6251.リマン陥落



ウクライナ戦争で、ロシアは東部南部4州の併合をし、部分動員で
兵力の増強をしたが、東部要衝リマンをウ軍に奪還されたことで、
ルハンスク州の防衛も危なくなっている。プーチンは戦術核の使用
も匂わしている。今後を検討しよう。    津田より

0.米国と欧州の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、9月23日は29,590ド
ルと年初来安値になり、26日は329ドル安の29260ドル、27日は125ド
ル安の29134ドル、28日は548ドル高の29683ドル、29日は458ドル安
の29225ドル、30日は500ドル安の28,725ドルと年初来安値を更新。

先週の株価は下落し、年初来安値になり、かつ、一昨年11月以来の
29000ドル割れになっている。とうとう、大幅な景気後退の様相が出
て、アップルは価格が高過ぎでiPhone14の販売不調で増産中止とな
り、10年国債金利は4%以上になり、債券の暴落と株価の下落が起き
ている。

今まで、債券は、世界で最も安全とされる資産とされたが、金融市
場にの混乱を起こさせるとの懸念が強まっている。

しかも、債券市場は非常に大きいので、債券の暴落は金融危機に繋
がる可能性がある。米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード副議長
も、9月30日の講演で、世界的な金融引き締めのなか「金融の脆弱性
に注意を払っている」と語り、同時に「時期尚早な(緩和方向への
)転換は避ける」姿勢も改めて訴えた。

多額の国債を持つ大手銀行の赤字で、流動性不安になると、金融危
機になることも考えられる。特にドル建ての債務がある新興国など
の金融破綻を想定する必要がある。このため、新興国から資金が逃
げている。韓国と中国の通貨不安も起きて、ウォンと人民元の下落
が大きい。

この債券下落とともに、アップル株は世界の投資家が持っているの
で、その株価が大きく下落すると、市場全体の動きも、連動して下
落の方向になる。これが鮮明化している。

その上に、米中古車販売の会社の決算発表が悪く、自動車の売れ行
きも悪くなると、自動車関連株も下落した。トヨタ、日産などの日
本メーカーも下落している。

このような景気後退予想から、大手スポーツ用品メーカーの株価も
、業績の先行きへの懸念から大幅に下落した。というように、景気
後退での業績悪化予想が、企業の多くに波及してきているようだ。

それでも、FOMCは11月も0.75%利上げの方向であり、市場は悲観論が
出て、F&Gインデックスも15まで落ちてきて、強い恐怖になっている。
当分下げの方であるし、インデックスも1ケタ台になると、大底にな
るようだ。もう少しで買い場になる。

レイ・ダリオも、金利が4.5%に達すれば、さらに株価は20%近く下
落と予想している。そして、景気後退になり、世界の中央銀行は、
2024年には、利下げを迫られることになるともいう。

もう1つ、英国のトラス首相は、大減税策を打ち出して、その財源
を国債発行とするということで、国債金利が急上昇して、英中銀は
、異常な金利上昇を止めるために、無制限国債買取を行うとした。
利上げを行いつつ、量的緩和をするということになってしまった。
このことで、29日の株価の下げは、英国の動向に起因している。

その上に、ノルトストリーム1、2の破壊が起きて、欧州へのロシ
アからの天然ガス供給が完全に止まることになった。しかし、世界
景気の後退を予想して、原油価格は下落している。

景気後退とインフレの両方に目を向ける必要になっている。もし、
金融政策対応に失敗すると、ハードランデングになり、スタグフレ
ーションになる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、9月22日は27,153円で、26日は722円安の
26,431円、27日は140円安の26,571円、28日は397円安の26,163円、
29日は248円高の26,422円、30日は484円安の25,937円。

先週の株価は下落。NYダウ下落を受けて、日本株も下落する展開で
、その上に世界景気が落ちていることで、製造業の下落も大きい。
特に自動車株の下落は大きい。

しかし、荒野さんによると、大底を付けた可能性が強く、今後上昇
する可能性が高いというが、NYダウが大幅に下落したことを受けて
、10月3日も下落から始まる。ということで、当分、下げの方向であ
ろう。しかし、安いので買い時ではある。

米金利上昇による円安では、2兆8382億円も円買い介入して141円ま
で円高にシフトさせたが、4%の米10年金利上昇で144円後半まで戻し
ている。鈴木財務相も円高阻止ではなく、円高のスピード調整であ
るとしたので、徐々に150円になっていきそうである。

一番問題なのが、今後、米金利上昇で世界的な景気後退が起こるこ
とも想定しないといけないことだ。この景気後退を乗り越えるには
、円安効果だけではなく、構造改革も必要である。

ということで、日本の構造改革を進める必要が、一層高まっている。
高付加価値産業の育成と、既存産業のソフト化・高機能化である。
企業が内部にプログラマーを抱えないと、世界的な競争についてい
けない事態になっている。外部委託体質では、強い競争力を持てな
い。

外部委託するのは企業として、コアでない機能の部分だけで製品コ
アのソフトは自社で作る必要になっているようだ。

もう1つ、インバウンド期待であるが、中国のゼロコロナ政策で、
中国人観光客は期待できたいようである。それと、企業のリモート
ワークが定着したことで、鉄道のコロナ前の業績を回復するのは、
難しくなっているようだ。鉄道会社の事業展開を見直すしかないよ
うである。コトナ前とは社会の雰囲気が違い、一気に日本社会はIT
分野で、世界に追いついた可能性がある。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウ軍は、オスキル川を渡河して東岸を攻撃しているが、ウ軍の前進
をロ軍は止められていないようである。

・リマン攻防戦
スラビアンスク東側の攻撃でウ軍の前進は急速である。オスキル川
を渡河したウ軍攻撃部隊が、リドコドップからカテニフカを奪還し
て、包囲されたノボセリフカやオレクサンドリフカからロ軍は撤退
し、リマンに逃げこんだようだ。

しかし、ヤンピルの東側地点から攻撃するウ軍が北上して、リドコ
ドップから南下しているウ軍は、スタフスキーのロ軍防衛線を突破
し、ドロビシェブとリマンを結ぶ補給線を切断して、リマンを包囲
した。さらにドロビシェブのロ軍も撤退した。

ヤンピルのロ軍も撤退し、ウ軍が奪還し、そのため、リマンからロ
軍もやっと撤退したが、包囲を抜け出せず、殲滅になる可能性があ
る。リマンには5000人のロ軍がいたが、どれだけが撤退できたので
あろうか?

ということで、この地域全体をウ軍は奪還したようである。ドネツ
ク州北部は完全にウクライナ軍の奪還になり、今後はルハンスク州
の攻防になる。

リマンを奪われると、ロ軍の次の防衛都市はザリチネとクレミナに
なり、防衛線は、ザリチネ川になるのであろう。しかし、この方面
のロ軍は、戦力が足りずに依然苦しい。すでにクレミナの南にウ軍
が到達していて、クレミナを攻撃している。今後、ロ軍も部分動員
兵を増援するがどれほどの戦力になるか疑問である。

しかし、東部一帯は、この時期雨が多く、戦車などの機甲部隊は路
外走行ができなく、仕方なくp07など主要道路を進むしかなく、この
ため、待ち伏せ攻撃の危険があり、歩兵を斥候で送り、その後を機
甲部隊が進むことで進軍速度が、大きく落ちている。それでもクリ
リフカを奪還している。

このため、リマン包囲戦以外では前進速度が緩やかだ。

・その他方面
ロ軍は、精鋭部隊がいなくなり、バクムット周辺やドネツク市周辺
でのロ軍の攻撃圧力が縮小して、ロ軍は前進できないでいる。そし
て、ここの主力であるワグナー軍も徐々に精鋭兵士が消耗して、囚
人兵や新兵になり、その攻撃も単調になってきた。

ワグナー軍を狙い、HIMARSで基地や指揮所などを攻撃した効果が出
て、ワグナー軍の勢いがなくなってきた。

しかし、ウ軍は南部ヘルソン州での攻撃では、苦戦しているようだ
。しかし、ドニエプル川の橋やフェリーは相変わらず攻撃している
し、はしけや通行のトラックなどへも砲撃しているので、食料や飲
料水が思うように確保できない状況は変わらない。

ロ軍は、ドニエプル川西岸に、クリミアから部分動員2000人の増援
を送っている。ここにも死守命令を出しているようだ。

しかし、ウ軍はドニエプル川西岸の北東部のクレシェニフカのロ軍
要塞を制圧したというように、徐々にロ軍は弱体化はしているが、
プーチンの撤退拒否で、ロ軍はウ軍を反撃もしているが、防衛のた
めの攻撃になっているだけである。

・ウクライナ4州を併合
プーチンは、ウクライナの4州をロシアに併合すると宣言し、これで
、特別軍事作戦からロシア領を守る戦争になった。このため、戒厳
令を出せるし、総動員令も出せることになった。

この戦争は、欧米の西側から、ロシアの文化を守る戦いであると定
義したが、1941年6月の独ソ戦争以来の大戦争に突入することになる。

戦後の多くの軍事介入は、戦争ではなく特別軍事作戦であり、自国
本土を攻められるリスクはなかった。今回も本土攻撃をしないよう
に、欧米にロシアの核抑止が効いて、ウクライナに要求したので、
本来なら戦争にならないが、ロシアは領土を広げて、戦争にしたこ
とになる。

これで、1935年住民投票によりザール地方を編入、1936年ラインラ
ントへの軍進駐、1938年オーストリアを併合、ズデーテン地方のド
イツへの割譲などと同じ行為であり、ロシアはナチスドイツと同じ
になり、国連憲章の違反であり、世界的な孤立になる。

プーチンは、ヒトラーと同等な世界の敵になってしまったようであ
る。プーチンの理論もロシア人居住地域は、ロシアに併合するとい
うヒトラーの主張と同様になっている。

まさか、戦後の平和な秩序体系を壊すロシアに味方する国はないは
ずで、勿論、ロシアと同じ程度の倫理基準国は、ロシアを応援する
が、北朝鮮でもロシアのような悪ではないと言うから、非常に少な
いことになる。

しかし、国連安保理では、ロシアのウクライナ東・南部4州の併合
を非難する決議案がロシアの拒否権行使により否決されてしまった。

国連憲章違反にも、手がない状況で、国連の価値がないことを示し
ている。

そして、この決議案に、中国、インド、ブラジル、ガボンが棄権に
回った。しかし、4カ国ともロシアがウクライナでやっていること
に懸念を示した。棄権は明らかにロシア擁護ではない。彼らはロシ
アを支持していない。というように、ロシアの孤立化が明確化して
いる。

・核攻撃の可能性
その上に、プーチンは、もう1つ核攻撃の可能性も示唆するが、も
し、それをすると、ロシアの完全な破壊になる。欧米は核使用の兆
候があれば、それを阻止するとロシアに警告している。

一番、最悪なのが、負けそうになった時点で、ザポリージャ原発へ
の戦術核での破壊であろう。こうすれば、NATO諸国へも被害が及ぶ
ことになる。もし脅しだけで戦術核を使うなら、スネーク島が良い
はずで、このどちらを選択するのか、戦争状況とプーチンの気持ち
で決まる。

米戦争研究所ISWは、プーチンが核使用を決断する可能性が最も高い
のは、1に西側が直接の軍事介入せず、2にウクライナで決定的な
戦果を得られる、と判断した場合だという。

このようなプーチンの動きをけん制するために、ゼレンスキー大統
領は9月30日、北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を表明し
た。ロシアによる核兵器使用に対する懸念が強まる中、NATO加
盟で抑止力を強化する狙いだ。

これに対して、メドベージェフは、「ウクライナのNATO加盟申請は
第三次世界大戦の幕開けを加速した。」というが、それがロシア崩
壊につながるということである。

・北朝鮮のミサイル実験
北朝鮮は、弾薬と大砲の提供をする代わりに、中国からの武器の提
供をしてもらう予定が、中国は拒否して買えずに、ロシアへの武器
提供を止めた。

しかし、ロシアはミサイル技術を提供する代わりに、北朝鮮の弾薬
と戦車、火砲の提供の提案した。これに乗り、ロシアからミサイル
技術を教えてもらい、その代わりに弾薬と火砲・戦車をロシアに提
供したようである。

このため、その技術を組み込み、北朝鮮は、連日短距離ミサイルを
発射させている。ロシアから提供された技術確認なので、北朝鮮の
報道機関は、報道をしない。今後、その技術を搭載したICBMを発射
するであろう。

というような経緯で、ロシアの戦争と北朝鮮の連日のミサイル発射
が繋がっている。

このため、ロシアの技術が周辺諸国に漏れていることで、日本も脅
威を受けることになる。ウクライナの戦争は、日本と関係がないと
いう意見があるが、それは違う。

・ノルドストリームの破壊
ノルドストリーム1、2の破壊が起きて、欧州諸国はロシアによる
破壊工作だとの見方を強めているが、ノルドストリームが使用不可
能となれば、ウクライナ経由の陸上パイプライン2本のみしか供給
を期待できないことになる。このため、欧州諸国はウクライナに停
戦を要求すると、プーチンは期待している。

事実、イタリアでは、極右でネオ・ファシスト党のジョルジャ・メ
ローニ氏が、第一党になり政権を担うことになった。しかし、この
イタリアでは、電気の44%が、ロシアからの天然ガスで賄っている。

この極右政党は、ウクライナ戦争の泥沼化とともに、「自国民第一
、国益第一」の大合唱で国民の支持を拡大している。ロシアからの
天然ガス供給を復活させろとなる。

この極右政党政権は、スウェーデンやハンガリーのオルバン首相も
あり、欧州でも一定の勢力になっている。ドイツでも冬を迎えて、
そのような声が出てきている。

プーチンは、4州併合とともに、ウクライナに停戦を呼びかけたが
、欧州のいわゆる「ウクライナ疲れ」を期待しているようである。

・戦争終結は
今までのところ、ウ軍の損害も大きい。戦死者は10万人とも試算さ
れ、ロ軍死者数の約6万人より随分と大きい。

とはいうものの、ウ軍は新兵を英国やNATO諸国で3ケ月の訓練を終
えて前線に投入されている。一方、ロ軍は動員兵を最長でも1週間
程度の訓練で前線に送っている。ロシアは予備役が200万人で、ウク
ライナは総動員であり500万人の徴集が可能である。

ソ連時代の備蓄が周辺国にもあるロシアが不利ともいえないし、欧
米の兵器が無制限に供給されるウクライナが勝つともいえない。

もう1つ、戦争でウ軍が、本来のロシア領内に侵攻することになっ
たら、プーチンは核兵器を使うことになる。これは避けたいので、
欧米はウ軍に抑制を要求するので、戦闘だけでは、戦争は終結しな
いことだけは確かである。

それと、ウクライナ4州をロシア領に併合したので、ロ軍を自国領
へ撤退するという概念もなくなり、ロシアは戦い続けることになる。
祖国防衛戦争にしてしまったことになる。

このため、戦争は長期化する。

しかし、部分動員でもプーチンへの支持率が83%から77%に急落して
いる。このため、戦争宣言で戒厳令を出して、総動員令が出ると、
ロシア国内は、大きく動揺することになるようだ。しかし、ロシア
の動員可能数は2500万人とショイグ国防相は言う。

ロシア動員可能数2500万人対ウクライナ動員可能数500万人であり
この対応策として、ウ軍は、大量のロ軍兵の降伏を狙うしかない。

そして、徐々に部分動員されたロ軍新兵が前線に出てきている。

この新兵を対象に、ウクライナは降伏させるように、ロ軍捕虜には
、家族への電話を許可して、降伏後の待遇が良いことを家族に伝え
て、その家族が周囲にウ軍捕虜の待遇が良いので、動員で前線に送
られたら、すぐに降伏した方が良いと宣伝させるようだ。

それでは、戦争を終わらせるには、どうしたらよいのであろうか?

ロシア国内での反動員運動を盛り上げ、かつウクライナでの悲惨な
戦場を経験させて、ロシア国内の世論を反戦に向けて、プーチンを
亡命かクーデターかなどで、排除が必要なのであろう。排除後、欧
米寄りの政権を樹立して、親欧米にすることである。

これでは、中国は、欧米陣営に包囲されてしまうので、ロシアの体
制変更を避けたい。このためには、体制派であるFSBに、プーチンを
排除させて、ロ軍をクリミアを含めたウクライナ領内から撤退させ
て、早期に停戦に向かわせるしかない。中国が重要な位置を占めて
いる。米国も気が付いている。

先端技術防衛などの技術的な対抗政策をするが、米国は、中国との
関係を壊していない。この証拠に、米国は、台湾を「同盟国」に指
定するのを見送った。欧州のような反中的ではない。

事実、一部ロシア政権幹部とFSBは、プーチンの亡命先を探している
ようにも見える。しかし、プーチン亡命を受け入れる国は少ないで
あろう。

というように、プーチン後の体制をどうするのかという陣取り合戦
が、米中で話し合われているとみる方が良い。このため、米国は中
国との関係を壊さないのであろう。

さあ、どうなりますか?



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