戦的な行動を行っている。バークヒフ カを取られるとバフムト逆包囲されることになる。プリゴジンの心 配も分かる。 それと、ザルジニー軍総司令官とシルスキー陸軍司令官は、ともに バフムト地域で作戦指揮をしているようであり、ロ軍は、この2人を 殺したと嘘の情報を流している。 しかし、ゼレンスキー大統領は最高司令官本部会議を開催し、「私 たちは、シルスキー将軍の報告を聞いた。その部隊は圧倒的な力で 敵を阻止し、さらには敵をある方向に押し戻したそうです。」と発 言した。 ・その他方面 クレミンナ方面では、セレブリャンスクの森方向にロ軍は攻撃した がウ軍に撃退されている。 アウディーイウカ方面でも、プレボマイスクにウ軍は攻撃したが、 ロ軍の砲撃で、損害を出し撤退した。逆にロ軍は要塞に攻撃したが 失敗している。 ロ軍は、マリンカとノボミハイリフカに攻撃して来たが、ウ軍は撃 退している。ウ軍はノボドネツクの川を渡河し攻撃して、ロ軍は、 後退している。ここからマリウポリまでは、一直線であり、マリウ ポリのロシア人や親ロ派住民は、逃げ出している。ここが本命であ るとみるが、まだ分からない。 ロシア支配地のルハンシク市が長距離攻撃された。ウ軍はミサイル システム「グロム(フリム)」が使用されたとロ軍は主張した。攻 撃されたのは、機械製造工場と弾薬保管拠点と石油貯蔵所のようだ。 ドニプロ川東岸や中州のウ軍拠点をロ軍は砲撃している。しかし、 ベリスラフにウ軍が集結して、ドニプロ川に大量のウ軍小型船が集 結し、水陸両用車も目撃されているという。 ロ軍は、9日朝にかけて巡航ミサイル25発をキーウなどに発射し、 うち23発が迎撃された。5月9日は戦勝記念日であり、戦果が欲しい が、巡航ミサイルが枯渇していて、100発も打てないようだ。 ・ウ軍の状況 ウ軍は、ロ軍への反転攻勢を前に、準備段階に当たる「形成」作戦 を開始したと、米軍や欧米当局の高官が明らかにした。 形成作戦の内容には、部隊の進軍に備えて戦場の状況を準備するた め、武器集積所や指揮所、装甲車、火砲を攻撃することで、大規模 な諸兵科連合作戦の前に行われる標準的な戦術だ。 しかし、ゼレンスキー大統領は11日、欧米から約束された軍事支援 のさらなる到着を待つ必要があるため、反攻開始には「もう少し」 時間が必要だとの認識を示していた。 それと戦争には、後方支援も必要であり、ドイツのラインメタル社 がウ軍戦車を修理・製造する合弁会社をウクロボロンプロム社と設 立した。長期戦になると、ラインメタル社は考えているようだ。 それと、ウクライナ国防省は月12日、国産戦車「オプロート」を国 内企業ウクロボロンプロムに発注すると発表した。「オプロート」 は、既存のT-80UD戦車をベースにウクライナが開発した重量50t超の 主力戦車で、いくつかのモデルが存在し、主砲だけ見てもロシア規 格の125mm滑腔砲とNATO規格の120mm滑腔砲の2種類が存在する。 この戦闘で効果があるのは、英国が射程距離250Km以上の巡航ミサイ ル「ストームシャドウ」をウ軍に提供したことである。空対地ミサ イルなので、ポーランドとスロベニアのMIG29を改修して、改修後ウ 軍に供与して、この戦闘に間に合ったようであり、これで、クリミ ア大橋を破壊できることになった。 この供与に対して、「イギリスによるミサイル供与は破壊と人的犠 牲の点で、紛争をさらに深刻化させる」とロシア外務省が非難した。 米高官も、ストームシャドーは「射程の観点から見て真のゲームチ ェンジャー」であり、ウクライナが開戦当初から要求してきた戦闘 能力を与えるものだとした。 しかし、ウ軍はロシア国内への攻撃には使えないという。 もう1つ、ウ軍のHIMARSの命中精度が下がっているのは、ロ軍の電 子戦装置によるが、スタンドオフデコイジャマー「ADM-163B MALD」 をウ軍が使用しているが、これを米国が極秘に供与したようである 。使用方法は、スタンドオフデコイジャマーを放ち敵防空網を撹乱 して、その隙に本命のミサイル攻撃ないし航空攻撃を行う流れにな る。ルハンシク市の長距離攻撃に使用されたようだ。 もう1つが、11日に、ウ軍兵の訓練に使う米主力戦車エーブラムス がドイツに到着した。ここから訓練が開始する。 ゼレンスキー大統領はいつまで待つのあろうか。このエーブラムス 訓練後まで待つとすると、9月以降迄待つことになる。 もう1つ、米国の支援がいつまで続くのかが問題である。大統領候 補のケネディ氏は、800もの海外の米軍基地を閉鎖するという。米国 の国防予算は世界一でありながら内部から空洞化してきているとし た。 一方、トランプ前米大統領は10日、ロシアによるウクライナ侵攻に ついて、自身が大統領であれば戦争は起こらなかったとの認識を示 した。 また、トランプ氏は、現在自身が大統領なら「1日で戦争を終わら せるだろう」と述べた。「彼らは共に、弱みと強みの両方を持って いる。24時間以内に戦争は解決する。完全に終わるはずだ」とトラ ンプ氏は言う。 プーチン氏を戦争犯罪人と考えるかどうかについては、「彼を戦争 犯罪人ということにすれば、現状を止めるための取引が非常に難し くなるだろう」「彼が戦争犯罪人となれば、人々は彼を捕まえ、処 刑しようとする。その場合、彼は格段に激しく戦うだろう。そうし たことは後日話し合う問題だ」とトランプ氏。 ・ロシアの状況 5月9日の対独戦勝記念日に、プーチンの演説や軍事パレードなど恒 例の催しが行われた。プーチンはロシアの崩壊を狙う西側に対し祖 国を守るための戦争であることを強調し、あたかも被害者のように した。そして規模を縮小した軍事パレードは外国メディアの取材を 許可せず、現役の戦車も航空機も登場しないものだった。 プーチンは10日、予備役の民間人を招集して軍事訓練を行うことを 認める大統領令に署名したが、予備役を集めて志願兵にしたいよう である。兵員不足が起きていて、戦線を維持できない状態である。 そして、欧州通常戦力(CFE)条約の破棄に向けた法令に署名し た。欧州通常戦力条約は通常兵器の上限を定める軍縮合意であるが 、既にロ軍は通常兵器を大幅に失い軍縮している状態である。 それと同時に、ロシアのペスコフ大統領報道官は、ウクライナでの 軍事作戦について「非常に難しい」状況だが、今後も続けるとの立 場を示した。「特別軍事作戦が進行している。非常に難しい作戦で 、当然ながら特定の目標は1年で達成した」と述べた。 それと、12日、ペスコフ大統領報道官は、西側メディアのプーチン への直接取材やインタビューなどを原則拒否するとにした。「真実 を伝えようとする姿勢が見られない間は彼らと話さない」と述べた。 このあたりが、ロシア上層部でもウ軍に負ける可能性を見始めてい るように感じる。 そして、ロシア国民もかなり不安になっていると独立系世論調査機 関『レバダセンター』の副所長は言う。「4月の世論調査で75%が“ 戦争を支持しロシアが必ず勝利すると信じている”という結果が出 ている。 しかしこれは表面的な結果だ。より深い分析をすれば国民はこの戦 争に不安になっていることが分かる。不安が圧倒的に多い。どんな ウ軍の反転攻勢があるのかわからない。反転攻勢とは単なる戦闘で はなく、弱いウ軍に抵抗できないロシアの威厳に対する攻撃でもあ る。そもそも何のために、この戦争を始めたのかと国民が考え始め る」という。 この調査報告書では、ウクライナの反転攻勢を心配している人が62 %。欧米からの武器供与を心配している人も77%。何より今後難し い局面が来る、これまでより大変なのはこれからと考えている人が 過半数いる。どんどん状況が厳しくなっているという受け止めが感 じられるという。敗戦の方向にロシア国内では世論が傾いている。 この傾向は、プリゴジンの発言も影響しているようだ。 このような不安から、ロ軍の元大佐イーゴリ・ストレルコフ氏らが 創設した民間団体「怒れる愛国者クラブ」が12日、ウクライナ侵攻 は「停滞している」としてプーチン政権を批判した。ロ軍の戦いぶ りを「受け身に回っていて、作戦の目的が達成できていない」と訴 えた。「戦略と目的がはっきりせず、勝利に必要な手段を使ってい ない」と指摘。社会のあらゆる力を総動員すべきだと述べた。 また、ウ軍に迎撃された極超音速ミサイル「キンジャール」は、パ トリオットミサイルを撃破しようとして発射されたが、逆に迎撃さ れたようだ。 ウクライナ原子力企業エネルゴアトムは10日、同国南部のザポロジ エ原発を占拠するロシアが、原発が立地する都市エネルゴダールか ら職員ら約3100人の退避を準備していると発表した。原発を維持で きずに、核汚染の可能性を見て、退避するようだという。 もし、原発の核物質の暴走になると、福島第1原発や、チェルノブ イリ原発と同様に、50Kmまでの住民の退避も必要になる。そうする と、ザポリージャ州の広範囲が対象になる。これは戦況に大きな影 響を受けることになる。 一方、9日の対独戦勝記念日の昼食会に欠席したルカシェンカ大統領 は、心筋梗塞を患っており、おそらく人工的な医学的昏睡状態に置 かれているようだという。プーチンに取って、強い支持をしてくれ る唯一の存在を失うことになる。 もう1つ、14日はトルコの大統領選挙であるが、エルドアン大統領 が負けそうであり、負けるとクルチダルオール氏は、欧米的なセン スでロシアと対応するので、ロシアとしても、この選挙に介入して きたが、負けると大きい。 それと、12日、モスクワ近郊のジェルジンスキー市で火災が発生し たが、MiG航空機のエンジンを製造する工場のようである。 ・世界の情勢 NATOのストルテンベルグ事務総長は10日、東京に連絡事務所を新設 するために日本政府と協議しているとした。中国は、NATOの日本進 出を危惧しているようだ。 中国は、秦剛外相を欧州に派遣している。背景には、米中の対立激 化から欧州を引き離そうとする中国側の思惑があり、米国のやり方 に従えば欧州の利益が損なわれると警告している。しかし、NATOの 日本進出となる。 中国は、4月CPIが前年比0.1%(前回0.7%)へと減速して、デフレの状 態になりそうだ。経済も低調であり、欧米企業の撤退も「反スパイ 法」拡大で加速している。このため、経済面を考えるなら、欧州を 引き留めたいようである。 このため、中国は特別代表をウクライナ・ロシアなど5か国に派遣し て、和平交渉の仲介役を果たして、中国の威信を上げたいようであ る。 9日の対独戦勝記念日にもロシアに友好的なメッセージも送らず、反 対に、中国の船舶は、ロシアのザルベジネフチとペトロベトナムの 合弁会社ベトソフペトロの「04─03」ブロックに入り、ロシア の権益を障害していた。 5月19日からは、中央アジアサミットで、中国と中央アジア諸国との 首脳会談も予定しているが、ロシアを招待していない。 このように、中国は非常に微妙な外交を展開している。 イスラエルでは、ガザから400発以上のロケット弾が打ち込まれて、 アイアンドームへの飽和攻撃になり、民間人が複数、けがをしたよ うである。同時にビスボラからもロケット弾攻撃を受けている。裏 には、イランがいるし、サウジはイランとの和平が成立、シリアは アラブ連合会議に復帰している。 イスラエルが、中東で孤立的な立場になってきたようである。この 紛争にエジプトが仲介するようであるが、こちらも微妙なことにな ってきた。戦争が近い感じである。 というように戦争の時代になり、日本でも、有事に輸入が止まるな ど国内で食料が不足する事態に備え、農林水産省が農産物の増産を 農家や民間事業者に命令できる制度をつくる方向で検討を始めた。 さあどうなりますか?