6234.次の世界はどうなるのか?



ウクライナ戦争がどこまで続くのか、見えなくなってきた。ロシア
軍がセベロドネスクを掌握して、ルハンスク州全体の支配を確立し
たが、ウ軍にも多連装ロケット砲などが供与されて、反撃に出ると
いう。ロシアは戦略的には負けている。今後を検討する。
                      津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、5月19日は31,253
ドルに下がり、27日は33,212ドルで、31日は222ドル安の32,990ドル
、6月1日は176ドル安の32,813ドル、2日は435ドル高の33,248ドル、
3日は348ドル安の32,899ドル。

5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比39万人増と、予想の
32.5万人を上回り、失業率は3.6%と3ケ月連続で横ばい、平均時給(
前月比)も0.3%増と堅調な内容となり、FRBの9月には利上げを停止
するという期待が揺らいでいる。

また、原油価格もOPECプラスの追加増産発表でも、120ドル/バーレ
ルと上昇している。原油が上昇すると、インフレは収まらない。

このことにより、3日は大幅安の展開になった。ブレナード副議長も
インフレのピークアウトはしていないので、9月に利上げを停止する
ことはないと、9月にも0.5%の利上げを表明していたが、2日は9月利
上げ停止という市場の思惑で大幅高になっていた。しかし、雇用統
計でその思惑も潰えた。

6月7月のFOMCの0.5%利上げは確定であるが、9月も0.5%利上げになる
ので、9月には金利が2%以上になる。このため、10年米国債金利も
2.9%と上昇して、1ドル130円に戻した。

その上、6月からQTも始まり、逆金融相場になる。業績相場への移行
もできない。その証拠が出てきた。ISM非製造業景況指数は、55.9と
2021年2月以来の低水準になり、前月の57.1から低下した。ISM製造
業指数は4.6ポイント低下し、2年ぶり低水準の54.5になっている。

このため、金融相場の巻き戻しが始まる。

このように金利上昇で景気は落ち始めている。このため、米国がリ
セッション(景気後退)を回避するのは困難になるとの見方が多数
出てきた。米銀シティグループのジェーン・フレーザーCEOや米
銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO、ゴール
ドマン・サックスGのジョン・ウォルドロン社長で、ダイモン氏は
「投資家は経済の「ハリケーン」に身構えるべきだ」と警告した。

しかし、F&Gインデックスは29まで戻している。5月12日の7から戻し
ている。

市場は、まだQEに期待をしている。SP500が3600Pまで下がれば、QE
が再度始めるとみている。

もう1つが、ウクライナ支援の軍事費が膨張して財政出動になる。
これに市場は期待している。

一方、中国は、上海のロックダウンを解除した。習近平主席と李克
強首相の経済運営方針が違い、習と李の派閥対立が激しくなってい
るようだ。

しかし、ロックダウンが解除されて、中国の工場生産は正常化され
ることで、日本企業の業績も回復するようである。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、5月27日は26,781円で、30日は587円高の
27,369円、31日は89円安の27,279円、6月1日は178円高の27,457円、
2日は44円安の27,413円、3日は347円高の27,761円。

日本株は、27000円を回復して、120日平均線より上になった。米国
株に比べて、好調である。この原因は、前回に述べたように、黒田
日銀総裁の金融緩和継続で金利の低く、日本人は従来、米株に投資
していたが、その米株が大きく値下がりし、金利が低いので、債券
や銀行預金には行かないで、日本株を買い始めたからだ。

個人の買いに引きつられて、海外投資家も2556億円の買越しになっ
ている。しかし、株価が高くなり、個人は1270億円の売越しと売り
になっている。しかし、海外投資家が買いに回ったことで、株価は
上昇し始めた。

海外投資家が買うのなら、当分、日本株は上昇方向である。

そして、コロナ明けのインバウンド需要期待、国内良好期待などで
、関連銘柄が大きく持ち直している。もう1つが、中国のロックダ
ウン明けで工場増産期待から、電子部品などの部品産業の株も上が
ってきた。

もう1つが、防衛費のGDP比2%まで増額するとの発表で、防衛関連企
業の株が上昇している。

岸田首相は、22年の年頭所感で、「新しい資本主義においては、全
てを市場や競争に任せるのではなく、官と民が今後の経済社会の変
革の全体像を共有しながら、共に役割を果たすことが大切」だと述
べたが、まだその全体像がボケている。

人口問題の解決と新技術開発支援、工場回帰支援に政府も関与する
必要があるが、人口問題は急務であるが、その当面の解決策である
移民・難民の受け入れがない。

安全保障での防衛費増額は、非常に良いと思うし、憲法の改定もし
て、専制国との戦いに備える必要がある。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナ東部での戦争は、ロシア軍の主力がセベロドネスクを把
握し、ウ軍は撤退した。しかし、ドネツ川西側の高台のリシチャン
スクで反撃に出て、セベロドネスクの2割を取り戻したという。

ロシア軍は、ポパスナ高地にサーモバリック弾の発射ができる多連
装ロケット砲TOS-1を置き、周囲のウ軍を攻撃している。サーモバリ
ック弾は、周囲の酸素を奪い取るので地下にいても酸欠で死ぬこと
になる。

このため、1日で100人の兵士が死んでいると、ゼレンスキー大統領
も発言している。よって、このロケット砲をウ軍は叩かないといけ
ないが、まだ、全部を排除できていないようである。

この高地の榴弾砲やロケット砲を潰すのに、M777榴弾砲を使うしか
ないが、安全な場所からの砲撃ができず、危険を冒して、高地に届
く25キロ以内で砲撃している。この距離だとロシア軍の榴弾砲が届
くので、両軍の砲撃戦になっている。ロケット砲は20キロ程度であ
り、届かない。

しかし、突入を繰り返したセベロドネスク攻略のロシア軍主力の損
害も大きく、攻撃力が弱くなってきたようだ。このため、ウ軍も反
撃ができることになった。

この状況で、空輸可能な80キロの射程距離があるM142高機動ロケッ
ト砲(HIMARS)4門を緊急でウ軍に供与されることになった。しかし
、射程300キロのM26ロケット弾(ATACMS)の供与はしない。ロシア領
内を攻撃できるので、ロシア軍を過度に刺激してしまうからだとい
う。

もう1つ、ウ軍に空対地ミサイル「ヘルファイア」搭載可能なドロ
ーン「MQ―1Cグレーイーグル」4機を売却する。これにより、
大幅な戦力アップになる。この攻撃機でロシア領内を攻撃しないと
いう覚書を取り交わすようで、米国はロシアの負け過ぎも警戒して
いる。

このように、ウ軍の攻撃力が増強されているのに、東部でも大幅に
攻撃力が落ち、4月上旬に任命されたばかりのロシア軍アレクサン
ドル・ドボルニコフ総司令官が更迭されたようで、陸空の連携攻撃
ができずに、陸軍の損害が大きくなり、その責任を取らされたとい
う。新総司令官はゲンナジー・ジドコ軍政治総局長であるという。

しかし、この問題の根本には、装備に問題があり、各部隊に暗号化
された無線機が必要であり、空軍パイロットとの交信ができないと
達成できない。

しかし、陸軍に暗号化無線機は配備されていない。配備したと思わ
れる無線機は、高級将校の汚職で闇市で売られてしまっている。

このため、現状では陸空連携攻撃はできるわけがない。今の無線機
で交信すると、攻撃位置がウ軍に分かり、待機したスティンガーミ
サイルで撃墜されるだけだ。

ということで、東部セベロドネスク攻撃をしているロシア軍の一部
で局地的な反乱が起こり、この反乱で攻撃力が落ちているようであ
る。この責任を問われたことが大きいはずで、空陸連携攻撃失敗は
見せかけであろう。プーチンは、6月12日の「ロシアの日」に勝利宣
言する予定が、できなくなる心配が出てきた。

一方、ロシア軍は、主力を東部に持って行ったことで、50年以上前
のT-62戦車を近代化改修して、ヘルソン地域に配備したが、ヘルソ
ン州での反撃をウ軍は開始した。このため、撤退するロシア軍は、
川にかかる橋を複数個所破壊したが、ウ軍はドニエプル川支流のイ
フレット川を渡河して、ウ軍は20キロ前進して、そこで停止した。

まだ、本格的な反攻ではないようである。補給路になっている高速
道路を守備するロシア軍を攻撃しないで止めた。M777榴弾砲や戦車
などの到着を待っているのであろうか。来るべき装備がセベロドネ
スク反撃に回された可能性もある。

ハルキウでは、ウ軍がロシア国境地域のロシア軍を叩いている。ロ
シア軍は防御一方である。ドイツから供与されたP2000自走榴弾砲が
活躍している。このため、徐々にロシア軍は後退している。

クビャンスク方面でドネツ川のルビージュネで渡河したウ軍も停止
していたが、体制が整ったのか、再度、攻撃を開始した。徐々に新
兵の訓練が終わり、前線に配備ができ始めているようだ。ロシア軍
はクビャンスクの陣地を強固にして、ウ軍の攻撃を待ち受けている。
ウ軍の損害も大きくなる可能性が高い。

ロシア軍も、戦死者数が少なくなり、無理な攻撃をしないなど、や
っと、この戦争に適合し始めたが、都市攻撃では大きな損害を出し
ている。ロシアは、戦争ではないので、国民皆兵の徴集はできない
で、兵員不足が深刻で、これ以上の攻撃ができなくなっている。

このため、ロシア軍内部や戦争推進派の間では「クレムリンが戦争
勝利のために十分なことをしていない」と、批判的な意見が増え続
けている。戦争宣言をして、国民皆兵で徴兵を行い、ウ軍に勝つべ
きという。この強硬派の裏にパトルシェフ安全保障会議書記がいる。

一方、ブリアート共和国の地方議会では反戦的な動きもあり、国内
分裂が激しくなっている。地方の兵徴集で戦場に行き、死亡する人
が増えて、これ以上の死亡者を出さないように戦争を止めるべきと
いう。地方の貧しい若者の犠牲が大きく、ロシア人以外の民族の犠
牲が大きいようである。

このため、ロシア政府は、マスコミに対して「戦争が100日目である
ことや、いつまで続くのか」の報道を禁止した。世論の反戦的な行
動を抑える必要があるためであり、反戦的な世論の高まりに危機感
を持っているようだ。

そして、ロシア軍のパイロット不足は深刻で、5月27日にウ軍MIG29
がロシア軍SU-35を撃墜したという。戦闘機の性能では、勿論4.5世
代のSU-35の方が数段上であるが、訓練度合いが違い、ウ軍MIG29に
負けたようである。

しかし、資金的には十分あり、ロシア制裁でも軍資金37兆円が手に
入るようである。今年の石油・天然ガス収入は約2850億ドルに達す
る見通しで、戦争継続は資金的には問題なくできるようだ。

軍備もソ連時代の大量な武器、例えばT-62戦車などを倉庫から出し
て利用すれば、性能は低いが、戦争の継続はできる。しかし、精密
誘導ミサイルはなくなり、敵の陣地や都市を完全に破壊するしかな
い。

その上に、中国の習近平は「経済制裁に触れない形で、ロシアへの
経済支援策を探すように」命じたようだ。ということで戦争継続力
はある。

しかし、プーチンが4月にガンの治療を受けたとCIAは明らかにした
が、国内世論の動向からプーチンも停戦を視野に入れた可能性が出
てきたようだ。

一方、ウ軍の装備は、欧米から供与されて、徐々にロシア軍を仰臥
することになる。しかし、敵の陣地に攻撃する場合は、戦死者数が
大幅に増加してくるし、長期の戦争には資金が必要であり、その調
達が心配である。長期の戦争で世界での関心がなくなるからだ。

このため、ウ軍としても、短期決戦が必要になる。その後、停戦し
ないと、資金の枯渇と、民間人と軍人の死亡者数が大きくなる。

3.戦争後の世界はどうなるのか?
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戦争は、ロシアが戦略上、世界から孤立しているので負けることに
なるが、ウクライナ経済も疲弊しているので、世界の関心がなくな
ると、戦争継続ができなくなる。

ということで、どのように戦争を止めるかであるが、ロシア国内の
強硬派が強いと戦争拡大になる。一方、地方議会を中心に反戦機運
が高まる。ロシア国内世論の動向が重要なことになっている。

一方、ウクライナ側では、米国の政治情勢が大きく関わることにな
る。特に共和党トランプ派が力を持つと、米国一国主義で、ウクラ
イナ支援を止める可能性がある。共和党内のペンス氏が率いる主流
派とトランプ派の動向が、今後の米国支援がどうなるのか、非常に
心配である。

11月に中間選挙が迫り、インフレ放置の民主党が負ける可能性が大
である。バイデン大統領支持率は41%と低く、国内分裂状態である。

共和党でも主流派とトランプ派がいて、11月の選挙で、どちらの候
補が共和党の候補になるかで、違うことになる。そして、ここで共
和党主流派+民主党が議会多数であっても、2024年に大統領選挙が
ある。

トランプ前大統領が立候補することは、ほぼないが、代理の候補を
立てることはありえる。イーロン・マスク氏がツイッターを買収し
て、言論の自由を保障するというが、これはトランプ氏の復権にも
繋がるので、民主党を中心にマスク氏叩きが起こっている。

米国のローカル人とグローバル人の分断は激しくなり、近い将来に
は世界の指導者ではなくなる可能性がある。この米国分裂の状況で
誰が専制国との戦いで、世界を引っ張っていくのか、非常に恐ろし
い問題になる。

ロシアをけん制するドイツと英国、中国をけん制する日本と英国と
2つの専制国近傍の民主国が頑張るしかないとみる。日本、ドイツ
と英国の3ケ国である。

このため、ドイツもGDPの2%を防衛費にすると言うし、日本も防衛費
を徐々に2%にする。新世界秩序構築は、日独英の3ケ国が中心にする
しかない気がする。

もう1つ、この専制国との戦争は、ローカルとグローバルの戦いで
もある。米国内もローカルとグローバルの戦いで、トランプ派のロ
ーカル勢力が勝つと、グローバル人はローカルな米国からグローバ
ルな別の国に移動することになる。

その移動先として、日本がなれるように、グローバル化するべきな
のである。日本がグローバル人を受け入れるなら、ロシアのグロー
バルな人たちや中国のグローバルな人たちも受け入れて、日本を経
済・外交・技術の大国にすることである。

これが完成すると、名実ともに日本はグローバル指導国の1つにな
れるはずだ。それしか、日本と世界の進む道はない。専制国に勝つ
道でもある。

さあ、どうなりますか?



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