6238.ロシア経済の危機



ドイツへのガス供給削減、サハリン2の接収などと天然ガスと石油
依存経済がおかしくなっている。勿論、ガス供給削減される欧州や
日本も大きな影響を受けるが、原発再稼働などの対応策はあり、乗
り越えることができるが、ロシアはそれができずに収入が減る事態
になっている。この今後を検討する。
                        津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、6月17日は29,888ド
ルと年初来安値になり、24日は31,500ドルで、27日は62ドル安の
31,438ドル、28日は491ドル安の30,946ドル、29日は82ドル高の
31,029ドル、30日は253ドル安の30,775ドル、7月1日は321ドル高の
31,097ドル。

6月5週は、ジグザグとした動きであり、景気懸念で株価が下がるが
、悪い指数が出ると、FRBの利上げが緩和すると株価は上がり、気迷
い相場が続いている。

5月の個人消費支出(PCE)は前月より0.2%増であるが、増加率は過去
5ケ月で最小となり、予想の0.4%も下回った。このため、景気懸念で
30日の株価は下落したが、ISM製造業景気指数は前月の56.1から53.0
と悪化したことで7月1日の株価は上がっている。

景気後退の懸念から長期国債が買われて、金利は2.88%まで下落して
、ドル円は134円台になる場面もあった。

少し前までは、金利上昇で株安になっていたが、今は金利低下で株
安になる展開に変化している。金利上昇による株の現在価値下落か
ら、企業業績下落への警戒感からの株安になっている。

29日のECBフォーラムでも、パウエル議長は、明確に経済成長より物
価対応を優先すると述べた。このため、市場も景気後退を織り込む
しかないことになる。

このため、業績懸念からPER調整になってきた。このため、大幅黒字
の企業でも株価が下がるということも起きている。

米株が上昇するのは、FRBが利下げに転じてからのようであり、まだ
当分、利上げ方向であり、株価の下押し懸念は続くことになる。

また、NYダウは20%落ちでもないので、底ではなく、1929年の大恐慌
では86.2%下落だし、2007年のリーマンショックでは56.8%下落であ
り、まだ道半ばであるようだ。200日線のボリンジャーバンドで、
−5σまで下げた時点が底であろうと現役ファンドマネージャーの
石原さんは言う。

そして、市場関係者は、8月25日から始まるジャクソンホール会議で
、パウエル議長の利上げ終了の発言を期待しているようである。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、6月24日は26,491円で、27日は379円安の
26,871円、28日は178円高の27,049円、29日は244円安の26,804円、
30日は411円安の26,393円、7月1日は457円安の25,935円。

6月5週は、週半ばに27000円を回復したが、週末には25000円台まで
下落になっている。米国の株価下落に歩調を合わせている。7月1日
は、全33業種が下落した。

日銀短観では、大企業製造業で前回3月調査から5p下落のプラス9と
2四半期連続で悪化したが、大企業非製造業は、コロナによる行動
制限解除で、4p上昇のプラス13と2期ぶりに改善した。

大企業製造業でも売上げは6.9%も伸びているが、コスト上昇で利益
が7.9%落ちたことで5pの下落になってるが、値上げが追いついてい
ないだけである。

そして、3ケ月後の景況感を示す先行きは、大企業製造業が1ポイント
上昇のプラス10、大企業非製造業が横ばいのプラス13と見込んでいる。

このように景気は後退していないし、金利もゼロのままであり、企
業の経営環境は良い状態であるが、海外投資家の先物の売りで株価
は下げている。

日本株のPERは13倍と低く、米株のような高PERでもない。海外投資
家の売りは、絶好の買いのチャンスだ。米国と日本の金利差で円安
になり、日本企業の売上は増えているし、設備投資は14%増と1980年
代以来の高水準になっている。日本経済は高成長モードにシフトす
る前兆が出てきた。

日銀の超金融緩和策での円安が、日本経済を押し上げている。まだ
、インバウンドがないにも関わらずに、成長軌道に入っている。こ
れで、インバウンドの需要が増えると、経済活動はより活発化する
はずである。

今後、経済活動が活発化すると、人手不足と電力不足が問題になっ
てくる。電力不足は原発再稼働を急ぐべきであり、人手不足は移民
政策の緩和が重要になる。

問題解決になれば、海外投資家も大量の先物売りの買戻しをするし
かないはずで、大きく日本株は上昇することになる。

ということで、今が、買いのビッグ・チャンスである。そして、バ
イ・アンド・ホールドすれば、大儲けができる。日本と欧米の金融
政策の差を日本企業の好機と見ない海外投資家が大過ぎる。

日本は産業力を維持しているので、円安になれば、需要が日本の製
品に向かい、それを基盤として、日本は復活することになる。

それをこのサイトでは昔から予測していたが、とうとう、その時を
迎えたようである。

そして、世界の工場は、中国から日本と韓国、台湾になる。G7で
も中国への経済依存を無くすと表明したので、今後、世界経済秩序
が大きく変わることになる。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナ東部での戦争は、ロシア軍は攻撃を緩めないが、ウ軍も
ハイマースとUAVでイジューム方面の弾薬庫や司令部などを次々と破
壊している。

ウ軍はリシチャンスクで防衛しいるが、リシチャンスクへの補給路
T1302高速道路の防衛ができず、ロ軍に切断された。リシチャンスク
の包囲も完成したようであり、ウ軍はリシチャンスクから撤退して
、スラビアンスクの防御を固くした方が良いと思うが、まだ、リシ
チャンスクからの撤退はしていない。補給もできなくなる。

ロ軍は、シベリアから戦車BTGを大量に東部に送り込み、合わせて
退役軍人を再徴収して下士官不足を埋め、戦線を維持・攻撃をして
いる。ウ軍も東部に人員を集めて、ロ軍の全縦深攻撃対応で、ここ
の防衛を厚くしたことで、他の地域の反撃ができなくなっている。

しかし、ロ軍の全縦深攻撃を止めることができていない。ロ軍が徐
々に占領地を拡大している。ウ軍の将兵の損耗も大きくなっている
ようだ。

ウ軍にハイマースやNATO軍型兵器が実戦に出てきているが、まだ火
力量からは負けている。ロ軍の方が押している状態に変わりがない。
平原地帯ではロ軍の圧倒的な火砲・戦車群を用いる全縦深攻撃を止
めることが難しいのかもしれない。ハイマースやM777榴弾砲の砲撃
でロ軍の消耗も大きい。

そして、ロ軍の電子戦兵器クラハ8に対しては、やっとスイッチ・
ブレードでの破壊を始めた。スイッチ・ブレードは通信しないで自
立して、目標物を破壊できるので、これを利用するしかない。

クラハ8による電波妨害でウ軍のUAVが使えないので、電波を使わな
いスイッチ・ブレードが最適である。そして、クラハ8は装甲が薄い
ので、スイッチ・ブレードで容易に破壊できるし、アンテナが特徴的
であり、目印もある。

そして、リシチャンスクを包囲するために、ロ軍が集中する場所は
スラビアンスクの北の地域とポパスナから南の地域であり、ここの
防衛を厚くして、ハイマースで砲撃して戦車BTGを潰し、突破されて
も次の陣地を構築して、そこで第2・3軍を抑えるしかない。しか
し、すでに突破されているので、ウ軍は後退してスラビアンスクで
迎え撃つしかないようにも思う。

このように、東部地域ではロ軍優勢の状態が続いている。ロ軍の全
縦深攻撃を止める戦術をウ軍は早く確立しないと、東部地域全体を
失うことになる。

最近のウ軍勝利は、オデーサ沖の60キロのスネーク島にウ軍国産155
mm自走榴弾砲ボーダナで大量の砲撃をして、とうとうウ軍が奪還し
た。ロ軍はオデーサへの上陸作戦を放棄したようである。しかし、
ロ軍のキロ級潜水艦が付近にいるために、オデーサから穀物の輸出
ができるとは思えない。

しかし、対艦ミサイル「ハープーン」は射程距離220キロであり、ク
リミア半島の黒海艦隊基地のセヴァストポリを射程内に収めたこと
になり、次にはスネーク島にハープーンを設置して、セヴァストポ
リ攻撃になるはずである。ウ海軍は、大きな成果を収めている。米
国から巡視艇クラスを供与されるようであるが、大型の艦船はトル
コがボスボラス海峡の通行禁止のために運べない。

また、ロ軍は、地対地の誘導ミサイルもなくなり、50年前の対艦ミ
サイルを地上攻撃に使用しているので、目標から400M以上も離れた
商業施設を破壊した。

最近、ロ軍が民間施設ばかり攻撃しているのは意図的なものではな
く、単に古いソ連製ミサイルを使っているので、精密攻撃ができな
いだけだとウ軍の将軍は分析している。

この攻撃は、G7サミットで西側がロシアへの対抗の意志を示したこ
とで、久しぶりにキーウへのミサイル攻撃もしたが、ウ軍も、この
ミサイルを撃ち落せていない。

この防御のために、ドイツ製防空システム「IRIS-T SLM」を供与す
るが、この最新鋭の防空システムでも、短距離弾道ミサイルしか撃
ち落せない。そして、有効射程も短距離級と中距離級の中間くらい
までである。供与予定のアメリカ/ノルウェー製防空システム
「NASAMS」も短距離級のものである。

ウ軍が欲しいのは、アメリカ製パトリオットPAC-3であるが、機密性
が高く供与はしないはず。

ウクライナ戦争とは、ウ軍の少し前の近代兵器対ロ軍の旧ソ連時代
の兵器の戦いでもあるが、旧ソ連の物量対知能的な少数の近代兵器
の戦いとも言える。

また、ウ軍の戦車の消耗も激しいが、旧ソ連戦車が東欧諸国でもな
くなり、ウクライナに供与できないので、旧式のNATO型戦車も供与
するとNATO首脳会合で米バイデン大統領は表明した。
その表明した供与する兵器とは、
・14万発の対戦車ミサイル(疑問符:数が多すぎ)
・600台以上の戦車
・ほぼ500台の野戦砲
・60万発の砲弾
・高度な多連装ロケット
・地対艦ミサイル
・地対空ミサイル「NASAMS」
であり、8億ドルの大規模な武器の供与となる。その上、「われわ
れはウクライナをいつまでも支援していく」と語った。これでウ軍
の反撃を支えることになる。これに対して、ロシア軍は、シベリア
の部隊の多くを動員したことで、追加の援軍がないことになる。

しかし、供与リストの中にMQ-1ドローンや欧米戦闘機がないのは残
念であるが、機密性が高く供与はしないのであろう。

TB2があるのでMQ-1がなくても、徐々に形勢はウ軍有利になる。英国
のウ軍兵士訓練が順調に行けば、今年の秋から冬にはロ軍は敗退す
る可能性が高い。

もう1つ、中欧・東欧の諸国は、ウクライナに積極的に旧ソ連製兵
器を供与したことで、近代的な欧米製兵器になり、NATO軍の装備が
標準化したことで、今後の部隊運用が楽になっている。ウ軍もソ連
製兵器の消耗が激しく、次からの供与される兵器は徐々に欧米兵器
になるので、NATO軍との連携性が高くなる。しかし、訓練時間は長
くなるので、実戦配備に時間かかることになる。

6月30日閉幕したNATO会議では、今後の防衛・安全保障で新たに中国
への懸念も示した「戦略概念」を採択し、ウクライナ侵攻を続ける
ロシアを「直接の脅威」と位置づけ、フィンランド・スウェーデン
のNATO加盟にも合意した。

2023年以降、危機時に対応する即応部隊を30万人以上に増強するし
、バイデン大統領は、ロシアの脅威に対抗するため、ポーランドに
常設の陸軍司令部を新設し、陸海空の部隊を欧州全域に追加配備す
るとした。

このようなNATO会議を受けて、ロシアのラブロフ外相は、ロシアと
西側諸国の間に新たな「鉄のカーテン」が下りてきているとした。

NATO会議の前に開かれたG7では、中国の「不透明で市場をゆがめる
」貿易慣行を非難するとともに、同国への「戦略的依存」を減らし
ていくと声明を出した。中ロへの経済的な依存を減らして、同盟国
内部で補完するということである。

中ロとの新たな「鉄のカーテン」が下りてきているのであろう。

敵対国ロシアに対して、リトアニアからは、カリーニングラードへ
の鉄道貨車便の通過を禁止され、ノルウェーからは、スバルバル諸
島のロシア人居住地域への物資輸送を止められた。

ロシア国債のデフォルトも起き、新しい外貨建て国債の発行ができ
なくなった。SWFITから追い出されたロシアは、インドに輸出する石
油代金受取りには人民元を利用するようである。

ロシアの同盟国である中国からも、ロシア向け輸出が60%も減ってい
るという。米国もロシアに軍事転用される中国製民生品への制裁を
強化して、その企業への半導体輸出を禁止するという。このため、
中国企業もロシアへ輸出できなくなっている。このため、輸入より
輸出が多くなり、大幅な黒字でルーブルの価値が上がっている。

前回でも述べたように、ロシアは石油施設や天然ガス施設の維持メ
ンテもできずに、その生産量を減らしている。このため、欧州や日
本への供給を減らすしかない。同盟国中国とインドへの石油・天然
ガスの供給は止められないが、その代金は欧州や日本への販売価格
の半分であり利益が減り、ガスプロムも今年の配当はできないと表
明した。

もう1つが、ロシア最大(世界第二)の「ウレンゴイ・ガス田」の
「パイプライン火災」は続いているようで、火災の規模が拡大中で
ある。真の原因は「地下の埋蔵ガス田」に火が移り、鎮火には数年
かかる可能性があるようだ。それも欧米技術が必要であり、このた
め、このガス田のガスが採取できずに、ドイツへのガスを60%削減し
たようだ。

このため、他での増収が必要になり、サハリン2は日本企業への支
払いがあり、この支払を止めてガスプロムの収入を増やして、国家
財政への目減りを少なくする必要があった上に、日本の岸田首相が
、G7でロシアを非難したことで、プーチンは接収を強行した。

日本の設備を奪うことになり、日本は2度とロシアでの投資をして
はいけない。欧米日など先進国はロシアとは経済的絶縁状態になる。

このため、ロシアの国家財政と経済の危機になることが見えてくる
。今はソ連時代の兵器などの備蓄があり、それを倉庫から出して使
用できるが、徐々に損耗がすると、それもできなくなる。ジリ貧な
状態になっていく。

しかし、プーチン大統領も東部攻撃の成功で、再度、ウクライナ全
土の支配を狙っていると、米軍情報機関は述べている。このプーチ
ンの意図をくじく必要があるので、欧米諸国も大量の武器援助をウ
クライナに続ける必要になっている。

ウクライナもEUからの軍事支援がないと戦争を継続できないので
、ウクライナで稼働している原発での電気をEU諸国に供給して、
ロシアからEUへの天然ガス供給削減の影響を小さくするようだ。

日本も原発を再稼働させて、電力不足を解消して、ウクライナ戦争
の影響を少なくする必要がある。

さあ、どうなりますか?



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