6245.ウ軍の総反撃はいつか?



ウクライナ戦争はウ軍がロシア後方の補給基地、空軍基地を叩き、
総反撃の準備が整ってきた。ロ軍はウ軍総反撃の対応策を取る段階
になってきた。今後を検討しよう。 津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、6月17日は29,888ド
ルと年初来安値になり、8月12日は33,761ドルで、15日は151ドル高
の33,912ドル、16日は239ドル高の34,152ドル、17日は171ドル安の
33,980ドル、18日は18ドル高の33,999ドル、19日は292ドル安の
33,706ドル。

先週、株価は前半が強く、後半が弱い展開でした。15日8月米NY連銀
製造業景気指数は-31.3と悪いが、景気後退でFOMCは利上げをしない
と見て、株価は上げた。16日は小売り大手の決算が市場予想を上回
り株価は上昇した。

しかし、17日発表のFOMCの7月議事要旨で、複数の当局者は次回9月
の会合で少なくとも0.5ポイント以上の利上げが必要となり、連銀総
裁らの発言から9月も0.75%の利上げとなる可能性が出てきた。

また、17日発表した7月の米小売売上高は前月比横ばいの6828億ドル
(約92兆円)で、市場予想(0.1%増)を小幅に下回った。

その上に、歳出・歳入法が16日に成立し、2023年1月から自社株買い
を実施した米企業への1%課税が始まり、もう1つ、歳入は納税額が
利益の15%を下回る大企業に対する課税強化を打ち出した。
これらの理由で、17日以降、株価は下げている。

しかし、8月27日ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演が、
どうなるのかを市場関連者は注目している。

どちらにしても、9月以降も利上げは続くことになるので、市場の期
待とは違う方向に行くようであるので、当分は株価上昇は期待薄の
ようである。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、8月12日は28,546円で、15日は324円高の
28,871円、16日は2円安の28,868円、17日は358円高の29,222円、18
日は280円安の28,942円、19日は11円安の28,930円。

先週、株価は29,000円を突破したが、17日以降、米長期金利が上昇
して、ドルベースでの日経平均は下落したことで、海外投資家を中
心に買いから売りにシフトしたようであり、8月17日の29,222円が当
面の高値の可能性が高い。

国内への工場回帰は続いているが、経常収支は赤字になり、米長期
金利も下がり、円高方向で、先週後半は株価が下がっている。それ
と米株価の下落になり、日本株の足を引っ張ることになる。

このもう1つの背景に、日本の政治状況が不安定化してきたことにも
よる。岸政権の支持率が下がり、自民党と旧統一教会の癒着が問題
視されている。それとともに、安倍元首相の国葬への反対論も大き
くなってきている。

昔から、保守系の会合に出ると、神社本庁系の日本会議の人たちと
旧統一教会系の国際勝共連合の人たちが多く、その組織に参加を依
頼されることが多かった。私は一切、参加しなかったが、自民党の
議員たちは両方に参加している割合が、多かったはずである。

しかし、この2つの組織がなかったら、日本の保守運動は、1980年
代、90年代には資金的にも動員の面でも成り立たなかったとみてい
る。必要悪であったように見る。私も講演会などで、動員が必要な
時は、2つの組織に依頼することがあったからだ。

勿論、それだからと言って、強制的な献金は良くないし、それは追
及される必要はある。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナでの戦闘では、ウ軍が、300Km程度の射程も持つ弾道ミサ
イルかロケット弾を持ったことで、大きく変化した。ロ軍の弾薬庫
や兵站拠点、司令部、空軍基地などを撃破して、ロ軍の攻撃力を大
幅に減少させている。

特にクリミア半島の鉄道拠点でもあるアゾフスコイエの兵站拠点、
サキ海軍航空隊基地、ベルベク海軍航空隊基地、フバルディアの発
電所、マイスコイの軍用貯蔵庫などを次々に攻撃している。

2つの海軍航空隊基地の爆発で同部隊の戦闘能力が半減したようで
ある。退避行動が遅れた代償は大きい。

このため、遅まきながら、クリミアから少なくとも航空機24機とヘ
リコプター14機をロシア本土などに退避させた。クリミアが戦場に
なってきたことで、航空機を置くことができないとやっと判断した
ようだ。

クリミア橋(ケルチ橋)に対してもミサイル等で攻撃したが、最新
鋭のS350を大量配備して、防空体制を固くしていたので、迎撃でき
たようである。1機のUAVまたは1発のミサイルでは迎撃されること
がウ軍もわかり、次回はミサイル攻撃では飽和攻撃になるはずだ。
UAVでも複数機での攻撃になりそうで、ケルチ橋も長くはもたないと
思われる。

そのほか、UAVでセバストポリの黒海艦隊司令部が攻撃され爆発があ
ったが、迎撃に成功したともいわれている。それにしても、防空シ
ステムが黒海艦隊司令部にはないのであろうか。もしUAVとすると、
制空権をロシアが持っていないことになる。

対空ミサイルで対処できずに、対空機関砲を撃つような状態である
。対空レーダーを事前に破壊され、かつ早期警戒機を退避したこと
で、早期警戒ができなくなったようである。

逆にウ軍は、多様な手段でクリミアのロ軍を攻撃できるようになっ
たということになる。

このように、クリミアのウ軍攻撃で大被害が出たことで、ロシア黒
海艦隊司令長官のイーゴリ・オシポフ氏が解任され、ビクトル・ソ
コロフ氏が就任した。

宇ゼレンスキー大統領も「ロシア軍施設近づくな」とクリミアの住
民に注意をしている。ロシア系住民もクリミアの住宅を売りに出し
、ロシア本土に退避しているようであり、住宅の売り出し広告が多
数出ているという。

そのほか、ロシア本土のベルゴロド州のスタールイ・オスコル飛行
場やティモノヴォの弾薬庫、リシチャンスクのロ軍司令部、ポパス
ナのワグナーの基地、メルトポリの司令部などをHIMARSや長距離ミ
サイルで叩いている。ワグナーの基地では100名以上が死亡して、
200名程度まで拡大する可能性があると言われている。

この長距離ミサイルを大量にウ軍が持てるということは、ATACMSし
かないと思うが、米国の見解によると、クリミア攻撃手段は、米国
提供の兵器ではないと否定している。しかし、西側兵器の使用はOK
であり、米国以外供与のATACMSである可能性は、否定していない。

ウクライナ製ミサイルとも最初、思ったが、これほど大量には作れ
ないので、それはないはず。秘密裏にATACMS供与というのは、正し
かったようだ。

このため、ロ軍は、ドンバス方面に優秀部隊を集めて、一点突破を
志向し始めている。それがピスキーであり、ウ軍は、持ち堪えられ
なくて撤退をした。ここではTOS-1を大量投入して、大量砲撃をして
いる。ドネツク市の郊外であり、大量補給ができるからであろう。
しかし、ピスキー占領までで、ロ軍も消耗が激しく、それ以上には
攻撃できないようである。

ドンバスのソルダーは、ロ軍最強部隊のスペツナズを投入したが、
ウ軍も特殊部隊の守備部隊にしたことで圧倒できなかったようだ。
この地域には、英国から供されたストーマー対空ミサイル自走砲を
配備したことで、ロ軍KAー52攻撃ヘリが4機も撃墜されている。

ドンバス上空では、ロ軍とウ軍の戦闘機同士の空対空戦闘が発生し
たらしい。当面の激しい戦闘はドネツク郊外であるが、ここの戦い
でもロ軍の攻撃が弱まってきた。

ロ軍はハリキウ市へも無差別砲撃を増加させている。ここもロシア
本土から近いので補給できるので、砲撃を強化できるが、ロ軍部隊
の多くを他地域に回したので、ウ軍陣地への攻撃ができないようで
ある。

ウ軍の主力部隊も、南部ヘルソン州であるので、他地域ではロ軍陣
地に攻撃することもできない状態である。しかし、ロ軍が手薄なイ
ジューム南でウ軍が、イジュームに向けて少し前進している程度で
ある。

ロ軍ワグナー部隊も撃滅されたので、攻撃力が相当に落ちている。

このような状況であり、ロ軍はウクライナで「これ以上どこにも攻
撃できない」状況にあると、アンドリー・ザゴロドニュク元ウクラ
イナ国防相が述べている。米軍も同様の見方をしている。

このようなウ軍の活躍と比例して、ロ軍の司令官の解任が増えてい
て、作戦担当の司令官の30%から40%が解任されているようである。

この状況を改善するために、ロ軍は、ウ軍が東部で化学兵器攻撃の
偽情報を作り、報復としてのウ軍への化学兵器攻撃する可能性があ
る。戦術核使用の前に、化学兵器使用のようだ。

前回、疑問視したAGM-88対レーダーミサイルの発射方法であるが、
ウ軍はアメリカの支援のもとでミグ戦闘機に搭載できるよう改修し
たとのことである。疑問が1つ解決した。

そして、サポリージャ原発では、核を盾にして、ロ軍の武器などの
保管場所をしている。原発地域の非武装化を43カ国が要請してい
るが、ロシアは拒否している。しかし、フランスのマクロン大統領
が、プーチンと会談して、プーチンがIAEAの査察を認めたというが
、どうなりますか?

それと、ヘルソン州全体を指揮するロ軍司令部は、ヘルソン市から
最終的にはメルトポリに移転したが、その移転先を攻撃されて、大
打撃を受けた。このため、ヘルソン州でのロシア帰属の住民投票を
9月11日にはできなくなり、大幅な延期になったようである。

そして、ヘルソン州のドニエプル川西岸地域に展開するロ軍では補
給が細り、不満が高まっている。そのような事態の時、チェチェン
のカディロフツィが憲兵隊的な役割で、ロ軍に補給がないために攻
撃できない事態なのに、攻撃しないと叱咤したことで、現地ロ軍と
銃撃戦になり、多数の死者が出た模様である。

ドミエプル川西岸地域のロ軍は、補給が細り、崩壊も時間の問題に
なっている。しかし、橋を補修すると、その途端にウ軍の攻撃を受
けるので、補修をあきらめて、フェリーを大量投入して、それで補
給を確保する方向でロ軍は事態を改善したいようである。

ドミエプル川西岸地域のロ軍30BTGの1万8千名分の補給がそれででき
るかどうかは疑問である。

しかし、ヘルソン州でも、ウ軍は本格的な奪還作戦をしていない。
ロ軍の補給停止で、ロ軍が弱るのも待っているようであり、次は、
いつウ軍が反撃を開始するのかということになる。攻撃兵器が足り
ないともザゴロドニュク氏は述べているので、西側からの攻撃兵器
支援を待っているようだ。

この状況でも、米国防総省は19日、ウクライナ軍に対する7億7500万
ドル(約1060億円)規模の追加の軍事支援を公表した。ドイツや英
国も追加援助を行っているので、益々、ウ軍の装備は充実してくる。

今回の支援でも、A-10攻撃機の供与はなかったようであるが、ウ軍
はAー10の訓練を開始している。MIG−29も徐々に稼働機種が減ってき
たので、欧米製の攻撃機にシフトするしかないようだ。

ドイツはPzH2000自走砲向けに、155mm榴弾「ボルケーノ」を255発供
与するという。この砲弾は射程距離70Kmで誤差5mの砲弾なので、防
空ミサイルでの迎撃ができない。これは、アントノフスキー橋やカ
ホフカ橋の砲撃に使える。HIMARSのロケット弾とは違い、落下速度
は早いことによる。

一方、ロシア軍は、窮地に立つことになる。この窮地に北朝鮮軍が
参戦するようであり、その動向に焦点が当たることになる。

一方、前回に述べた8月下旬、カザフスタンとの国境に近いアストラ
ハン州のアシュルクで、ロ軍とベラルーシ軍が合同軍事演習を行う
としたが、8月末に行うロシアの大規模軍事演習に、中国軍も参加す
るとし、極東地域の大規模軍事演習「ボストーク2022」となり、イ
ンド、ベラルーシ、モンゴルなども参加するという。

ということで、カザフスタン近くで数日演習後、極東地域に場所を
移動させて演習することになった。これは、中国がロシアに軍事演
習に参加する見返りに、場所を変えさせたようである。

ロシアは、中国やインドに不満を持っている。ロシアの味方ではな
く、西側諸国を敵対視しないことにイライラしていた。その上、カ
ザフスタンはロシアから離れて、中国にシフトしたことで、カザフ
にはより以上の不満があった。

この状況で、中国はロシアの「カザフへの敵視」から「日本への敵
視」に変えさせて、極東での演習に切り替えさせたようである。

ロシア安全保障会議議長パトルシェフ氏の日本を敵視する発言は、
この文脈から出ている。中国国内も反日的なムードにして、ロシア
を変化させて、反日に巻き込んで、中国はカズフスタンを助けた。

このため、秋葉安保局長は17日、中国・天津市で、中国外交担当ト
ップの楊潔チ氏と会談したが、この会談は中国からの要請で行われ
、一連の根回しである。このため、日本政府もパトルシェフ氏の反
日発言に過剰反応しなかった。

というように、ニュースを読むとき、いつも一連のニュースをつな
げて見ることである。それが日本の評論家・学者の足りない所ある
。その裏に隠れた意図を読まないと、正確な世界情勢が読めないで
すよ。

中国の習近平国家主席は、9月にプーチンとの会談のため、中央アジ
アを訪問するようだ。停戦に向けてロシアの条件を話し、11月には
バイデン米大統領と会談し、戦後体制を話すことになる。

ロシアの本当の味方は、オルラン10を大量に失った代わりとして、
1000機の偵察ドローンを提供するイランと工兵、輸送隊、砲兵、特
殊部隊を派遣する北朝鮮、シリア、ベラルーシであろう。

イランは、ロシア支援というわけではないが、早期に核兵器を持て
ば、第2戦線を中東に作ることができる。この対応で、イスラエル
は、サウジやトルコと国交正常化し、かつ、イラン攻撃時にサウジ
領内を戦闘機が飛べるような合意もできている。

しかし、中東で戦争が起きると原油価格の高騰を招くことになるし
、ウクライナ戦争が終了していないなら、第3次世界大戦になる可
能性もある。勿論、ロシアはイラン参戦を期待しているようだ。

しかし、それでも、現時点ではロ軍の劣勢は如何ともしがたい。北
朝鮮軍が参戦しても同じである。少し敗戦を遅らせることしかない。

どちらにしても、ロシア敗戦に向けて、次の世界秩序を考えて、そ
の準備をする必要になってきている。

この時、中国の重要性が出てくる。中国も米国と調整したいようで
ある。

次の世界秩序構築を中国も見て、動き始めたようだ。

3.ロシア敗戦後の世界秩序
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ロシアは、核兵器を持つので、戦争での敗戦はない。ロシア国内で
の反戦活動や国内選挙での国民の声により、戦争を終わらせるしか
ない。

ウ軍もロ軍をウクライナ領内から追い出すまでしかできない。ロシ
アの改革は、民主化することと、ウクライナへの賠償と戦争犯罪の
追及で行うことになる。

この過程でプーチンを国外に追い出すことになる。そして、ナヴァ
ーリヌイ氏を民主化のトップに据えることになる。ここまでは前回
と同じであるが、民族国家群に分割できるかどうかが分からない。

その方向には、中国は反対するからである。中国としてもロシアの
存在が必要であり、西側諸国との対決のためには、仲間が必要であ
り、その中核がロシアであるからだ。

この調整を米国と中国で行い、中国をロシアから離すしかない。

中国も経済合理性のないロシアとは、そりが合わないようであり、
欧米側は、経済合理性で中国とは会話ができる。

経済合理性で、中国と協議して、ロシアの方向を決めるしかない、

しかし、イランなどの参戦で中東に火が点けば、第3次世界大戦に
なり、このシナリオとは違うことになる。これを心配するが、まだ
、その心配は早いようだ。

さあ、どうなりますか?



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