6284.ウ軍の反転攻勢が開始



ウ軍大攻勢の初期段階で、ロ軍後方基地や燃料貯蔵タンク、弾薬庫
などを集中的にHIMARSやドローンなどで攻撃開始した。5月中旬に
は乾燥してくるので、装甲車の行動が自由になる。現状と今後の検
討をしよう。    津田より

0.米国と世界の状況
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、10月10日は29,202
ドルで2022年年初来安値となり、4月28日は34,098ドルで、5月1日は
46ドル安の34,051ドル、2日は367ドル安の33,684ドル、3日は270ド
ル安の33,414ドル、4日は286ドル安の33,127ドル、5日は546ドル高
の33,674ドル。

先週、前半は株価は大きく1000ドル程度下落したが、雇用統計発表
後、株価は戻して、400ドル程度の下げになった。。米中堅銀ファー
スト・リパブリック・バンクの経営破綻で、金融不安になったのに
、FRBは0.25%利上げを行う。公定歩合は5.25%にもなり、景気の下押
し圧力が増すことになると株価は下落した。もう1つが補償上限があ
り、このため、米中小銀行全体で資金流出が起きた。

4日に売買停止になった金融株はウェスタン・アライアンス・バンコ
ープとパックウェスト・バンコープ。いずれも一時は60%を超える
下げとなった。その他でもファースト・ホライゾンも急落。JPモ
ルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカ(BofA)など大手
を含むKBW銀行株指数は、採用21銘柄のすべてが下落した。

ファースト・リパブリック・バンクの次はどこかという市場の不安
心理から、中小銀行株全体を叩き売っているヘッジファンドがあり
、大きく下げた。

バフェット氏は、米地銀の破綻で揺らぐ銀行システム不安について
、預金保護がなければ「破滅的なことになっていただろう」と述べ
、金融規制当局の異例の対応は不安の波及を抑えるために「不可避
だった」との認識を示した。

そして、VIXは20以下ですし、F&Gインデックスも51で中立にあるの
で、まだ市場は暴落局面ではない。

この後、5日の雇用統計では、4月米非農業部門雇用者数は25.3万人
増と予想の18.5万人を大幅に超過した。しかも、製造業雇用者数も
1.1万人増と増えている。予想は0.5万人減で、リストラで減少して
いるはずがである。

このため、5日は株価は大幅上昇で、元に戻した。ショートしていた
ヘッジファンドは買戻しに動いたようであり、パックウエスト・バ
ンコープが8割、ウエスタン・アライアンス・バンコーポレーション
が5割上げるなど、足元で株価が暴落していた地銀株が軒並み急反発
した。5日はダウ平均が一時620ドル上げた。

5日米国債市場では短期債利回りが急伸した。リスクオフで債券に逃
げていた資金が、リスクオンで債券から株に戻ったことになる。

そして、雇用統計により、FOMCは高水準の政策金利を長期間維持す
る公算が大きくなった。6月会合でも利上げを実施する可能性も出て
きた。

しかし、中国のドル離れによる金の買いと米国の地方銀行の健全性
への懸念で、金価格はさらに上昇し、史上最高値に迫っている。ま
だ、米金融不安が続いている。

米国経済は、景気の綱引き状態が続くことになる。まだ、リセッシ
ョンまでには、時間がかかるようだ。

もう1つの問題が急浮上している。イエレン財務長官は、6月1日にも
債務不履行になるとして、それまでに債務上限引き上げを米議会は
行ってほしいというが、共和党は、予算規模の縮小することが条件
としているので、債務上限引き上げができない。

バイデン大統領は、債務上限を命令できる憲法修正14条発動を「ま
だない」としている。もし、債務不履行になったら、米国債の金利
は、大幅な上昇になる。本当のドル基軸通貨の終わりでもある。

このため、欧州格付け会社スコープ・レーティングスは5日、「AA」と
している米国の現地通貨・外貨建て長期発行体および無担保優先債
務格付けを格下げ方向で見直すとした。米国債が安全ではないこと
になる。

1.日本の状況
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、4月28日は28,856円で、5月1日は266円高の
29,123円、2日は34円高の29,157円で、5月連休で取引なし。

先週の株価は上昇したが、連休中の米株が大きく下落しているので
、週明けの8日の株価は大きく下げる可能性がある。

米株は400ドル程度下げているので、日本株も400円程度下げると、
28500円程度まで下げる可能性がある。しかし、米雇用統計が良かっ
たので、上昇で始まる可能性も出てきた。

しかし、金利上昇になっているのに、円は現時点134円と若干円高方
向になっている。米金融不安がまだあるとみる。

2.ウクライナ戦争の推移
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ロ軍は、攻撃から全面的に防御の方向になっている。ウ軍はバフム
トとアウディーイウカの2拠点の反撃とザポリジャー州やボハレダ
ラ、ヘルソン州など複数地点で攻撃に出ている。

・バフムト方面
ウ軍はバフムト市の2km2の地域まで撤退して、ロ軍攻撃で損害を与
えたが、ここからウ軍が反転攻勢に出てきた。ワグナー軍とロ軍空
挺部隊の損耗が多く、ワグナー軍もロ軍空挺部隊も郊外から市内に
移動させて、攻撃を市内に絞り、市内占領した地域の確保する方向
である。

郊外南西では、マルコーベ方向にロ正規軍の攻撃があったが、ウ軍
が発見して撃退した。ボダニウカにもロ正規軍が攻撃したが、ウ軍
に撃退されている。逆にクロモベにウ軍機械化部隊が攻撃して、ロ
軍は防戦している。

市内北側では、ロ軍は貯水池を抜けて遊園地まで前進したが、ウ軍
に遊園地を奪還されたし、東側のワグナー軍は、バフムト駅を超え
て郵便局まで前進していたが、ここで停滞している。ヘッドマンス
ーパーマーケットを超えていたワグナー軍は、ウ軍の反撃でヘッド
マンスーパーまで押し戻された。

市内南側は、ワグナー軍は工業大学からT0504号線を超えていたが、
ウ軍の反撃で、工業大学の取り合いになっている。工業大学の南側
はウ軍が奪還して、ロ軍はショッピングセンターから第2小学校まで
押し戻されている。

マリャル国防次官は、ウ軍が、バフムトのワグナー軍の弾薬庫を破
壊したと発表したが、弾薬欠乏を拡大させたようだ。

ワグナー軍は1日で100名前後の犠牲者が出ている。このため、プリ
ゴジンは、ロ軍ジョイグ国防相に弾薬の潤沢な供給を要求している。

「我々はバフムート45Km2のうち、2km2以外を占領した。砲弾なしで
、無意味にわが部隊が無力化される訳にはいかない。我々は5月10日
、部隊の損耗を癒すためにバフムートから撤退する。我々は正規軍
と交替する。」という。バフムートから撤退すると、この戦線は崩
壊することになる。

このため、チェチェンのカディロフは、もしワグナー軍が撤退する
なら、バフムトにチェチェンのアフマート部隊を送るとした。

それに同調して、プリゴジンも5月10日からバクムートのワグナー軍
のポジションをカディロフに引き渡すよう求める書簡をショイグに
送った。

この状況で、カディロフは、ワグナー軍隊員に対し、ワグナーより
も高待遇を保障するのでカディロフ軍団に移籍し、バフムートでの
戦闘を継続せよと呼びかけている。

ウクライナ諜報機関は、「プリゴジンの発言は、5月9日までにバフ
ムートを奪うという約束を果たせないという事実を背景に、彼が行
ったものである。したがって、彼は今、誰かを有罪にしようとして
いる」と分析している。

そして、米カービー戦略広報調整官は、「ロ軍は、去年12月に始め
たバフムトの攻撃を失敗した」としたが、全体的には、その状況に
なっている。

プリゴジンも、ワグナー軍の熟練した兵員が不足してきて、攻撃力
がなくなり、大量砲撃して、その後の攻撃で突破するしかできなく
なってきたようだ。そのための砲弾が不足してきたので、攻撃でき
ないとし、プーチンとの約束も果たせなかったことになる。

プーチンも5月9日対独戦勝記念日に、バフムト占領という戦果を述
べることができなくなった。

一方、プーチンは、ロシア国境に近い方面の防備を固めるよう厳命
したことで、ロシア国防省は、ウ軍による反攻に備え、全戦線で防
御準備を優先したことで、バフムト攻勢の優先順位を下げた模様で
ある。それを知ったプリゴジンもバフムトを離れ、ウ軍の攻勢地点
にワグナー軍を投入するようである。プーチンの了解も得ているの
であろうか?

それと、3月以降でロ軍兵の自発投降が増加している。4月は3,200人
が降伏して前月比10%増であり、大半が弾薬枯渇で降伏した。ワグナ
ー軍よりロ正規軍兵には、小銃の弾薬も不足している事実がある。

・その他方面
ビロホリフカ工業地帯にロ軍が攻撃し・占拠したが、ウ軍は包囲し
て砲撃をしている。しかし、ビロホリフカのウ軍陣地は、丘の上で
あり、ロ軍に工業地帯を攻撃・占拠させたことには問題がある。

アウディーイウカ方面でも、ウ軍は反撃で、オリトネ、ボジャネを
突破して、ドネツク空港に攻撃しているとロシアミルブロガーは述
べている。この地域のロ軍は手薄になっているようである。しかし
、疑問符が付く。

ウ軍は大規模攻勢を報道統制で封鎖しているし、地域住民にもSNSで
拡散しないように依頼しているので、分からない。

ロ軍は、セベルネやマリンカに攻撃して来たが、ウ軍は撃退してい
る。しかし、ウ軍はストロニクハイリフカを攻撃・奪還して、マリ
ンカを攻撃するロ軍の側面を攻撃できる位置にいる。これもロシア
ミルブロガーの情報である。

その他の地域でのロ軍の攻撃は、なくなっている。防御に回ってい
る。

3日、ロ軍はウクライナを攻撃。発射した偵察ドローン1機とシャヘ
ド136/131自爆ドローン26機の内21機をウ軍が撃墜した。
それと、ロ軍はドニプロ川の川越しにヘルソン市に550発以上の砲弾
を発射した。これで20名近くが亡くなっている。
6日、ウ軍はシャヘド136/131自爆無人機8機を撃墜した。

・ウ軍の反転攻勢
南部ヘルソンでのドニプロ川東岸での拠点構築のほかに、西部ドネ
ツク州ミキリスク、パラリフカ、シェフチェンコの3ケ所にウ軍は、
威力偵察の攻撃を仕掛けている。ボハレダラの近くであり、マリウ
ポリまでの距離が近い。

ザポリージャ州の3ケ所でもウ軍は攻撃しているが、これも威力偵
察のようである。対して、ロ軍はオレポポのウ軍に空爆を行った。

このため、ロ軍は、ザポリージャ地域の18の集落からの住民の部分
的な避難を発表した。ティモシフカ、スミルノヴォ、タラシフカ、
オルリアンスケ、モロチャンスク、クイビシェヴェ、プリシブ、ト
クマク、マラ ビロゼルカ、ヴァシリフカ、ヴェリカ ビロゼルカな
どであり、最前線から50-70km以内の集落である。

ウ軍反撃に対して、ロ軍の航空機による空爆が増加しているが、ウ
軍の防空能力に問題があり、ロ軍航空機を迎撃できていないようで
ある。前線の防空能力を高めるために、射程70〜100km以上の中距離
防空ミサイルシステム多数がウ軍に必要だ。スティンガーでは、ロ
軍攻撃機には届かないからだ。

バフムト、アウディーイウカの反撃と合わせて、ウ軍の反転攻勢に
なっている。しかし、ドンバスよりクリミアの方が奪還が容易だと
いう見方がウクライナでは支配的であり、ドンバスの2都市の奪還を
本命にすることはないようだ。しかし、これも意表を突く可能性も
あるので、分からない。

どこが本命の攻撃場所かをロ軍に悟られないことが必要であり、複
数個所で、ウ軍は攻撃を開始したようだ。何処が本命かは、レオパ
ルト2戦車隊が、何処に向かうかであるが、まだ分からないようだ。

そして、レオパード1戦車80両がデンマークとドイツから、6月1日
までにウクライナに到着する予定であり、戦果を広げるのは、6月に
入ってからのようだ。5月中に攻勢を開始して、夏の間、攻勢を続行
して、奪還面積を増やすようである。

このため、クリミアからロシア人が逃げ出したが、今度はザポリー
ジヤ州からもロシア人が逃げ始めたようである。

それと、ウ軍は、後方の石油タンクや兵站を狙った無人機やパルチ
ザンでの攻撃が活発化させている。

4月29日、クリミア半島のセバストポリのコザチャ湾にある燃料貯蔵
施設でドローン攻撃より火災が発生。このため、ロ軍は、ウ軍の攻
撃を避けるため、黒海艦隊の艦艇のほとんどをクリミアのセバスト
ポリから、ノボシビルスクに移動した。

1日、ウクライナと接するブリャンスク州で石油製品などを運んでい
た貨物列車が脱線炎上した。ロ軍は、ロシア連邦の広大で脆弱な鉄
道網を攻撃から完全に守ることができない。特にロシア国内のパル
チザンは厄介だ。

2日、パルチザンがザポリージャ州内務省副局長の自宅を爆弾攻撃。
副局長は重傷を負ったという。

3日には、クリミア大橋に近いクラスノダール地方ヴォルナの燃料タ
ンクが炎上した。

4日、ブリャンスク地方の飛行場へのドローン攻撃で、ロ軍の大型輸
送機アントノフ124が1機完全に破壊され、別の航空機が胴体に破片
を受けた。ロストフのノヴォシャフチンスキー製油所に別のドロー
ンが墜落した。スタブロポリの潤滑油の倉庫と石油貯蔵施設で爆発
炎上したが、パルチザンのようである。

5日、ロシアのクラスノダール西部イリスキーの石油精製施設で無人
機攻撃による火災が起きたが、同じ石油精製施設には4日も無人機3
機による攻撃があり、爆発と火災が起きていた。

6日、クリミアのジャンコイ地区のどこかで爆発が発生。ロシアのス
ヴェルドロフスク地方のペルボメイスキー村の森林火災がロ軍弾薬
庫に到達。

この他でも、5日には、クルスク州やマリウポリでも爆発炎上が起き
ているが、詳細は不明である。もう、この手の爆発炎上は数が多い
ので、情報を追うことも難しい状況である。

このため、クリミア橋がテロの可能性があるため、閉鎖されている
ようだ。

ロ軍は、防空兵器のほとんどを前線に配備したことで、後方の防空
能力が不足していることがわかる。

しかし、米軍のミリー統合参謀本部議長は「ウクライナは反攻準備
が出来ている」としたが、同時に「この戦いをNATOとロシアの衝突
に拡大させることだけは絶対に避けるべきで、ロシアと中国が接近
しないよう手を尽くす」と述べた。また、当初から言われている通
り「交渉立場を強化する範囲の軍事的勝利」を収めて話し合いによ
る戦争終結を目指しているのだろうとした。ウ軍の兵器・装備では
ロ軍を敗北させられないということである。

それと、「西側諸国の軍事支援は無限ではない」という事実と、ゼ
レンスキー大統領が3月に「まだ戦争は終わっていない」と訴えなけ
ればならないほど、国民間で温度差が広がっており、今年の戦いで
軍事的勝利をどこまで積み上げられるかが「来年の支援」と「国民
の支持」に直結するだろうとした。

・ロシアの状況
クレムリンの時計塔(スパスカヤ塔)に対して、ドローン2機の攻
撃があったが、1機目は3日午前2時27分ごろ、クレムリン内にある
ロシア大統領府の建物のちょうど真上で無力化された。

1機目の残骸はドーム状の屋根に落ち、燃え広がったようだ。2機
目はその16分後の午前2時43分ごろ、同様に大統領府の丸いドーム上
の屋根部分で爆発した。

しかし、クレムリン周辺はドローンの攻撃を避けるためにGPSの誤情
報を送信する「スプーフィング」が行われているが、2機のドローン
は、GPSを使わないで飛んできたことになる。近くから飛ばさないと
クレムリンに正確に行かない。

このため、ドローン攻撃について、米国のドローン専門家はドロー
ンは、国外から飛来したのではなく、ロシア国内で発射された公算
が大きいとした。

ということは、国内の反政府勢力か自作自演の2つが考えられるこ
とになる。

このクレムリンへの攻撃で5月9日の軍事パレードが中止になれば、
自作自演という線が濃厚になるが、それもないようだ。すでに、ロ
シア当局は、21都市で祝賀パレードの中止を表明している。

しかし、5月9日の軍事パレードのリハーサル映像では、例年の3分の
1から4分の1の規模で、T34戦車だけは用意しているともいう。しか
し、中止ではないようだ。自作自演という線は無理がありそうだ。

ロ大統領府は、クレムリンへのドローン攻撃をウクライナによる「
テロ」と一方的に主張し、報復措置を講じると警告。ロ国内で強硬
論が勢いづく中、メドベージェフは、報復として、ウクライナのゼ
レンスキー大統領の「物理的な排除」を要求し、ペスコフ広報官は
「米国が攻撃の背後にいる」と主張した。そして、ロ下院議長は、
ウクライナ政権中枢に向けた戦術核の使用を促す極論をSNSで提案し
たが、プーチンの判断が焦点となる。

ペスコフ広報官の言葉に対して、カービー戦略広報調整官は、クレ
ムリンへのドローン攻撃について、米国はいかなる形でも関与して
いないと反論した。

元ロシア国会議員のイリヤ・ポノマリョフ氏は、クレムリンへのド
ローン攻撃について、ロシア国内で抵抗運動を行うパルチザンが実
行したとの見方を示した。

この報復として、4日にロシアが迎撃不可能とした極超音速のkh-47
M2キンジャール・ミサイルをキーウに向けて発射したが、キーウの
手前でパトリオット防空ミサイルで迎撃された。メドベージェフが
いうゼレンスキー大統領の物理的排除はできないようである。

この早期警戒システムはイスラエルからの供与品であり、それに連
動したパトリオット・ミサイルで撃ち落したことになる。

ウ軍は、トクマクやメリトポリなどの後方拠点を一貫して攻撃し続
けているが、ロ軍は、電子ジャマーを使ってHIMARSシステムのGPS照
準機構を無効化し、ミサイルが目標を外れるようにしたようである。

この対応として、ウ軍は航空攻撃で、電子線装置の破壊を優先して
いる。米国もウ軍の敵信号妨害探知を支援して、衛星からの情報で
、位置を割り出してウ軍航空部隊に情報を渡している。

もう1つの対応策として、ウ軍は、ドローンで後方の燃料タンクを
狙い始めた。

ロシアとしては、ウ軍がいずれ攻勢限界に達した後で、反撃に転じ
る意図を示唆したいようである。

しかし、米ヘインズ国家情報長官は、「ロ軍は深刻な弾薬不足に直
面し、人員的にも大きな制約が生じている。ウ軍の反撃が完全に成
功しないとしてもロシア側が今年、大規模な攻撃作戦を展開するこ
とはできないでしょう」という。ロシアの兵站崩壊で、戦争の状況
は転換した可能性があるようだ。

・中国の動き
中国国家統計局が4月30日に発表した4月の製造業PMIも49.2
と3月の51.9から予想以上に低下していた。欧米への輸出が徐々に
難しくなっているし、先端半導体の輸入もできずに、先端品の製造
もできないことになっている。

このため、中国の習近平国家主席が委員長を務める「中央金融経済
委員会」が5日開催され、米国との関係が緊張している中で「戦略的
主導権」を握るための国際競争で時代に合った産業構造を構築し、
技術的なブレークスルーを達成することを目指すとの方針を示した。

対して、米議会上院の与党民主党は3日、覇権争いが激化する中国に
対抗するための包括的な法案を発表した。輸出管理や制裁強化によ
る先端技術の流出防止や、重要な技術分野への対中投資抑制、中国
の巨大経済圏構想「一帯一路」に代わる米主導のインフラ事業への
資金提供などを盛り込んだ。

米中対決が一段と進行して、中国は、スパイ行為と見なされる活動
リストを拡大した「反スパイ法」改正案が可決した。米国との戦略
的な闘いの中で、習近平国家主席は国家安全保障上の懸念を最優先
した。

しかし、中国外務省は4日、NATOが日本に事務所を開設するとの報道
を受け、NATOの「東方拡大」に「高度の警戒」が必要との見解を示
した。欧州との関係を正常化して、輸出市場を確保したいが、そう
もできないようである。

輪をかけて、イタリア政府高官は来年初めに期限を迎える中国との
「一帯一路」構想を巡る協定について、更新する可能性は非常に低
いとの認識を示した。欧州の中国の要であるイタリアの反中行動に
危機感があるようである。

この状況で、中印を含む主要国連加盟国は4月26日、「ロシアがウク
ライナ戦争の侵略者である」と認定する決議を採択した。中国がロ
シアを侵略者と認めた最初の決議になる。中国がロシアを見限る可
能性が出てきた。

中国の経済には欧州が絶対に必要であり、その欧州への輸出ができ
なくなることを中国も警戒している。

しかし、カナダのジョリー外相は4日、在カナダ中国大使館の外交官
が野党保守党議員の香港に住む親族への脅迫を企てたとして、この
外交官の追放を検討していると明らかにした。中国への圧力を増し
ていることになる。

米国防総省は3日、米国とフィリピンが中国の脅威に対処するため軍
事情報の即時共有を目指すとした。中国とフィリピンなどが領有権
を争う南シナ海での有事を念頭に両国軍がそれぞれ担う役割や任務
を明確にして即応力を高める。

このような状況で、主要企業の7割超が、民主主義と権威主義に経
済圏が分断される「ブロック化」を懸念しているようである。利益
の多くを中国市場で稼いでいる企業が多く、その利益がなくなるこ
とを心配している。

さあどうなりますか?


コラム目次に戻る
トップページに戻る