6249.ロシアの影響力がなくなる



ウクライナ戦争で、ロ軍がハルキウ州で総崩れの状態になり、アゼ
ルバイジャンがアルメニア本国を攻撃、しかし、ロシアは集団安全
保障締結国アルメニアの出動要請を拒否。今後を検討しよう。
                          津田より

0.米国と欧州の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、6月17日は29,888ド
ルと年初来安値になり、9月9日は32,151ドルで、12日は229ドル高の
32,381ドル、13日は1276ドル安の31,104ドル、14日は30ドル高の
31,135ドル、15日は173ドル安の30,961ドル、16日は139ドル安の
30,822ドル。

今週の株価は1329ドル下落した。物価が石油価格の下落や小麦価格
の下落で、インフレは収まったと市場では見られたが、CPIが予想
8.1%UPが8.3%とインフレの上昇が収まっていないことを確認して、
CPIショックを起こし、13日1276ドル安の大幅な下落な下落になった。

このCPIで、FOMCでは0.75%利上げは確実で、1%利上げの可能性もあ
ると市場は見ている。年末までにFF金利は4%になるとみる見方もあ
る。

しかし、F&Gインデックスは32程度であり、恐れとなっているが、ま
だ底に達していない。強い恐怖になることが重要であり、まだ、底
になるまでには時間が掛かりそうだ。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、9月9日は28,214円で、12日は327円高の
28,542円、13日は72円高の28,614円、14日は796円安の27,818円、
15日は57円高の27,875円、16日は308円安の27,567円。

今週は、647円ほど株価は下落した。NYダウが下落したことが大きい
が、コロナ対策の入国審査緩和でインバウンド需要が円安での製造
業の需要増大の上に積み上がり、日本は景気が上昇することが考え
られる。

それなのに、NYダウ下落に引きずられて日本株が下落する事態であ
り、今が買いのチャンスである。

日銀は、各銀行にレートチェックを入れて、150円の円安時に、為替
介入する可能性を行動で示し、鈴木財務相も「過度な変動に対しては
、やれることはすべて行う」とけん制の発言をしている。

9月19日は英国と日本で国葬になり、休日となり、取引が薄いので、
ここを狙って、投機筋は150円を試しに来るとみられる。投機筋は日
本国債も売っている。円の狙い撃ちである。

これを止めるには、日銀の金融政策を利上げにして、また量的緩和
の中止をして引き締め方向にシフトさせるしかないが、それを日銀
は行う方向ではない。

米国などは金利上昇でオーバーキルとなる可能性があり、スタグフ
レーションの可能性が出てきたが、日本は金利が低いので、景気の
腰折れは起きないが、世界景気が後退して、日本からの輸出が伸び
悩む心配と、海外展開した工場の採算割れの可能性である。

早く、日本への回帰が必要であるが、中国の工場を維持している企
業の採算が難しくなるはずである。

2.中国の状況
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中国経済は、ゼロコロナ政策と不動産リスクの2つがあり、経済成
長はない。丸亀製麺など複数の企業は中国市場から撤退している。
また、アイリスオーヤマは、コストを抑えるために中国から50種類
以上の製品の生産を国内の工場に移すという。

それと、米国の中国への経済統制も徐々に厳しくなっている。米国
はロシアから中国へターゲットを移して、中国の衰退を加速させて
いる。このため、中国人民元は1ドル=7元台に下落した。

この挽回のためもあり、中国はロシアの属国化と同時に中央アジア
諸国のロシア離れと中国依存を画策している。

上海協力機構で、カザフスタンのトカエフ大統領と会談した習近平
主席は「カザフスタンの独立と主権領土一体性を支持する」と表明
したが、この防衛対象はロシアである。

中国がカザフスタンを攻撃するロシアをけん制したのである。この
ように、中央アジアがロシア離れになり、その国に対して、中国が
領土を保証するという事態になっている。

そして、ロシアのウクライナ侵攻に対して、懸念を表明し、かつ、
中央アジアへの侵攻をけん制した。これに対して、プーチンは、「
中国のバランスが取れた見方を了解した」という。

また、記者団から、プーチンが中露首脳会談の重要な成果を聞かれ
たことに対する回答は、「不思議に思うかもしれないが、特に重要
なことはなかった。基本的には、普通のいつもの会談だった。オリ
ンピック開幕に合わせて北京にいってから随分たつが、貿易がかな
り増えていることに注目したぐらいだ」と、期待した支援が得られ
なかったことを明確化した。

この表明は、中国から手厳しい意見が出たことを示しているし、共
同声明も出せなかったことでも分かり、夕食会の習近平主席の欠席
でも示している。

この後に、プーチンはインドのモディ首相との首脳会談でも、「今
は戦争の時ではない」と苦言されて、プーチンは「インドの懸念を
理解する」と述べ、「早く停戦に持って行くが、ウクライナが交渉
を拒否している」とした。また、カザフスタンの元首相からは「ロ
シアの戦争理由は理解できない」とされた。

ロシアは上海協力機構で、アジアからの支援を期待したが、残念な
がら、支援を得られなかったようだ。ロシアが四面楚歌の状態であ
ることを示した。

ということで、ロシアが非米同盟諸国のリーダーではなくなり、そ
の位置を中国が占めることになったようである。

中国はロシアの天然ガスや石油を買うが、軍事的な支援はしないし
、もし、中央アジアに侵略するなら、中国はロシアをたたくと明確
に述べたはずである。

この頃の一連の中国の動きを見れば、分かることである。ロシアは
大きな後ろ盾がない状態で、ウクライナでの戦争を継続する必要が
あり、しかたなく、北朝鮮やイランに頼るしかない状態になってい
るようだ。

しかし、中国も米国への対抗上は、ロシアが必要であり、しかし、
その一方で、ロシアの非米同盟諸国への横暴を止める必要があるか
ら大変である。

3.ウクライナ戦争の推移
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ウ軍は、東部ハルキウ州のほぼ全体を奪還したが、クピャンスク市
西側の奪還後、オスキル川を渡河して東側も奪還して、オスキル川
東岸を攻撃しているようだ。

そのほか、ドボリジナでも渡河して、橋頭保を築き、東に向かって
攻撃して、トロイツクに達したという。またオスキル市でも渡河し
て市内で戦闘中である。もう1つがボロバ付近でも渡河したようで
、都合4ケ所で渡河に成功しているので、オスキル川を防衛線とし
たロ軍の防衛線を突破していることになる。

しかし、ロ軍も体制を立て直しつつある。逆に、ウ軍は広範な地域
を短時間に奪還したことで、奪還地域でのロ軍の残党刈に多くの兵
を投入中であり、攻撃に回せる部隊が少ない。

このハルキウ州の大反撃で鹵獲したロシア軍兵器は、以下の通り
歩兵戦闘車:79両
無人航空機:5機
戦車:45両
トラック等:41両
装甲戦闘車両:15両
自走砲:11両
装甲兵員輸送車:8両
指揮所:6両
MLRS:5両
対空ミサイルシステム:1両
多数の弾薬類
信憑性は不明ですが、事実だとしたらかなりの戦力増強になった。

そして、スラビアンスク東側の攻撃でウ軍の前進は緩やかである。
リマンでの戦闘も数日も続き、ロ軍は援軍を送り守備力を上げてい
る。また、クレミナでロ軍が退却したが、ウ軍が到着できずに、再
度ロ軍が入ったようである。

ヤンピルでも数日前から戦闘が続き、イジュームから撤退したロ軍
が投入されて、ウ軍は前進できなくなっている。

ルハンスク州防衛で、ロ軍が体制を立て直しつつあるようである。
残念であるが、ウ軍は、ロ軍の防衛線構築を阻止することで戦果を
拡大できると思ったが、それは実現できなかったようである。

しかし、このセベロドネツク方面への鉄道網は、クピャンスクから
伸びているので、ここの補給はクピャンスクを失ったロ軍は補給路
としては、ルハンスク市から山超えで車で運ぶことになる。

このため、補給路の道路を監視して、輸送のトラックをPZH2000自走
榴弾砲とボルケーノ弾やバイラクタルTB2で狙うと、この地域への補
給ができなくなる。

ということで、この地域の防衛は難しいようである。ウ軍もじっく
り攻撃して、相手の消耗を待つようだ。

一方、ロ軍はウクライナへの新しい派兵は、当分停止するという。
十分な訓練をしなかった兵が、先に逃亡して戦局を悪くしたことが
認識されて、訓練を行う時間が必要だということである。

ロ軍もウ軍の実力を思い知らされて、慎重に戦争遂行を考え始めた
ようである。戦闘を広範囲に行うのではなく、兵力を集中して1ケ
所で攻撃を行うようになってきた。その成果がバクムット方面のコ
デマを制圧したロ軍が攻撃を強化して複数方向に進撃している。

ロシア国内では、戦争宣言をして総動員を掛けろいう強硬派の声が
大きくなってきた。もう1つが国防省の責任を追及する方向で、議会
は動き、ショイグ国防相の下院議会への召喚を要求する声も出てい
る。ショイグ国防相の解任を議会は要求する可能性もある。

一方、ウ軍は南部ヘルソン州での攻撃では、3軸で行っている。
1軸は、ヘルソン市の北キセリフカからでロ軍が撤退したので、ウ
軍が奪還した。ウ軍は前進して、チョルノバイフカ付近、ヘルソン
空港あたりまで来ているようであり、ヘルソン周辺の要塞群の先端
辺りにいる。また、西端のオレクサンドリフカをウ軍は奪還した。
徐々にヘルソン市に近づいている。そして、ヘルソン市庁舎への砲
撃もウ軍は開始した。

ドニエプル川の橋やフェリーは相変わらず攻撃しているので、ポン
ツン・フェリーで細々と補給をしている状況ではある。このため、
食料や飲料水が思うように確保できず、戦場を離脱する部隊もある
ようだ。

2軸は、ヘルソン州中北部のロゾベの橋頭保からロ軍を攻撃する軸
であり、ベジメンネを奪還後、T2207号線脇を南下しているが、ロ軍
はクリヴィー・リフ貯水地の堤防を破壊して洪水をおこし、橋頭保
の船橋を押し流そうとしたが、失敗している。

3軸は、ヘルソン州北東部では、ビソコピリア奪還し南下している
が状況が見えない。ノヴォヴォスクレセンスキ奪還もしている。

そして、ウ軍はサポリージャ攻撃で大軍を集結していると、ロ軍は
見てメルトポリからクリミアに軍民政府やロ軍の一部も移動させて
いる。

次の大攻勢は、ザポリージャ州とロ軍は見ているようだ。ここのパ
ルチザン活動は盛んであり、多くのウ軍特殊部隊が潜入していると
ロ軍はみているようだ。

しかし、ウクライナは米議会や米国防総省に長距離ミサイルシステ
ムや戦車を要望しているが、米国はウ軍が要望する長射程のATACMS
を供与する考えはないという。ロシアもATACMSの供与はレッドゾー
ンだと再三宣言している。ということで、当面は地道にザポリージ
ャ州を奪還して、アゾフ海の海岸線をめざすしかない。

また、黒海艦隊の母港をクリミア半島のセヴァストポリからノボロ
シスクに変更した。ザポリージャ州を奪還されると、セヴァストポ
リへの砲撃も可能になり、艦隊の安全がキープできないからでしょ
うね。

他方、ロシアの集団安全保障条約(CSTO)加盟国アルメニアが、国
境付近で、アゼルバイジャン軍に攻撃されて、停戦監視をしていた
ロ軍は撤退し、軍の派遣をロシアに要請したが、ロシアもカザフス
タンも要請を拒否した。

しかも、上海協力機構で、アゼルバイジャンとアルメニアのトップ
ともプーチンは首脳会談をしたが、有効な調停をしていない。アル
メニアへの支援を行わないようである。しかし、トルコとロシアが
協議して、停戦には持ち込んだようである。

もう1つ、中央アジアのタジキタンとキルギス間の国境紛争も起こ
り、キルギスの飛び地のバトケンでは、住民らが政府に武器を配る
よう要求している。

キルギスはクルグズ人の国家であり、キルギス政府は、タジクとの
停戦発効後も「激しい戦闘」が続いているという。キルギスは、バ
イラクタルTB2で、侵攻してきたタジク軍のT-72戦車を攻撃している
ようだ。

しかし、ここでもロシアが調停に乗り出さない。ロシアの影響力は
行使できない。このため、中央アジアでの紛争を止められるのは、
中国しかいないことになる。

もう1つ、シリアに展開していたロ軍もすべて撤収したという。ロ
シアの海外での影響力はなくなっていく。

一方、ウクライナが勝ち始めたので、欧州に逃れた800万人中500万
人のウクライナ難民がすでに帰国したようだ。ロ軍のミサイルが防
空システムで打ち落ちされれば、ウクライナに戻る人は増えるでし
ょうね。

さあ、どうなりますか?



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