6246.ロ軍の戦争資源欠乏を待つ



ウクライナ戦争はウ軍がロシア後方の補給基地、空軍基地を叩き、
ロ軍の戦争資源が枯渇してきた。しかし、ウ軍は当分、総反撃しな
いという。今後を検討しよう。 津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、6月17日は29,888ド
ルと年初来安値になり、8月19日は33,706ドルで、22日は643ドル安
の33,063ドル、23日は154ドル安の32,909ドル、24日は59ドル高の
32,969ドル、25日は322ドル高の33,291ドル、27日は1008ドル安の
32,283ドル。

先週、株価は前半が弱く、中間は強く、週末は大幅下落となった。
26日のジャクソンホールのパウエル議長の講演で、引き続き金融引
き締めを長期に行うとしたことで、1000ドルの下げになった。

議長は景気後退リスクよりインフレ阻止を優先すると明確に述べた
ことで、市場では、景気後退の危険から利上げを徐々に緩和との発
言を期待していたが、大きく違っていたことで、失望売りになった
ようである。

このため、9月11日のFOMCでは0.75%の利上げとなるとの観測が優勢
となった。ドル円も137円台と円安方向になっている。

しかし、8月の米総合購買担当者景気指数PMI速報値は45と7月改定値
の47.7から低下し、2020年5月以来2年3カ月ぶりの低水準となったと
いうように、米景気は後退している。どこまで景気後退が進むのか
が問題である。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、8月17日は29,222円で、19日は28,930円とな
り、22日は135円安の28,794円、23日は341円安の28,452円、24日は
139円安の28,313円、25日は165円高の28,475円、26日は162円高の
28,641円。

先週、株価は8月17日の29,222円を天井に下落方向になっている。

特にパウエル議長の講演で月曜日の朝は大きく下落になることが確
定であろう。8月29日は28,000円をキープできるかどうかが勝負にな
る。

長期では、日本株は上昇するが、短期的な視点では、一度下げるこ
とになるようだ。

2.ウクライナ戦争の推移
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ロシアがウクライナに2月24日から侵攻してから半年が経過した。
そして、ウクライナ独立記念日は8月24日であった。

ウクライナでの戦闘では、引き続き、ウ軍はクリミア半島やヘルソ
ン州、ザポリージャ州のロ軍の弾薬庫や兵站拠点、司令部、空軍基
地などを撃破して、ロ軍の攻撃力を大幅に減少しているが、この数
日は、ロ軍攻撃が一段と減少してきている。

クリミア半島の57mm対空機関砲「S-60」が昼夜ともに、迎撃のため
に57×348SR弾が発射されている。UAVを頻繁にウ軍はクリミアに飛
ばしているようだ。

そして、シリアに配備していたS-300防空システムをクリミアに移転
させたようである。このようにクリミアの防空体制が整い、簡単に
は攻撃できなくなったようである。

しかし、それでも対空ミサイルで対処せずに、対空機関砲を撃つよ
うな状態である。安いUAVなので、対空ミサイルを使用しないのかも
しれない。

このため、ウ軍もクリミアでは、パルチザン活動を中心に攻撃をす
るようである。

ロ軍は、戦争資源が枯渇してきたので、バクムットやドンバス方面
に優秀部隊を集めて、一点突破を志向していた。それがピスキーで
あり、ウ軍は、持ち堪えられなくて撤退したが、ロ軍の攻撃が止ま
ったので、ウ軍がピスキーの奪還に動き、市の西側に前進した。

バクムットでは、ソルダー攻撃のスペツナズの消耗が大きく、交代
としてカディロフツィを投入したが、真偽不明ながら、そこでスペ
ツナズとカディロフツィが、血みどろの銃撃戦を繰り広げたようだ。
このため、ロシア連邦軍参謀本部情報総局GRUの高官が呼ばれたよう
だ。

ということは、ここに展開していた部隊は、GRUのスペツナズであり
、チェチェン部隊を軽蔑していたが、これと交代ではプライドを大
きく傷ついたのであろう。

そのためがどうか、ソルダーでもロ軍は前進できないでいる。

ポスロフスキーには傭兵ワグナーを投入した、こちらも前進できて
いない。最優秀部隊でも損耗が激しく、戦争資源が尽きてきている
ようだ。

ウ軍の主力部隊がいる南部ヘルソン州では、ドニエプル川西岸地域
に展開するロ軍は補給が細っているが、それでもロ軍は多数の戦車
とTOS-1の猛攻でブラホダトネを攻撃占領した。ウ軍は一度奪還した
が、再度奪われたことになる。

ドニエプル川西岸でもロ軍戦車隊を集中して、攻撃してくるようで
あり、ロ軍も意地を見せている。ここのロ軍は東部に展開していた
ロ軍メインの戦車中心のBTGであり、ウ軍も気を付ける必要がある。

しかし、ヘルソン州の西端のオレクサンドリフカは、ウ軍が抑えた
ようであり、ロ軍はこの街を空爆している。この方面でウ軍は情報
統制しているのでよくわからないが、ロ軍の動きから見える。

カホフカ橋は数度の砲撃を行っているが、26日の攻撃で大型トラッ
クの通行ができくなったが、アントノフスキー橋は数度の攻撃でも
補修して、大型トラックの通行ができるようになったので、25日も
砲撃を受けている。この状況は確認できないが、近くに船橋も建設
し始め、1/3程度はできているようだ。ロ軍も補給の確保を優先的に
構築している。

このため、ヘルソン州中北部への補給ができないように、ウ軍はイ
ンフレット川のダリフカ橋を攻撃して、通行不能にもしている。こ
こも数度の攻撃と補修、近くに船橋建設を繰り返している。

ドニエプル川西岸地域のロ軍30BTGの1万8千名分の補給が、ロ軍も戦
争の勝敗を分けるとみているので、橋を破壊されても何度も復旧す
るようである。

宇ゼレンスキー大統領は23日、ロシアが2014年に併合したクリミア
半島の返還を目指す外交枠組み「クリミア・プラットフォーム」の
国際会議で、「ウクライナが決めた方法」でクリミアを奪還すると
表明し、「われわれに停戦の用意はない」とも明言し、紛争解決は
一段と困難になった。だが、ウ軍の攻撃もあまりなく、ロ軍の大き
な攻撃もないような状態が続いている。

この会議で、エルドアン大統領は国際法に従ってクリミアをウクラ
イナに返還すべきであると発言した。トルコもとうとうロシアが戦
争に負けると見切り、ウクライナに味方するNATOの方針に従うこと
にしたようである。クリミアのタタール人組織がパルチザン活動を
行っていることとも連動している。

エルドアン大統領は、カザフスタンなどの中央アジア諸国の大統領
とも頻繁に会っているので、トルコがロシアに代わり、この地域の
覇権を狙っているのかもしれない。世界がロシア後の秩序をどうす
るかで動き始めたようだ。

しかし、ウ軍の攻撃もあまりない理由を、レズニコフ国防相はヘル
ソン州奪還でも、正面からの猛攻撃はせず、パルチザン活動を中心
にキーウ防衛戦と同じような作戦をすると述べている。今までにウ
軍でも9000名の戦死者がいると明らかにして、その戦死者数を少な
くすることを優先するのであろうが、もう1つに、ポーランドから
の923両の戦車PT-91がまだ届いていないからであろう。

そのポーランドでは、ポズナンの陸軍訓練センターでPT-91と交代す
るM1A2エイブラムスの訓練が行われている。この訓練が終了した段
階で、ポーランド保有の全PT-91をウクライナに供与するが、まだ、
供与されていない。

このため、今はロ軍の弾薬庫や司令部などの破壊を中心に、パルチ
ザン活動などで、ロ軍に対処して時間を稼ぐようである。

そして、ザポリージャ原発では、送電が一時停止する事態が起きて
、予備電源に頼る事態が起きた。使用済み核燃料の貯蔵プールや原
子炉の冷却に不可欠な電源供給がなくなると、ウラン燃料が溶解し
て、大量の放射線を出すことになる。東京電力福島第1原発事故と
同じことになる。

このため、IAEAは数日中に派遣団を率いてザポリージャ原発を訪れ
る考えであるが、ロシアはOKするのであろうか?

この状況で、米国防総省は23日、ウクライナ軍に対する30億ドル(
約4100億円)の過去最大規模の追加の軍事支援を公表した。ドイツ
のショルツ首相もウクライナに防空システムIris-Tをはじめ5億ユー
ロ以上相当の武器供与を発表し、英国の次期首相候補のトラス女史
は、「ロシアの核使用には英国の核使用も適時に判断する」なども
あり、ウ軍の装備や後ろ盾は充実してくる。

ロシアは核の脅しもできないことになる。本当に使用するなら、突
然行うしかない。その時は報復も覚悟する必要になる。

ロシアは、北朝鮮軍の参戦を期待したが、22日から米韓合同演習を
行い、約4年ぶりに野外での機動訓練も実施した。これにより、北朝
鮮軍の砲兵をウクライナには送れないようである。勿論、ロシア支
配地の瓦礫整理や復興事業には労働者を送れるが、北朝鮮軍の派遣
は難しくなったようだ。

ロ軍は、開戦から6ケ月で火砲の59%と装甲車の24-50%を失い、10月か
11月には火砲がなくなると予測できる。

また、ロシアは、欧州のロシア制裁に対抗して、天然ガス供給を絞
っているが、産出した天然ガスが他国に売れずに余っているため、
大量に天然ガスを燃やている。その額が1日1000万ドルである。

欧州はアゼルバイジャンから通常の2倍以上の契約を結び、ロシア産
天然ガスの供給停止に備える方向である。それでも天然ガスの不足
で今年の冬は大変になる。

このため、プーチンは、冬までに、天然ガス供給を絞ると欧州が、
ウクライナでの停戦をウクライナに要求することを期待している。
しかし、宇ゼレンスキー大統領は、「われわれに停戦の用意はない
」とも明言。このため、ロシアの戦争資源が完全になくなり、ロ軍
が自主的にウクライナから撤退するまで、この戦争は続くことにな
る。

この厳しい戦争状況で、ロシア国内ではプーチンに一気に宣戦布告
と総動員令発令まで踏み切らせたい極右の国家主義者イゴール・ガ
ーキン氏などがいて、9月11日の統一地方選挙などで、左右からのプ
ーチン政権批判が出る可能性もある。

もう1つとして、反戦勢力のNRAが、ドーギン氏の娘を爆死させたと
声明を出した。反戦運動はロシア国内でのゲリラ活動を強化してい
るようで、カリーニングランドでもテロ攻撃をしたとロシア政府は
言っている。

この総動員令をしないとの批判をかわすために、プーチンは、ロシ
ア軍の定員を14万人増にするとした。ロシア軍総員を190万人から
204万人にした。軍人では101万人から115万人にした。しかし、これ
でウクライナの戦況が変わるとも思えない。

東中欧諸国は、中国がロシアを支援するので、中国を敵と認識して
、中国離れを起こしている。このため、「中欧班列」の貨物列車も
運行できなくなり、中国が一帯一路構想の一環として、中国と東欧
との経済連携である「17+1」から、昨年5月に離脱したリトアニ
アと今回エストニアとラトビアが離脱した。そして、スロバキアも
抜ける可能性が浮上している。

少なくとも、戦争でロシアの勝利がなくなり、ロシアとウクライナ
の仲介をしていたトルコが、ロシアを見切り、ロシアと仲介できる
のは中国しかないが、世界秩序の変化が大きくなってきたことで、
中国も迷いが出ている。

中国経済は、欧州と米国への輸出がないと成り立たない。ロシア市
場で独壇場でも、米国と欧州市場より小さいので、欧米市場を捨て
るわけにはいかない。

もう1つ、米国上場の中国企業の上場廃止になると、企業の存立に
も関わり、今の不動産バブル崩壊で金融市場の混乱の上にNY上場企
業の破綻になると、中国経済は大きく崩れることになるので、それ
もできない。

このため、上場基準を満たす合意を中国は米国と協議して、合意に
達した。この裏では、米国の要求を中国が受け入れた可能性がある。
私は、ロシアへの技術先端品の輸出禁止であり、この他の条件は何
かはわからないが、そのうちにわかるはずである。

というように、ロシア敗戦の前提で、どう世界秩序が構成されるの
かが、見どころである。一番、中国の立ち位置が問題になる。

3.日本の変革は
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日本は、ロシア、北朝鮮、中国と3つの敵がいる状態になった。この
ため、防衛費はGDPの2%以上は欲しいが、一気にはできない。防衛省
の2023年度予算概算要求は、過去最大の5兆5947億円。加えて5年以
内に防衛力の抜本強化に取り組むとして、金額を示さない「事項要
求」を100項目規模で盛り込み、最終的な予算額は6兆円台半ばにな
ったようである。GDPの2%とは、10兆円であり、まだ大きく足りない。

岸政権の国家政策は、令和の「富国強兵」政策となる。

安全保障は、軍事だけではない。エネルギー自立と食糧の自立も必
要であり、このため、原発新設へ方針転換し その新設では電源喪
失でも安全な次世代型の検討を指示した。

もう1つが、世界秩序に対する対応で、アフガニスタンからの98人
を難民認定した。やっと難民も受け入れて、日本の政策も世界的な
標準値になる方向であり、日本の人口を増やす方向でもある。やっ
と、世界秩序の転換期の状況になり、日本も変化し始めている。

そして、やっと、国民も野党の一国平和主義から脱却して、普通の
国の平和概念になるようであり、一国平和主義の野党への支持率が
大きく下がり始めた。

これと、この30年間続けた新自由主義的な経済から国家が経済を指
導する1980年90年代と同様な統制経済にシフトしたようである。

しかし、岸首相は、理想とする国家像を示す必要があり、それがま
だないのが、問題であろうとみる。

さあ、どうなりますか?



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