6237.ロシア軍全縦深攻撃への対抗処置



ウクライナにやっと、欧米の重火器が届き、これから反撃開始のよ
うですが、ロシア軍はセベロドネスクを掌握し、次の全縦深攻撃に
移る。ウ軍の体制立て直しはどうすればよいかを検討する。
                        津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、6月17日は29,888ド
ルと下がり、21日は641ドル高の30,530ドル、22日は47ドル安の
30,483ドル、23日は194ドル高の30,677ドル、24日は823ドル高の
31,500ドル。

6月4週は、先週の3万ドル割れから買戻しの動きが続き、24日には3
万1千ドルを回復した。レバレッジを掛けていた個人投資家の追証で
、多くの個人投資家が先週退場したことで、株価は大きく下げてい
た。しかし、今週は長期金利が3%まで下げたことで、安くなったグ
ロース株の買戻しが優勢になっている。

米6月ミシガン大消費者信頼感確報値は50.0と、速報値の50.2から下
方修正され、過去最低を更新したし、米国の6月の総合購買担当者指
数(PMI)速報値は前月から2.4ポイント低下の51.2となり、米企業
活動の失速が明らかになったが、今は悪い数値が出ると、FRBの利上
げが抑えられると、株価にはよいことになる。

また、5月の新築住宅販売戸数は年率換算で前月比10.7%増の69万6千
戸と、予想外に増加したことも大きい。今は景気の腰折れがないこ
とになる。このため、株価は上昇した。

しかし、ボウマンFRB理事は、7月FOMCでも0.75%の利上げになると言
うし、FRBの金融資産売却も継続して、株価的には今後も厳しい状況
は変わらないはずで、一時的な戻しの可能性が強い。

FFレートの引き上げで景気後退懸念で、そのため株から10年米国債
のシフトが起こり長期金利が低下して、今は景気後退ではないので
、株価は長期金利低下で上がるが、まだ先は分からない。

また、金利上昇でドル高になるが、パウエル議長は、ドル高はイン
フレを抑える効果が大きいので、容認するという。このため、当分
、大幅な利上げは続くことになる。あまり、株価にとってはよくな
いことであるが、インフレ優先のFRBの姿勢は変わらない。

金融相場では、QEで株価が上がり、QTで株価は下がる。景気が良い
わけではないので業績相場にはならないので、QTが続く間は、株価
は下がり続けることになる。

今、FRBが行おうとしているのは、1990年に日本政府と日銀が実施し
た土地インフレに対応する利上げと規制であり、1年程度では元には
戻らない。下手をすると30年かかる可能性もあるとみる。

このような見方から、インバースETFに資金が注入されている。

市場関係者は、8月25日から始まるジャクソンホール会議までは株安
が続き、そこで金融政策を変えることになりそうだという。しかし
、広瀬氏の見方は、10月ごろに底入れするという。どちらにしても
、まだ当分、株価は下がる方向であり、一時的な上げが出ることで
ボラが大きい展開になるという。

今は、逆張りで取引した方が利益が出るとみるし、景気後退期には
、デェフンス系の株で「生活必需品」「ヘルスケア」株が良いとい
う。

一方、バイデン氏支持率が、4週連続で低下して36%と過去最低に並
ぶまで落ちている。グリーンフレーションからバイデンフレーショ
ンというインフレの名前も出て、脱炭素を推進したバイデン大統領
の責任を問う動きも出ている。

このため、米バイデン大統領は、ガソリンと軽油への課税を3カ月間
停止するよう議会に要請した。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、6月17日は25,963円で、20日は191円安の
25,771円、21日は475円高の26,246円、22日は96円安の26,149円、23
日は21円高の26,171円、24日は320円高の26,491円。

日本株は、17日の2万5千円台から2万6千円回復になっている。先週
の投資家動向では、海外投資家は1兆7千億円の売越しであり、この
ため、株価は下げたようである。今週はその買戻しであろう。

黒田日銀総裁は、金融緩和の継続であるが、円安には注視するとい
う。この金融緩和で、海外ヘッジファンドは日銀に対して、日本国
債の先物の売りで、週11兆円もの売りを仕掛けたが、すべて日銀が
買い支え、金利0.25%に抑え込んだ。

これは当分、日銀は買い支えることになるとみたが、6月4週では、
先物の国債売りが出ずに、買取額がゼロになっている。今回も海外
ヘッジファンドは負けたようである。

しかし、日銀の国債保有率は50%を超えるレベルまでになってきた。
日本国債発行額は1120兆円であり、その半分というと550兆円を日銀
が持つことになる。日本の1年のGDP分を持つことになる。

そのため、日銀の無限の金融緩和で、136円台になっている。まだま
だ円安は進行するとみられている。ルービニ氏は、140円になれば、
日銀も金融政策を変えるというが。

円安でも日本の物価上昇率は2%程度であり、米国の8.5%や欧州の8%
に比べると低く、この円高で小麦価格が上がり、米粉への転換が進
んでいる。また、農業の採算性が上がり、肥料価格の高騰で伝統的
な肥料への転換も進んでいる。日本の農林業の復活が進む。

もう1つ、国内産業の価格競争力も上がり、海外から日本製品の需
要が上がっている。国内産業の復活が進んでいるが、今後、労働人
員不足になるとみる。特に高度人材不足であるから、高度人材の育
成が重要になるし、インバウンドなども活発になりサービス業の人
材不足にもなる。

ウクライナからの避難民だけではなく、キリスト地域、仏教地域の
移民・難民を積極的に受け入れる必要がある。そして、実習生とい
う奴隷的な制度は廃止するべきである。

このような人材不足への対応が政府に求められている。

もう1つ、7月10日に参議院選挙があるが、自民党が過半数を取るこ
とになると見るが、ガソリンのような物価統制を食料品にもしない
で、インフレを放置していると、自民党も危ない可能性がある。

だが、野党共闘ができなかったことで自民党阻止もできないとみる
が、野党各党の主張が大きく違い、共闘ができないようだ。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナ東部での戦争は、ロシア軍はセベロドネスクを制圧し、
アゾット工業団地からもウ軍は撤退し、リシチャンスクで防衛して
、それでもスラビアンスクからリシチャンスクへの補給路T1302高速
道路の防衛が難しくなったら、スラビアンスクまで撤退になるよう
だ。

これでルハンスク州の大部分をロ軍は制圧することになる。1つの
目標をロ軍は達成することになる。

ロ軍の戦車などの装甲兵力、203m自走カノン砲やTOS-1多装ロケット
弾砲を多数、この地域に集めて、ロ軍が全縦深攻撃したことで、ウ
軍の装甲兵力や火力の10倍以上の差で押したことで圧倒した。しか
し、ロ軍の損耗も大きく、ルハンスクとドネツク人民軍の兵員の55%
が失われたという。

ロ軍の全縦深攻撃は、1ケ所に多数の戦車BTGと203m自走カノン砲や
TOS-1多装ロケット弾砲を集めて、戦車部隊を複数群にして、最初に
ウ軍陣地と後方の155mm榴弾砲を叩き、次に第1軍でウ軍陣地を突破
させ、その後方の第2・3軍が突破した箇所から進撃する方法であ
る。今までの1戦車BTGではできずに、複数のBTGを集めて攻撃を行
う方法にロ軍は攻撃方法を変更した。

この方法でポパスナ周辺地域でウ軍陣地が攻撃されて、一度の攻撃
で10キロ以上も侵攻された。ロシアは久々の戦術的勝利を得た。

ウ軍に欧米兵器が実戦に出てくると形勢は分からなくなるが、全縦
深攻撃を受けると、ウ軍の消耗も大きくなり、脱走兵などが出て、
そのような攻撃を受けないようにウ軍も対応策を立てる必要がある。

ウ軍にも、米からのM777榴弾砲、仏からのカエザル、独からの
Phz2000砲、他からのFH-70、M109、AHSクラフなど多数の大砲が供与
されたが、これらを足してもロ軍の火砲の数には、大きく及ばない。

重大なのは、ロ軍の電子戦兵器クラハ8が効果的に機能したことで
あり、電波妨害でウ軍のUAVが使えない事態や砲管理システムでの通
信ができない事態になっていることだ。このため、早期に電子戦兵
器を叩く必要がある。

この電子戦兵器を叩くには、長距離の射程をもつロケット砲と電子
戦兵器の場所を探知するレーダーをケーブルでつなぎ同位置で運用
する必要がある。

もう1つが、ロ軍の集中場所を察知して、その個所の防衛を厚くし
て、突破されても次の陣地を構築して、そこで第2・3軍を抑える
ことである。

それでも、リシチャンスクの防衛を強化して、そこで反撃を開始す
ることになる。

一方、南部ヘルソンへのウ軍反撃は、ウ軍の報道管制で情報が出て
こないが、ヘルソンに向けて進軍しているようだ。

ザポリージャ方面では、ウ軍は偵察隊を出して、ロ軍の手薄な所を
狙って、攻撃をしている。ロ軍の主流部隊はセベロドネスク周辺に
持っていかれているので、手薄である。それはウ軍も同様で、手薄
であるようだ。

またハルキウ方面では、ボルチャンスクへのM777榴弾砲で攻撃でき
る範囲をロ軍は再度占領した。そこで攻撃を止めている。ボルチャ
ンスクはロシアからイジュームなどの方面への補給路である鉄道の
要所であり、そこの確保をロ軍は重要視している。

そして、リシチャンスクの防衛に重要なのが、英からのMARSと、米
からのHIMARSである。どちらも80キロ射程のロケット弾が使えるこ
とで、ロ軍203m自走カノン砲や電子戦兵器クラハ8を叩く手段がで
きることになる。この2つがウ軍の防衛を厳しくしていたので、重
要である。

ロ軍は、シベリアからT-62戦車BTGを南部に送り増強し、南部のTー72
戦車BTGを東部に送り、兵員は予備役の大量徴集で、国民総動員法の
発動をしないようである。

ロ軍は大規模な消耗を大量動員でカバーして、攻撃を続行するよう
であるが、その資源もあと数か月で尽きることになると英国情報機
関は見ている。

これに対して、ウ軍はロ軍の全縦深攻撃で人員の犠牲を出さない戦
術に変更して、電子戦兵器を叩きTB-2やSU-25攻撃機などの航空勢力
や砲管理システム「GISArta]などを利用して、ピンポイントでの攻撃
をして、自軍の損害なしに、敵をたたく戦法にしないといけない。

ロ軍は、電子戦兵器を除くとベトナム戦争当時の米軍であり、60年
以上前の誘導弾がない状態の軍隊で、絨毯爆撃や都市の無差別攻撃
など、当時問題になった方法でしか攻撃ができない。このため、火
力、兵力を大量投入して、力で押す方法になる。それでは損耗も大
きくなる。

ウクライナ戦争とは、近代兵器対60年代兵器の戦いでもある。

その上、ロ軍では、航空機の墜落事故が多発している。墜落したの
はロストフ州とベルゴルド州で訓練中のSU-25で、立て続けに墜落し
たが、とうとう、部品不足や航空機メンテができずに、機材トラブ
ルになってきた。ロ軍VKSの動きが鈍いのは、航空機メンテができな
くなっているからのようだ。

次に、ロシアのリャザンでIL-76大型輸送機の墜落で、エンジン故障
という。工作機械精度が欧米企業のメンテがないため出ずに、この
ような事故になっている可能性もある。

また、ロシアの自動車最大手「アフトバズ」が主力車「ラーダ」の
最新モデルを発表したが、エアバッグやABSなどの装備はないし、エ
ンジンの排ガスも、最新の規制には適合しないという。欧米日から
の部品供給がないことでこうなる。

ロシアでは、欧米の制裁で貧困層が14.3%も増加し、2090万人もの
食糧が買えない国民が出ているという。ロシアの庶民の生活では変
化がないが、欧米的な豊かな生活をする人たちには、大きな影響が
出ているようだ。このため、豊かな生活をする技術者やオルガルヒ
などの富裕層は、ロシアから出ていくことになる。

この状況で、リトアニアは、カリーニングラードへの鉄道貨車便の
通過を禁止したが、これに対して、ロシアのニコライ・パトルシェ
フ安保会議議長が、リトアニアに対抗処置を取ると警告した。

しかし、ロ軍は、ウクライナ侵攻で手一杯であり、かつ、リトアニ
アはNATO加盟国でもあり、ロ軍がリトアニアに手を出すと、NATO対
ロシアの戦いに発展する。これは第3次世界大戦になるので、できな
い。

カリーニングラードには、ロシア・バルチック艦隊基地があり、大
きな制約を受けることになる。バルト海の勢力図が大きく変わるこ
とになる。

この事態をベラルーシのルカシェンコ大統領は「リトアニアによる
カリーニングラード州の封鎖は事実上の宣戦布告である」として、
リトアニアに対する防備に集中しないといけないのでウクライナに
は出兵できないとプーチンに言っているようだ。ロシアの同盟国ベ
ラルーシも大変だ。ウクライナ国境には大量の木製の戦車を置いて
、いつでも攻撃が出ることを見せつけている。

反対に、ウクライナとしても心配な事態が起きている。フランスの
マクロン大統領など西欧諸国は、ウクライナがロシアとの交渉につ
くため、ウクライナをEU加盟候補国にした。まだ、マクロンの「プ
ーチン氏に屈辱を与えてはならない」という言葉が生きている。

フランスの選挙でマクロンの与党は過半数を取れずに、野党の主張
に配慮する必要が出ている。イタリアでは、与党ポピュリスト政党
「五つ星運動」が親ロ派と反ロ派で分裂したが、西欧諸国の足の乱
れが顕在化してきている。米国も同様であり、共和党内でトランプ
派が力を持ち始めている。

英国でも過去30年間で最大規模の鉄道ストライキが起き、インフ
レへの対応が、世界各国で国民の不満の原因になっている。この大
きな原因がエネルギーと食糧不足であり、ウクライナの小麦やロシ
アの小麦、天然ガスと石油の依存度が高いことによる。

この中、ドイツのショルツ首相は、ウクライナ復興に第2次大戦後
の「マーシャルプラン」と同様の大規模な資金援助が必要であり、
「何世代にもわたる課題」になるとしたが、ドイツが中心で進める
ようであり、ドイツが欧州の主役として出てきた。どちらにしても
、停戦の条件をウクライナと詰めることになりそうである。同時に
戦闘が続く間は、ウクライナを支えるという。

もう1つ、ロシアからの天然ガス供給をなくすというロシアの警告
に、西欧諸国は、慌てている。ドイツのハーベック経済相はロシア
とのガスパイプライン「ノルドストリーム1」について、7月予定
の点検後に稼働を再開するかは確信が持てないとしたが、ロシアは
保守部品がないことを理由にする可能性がある。

これに対して、ドイツは石炭火力発電所廃止の延期などで天然ガス
供給停止の事態に備える。

もう1つ、ドイツのショルツ首相は、欧州はロシアからの化石燃料
輸入への依存解消を加速させるとして、ノルドストリーム2でLNG運
搬船から天然ガスを引き込めるように改造するという。LNGシフトに
舵を切った。

このため、6月26日から始まるG7首脳会談で、米国LNGを中国が買わ
ない分を欧州に回して需要を賄うが、足りない分として、欧州は日
本・韓国に中東からの天然ガスの一部を譲ってほしいと依頼される
可能性がある。どちらにしても、早急に対応を取る必要は出てきた
ようだ。

欧州諸国がウクライナ支援を続けられるか否かは、冬に向けて天然
ガスの備蓄を積み上げられるかにかかっている。このため、日本も
応分の負担を受けるしかない。そして、日本は原発を再稼働して、
来年の冬を乗り切ることである。それしか、ウクライナ防衛戦争を
支援する方法がない。欧米日のような民主国は、国民の不満がある
と、政策を変えるしかなくなるからだ。

ロシアは天然ガスや石油設備のメンテができずに、減った天然ガス
を中国に優先的に供給するようである。石油はインドと中国に優先
的に供給するすることになる。

しかし、国際金融取引SWIFTへのアクセス禁止の制裁処置で、中印以
外のBRICS諸国との貿易が正常にできないので、プーチンは、西側諸
国が「金融メカニズムを利用」し、「自国でのマクロ経済政策にお
ける過ちを全世界に転嫁している」と批判しているので、ロシアの
石油輸出に支障がでているのであろう。

このような事態であり、新興5カ国(BRICS)の会議でも、習近平や
プーチンが欧米の経済制裁は世界経済の発展を妨げているという。
ロシアがウクライナへの侵攻を止めればよいのに、それは言わない
。さらに、「ロシアとウクライナ間の対話を支持する」方針を示し
たが、戦闘終結に向けた道筋の提示しなかった。

ロシアはルハンスク州の制圧で一応の目標は達したことになり、停
戦の方向に舵を切る必要がある。このため、BRICS諸国も巻き込み、
停戦協議をウクライナに要求していくことになる。

そして、早期に停戦ができないと、戦争継続で全縦深攻撃への対抗
処置を取り、近代兵器を持つウクライナに負けために、プーチンか
らFSBのボルトニコフ氏に替え、国内の混乱を抑えつつ敗戦を迎えて
、民主派のナワリヌイ氏に代えるしかないと、ロシア政府内部では
話をしているようである。どちらにしても、ロシアに勝ち目はない。

このため、中国も親ロ派の楽玉成外交部常務副部長を左遷して、ウ
クライナと話ができる環境を整えて、停戦交渉を促進したいようで
ある。このまま、同盟国のロシアが戦争を継続すると、最終的には
負けるとみているからである。

さあ、どうなりますか?



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