6243.世界の大乱が始まった



ウクライナ戦争に刺激されて、ナゴルノカラバフ、セルビアとコソ
ボ紛争、ペロシ訪台で中国軍大規模演習とイランの他国攻撃の準備
と世界の各所で火が付き始めた。今後を検討しよう。 津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、6月17日は29,888ド
ルと年初来安値になり、7月29日は32,845ドルで、8月1日は46ドル安
の32,798ドル、2日は402ドル安の32,396ドル、3日は416ドル高の
32,812ドル、4日は85ドル安の32,726ドル、5日は76ドル高の32,803
ドル。

先週、株価は横這いでした。8月2日にペロシ下院議長が訪台予定と
明らかになり、地政学リスクを懸念して大きく株価は下落した。
しかし、ISMの7月米サービス業景況感指数は56.7で、前月から1.4ポ
イント上昇とまた、6月米製造業受注指数(前月比)2.0%増となり
、株価は上昇した。

しかし、4日発表の7月最終1週間の新規失業保険申請件数は前週比6
千件増加の26万件で、予想の25万9千件を上回り、労働市場の一部が
軟調になっている可能性が示され、長期金利も2.5%まで下がった。
それと、米原油も続落で90ドル割れで、ウクライナ侵攻前の水準に
なった。

これらにより、F&Gインデックスも50と中立になり、売られすぎの
グロース株買戻しが起きている。このため、NASDAQの12700Pまで回
復した。

その上に、5日発表の7月雇用統計でも非農業部門雇用者数が前月比
52万8千人増と予想を大きく上回り、失業率も3.5%に低下したこと
で、ドルが全面高で、ドル円も135円に一時なった。

これを受けて、9月のFOMCでは、0.75%利上げになることが確実にな
った。しかし、長期金利は2.8%と上昇して、NYダウは一時下落した
が、終値では上昇した。NASDAQは、下落して12,657pになった。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、7月29日は27,801円で、8月1日は191円高の
27,993円、2日は398円安の27,598円、3日は147円高の27,741円、4日
は190円高の27,932円、5日は243円高の28,175円。

先週、株価は28,000円を抜いた。今までは28000円の壁が厚かった。
しかし、8月2日にペロシ下院議長が訪台がわかり、地政学リスクで
株価は下落した。だが、5日は前日のNASDAQの上昇と日本企業の決算
内容などを好感したのか、大きな理由なしに大幅な上昇になり、節
目の2万8千円を超えてきた。やっと、6月9日の28,246円を狙える所
まで来たことになる。

7月雇用統計を受けてもNYダウは上昇したので、今週も、株価は上昇
すると思われる。日本企業の決算が良いからであるのと、空売りの
買戻しをしないと踏み上げられるからで、29000円になる可能性もあ
る。年末までには3万円となる可能性も出てきた。

これは日本株が強いからだ。企業の受注が多く決算内容もよく、日
本企業の設備投資は、1980年代以来の20%増の状態になっている。

大手企業の夏のボーナスも昨年夏に比べ8.77%増の89万9163円とな
り、企業収益が上昇してることを示している。日本の景気は、絶好
調であることがわかる。

日本の経済学者や海外の投資家や経済学者たちの「日本はダメにな
る」ということが、いかに間違えているかを証明している。

金融緩和だけで景気は良くなると海外経済学者は、日本の安倍元首
相にアドバイスしたが、そうならなかったと同様に、今度は逆のこ
とを言っているが、それも間違っている。どうして、日本の将来に
対する見方を何度も間違えるのであろうか?不思議である。

東西冷戦で、特に中国の強権化で、中国の西側企業に対する締め付
けが厳しくなり、中国からの撤退を急ぎ、日本で工場を増設する動
きが活発化している。

今までは、中国から東南アジアへ工場を移転していたが、コロナで
混乱したことと、船賃が高くなったこと、それと円安になり、東南
アジアでのコストより日本で製造した方がトータルで見ると安くな
ったことによる。

政府が支援して日本企業の国内回帰で利益を拡大させて、従業員の
給与を上げて、所得税と法人税の税収を拡大して、防衛費を10兆円
規模にできるようにすることだ。

中国の台湾沖での軍事演習は、台湾有事は日本有事であることを明
確に示した。日本は有事の対応を真剣に考えないと行けなくなった。

もう1つが、政経分離は、対中国では通用しないので、日本が米国
・民主国家群に付くなら、中国にいる日本企業は資産凍結も覚悟し
て運営することである。もし、それがイヤなら、早期に撤退するこ
とだ。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナ東部での戦闘では、ロ軍は部隊を南部ヘルソン州やザポ
リージャ州に送り、手薄の状態になっている。このため、イジュー
ム西・南側では、すでにウ軍が反撃をして、ブラジスカやスリヒフ
カなどを奪還している。

しかし、スラビアンスクの南に位置するバクムットには、ロシアは
傭兵会社ワグナーや特殊部隊を使い、攻撃してくるので、ウ軍との
激しい戦闘にもなっている。

しかし、この方面でも、ロ軍は激しく砲撃後、バクムート市を攻撃
したが、ウ軍の砲撃で損害が大きく撤退した。現在ロ軍で最強のワ
グナー部隊や特殊部隊でも、ウ軍を打ち負かすことができないよう
で、ロ軍の限界点に来ているようだ。この部隊の損耗も大きくなっ
ているようだ。

ロ軍の激しい砲撃は、ベラルーシの弾薬庫から運んだ弾薬であり、
それも残り少なくなっているようである。また、シリア、イランや
北朝鮮の弾薬も持ってきた可能性もあるようだ。同盟国の弾薬も使
い果たすと弾薬不足になると思われる。

それと、北朝鮮は10万人も兵員をロ軍に送るとロシアのTVが言って
いる。本当か疑問もわくが、もし本当なら、北朝鮮は外貨欲しさに
、兵員を死地に送る。ロ軍の兵員不足で北朝鮮軍を傭兵として使う
ことになる。月30万円でも月300億円が北朝鮮の収入になる。

そして、ウ軍がドネツク市をハイマースで攻撃するので、ドネツク
市から80キロ以上をロ軍は確保して、ハイマースの攻撃を阻止した
いようであるが、この攻撃も撃退されている。

また、火力発電所をロ軍に奪われて、冬場のエネルギー供給ができ
ないドネツク州から住民を強制避難させることにして、順次退避を
させているが、それが終われば東部全体でも本格的な反撃に出るよ
うだ。

ロ軍は南部と東部の2つの戦場で戦う必要があるが、兵員が不足し
ていて、優先順位を付けるしかない状態であり、現状は南部を主戦
場をしたいようである。

ザポリージャ方面でも、ウ軍が前進しているが、ロ軍はここにも12
BTGの増援部隊を送ったようである。今後、この地域でもウ軍とロ軍
の激しい戦闘になるのであろうが、今は静かである。

そして、サポリージャ原発では、核を盾にして、ロ軍の武器などの
保管場所をしているが、原発が「完全な制御不能」状態になってい
るという。砲撃もあり、破壊や事故等が起きれば、大きな被害が出
ることになる。IAEAは、原発の状態を調査するために、ロシアとウ
クライナに合意を求めている。

南部ではウ軍は、反撃に出ている。ロ軍は東部のイジューム方面か
ら20BTGを南部ヘルソン州北部に送り、この地域の防衛と北部で大攻
勢を掛ける準備をしている。

このための大量の榴弾自走砲や装甲車両をケルチ橋で鉄道輸送する
姿が見られている。攻撃というより防衛に必要な兵器を送っている
ことになる。ロ軍は南部には現状10-13BTGいたが、20BTGを増強し
30BTGと体制を強化することになる。この部隊がヘルソン州北部中
央に位置して、ウ軍の攻撃に対応するようである。

ウクライナ全体で、100BTG程度のロ軍が活動しているので、ヘルソ
ンなど南部地域に重点を移したことがわかる。ウ軍とロ軍が真向勝
負になるようだ。

しかし、この補給物資や増援する兵員を輸送中の列車がノバカホフ
カの南に位置するブライナカ駅に到達した時点で、ウ軍HIMARSの攻
撃を受けて破壊されて、兵員約200名が死傷したという。ここしか補
給ルートがないので、ウ軍に狙われている。この地域にはパルチザ
ンもいて、列車情報も筒抜けである。

この南部地域では、ウ軍は戦闘機と攻撃機で大規模な航空反撃戦を
実施し始めている。クリミア半島からのロ軍空軍機は、ウ軍の地対
空ミサイルで行動を抑制されている。ロ軍増援部隊は、この空爆に
も悩まされることになる。

そして、ノバカホフカの水力発電所の攻撃もウ軍は行う可能性が出
てきた。この水力発電所を破壊すると、ドニエプル川北部への補給
ルートがなくなり、その上、ヘルソン市も水没するし、近くにかか
る船橋も構築できなくなる。これにより、ドニエプル川北部は孤立
化することになる。援軍を送っても弾薬などが補給できないことに
なる。

だが、ウ軍は、この地域全体の情報統制を厳しくしているので、事
態がよくわからない。

しかし、ヘルソン市への砲撃は行うが、市内に兵を進めないようで
あり、自爆ドローンで占領軍軍人や行政トップ、協力者などを個別
に排除しているが、全体的にはロ軍を孤立させて降伏を待つのであ
ろう。ここに補給ができないので、ロ軍としても増援も送れないよ
うである。

ヘルソン州の北中部ロゾベでも、ウ軍はインフレッツ川に船橋を掛
け、ロシア占領地に橋頭保を築いたが、ロ軍は空爆と砲撃を行い、
この船橋を破壊しているが、ウ軍は複数の船橋を構築して、部隊を
増援している。ウ軍は、この地域の50か所以上の集落を解放したと
もいう。そして、ロ軍攻撃機は、ここでウ軍戦闘機と対空ミサイル
の餌食になっているようだ。

その上、クリミア半島のセヴァストポリ付近でロシア黒海艦隊の大
型巡視船ヴァシリー・ビコフが、ウ軍のハープーンミサイルで破壊
され、行方不明の船員が20人とのこと。まだ沈没はしていないよう
である。

一方、ウ軍後方の弾薬庫や指令所がロ軍から砲撃を受けていない。
これはロシアの偵察衛星が識別できないことによるが、ロシアの偵
察衛星は、解像度33センチのペルソナ衛星1機とロシア版ALOSのバー
Mが解像度1.1mの3機、解像度2.1mのカノープスVが6機という現状で
、これではウ軍の攻撃目標を捕捉できないようだ。

このため、HIMARSを破壊したというロシアの発表では、衛星画像が
使われるが、そこに移る画像は非常に荒く、HIMARSと認識できない
。このため、ロ軍は砲撃を受けるHIMARSを捕捉するドローンが必要
であるが、そのドローンをイランがパイロット込みで提供すること
になり、第1陣がロシアに提供されたという。イランは代わりに
SU-35を複数機提供される物々交換のようである。

そして、このドローンを戦場で、ウ軍も確認しているとウ軍参謀本
部は発表した。

よって、今まではHIMARSは破壊されていなかったが、今後は分から
ないことになる。早く対ドローン用防空システムの増強が必要であ
る。

ロ軍の限界点に来て、プーチンは、同盟国に対して紛争拡大を志向
しているようである。セルビアがコソボ国境付近で、ネオナチのコ
ソボ打倒と銃撃を行っている。

逆にアゼルバイジャンは、ロシア軍の支援を受けられないアルメニ
アに対して、ナゴルノカラバフのラチン回廊の戦略的に重要な高地
をいくつか占領したようだ。

ロシアは、現状での停戦を主張しているが、ウクライナは2月24日以
前の状態での停戦と、停戦条件で折り合わない。しかし、ウクライ
ナのゼレンスキー大統領もロシアとの停戦協議開始のために、中国
の習近平国家主席と会談をするという。

ウ軍優勢であり、ロシアの譲歩が期待できるので、2月24日以前の所
までロ軍撤退を交渉で得られるという目算があるのであろうか?

もう1つ、ロシアが負け始めると、限定核使用の心配をする必要が
あり、それを阻止するためにも中国のロシアに対する影響力が必要
になっている。しかし、プーチンはNPTに「核戦争に勝者なし」と核
兵器使用を躊躇している。

そして、一番大きいのは、ドイツ、フランス、イタリアなどが、冬
に向けて、ロシア産天然ガス供給を止められると、政治的に現政権
が持たないことで、ウクライナに停戦の要求をすることになる。

しかし、ロシアのガスプロムも「行先ない」余剰ガスを空中に放出
しているようである。中国に送りたくともパイプラインの容量が不
足なのであろう。このため、輸出量が8割も減っているので、国家
財政も持たなくなっている。ドイツだけではなく、ロシアも困って
いるのだ。

欧州の危機を、ゼレンスキー大統領も認識している。冬までに戦争
を終えるとセレンスキー大統領も再三述べていたが、その準備をす
る必要があるからだ。これを受けた形でプーチンも核使用はしない
と述べた可能性もある。

そして、ウクライナの食糧輸出では、最初の貨物船がボスポラス海
峡を通過してレバノンに向かっている。食糧価格は、小麦などの価
格が下落し始めた。この問題では停戦協議にならなかったが、欧州
のエネルギー不足は、停戦協議になるようだ。

早く、ウ軍が領土を奪還して、停戦に持ち込んでほしいと思い始め
ている。それは、ウクライナ戦争が続くと、世界大乱という状況を
引き起こし、かねないからだ。

3.世界の大乱が始まった
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ウクライナ戦争は、イスラエルとパレスチナの紛争再熱、セルビア
のコソボ国境での銃撃戦やアゼルバイジャンのナゴルノカラバフの
攻撃、ペロシ下院議長の訪台による中国の台湾封鎖のような軍事演
習などの紛争を誘発している。

強権的な国家群による民主主義国への攻撃が頻発してきた。もう1
つが、米国の国内分裂を回避するために、中国を敵対視して、国内
をまとめたいという思いがペロシ下院議長が持っていることである。

このまま、11月の中間選挙に臨めば、民主党が負けるので、紛争を
起こして、米国民全体の共通の敵が必要なのである。米国はロシア
の力が落ちていて、ウクライナにも負けることで、米国民の共通の
敵とは、ならなかった。ロシアでは役不足であった。

中国も今後、金融崩壊による経済危機が来るので、こちらも国民の
目を外に向けさせたいという志向が習近平国家主席にはあるので、
米国の挑発に乗ることになる。

そして、韓国のユン大統領は、ペロシ下院議長との会談をキャンセ
ルした。これは中国との関係を重視して、米国との関係を相対化す
る行為であり、米国との同盟関係を強固にする方向ではない。

韓国は米中のはざまで揺れ動くことになる。韓国は日本との関係も
徴用工問題で、日本企業の資産現金化の方向は変えないので、日韓
関係も異常のまま。この状況を見て、北朝鮮が動くと、朝鮮半島で
もおかしなことが起きる可能性がある。

それと、多くの国でも、物価が高騰して国民が苦しくなり、ここで
も隣国を敵として、戦いを仕掛けて、国民の目を外部に向けさすと
いう動きになるので、世界全体が敵と味方になり、世界大乱になっ
ていくことになる。

勿論、台湾や朝鮮の隣国である日本も例外ではない。そのために、
できるだけ多くの原発を再稼働させて、エネルギーの自立とコメな
どの増産による食糧の自立が必要になっている。大乱の時代には、
軍事的自立、エネルギー自立、食糧の自立が最も必要である。

それは、海上封鎖が各地で起こり、海運に破壊的なダメージを与え
て、供給を海外に頼ると途絶して、国民の生命を守れないからだ。

国家の目的は、国民の生命、財産、文化を守ることである。世界大
乱を前にして、コスト重視の経済発展より先に安全保障上で確保す
るべき物の自立が一番するべきなのだ。政治家の使命は、危機対応
の政策を作り、実行することである。今がその時である。

世界大乱の時代が始まった。くれぐれも、その時代を見通して、世
界大乱に備えてほしいものである。

さあ、どうなりますか?



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