6254.ロ軍ヘルソン市から撤退か



プーチンは、ウクライナ全土のインフラ破壊にイラン製自爆ドロー
ンを使用。しかし、前線を維持することができなくなっている。今
後を検討しよう。    津田より

0.米国と世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、10月10日は29,202
ドルで年初来安値となり、10月14日は29,634ドルで、17日は550ドル
高の30,185ドル、18日は337ドル高の30,523ドル、19日は99ドル安の
30,423ドル、20日は90ドル安の30,333ドル、21日は748ドル高の
31,082ドル。

先週の株価は上昇した。中間選挙真近であり、前半PKOが入った可能
性があるが、21日に大幅高になっている。

21日はデーリー連銀総裁の発言で、利上げ縮小の期待感で、大幅な
上昇となった。

しかし、米国株は金利上昇を受けて、9月米景気先行指標総合指数も
前月比-0.4%と、景況感も落ちているので、今後も当分下げる方向
だ。景気後退をFRBが問題視した段階で、利上げ停止になるが、まだ
、その段階ではない。

このため、徐々に、長期の下げ局面になり、所々で、下げ相場のラ
リーが起きるという展開であろう。徐々に、スタグフレーションの
姿が見え始めているようだ。

そして、10年債金利は4.1%になり、ドル円は150円を突破したが、12
月0.5%利上げをいうデーリー連銀総裁の発言と、日本の円買介入で
144円まで円高になった。

次回FOMCから利上げ縮小の議論が始まるという。景気を壊さずに、
インフレを抑えるかの議論になるようだ。4%以上の金利になると、
31兆ドルにもなる米国債の利払いができなくなるからだ。

英国トラス首相が辞任する。インフレにもかかわらず、国債を大量
発行するということで、国債金利が上昇して、国債を多く持つ年金
基金に大きな損失が出て、年金を出せなくなるという事態で、税負
担軽減という政策を破棄して、元に戻したが、支持率は7%まで下が
り、とうとう辞任に追い込まれた。

BOEは、利上げをしていたが、国債金利上昇で、上昇を抑えるために
国債買取を行うQEをする羽目になり、インフレに対応する金融政策
が取れたくなっていた。

トラス氏から英国は誰が首相になるのかであるが、ジョンソン前首
相も立候補するという。

中国は9月のGDPの発表を延期した。現在、共産党全人代の開催中で
あり、良くない数字は出せないということであろう。中国の設備投
資が落ちているようで、工作機械のツガミの決算報告が良くない。

その上に、バイデン大統領は、中国のAIを潰すために、半導体の技
術移転を徹底して阻止すると宣言している。このため、今後も中国
経済は大きな重しがある。

もう1つ、気になることがある。ロシアの天然ガスがドイツに来な
いことやロシアの肥料工場が爆弾製造工場にシフトして、肥料の生
産が激減している。

このため、2023年の食糧危機は、多くの人が想像しているよりもは
るかに深刻なものになるだろうと予測されている。

これを防ぐには、日本企業生産の肥料を世界に輸出する必要がある
。そうしないと、来年のインフレは今年以上になる。それも食糧危
機を伴ったインフレであり、より世界を不安定化させかねない。

激動の時代が始まっている。来年は、より悪い状況が待っていると
覚悟して、政治家は準備をしてほしいものである。日本が世界を助
けるしかない。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、10月14日は27,090円で、17日は314円高の
26,775円、18日は380円高の27,156円、19日は101円高の27,257円、
20日は250円高の27,006円、21日は116円安の26,890円。

先週の株価は下がった。最近の動きは、26000円から28000円を往来
する相場であり、今週前半は上昇し、後半は下落の展開になった。
日本市場は米国市場の影響を受けるので、仕方がないが、日本企業
特に欧米への輸出企業の業績は好調である。しかし、自動車などの
輸出企業の株価はさえない。

もう1つ、円安のために、貿易赤字が10兆円を超えた。それと、9月
消費者物価は3.0%上昇になり、ドル円も150円になり、そろそろ、円
安の行き過ぎレベルになってきて、その途端に円買介入で一時的に
144円まで円高に振れた。

しかし、FRBの利上げ縮小や停止か日銀も0.25%の利上げを行うかが
必要であろう。金利差を縮小するしかないが、ここでFRBが利下げに
来たら、今後は円高の心配が必要になる。

このため、どちらにしても、円高にはしてはいけないので、量的緩
和を継続して行うとすれば、大きく円高にも振れないとみる。

日本の経済政策は良いと思うが、コロナ第8波の動向が気になる。
もし、8波になったら、また景気が悪化することになり、事態は逆戻
りしかねない。早く、オミクロン株に対応するワクチンを高齢者に
接種して、流行の山を小さくすることである。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウ軍は、ルハンスク州で交通の要衝のスバトボに向かっているし、
ヘルソン州では、ムイロベに向かっている。これに対して、ロ軍は
ヘルソン州南部から撤退の可能性もあるようだ。しかし、この1週
間の戦線の動きは少ない。

・クレミンナ・スバトボ攻防戦
ウ軍は、クレミンナ周辺に到達して、クレミンナのロ軍基地に対し
て、砲撃しているが、偵察部隊を出して、ロ軍の状況をみている。

ウ軍は、もう1つ、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向け
て前進しているが、こちらも様子見の状態である。

ウ軍は、ロ軍のプーチン防御線の防御力を確かめつつ、部隊の再編
成と増強やローテーションを図っているようだ。英国から訓練を終
えた兵員がウクライナに戻り、前線に配備される。

このスバトボ防衛に、ロ軍も大量の動員兵が配備させているようで
あり、その動員兵を実地訓練して、砲兵などの増強を図っている。
このため、ロ軍砲撃数が増えている。弾薬もイランや北朝鮮から供
給されている可能性以外に、ロシア国内で増産しているようだ。

そして、P66道路までウ軍を押し戻し、P66に防衛線を構築する方向
で、ウ軍に攻撃をし掛けてきている。P66上にプーチン防御線を構築
する可能性がある。

ロシア国内が戦時体制に移行したことで、半導体が必要な精密兵器
は作れないが、弾薬などの軍事企業に民生企業をシフトした効果が
出ているようだ。

そして、T-62戦車の再生などで、弾薬の他にも整備することで、防
御力を上げようとしている。ロシアは防御に回り、その体制を整備
している。

クレミンナ方向へもウ軍は攻撃しているが、ロ軍も同様に激しい砲
撃をウ軍に行っている。砲撃数でロ軍がウ軍を上回っている。

もう1つ、ロ軍がリマンを攻撃したようで、ウ軍が奪還した要衝を
それも前線から遠く離れたリマンをどうのように攻撃したのであろ
うか?考えられることは2つ。

1つに敗残兵が残っていて、そのロ軍兵が、ウ軍陣地を攻撃したか
、2つにはロ軍偵察部隊が、情報収集のためにリマンまで偵察に来
たが、発見されて戦闘になったか、である。

・南部ヘルソン州・ザポリージャ州攻防戦
ロ軍は、ムイロベとプラスキンズキーを結んだ線上に塹壕を掘り、
防衛線を構築した。ウ軍は前進してスハノバまで来て、ムイロベの
攻撃をしていた。

しかし、ムイロベの攻撃でも、数回、ロ軍の鉄壁の防御で、ウ軍は
攻撃に失敗したが、とうとうムイロベを奪還したようである。とい
うことは、ロ軍前線部隊も撤退を開始した可能性がある。

ロシアのスロビキン総司令官は、ドニエプル川西岸のロ軍の撤退を
秩序だって行うようだ。補給がこの地域には十分できずに、その内
、弾薬もなくなり、それと、精鋭部隊をこれ以上失うと、重要地域
の防御もできないとして、撤退を決断した。

現在、イリーシン76輸送機と大型ヘリ数機で、ロシア本土とクリミ
アとの間で補給をしているが、輸送量が少なく前線への補給ができ
ないようである。

このため、前線で弾薬や食糧などが不足しているし、ローテーショ
ンもなしに数か月軍務にあたり、士気が低下している。このため、
ウ軍への降伏も多くなっている。

よって、撤退が必要で、ロ軍は、カホフカ橋の袂の街ベゼルに要塞
を作り、カホフカ橋を渡り撤退できるように最後の拠点を整備して
いる。西岸地域には2万の軍がいるからである。

ヘルソン市の行政機関や司令部などは、既に東岸に移した。その上
に親ロ派住民の避難も行っている。どうも、シンガリを誰が担うの
かで、ヘルソン市内でロ軍同士で、銃撃戦になったみたいである。

撤退前に、ヘルソン市では銀行やスーパーなどにロ軍が略奪をして
いるが、ヘルソン市のロ軍も徐々にフェリーや艀で、西岸から東岸
に移動させている。そして、ヘルソン市ではネットが不通になった。
最後まで残るロシアの通信会社も撤退が完了した。

それと、カホフカ橋に地雷を仕掛けている。ダム自体に穴を開けて
爆薬を仕掛けているともいう。そして、ゼレンスキー大統領は、ロ
軍がダムを破壊すると述べている。ウクライナ政府は、ダム破壊で
ヘルソン市は水が5mほど上がるので、避難する必要があると勧告し
た。

ということで、撤退を開始したが、前線のロ軍の撤退も始まったよ
うだ。秩序だった撤退劇を行っている。前線部隊に精鋭を配し、ウ
軍の攻撃を防ぎながら撤退している。お見事。

もう1つ、ザポリージャでもウ国営原子力企業エネルゴアトムは、
ザポリージャ原発がある中南部の都市エネルホダルから、ロ軍が撤
退を開始したと。もう1つ、この方面でのロ軍の砲撃数が減ってい
ることで、ここの砲兵はスバトボやバクムット方面に配置転換した
可能性がある。スバトボとバクムットの砲撃数が増えた理由でもあ
るようだ。それでもウ軍の砲撃数より多い。

この動きは、ロシアの戦略戦術見直しが始まったことを示している。

・バクムット方面
ロ軍の精鋭部隊が少なくなり、バクムット周辺に攻撃を絞り、そこ
に動員兵も増強して、攻めている。ここでも砲撃数が増えている。
ウ軍よりロ軍の方が多いが、精密誘導弾ではないが、ウ軍の損害も
ある。もう1つが、動員兵が増強で、攻撃力が増していることだ。

このため、徐々にロ軍がウ軍を押しているようである。

・ウクライナ・ポーランド国境地域
ベラルーシとロシア合同軍は、北ウクライナに進軍して、欧米兵器
のウクライナ輸送を阻止する可能性があるとウクライナはみている。
日中戦争時の日本のインドシナ侵攻とよく似た行動である。補給線
の切断を目指すことだ。

このため、ポーランド軍も国境付近に大量の軍を集めて、侵入時に
対応する準備を進めている。ウ軍もキーウへの攻撃を想定していた
が、ポーランド国境付近となり、急遽、準備を開始しているようだ。

欧米との補給線を切られると、ウ軍も危うくなる。しかし、ポーラ
ンドを巻き込むと、NATO軍が出てくる。事実、米軍第101空挺師団
「スクリーミング イーグルス」をルーマニアに配備し、対応できる
体制を取った。というように、戦線の拡大を招くことになる。
それを本当に行うのであろうか?

ベラルーシのルカシェンコ大統領も「われわれに戦争は必要ない」
と言っているが、どうであろう。米軍を引き込むのはいかにもまず
いと思う。

・ロ軍の状況
傭兵会社ワグナーの要員も半分程度が、囚人兵になり、練度は下が
り、正面攻撃しかできず、ワグナー囚人兵が全滅して、ウ軍陣地を
抜けない状態である。ワグナーでさえ、この有様で、当然、正規軍
は、よりボロボロである。しかし、動員で数だけ多い。

それでも兵員の不足から、ロシア下院は、女性を軍隊に徴兵するこ
とを提案したようだ。

この現状を見たうえで、どうするかだ。その方策が出てきた。

イランから自爆ドローンを2500機も導入して、飽和攻撃を各所で行
っている。特に発電所、変電所、火力発電所などを狙って攻撃して
、50%も破壊したようである。冬に向かいウクライナ国民の厭戦気分
を出して、停戦に持ち込みたいようだ。

しかし、ウクライナはEUからの送電網と接続済みで、電力が完全に
無くなることはないし、原子力発電所や水力発電所を攻撃するには
ロシアへの大きな非難を覚悟する必要があり、簡単にはできない。

航空宇宙軍司令官をロシア総司令官した理由は、ドローンや地上戦
で負けているので、そのドローンで勝つ方向を模索するためであろ
う。大型の自爆ドローンもロ軍最前線で、ウ軍の火砲・トラックな
どに向けて攻撃して、大きな効果が出ているようである。

ロ軍弱体化で、前線の維持は難しくなってきたが、防御にシフトし
て、イランのドローンを利用して、勝つことはないが、今の占領地
を維持する方向にロシアの目標を変えたようである。

このため、イランはクリミアに多数の軍事顧問団を送り、直接ドロ
ーンの操作をしているようである。このため、現時点までで10名程
度の戦死者も出ている。ウ軍はドローン発射地点を特定して、ドロ
ーンで攻撃をしている。

戦略変更に合わせて、プーチンも、併合4州に戒厳令を出して、軍
支配を徹底して、ここの支配地域を防御する方向にしたようだ。

ロシア国内では、「これは第三次世界大戦であり、我々はNATOと戦
っている」と宣伝し始めた。戦時体制に向かい、生活は苦しくなり
、多くの国民に死ぬ可能性が出て、意義を再提示する必要になって
いるようだ。

そして、失言かもしれないが、プーチン政権幹部キリエンコ氏も「
戦争」という言葉を使ったようだ。

その上、ベラルーシを活用して、ポーランド国境攻撃をちらつかせ
て、ウ軍部隊をベラルーシ国境に貼り付けて攻撃力をそぎたいよう
だ。

ドローンを提供するイランとロシアの結びつきが強くなり、イスラ
エルのラビド首相がロシアを批判したし、イスラエルは、ウ軍にド
ローン防御兵器を提供しようとした。

しかし、ロ前大統領のメドベーチェフに、「兵器をウ軍に送ったら
、容赦しない」との発言で、イスラエルはウ軍への武器提供を止め
た。

このため、ウクライナのクレーバ外相が、直接ラビド・イスラエル
首相と電話会談して、アイアンドームの提供を依頼したが、どうな
りますか?

全体的に、スロビキン総司令官は、現状のロシア軍の状況を詳しく
知っているので、劣勢であることも承知して、その対応策を出して
きたようである。

1つは、ミサイル等によるウクライナ民間インフラへの攻撃の継続
で、ウクライナ人の戦意を喪失させること。

2つは、戦線の再設定。冬季の守備のため、ある程度の後退も行い
、戦力を保持し重要地域の守備用にその戦力を集中させる。
南部ヘルソン州からの撤退もこのためだ。

3つは、主要補給線の防御と強化。スロビキン総司令官はそれと並
行して、将来の攻勢作戦の準備をする。国内経済体制を戦時経済体
系にして、軍事物質の供給量を増やす。

4つには、スロビキン総司令官は2023年の攻撃計画の策定し、訓練
の終えた動員兵とT-62戦車を新地上戦力にして、この計画策定のた
めのウクライナでの偵察活動もする。この活動でリマンにロ軍が現
れた可能性がある。

このため、ウ軍もロ軍が変化したことで、戦略戦術を変える必要が
出ているようだ。

1つに、自爆ドローンの飽和攻撃をどうのように防ぐかの方策が必
要になっている。当初撃墜率が60%であったが、今は80%まで高めた
が、防空システムで100%にする必要がある。

2つに、プーチン防御線・ワグナー防御線という防御線に対して、
損害の少ない突破方法を考える必要がある。このためには、攻撃力
の高い兵器も必要である。

3つに、ロシアの持久戦にどう対応するのかである。ロシア経済は
石油・天然ガスで経済成長はマイナスであるが、ウクライナより経
済規模は大きいし、戦場になっていないことで、マイナス幅は少な
い。

それに比べて、ウクライナは経済縮小幅が大きく、持久戦を長くは
できない。なるべく早く戦争を終わらせる必要がある。しかし、ロ
シア本国を攻めることができない。

ウクライナ情報総局のブダノフ総局長も、今年末までには、ウクラ
イナが勝利したというレベルまで行くという。

・停戦は
このため、どこかで停戦をする必要がある。それもなるべく早く、
このためには、米バイデン大統領も、ロ軍を圧倒する兵器をウ軍に
提供しないと、戦争は終わらないし、米国議会で共和党が下院で多
数になると、長くはウクライナを支援できない。

このため、停戦開始のポイントを作り、そこまで到達する時間を短
くする必要がある。

このポイントが2月24日以前のロシアとウクライナの停戦ラインであ
ろうとみる。これに向けて、ウ軍を増強していくしかない。

まずは、ドローン防御システムであり、次に米国のドローン、A-10
攻撃機、欧米戦車などの最強な攻撃兵器を提供することであろうと
みる。

ロ軍の総指揮官は、状況に柔軟に対応する人であり、今までのよう
な状況に対応できない無能な人ではないので、注意が必要である。
ロシアも戦時経済体制を引き、長期戦の構えである。

一方、ロシアの核使用の可能性は、通常戦力で負けない方法を取る
柔軟な考え方ができる人であり、危機的な状態にならないことで、
現時点では減っている。

さあ、どうなりますか?



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