ロ軍が「ラクダ」と「肉の波」でウ軍に対して、大規模攻勢をかけ てくるという。今後の戦況を検討しよう。 津田より 0.米国と世界の状況 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、 2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、10月10日は29,202 ドルで2022年年初来安値となり、1月27日は33,978ドルで、30日は 260ドル安の33,717ドル、31日は368ドル高の34,086ドル、2月1日は 6ドル高の34,092ドル、2日は39ドル安の34,053ドル、3日は127ドル 安の33,926ドル。 先週、株価は横バイでした。2月1日のFOMC後、パウエル議長がイン フレが緩和し始めていると示したことで、下げていた株価が急上昇 した。 しかし、2月3日の雇用統計は、予想は18.5万人増であったが、51.7 万人の増加で、失業率は3.4%と53年半超ぶりの低水準になり、当分 、利上げ停止や利下げはないと市場は見て、3日の株価は下落したこ とで、週間では横バイになった。 そして、雇用の伸びがこれほど強いときに、賃金圧力が十分に和ら ぐとは思えず、これほど予想値とかけ離れた良い経済指標が出てく ると、FRBも利上げを止めて利下げするとは考えにくいことになる。 もう1つ、米国のクレジットカード負債額は18.5%上昇して、史上 最高の9306億ドルに達しましたが、これも景気減速の指標である。 そして、ハイテク5社が揃って、減収減益にも関わらず、F&Gインデ ックスは76と強欲サイドになっている。市場の見方が異常であると しか見えない。 ということは、今後、株価の大幅な下落という反省の時期になる可 能性も否定できない。 基本的には、世界がグローバル化した時はデフレになり、世界が分 断化した時はインフレになるという道理があるので、戦争や対立が 続く間は、小幅な利上げでは、インフレは止まらない。大幅な利上 げをすると、需要が下がり、景気後退になる。その道理を市場は分 からないことで、楽観的な見通しが出るのであろう。 2023年は買い場になるので、そこまで待つことをお勧めする。 1.日本の状況 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021 年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は 24,717円の底値になり、1月27日は27,382円で、30日は50円高の 27,433円、31日は106円高の27,327円、2月1日は19円高の27,346円、 2日は55円高の27,402円、3日は107円高の27,509円。 先週の株価は、引き続き上昇している。弱い上昇である。米国株の 横バイで、日本株も横バイしたように見える。 黒田日銀総裁が4月には辞任し、2月10日前後に次期総裁候補も決ま るというが、次期総裁候補の名前が出てこない。日銀のYCC崩壊の危 険性があり、なり手がいないともいう。 少子化対策として、「N分N乗」で子が多い世帯ほど所得税が軽くな る制度を構築すれば、高額所得者が子供を産み、税金を軽くすると いうインセンティブができるが、岸田首相は「様々な課題がある」 と否定的な言い方である。 それなら、所得税の累進課税や所得税の制度自体、所得別最低税額 も見直せばよいだけである。どちらにしても、子供が多い家に優遇 処置が行く制度を考える必要があることだけは、間違えない。 この見直し時、全体的には増税を仕組むこともできるはず。政府の 反対する理由が分からない。 しかし、諸々の増税より、財源を探す必要がある。財源を探すとい うことは、何かの政策を止めることである。一番大きいのが地方補 助であり、これを止めることで、大きな財源ができる。どうして、 地方補助を縮小しないのであろうか? 地方の人口減少は、止めることができないことは、自明の理であり 、日本の将来を考えるとき、地方の衰退はどうしようもない。それ を、どこまで地方補助をするのか、一度検討した方が良い。 日本の競争力を高めるには、都市中心国家にするしかない。地方は 大規模農業で活路を見出すことである。日本全体の将来的活路を見 出すチャンスである。衰退日本の大改造で、復活を推進するべきで ある。 2.ウクライナ戦争の推移 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ロ軍本体も、1ケ所に大量の歩兵を集めて、波状攻撃をする人海戦 術を各所で実施している。ウ軍も対抗上、戦闘員を集めているが、 人命重視のウ軍は押されている。ロ軍より優秀な兵器が必要である し、対抗戦術の開発も必要がある。 ロ軍は、人海戦術の上に、輸送部隊をウ軍の手薄な場所に潜入し、 突破する戦術を取り始めている。 欧米戦車の供与が決まって、戦車到着までにロ軍は大規模攻勢を仕 掛けてくると、ウ軍は見ているし、ロ軍の攻勢が始まっているとも 見える。 ロ軍が人海戦術で攻勢をかけているのが、スバトボ・クレミンアの 反撃、バフムト包囲、ボハレダラの3ケ所である。そこに集中的に、 ロ軍の兵員を集めている。 ・バフムト・ドネツク方面 ロ軍・ワグナー軍はシイルとブラホダトネも占領し、ウ軍主力は、 T1503号主要道の西側まで後退した。しかし、現在、ウ軍の在留部隊 いる南のクラスノ・ホラと北のロズトリフカとミコライフカをロ軍 は攻撃している。この北の街の延長上にシベリスクがあり、ここま でロ軍は進軍したいようである。シベリスクを取られると、クレミ ンナ攻撃のウ軍は、撤退する必要になる。 それと、ウ軍のいない地点からバフムトフカ川までロ軍は来たが、 その渡河でロ軍は大損害を出している。このため川を渡った西側に あるブラホダトネから川に沿って南下している。 川の反対側にあるパラコビフカにもロ軍は攻撃している。ウ軍のい ない地点で川を越えたたようである。ウ軍のいない地点を探るため には、戦車や軍人とは違う民間人に偽装したトラックなどの輸送隊 を使い探すことで、ウ軍からの攻撃を受けないで潜入できることを ロ軍は知ったようである。 このため、輸送隊で潜入し、その後、ウ軍のいない場所から人海戦 術で攻撃するという方法を取り始めたようである。これで、人員の 損耗を少なくするようである。そして、この輸送部隊を「ラクダ」 と呼び、人海戦術を「肉の波」と言っているようだ。 バフムトの南側のクリシチウカ、アンドリウカもロ軍が占領して、 西にあるイワニフカにロ軍が攻めてきたが、ここはウ軍が防衛して いる。 ここで止めないとチャシブ・ヤールを取られる。チャシブ・ヤール は、バフムトへの00506道の補給路上であり、ここを取られるとバフ ムトへの補給が難しくなる。このため、執拗にロ軍は攻めてくる。 そして、まだ南側のロ軍は、人員補充が効いているので、人海戦術 攻撃を止めない。すでにT0504主要道は補給に使えなくなり、今は地 方道00506を使って補給をしているという。今使える補給路はM03高 速道路と00506道の2本である。 ドネツクのボハレダラには、ロ軍海軍歩兵部隊が攻撃したが、ウ軍 機甲部隊の反撃で大損害を出したが、GRUのスペツナズや特殊部隊な どを増援して、街を2方面から攻撃しているが、ボハレダラを包囲 するようであるが、今のところ成功していない。 ロ軍の勝てる方法は、損害無視の人海戦術と輸送部隊の潜入しかな いようであるが、逆に、それに対応したウ軍の人的被害の少ない防 御体制が確立していない段階である。このため、ウ軍は苦しくなっ ている。 大量の人員が突撃してくるので、重機関銃などを水平に打つなどの 方法を取っているが、弾薬がなくなる時点で熟達したロ軍兵が攻め てくるので、機関銃が効かなくなり、人的損害が出ている。しかし 、物量で押すロ軍の砲撃量も少なくなってきたようである。 マリンカでは、露軍は焼夷弾などのロケット弾で攻撃しているが、 砲撃はほとんどないので、砲弾が欠乏している可能性があると。 そして、ロ軍の攻撃が下火になるのは、人員の損害が大きくなり、 人員補充が効かなくなる時である。そこまで、ロ軍は突撃をしてく る。 このような攻撃であり、ロ軍は、いくら動員で兵隊の数を揃えても まともな軍用車両と弾薬が足りないため、やっても自殺行為になる だけとも見える。勿論、ウ軍にも犠牲者は出るが、その比は、100倍 以上になる。 ・スバトボ・クレミンナ攻防戦 ロ軍が、大量の人員と装備を集めて、大規模反撃を計画しているよ うだ。このため、ロ軍は、クピャンスクに対して砲撃も増えている 。ロ軍の反撃もあり、ウ軍は前進せずに、ロ軍の2月24日以降の大規 模攻勢に備えて体制を固めている。 クレミンア包囲網も前進を止めて、ロ軍の反撃に備える体制である が、コズマネとディプロバをロ軍に占領されて、ウ軍は後退した。 ロ軍の空挺部隊はヤムポリフカを攻撃したが、ウ軍は撃退した。ロ 軍の反撃が開始したようにも見える。 ・ロシアとウクライナの状況 ウ軍は、ロ軍の人的損害を覚悟の上での大規模攻勢に備える体制を 取り始めた。この背景には50万人以上の訓練済の動員兵を前線に配 備したからである。秋の動員数は30万人であるので、その後も動員 を続けていたことになる。この人員で大攻勢を仕掛ける可能性を、 ウ軍は警戒している。 このため、ロ軍は、契約軍人が契約期間を満了しても契約解除に応 じず、動員兵の退役も認めないという。突撃させて死ぬことでしか 退役できないようにしている。脱走や投降、撤退も監視して、させ ないようにする督戦隊を配備して、士気が低くても戦える体制にし ている。脱走兵は、皆の前で殺すようであり、逃げ出すこともでき ないようだ。 このような状態であり、今までにロ軍の人的被害は、死傷者数が20 万人を超えていると見られている。 もう1つ、2023年2月2日に、ロシアは新規のパスポート発行を停止 した。動員逃れで、海外に逃げ出す人を止めるためである。 プーチンは、欧米戦車などの兵器が揃う前に、ウ軍に攻勢を掛ける しかないので、3月中に東部ドネツィク・ルハンシク両州の完全占 領することを命令したという。ということは、クレミンナ・スバト ボやバフムトで大規模反撃があることになる。 そして、再度、ロ軍はリマンを目指すことになりそうである。そう しないと、ドネツクの完全占領はできないからである。 その攻勢は、2023年2月24日以降に始まる可能性があるとのこと。 ダニロフ国防会議書記やレズニコフ国防長官は、50万人のロ軍が大 規模反撃に参加するが、多くの損害が出て弱体化して、ウ軍が5月欧 米戦車などが揃った後の反転攻勢でのロ軍防御力を弱めることにな るとみているようだ。このため、ロ軍の大規模攻勢に、ウ軍がどう 持ちこたえるかが、重要なことになる。 ウ軍は、レパルト2戦車が100+α両、ラインメタル社のレパルト1 戦車が88両供与される方向である。しかし、訓練が必要であり、早 くても3月終わり、戦場に出てくるのは、5月になる可能性もある。 なお、前回ギリシャも供与する可能性があるとしたが、ギリシャは 供与しないことになった。トルコとの紛争があり、現時点では、そ れに備えることが必要であり、余力がないとした。 続いて、ポーランドもレオパルト2戦車14台供与と言っていたが、 すぐにはできないと言い始めている。カナダを除く、その他の国も すぐにではないというので、ドイツは逆に説得に懸命になっている という。ということで、ラインメタル社のレオパルト1戦車の88両 が非常に大きいことになっている。T-74戦車と同じ世代の戦車であ り、戦場では活躍が期待される。 それと、レオパルト1戦車の主砲は、105mm砲弾であるが、あまり この砲弾が使われていない。このため、ドイツはブラジルに105mm 砲弾の供与を打診したが断られたという。アメリカのストライカー MGS用の105mm砲弾やイタリアの105mm砲弾、それと韓国のM48とK1用 砲弾などである。日本も使用しているが法的制約がある。 そして、ウ軍は、レオパルト2戦車と装輪装甲車が手に入り、次に F-16戦闘機、アパッチヘリやGLSDBなどの長射程爆弾などの兵器・弾 薬の供与を欧米諸国に要請している。 この内、GLSDBの供与が決まった。HIMARSから発射できるが、ウ軍に すでにあるHIMARSは、100km以下のロケット弾しか発射できない制限 がついているので、GLSDB用の発射HIMARSを提供するという。 GLSDBは、150qの射程があり、クリミア半島まで届くことになる。 このため、前線から100km程度離れた場所にロ軍は、補給基地を作り 補給体制を完成させたが、この補給基地を150km離れた場所に作り直 す必要がある。 そして、残念ながら、F-16の提供について、米国は供与しないと表 明しているし、ウォレス英国防相は戦闘機供与に対し、「この恐ろ しい紛争において魔法のつえはない」という。間接的な否定のよう に聞こえる。というので、供与は当分先になるようだ。 ポーランドはF-16の供与を表明しているが、EU全体の承認が必要と いうので、難しいようである。言い出しっぺのポーランドでしょう ね。 フランスもミラージュ戦闘機の供与と述べたが、これは英国が供与 する巡航ミサイルの発射機として、少数の提供を検討するというこ とで、前線近くでの戦闘を想定していないようだ。 もう1つ、防空システムでは、フランスが「グランドマスター200」 レーダーシステムを供与するし、地対空ミサイルシステムSAMP/T- Mambaをフランスとイタリアは供与する。このレーダーとミサイルの 組み合わせは強力である。 イスラエルのネタニエフ首相は、「アイアンド−ム」の提供を検討 しているという。もし、提供されると、砲撃にさらされているヘル ソンやハリキウなどの砲撃を駆逐できる可能性がある。 このような供与で、プーチンは、ボルゴグラード(旧スターリング ラード)で、ウクライナへの戦車供与を決定した欧米諸国について 、「ロシアは彼らとの国境に戦車を送らないが、対抗手段があるし 、ロシアに勝利できると考えている者は、ロシアとの現代戦が(過 去とは)別物だと理解していない」とも発言。核兵器の使用を示唆 した。ということで、最後は核戦争になると見た方が良い。 ラブロフも、「西側諸国がロシアの永続的な敗北を目論んでいる」 し、「モルドバを次のウクライナにする為に、自由民主主義とは程 遠い方法でサンドゥ大統領を国のトップに据えた」ともいう。 逆に、CIAバーンズ長官は、今後6ケ月がウクライナでの戦争の最終結 果を左右する「間違いなく決定的な」ことが起きると発言した。勿 論、ウクライナが勝利することになるが、プーチンが1ケ月ごとに支 配地域減少する事態が起きて、交渉にシフトすることになるか核使 用の可能性があるようだ。 実をいうと、米国は、ウクライナが領土の20%をロシアに割譲する条 件の和平案を打診したが双方が拒否したとのことで、ウ軍の攻撃制 限を緩和して、より攻撃できる兵器を供与しだした。 このことで、ロシアを負け込ませて、交渉の場に着くことを目指し 始めたようだ。ウ軍は交渉の場に出すことは簡単で、兵器の供与を 止めればよいが、ロシアを交渉の場に出すには、負けて領土が縮小 する事態が必要である。そして、2月24日の線まで戻して、停戦にす るというのが、米国の終戦目標であろう。米国の真の敵は中国あり 、ロシアではない。 そして、プーチンは、交渉を蹴ったことで、現在より多くの領土を 獲得する必要が出て、総動員に近い体制にした。 それと、ロシアの味方が徐々に少なくなってきた。ロシアの味方は イランと北朝鮮ではあるが、ウクライナ東部の「復興支援」のため 、北朝鮮が建設作業員として軍人や警察官の派遣を進めているが、 一方、戦争が長引き、ロ軍が負けそうであるため、北朝鮮は労働者 の派遣を一旦凍結しているともいう。北朝鮮もロシアの味方をする ことは、危険だと気だ付いたようである。 逆に、ハンガリーとオーストリアがウクライナ支援をしないと述べ ているし、中立国のスイスは、ウクライナへの自国兵器輸出が第3 国経由でできるように法改正する審議を議会で始めるという。 オーストリアは、ウィーンの国連機関に勤務する2人を含むロシア 人外交官4人を追放する方針を明らかにした。オーストリアは中立 に拘っている。スイスは中立の中でどう支援するかを考えている。 中立の中でも色が出ている。 そして、フォンデアライエン欧州委員長とミシェル欧州大統領は、 訪宇して、ゼレンスキー大統領と会談した。この中でフォンデアラ イエン委員長は、オランダのバークに国際法廷を作る準備のための 「国際センター」を設置して、ロシアの侵略と戦争犯罪の検察を行 うとした。ロシア敗戦時の法廷の準備を行い始めている。 もう1つが、ウクライナ復興費用で、没収したロシア資産を転用す る方向で欧米は動いている。 米国とロシアの核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」に規 定された査察をロシア側が拒否しているとした。戦争での核使用が 徐々に、その可能性を増している。 ・世界の状況 CIAのバーンズ長官は、中国の習近平国家主席が2027年までに、台湾 侵攻の準備を行うよう軍に指示しているとの見方を示した。 本当は、この状況で米中対話を行い、米中の対話で事態の進行を遅 らせる必要があると思うが、米本土上空で中国のものとみられる偵 察気球が発見されたことを受け、ブリンケン米国務長官の中国への 訪問を延期した。なお、気球は大西洋上に出た時点で、空対空ミサ イルで破壊したという。 しかし、この気球で米国の世論は、大騒ぎになっている。空港では 一時的に航空機の発着を見合わせるなど、大変である。このため、 ブリンケン米国務長官の中国への訪問を延期になったともいう。 ロシアの複数の国営軍需企業に対し、中国企業が戦闘機の部品や電 波妨害機器などの軍用品を輸出し、ウクライナ侵攻を支援している 問題で、早急に中国と話し合いことが必要になっている。 ということで、対ロ政策上、中国と対話が必要であるとは認識して いるようであり、これ以上の両国関係悪化は、インフレを加速する ことも認識しているともいう。 なお。国際戦略コラムのHP上にYouTubeを貼ります。出てくる地名が どこにあるのか分からないと思いますので、動画で確認ください。 さあどうなりますか?