6273.ロ軍の攻撃限界か?



ロ軍が人海戦術でバフムト包囲作戦を行うも、ウ軍も増援部隊を送
り高速M03号線を死守している。ロ軍の攻撃限界が近い。今後の戦況
を検討しよう。       津田より

0.米国と世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、10月10日は29,202
ドルで2022年年初来安値となり、2月10日は33,869ドルで、13日は
376ドル高の34,245ドル、14日は156ドル安の34,089ドル、15日は38
ドル高の34,128ドル、16日は431ドル安の33,696ドル、17日は129ド
ル高の33,826ドル。

先週、株価は横バイでした。1月のCPIが6.4%で、物価が落ち着いて
きたと13日、14日は上昇したが、15日、16日は小売売上高の上昇、
失業保険申請件数の大きな縮小、PPIの上昇などで、FOMCで、6月ま
で利上げが続く可能性があり、セントルイス連銀ブラード総裁とク
リーブランド連銀のメスター総裁が、3月0.5%利上げと発言したこと
で、市場は金利上昇が続くとみて、ドル高株安になった。しかし、
17日の株価は押し買いになっている。

F&Gインデックスも69まで落ちたが、NASDAQはAIブームであり、金利
上昇でも株価は上昇したが、17日は反落している。10年国債金利は
、3.8%になっている。

米国景気の動向は、消費が増えていることで、「ノーランディング
」との声も聞こえる。賃金上昇率は4.4%と低い伸びになってきたが
、インフレが収まるためには、もう少し景気を落とさないといけな
いので、もう少し10年国債金利が上昇すると市場は見方を変えた。

FRBのハト派ブレナード副議長が、NEC議長になることで、FRBはパウ
エル議長のタカ派になるとも見えるからだ。

しかし、今後の景気見通しやインフレなどに不透明感があり、今後
、出てくる経済統計により、金融政策が変化するようである。

このため、米国株の動向も不透明になってきた。金利上昇であれば
株価は下落するかもしれない。

この中、サマーズ元米財務長官は17日、米国での物価圧力の広がり
はこれまでの金融引き締めの影響が限られていることを示している
とし、政策当局が従来の想定以上の行動を強いられるとした。

FRBは、利上げを当分する方向で、3月には利上げ停止で、年内には
利下げという市場の見方は甘かったようである。

現時点の見方は、6月までは利上げが必要という見方になっている。

そして、ECBのラガルド総裁も、ユーロ圏のインフレ圧力は依然とし
て強く、ECBは基調的な物価上昇を抑制するため利上げを継続すると
述べた。

しかし、金利は上昇方向であるが、欧米ともに、金融資産縮小では
なく、量的緩和をつづけているので、株価の大幅な下落局面になっ
ていない。

金利上昇と量的緩和の2つのことを並行して行っているので、イン
フレも収まらないようにも見える。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、2月10日は27,670円で、13日は243円安の
27,427円、14日は175円高の27,602円、15日は100円安の27,501円、
16日は、194円高の27,696円、17日は183円安の27,513円。

先週の株価は、少し下落した。日銀総裁も決まったが、金融政策の
方向が不透明である。

日銀の次期総裁は植田和男氏となるが、YCCをどうするのか、よく見
えない状態であり、円高方向から円安の方向に風向きが変化してい
る。米国の金利は上昇方向であり、日米の金利差が開くことになる
と見たことによる。現時点は134円台になっている。

円安では株高になるとは見えるが、米国株の動向が不透明であり、
それに合わせて、日本株の動向も不透明になる可能性が高い。

というより、植田新総裁が、どのような金融政策を行うのかによる。
その発言待ちであろう。

2.ウクライナ戦争の推移
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ロ軍の大規模攻勢の成果が出ていない。クピャンスク方面、スバト
ボ・クレミンアの反撃、バフムト包囲、ボハレダラであるが、ウ軍
も春の大攻勢要員をウ軍守備隊の増援として、激戦地に投入したこ
とで、ロ軍の進撃スピードが遅いか、ほとんど前進できないでいる。

このロ軍大規模攻勢に、前線に近い場所に航空部隊を集めているの
で、今後航空機による攻勢が始まる可能性があるが、地上軍の消耗
が激しく、効果があるのか疑問である。

・バフムト・ドネツク方面
ロ軍・ワグナー軍はザリジネスクを占領し、直角に曲がり、M03高速
道路に向けて攻撃しているが、ウ軍は、第30機械化歩兵旅団を投入
して、ロ軍の前進を止めた。

一方、ロ軍とワグナー軍も、パラスコビイウカの一部を占領して、
M03補給路の切断を試みている。この切断を試みたのが、ロ軍特殊部
隊であるが、その攻撃を待ち伏せしていたのが、ウ軍特殊部隊であ
り、ロ軍特殊部隊を壊滅させた。これにより、高速道M03補給路は今
の所、ウ軍の支配下にあり、無事である。

そして、パラスコビイウカにもウ軍は増援部隊を送り、ロ軍の前進
を止めていたが、ワグナー軍に市中心部を占領されたようだ。今は
市の南側で戦闘が続いている。このまま進まれるとM03号線になり、
補給路が危ないので、ウ軍も全力で防衛している。

それでも、ゼレンスキー大統領は、バフムトからの撤退はあり得な
いという。このため、ウ軍は全力でバフムト周辺に部隊を集めて、
ロ軍の人海戦術の突撃を止めいるが、ワグナー軍の技量はすごい。

それと、ロ軍の人員損耗が激しく、攻撃要員が不足になり、攻撃力
が弱まっている。ロ軍も他の戦線から人員を集めているが、損耗の
方が早くて、どうしても、前進できなくなってきた。このバフムト
にロ軍は、おそらく5万の兵力を集中しているが、それでも足りなく
なったようである。どこまで、ここで消耗するのであろうか?

それと、ロ軍は地雷を前線の後方に敷設している。それには二つ理
由があって、一つには、反撃された時の勢いを止める為であり、二
つにはロ軍兵の敵前逃亡を阻止するためだという。

ウ軍は、バフムトを要塞都市にしているので、ロ軍の正面攻撃では
落ちないことで、包囲作戦を行っているが、その包囲作戦もウ軍機
甲部隊の守備陣を崩せないようである。

バフムト市東側の工場地帯、住宅地などにもロ軍が侵入して接近戦
になって、ロ軍の一部がバフムト市街に侵入したようであるが、そ
こから前進できない。南側のオプトネから市内に攻めるロ軍も前進
できていない。

バフムトの南側のイワニフカにロ軍が攻めてきたが、ここもウ軍機
甲部隊が防衛している。T0504主要道の交差点にもロ軍は攻撃してき
たが、ここでも、ロ軍の攻撃をウ軍は撃退している。ここもウ軍機
甲部隊が守り、ロ軍歩兵部隊が攻撃しているが、突破できないでい
る。

しかし、ロ軍も歩兵突撃方法が進化して、中隊20名程度のグループ
で突撃していたが、現在は5名程度の部隊で分散して、夜間に忍び寄
ってくるという。ドローンに見つけられにくくしているようである。

ロ軍も戦術の工夫をしているようであるが、ウ軍もキルレシオを上
げるために工夫している。

ウ軍は基本的に暗視装置を全員持っている。ロ軍は精鋭部隊か特殊
部隊しか持たない。ウ軍は、暗視装置をドローンに付けて、ロ軍の
夜間歩兵攻撃を発見するとクラスター弾を使い、歩兵の突撃を一撃
で仕留めている。このことでも、ロ軍の損害が増えているようであ
る。

NATOの情報によると、ロ軍はバフムトで歩兵を前進させようとした
際に、90メートル強の距離ごとに約2000人の兵士を失っていること
になり、損失が前進の割りに多すぎるという。1km進むごとに2.2万
人の兵士を失うことになる。ロ軍は累計でほぼ20万人の死傷者を出
しているようだ。

そして、どんどんウ軍機甲増援部隊がバフムトに到着している。今
後、バフムト周辺でロ軍掃討作戦に出るとみる。本来は春の大攻勢
用のT-72戦車部隊をバフムトなどの多くのロ軍攻勢地点に派遣して
いる。

このため、プリゴジンも、「バフムトが直ちに手に入ることはな
い。ウ軍の抗戦が強烈だからだ。(勝利の)お祭り気分には程遠い
」と発言し、戦況がこう着状態に陥っていることを認めた。

しかし、プーチン政権は、このプリゴジンの行き過ぎた政治的影響
力を弱める方向に動いている。

この一環として、ロ軍は、ワグナー軍の撤退を命令したが、それで
も前線にいるワグナー軍には、補給を停止したようである。弾薬が
枯渇して戦えないと、ビデオで訴えている。

そして、ロ国防省は、ワグナーが実施していた囚人の募集を開始し
て、ワグナーが停止した囚人兵を突撃兵として利用するようである
。しかし、囚人も戦闘でほどんど生存率がないことを知っているの
で応募しないが、国防省は強制動員するようである。

これにより、ワグナー軍はお払い箱になるが、現在でもワグナー軍
の技能は、正規軍より上であり、ロシア内部の政争で前線のロ軍全
体の力も落ちることになる。ウ軍にとっては、良いことではあるが。

ロシアの軍組織は、それぞれの地域で軍管区司令官により統制され
る体制にしたことで、正規軍、DNR軍、LNR軍、ワグナー軍、カディ
ロフ軍といった、バラバラの体制からの改正することになる。やっ
と統制取れた体制になる。

バフムトの北のフェドリフカにロ軍空挺部隊とワグナー軍が攻撃を
しているが、ウ軍は撃退している。ウ軍もここにも増援部隊を送り
、守備陣を増強している。ここからシベリスクにロ軍は前進したい
ようであるが、前進できていない。

ドネツクのボハレダラには、ロ軍海軍機械化歩兵部隊が攻撃したが
、ウ軍機甲部隊の反撃で大損害を出したが、GRUのスペツナズや特殊
部隊なども増援したが、この増援部隊も壊滅的損害になっている。
ここで、ウ軍は燃料気化爆弾の発射機であるロ軍のTOS-1を破壊した
。大損害をロ軍に与えたが、ロ軍は攻撃を諦めないようである。

ボハレダラ攻勢を指揮した東部軍管区司令官ルスタム・ムラドフが
、攻勢失敗の一週間後、プーチンはムラドフを大将へと昇格させた
。これでロ軍海軍機械化歩兵部隊をボハレダラ攻撃の英雄と述べた
理由がわかる。そして、単純な突撃攻撃のソ連ドクトリンの戦術が
当分続くことになることがわかる。このため、人的損害は今後の多
くなるようだ。

ボハレダラの近くのプレチスティフカにもロ軍は攻撃したが、ここ
でもウ軍に撃退されている。ボハレダラ攻撃のロ軍は部隊の再編成
中であり、攻撃は弱めである。このため、ウ軍機甲部隊が数km以上
もロ軍を後退させている。

ロ軍は歩兵部隊の突撃で攻撃してくるが、前進速度が低いので、ウ
軍は、攻撃地点に迅速に大量の機甲増援部隊を送れるので、ロ軍の
攻撃を早い段階で防ぐことができている。

このような対応で、ロ軍の秋の訓練済の動員兵も突撃で戦死者が多
く、早期に兵員の枯渇になるとみる。ロ軍大攻勢も攻撃限界点に早
期に達してしまうことになり、次の動員兵を必要となる。

・スバトボ・クレミンナ攻防戦
ロ軍が、大量の人員と装備を集めて大規模反撃に出てきた。ロ軍は
反撃を開始でディプロバを占領した。クレミンナの西側のウ軍は後
退している。

ウ軍はリマンに装備と部隊を集めて、セレベッツ川を防御線として
、陣地や要塞線の構築をしている。しかし、ロ軍装甲車が出てこな
い。ウ軍の携帯対戦車ミサイルが相当な確度でロ軍装甲車を撃破し
ているので、ロ軍も戦車や装甲車を歩兵突撃隊に付いていない。こ
のため、前進速度が遅くなり、ウ軍に防御態勢を整える時間を与え
ている。

クピャンスク方面でもロ軍が攻勢に出ている。ドベリチネをロ軍が
占領し、フリャニキウカ、シンキフカ、マシュチフカなどを攻撃し
ている。ロ軍は、クピャンスクに向けて南下するようであるが、こ
こでもウ軍増援部隊が到着して、体制を強固にしている。

クピャンスクは、この方面での補給基地でもあり、ウ軍としては、
防御するしかない。このため、ウ軍の多数の人員と装備を配備した
ようである。

・その他
それと、ロ軍陸軍の97%の人員をウクライナに投入したようである。
ウクライナに配備した数は総勢55万人である。これに対するウ軍は
50万人-70万人であり、数の上ではウ軍の方が多いことになる。

このため、ウ軍を分散させる必要がある。このため、ベラルーシか
らの攻撃を匂わせるとか、ハリキウへの攻撃を匂わせる必要がある。

ロ軍は戦車の60%以上を破壊か鹵獲されている。開戦時3400両の戦車
が、現時点では1100両程度になっている。

反対に、ウ軍は開戦時には700両の戦車であったが、400両が破壊さ
れたが、500両以上が供与や鹵獲して、800両程度であり、今後レオ
パルト2戦車などが、300両供与になるので、1100両になる。ロ軍と
同等な戦車数になる。それも、ロ軍主力のT-72戦車より高性能なレ
オパルト2が多数存在する。

ロ軍のインフラ攻撃に対応して、ウクライナは燃料備蓄をタンクロ
ーリーで行い、ミサイル攻撃を受けないようにして、エネルギー備
蓄を守っているという。15日夜間も大規模なミサイル攻撃があり、
ウ空軍は 32発のロシアのミサイルのうち16発を破壊した。

それと、12台しかないロ軍のTor-M2DT+DT-30の対空ミサイルシス
テムが、ヘルソン州で2両破壊されている。最新鋭防空システムをな
ぜ、ウクライナで使用するのかは分からないが、宣伝のためのよう
である。

ロ軍は、ウクライナに近い空軍基地にジェット戦闘機400機を集めて
いる。とうとう、温存していた航空戦力を使い、ウ軍を破壊するよ
うである。

しかし、このジェット戦闘機は、維持するだけでも毎年大量の部品
を消費するので、制裁で部品不足になり、機体から外した部品で他
の機体を修理していた。「共食い整備」が常態化していたが、空軍
を温存しても、部品がなくなり、時間経過と共に稼働機体が減って
いくことになり、温存から積極的攻撃にシフトするようである。

・ロシアとウクライナの状況
2月15日からブリュッセルで、54ケ国を集めて「ラムシュタイン会合
」が行われた。ここで出されたウ軍の要望のトップは、砲弾であり
、ストルテンベルグNATO事務総長は、各国に砲弾の増産を依頼した。
これを受けて、米ペンシルベニア州スクラントンの弾薬工場で155mm
砲弾の生産量が月間15000発から70000発にした。フランスも兵器の
生産を加速させ、追加のカエサル自走榴弾砲を多数、ウクライナに
送るという。

ポーランドは、レオパルト2A4を32両、ドイツがレオパルト2A6を14
両を4月までにウ軍に提供するとした。カナダはレオパルト2A6を4両
を供与している。A4は改修が必要であり、4月末提供になり、ドイツと
カナダ分の18両以下しか3月までには提供できないことになった。

そして、フィンランドはレオパルト2の供与を見送った。NATO加盟
後に供与するした。デンマークとオランダも供与しないという。

このため、ストルテンベルグ事務総長は、トルコでエルドアン大統
領と会談して、フィンランドの加盟承認を急ぐように依頼した。

このほかに、ノルウェーは砲弾と弾薬を提供するとしたし、ポーラ
ンドは、偵察などの義勇兵をウクライナに送るようである。レズニ
コフ国防相は、笑顔で欧米製戦闘機も供与の方向であるとしたが、
詳細は不明である。しかし、英国ではパイロットの訓練が開始した。

フランスは、AMX-10RC戦闘偵察車14両をウクライナへ引き渡した。
EUは、ロシアに対する工業製品など総額110億ユーロ(約1.58兆円)
以上の輸出禁止を発表した。このなかには、トイレの便器もある。
それと、ロシアにドローンを供与したとして、イラン革命防衛隊の
関連団体も制裁対象に加えられた。

一方、ロシアは、大攻勢を掛けたが、今一である。このため、東部
2州を3月中に占領するとしたが、達成困難となり、その代わりに
バフムトを3月中に占領するとした。しかし、現時点で困難となり
、4月中のバフムト占領とした。バフムトからM03号線を北上して、
スロビンシクやクラマトルシクを目指すようであり、もう1つが、
クレミンナからリマンを占領して、クラマトルシクを目指すようで
ある。

もう1つが、2月24日までに、ロ軍は大攻勢の成果を出したいようで
あり、今後、航空兵力も使い、成果を出すことになる。

ロシアは、他国からの支援がない分、自国軍事産業での増産が必要
である。国家総動員体制になり、費用的には3年間ぐらいの戦費は
あるが、部品調達が問題であり、多くを中国か調達している。

中国は半導体とマイクロチップをロシアに輸出している。米国は、
中国企業32社を輸出禁止のリストに登録した。このため、米国の半
導体製造装置企業の40%が中国から撤退した。

それと、モスクワの小売店舗ではシスコ製品がなお入手可能な状況
にある。トルコやアジア諸国の業者がシスコの許可を得ず、規制を
かいくぐってロシアに供給しているためで、米当局の取り締まりも
総じて届かない。このように並行輸入が横行しているので、ロシア
は必要な汎用半導体も入手できるようである。

中国との関係では、気球問題もあり、米中での軍同士の連絡電話が
不通になっているともいう。このため、中国の動向が注目されてい
る。ロシアを助けて、欧米との関係を途絶するのか、ロシアを見放
して、欧米よりにシフトするのかである。

バイデン大統領は、中国との関係を維持して、ロシア包囲網を築く
方向であり、共和党はロシアとの関係を正常化してでも、対中での
強硬姿勢である。ホーリー米共和党上院議員は、「軍事資源には限
界がある。米国は中国を抑止するためにウクライナよりも台湾を優
先すべきだ」と述べた。

ここに米国の政治的な対立が、世界動向に影響しそうである。共和
党の政策では、停戦を早期に実現することになり、ロシアに有利で
ある。

しかし、バイデン政権内でも、ビクトリア・ヌーランド国務副長官
は、戦争の目的は「クリミア半島の奪回とロシアのレジーム・チェ
ンジだ」としたが、ブリンケン国務長官は「米国がウクライナにク
リミアを占領するよう積極的に奨励してはいない」という。ブリン
ケン国務長官は、クリミアを奪還されたら、ロシアは核使用になる
可能性があるので、それを避けたいようである。

そして、欧州各国は停戦すると、ロシアの侵略犯罪・戦争犯罪や人
道に対する罪が罰せられないし、ロシアは反省することなく力を蓄
え、再び侵略することになるとみている。このため、欧州諸国、特
にロシア近傍国は、ウクライナを全力で応援することになるし、ド
イツもやっと、全力で応援するようになった。

これに引きずられて、イスラエルもウクライナへの支援を本格化す
るようである。しかし、フィンランドなどは、自国防衛も視野に入
れる必要があり、レオパルト2の供与を見送った。

・世界の状況
この中、ミュンヘン安全保障会議が開催された。中国は王毅外交ト
ップをこの会議に送っている。そして、習近平国家主席は、ロシア
によるウクライナ侵攻記念日に「平和演説」を行い停戦を呼びかけ
るが、中国は当面高みの見物であろう。

また、会期中には気球問題で対立する米中間で、ブリンケン国務長
官と王毅氏の会談も検討されている。ウクライナ侵攻が長期化する
中、西側諸国は法の支配の重要性や戦争犯罪を訴えて対ロシア包囲
網を広げたいが、中立的な立場の新興国・途上国の動向にも注目さ
れる。

パキスタンは、パキスタンの武器をウクライナに持ち込むためにポ
ーランドと協力を開始したように、ウクライナ側により多くの新興
国・途上国がついてくれるように、欧米は働きかけることになる。

G7外相会合で、ロシアを支援する第三者に「支援をやめなければ
深刻な代償に直面する」と警告する議長声明をしたが、自国製ドロ
ーンをロシアに供与するイランを念頭に置いているし、中国も視野
に入れているとみられ、G7による追加の制裁を示唆した。

マクロン仏大統領は、「ロシアを勝たせてはならない」という。ま
た、国際法廷を設置する方向で検討をするともいう。これに対して
ポーランド首相は「ウクライナが勝たないといけない」という。こ
こでも、温度差が出ている。

一方、「ウクライナ戦争が長引けば長引くほど中国が有利になり、
権威主義的な国家のトップがロシアから中国にかわるだろう」とい
い、かつ「中国は台湾にソフトに対応する一方で、地下金脈を通じ
て2024年総統選で民進党を敗北させるのが当面の目標である」と台
湾の国策研究院の郭育仁執行長はいう。

世界秩序の大変革が起きているとも見える。

さあどうなりますか?



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