6231.米国利上げで日本はどうなるのか?



米国の利上げで円安になる。米国はエネルギーも食糧も輸出できる
し、防衛産業も強い。米国が、インフレで景気後退になることはな
い。日本は円安で米国への輸出が増えることになる。そのような状
況での日本再生を検討する。          津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、3月8日は32,632ド
ルまで下落したが、5月6日32,899ドルで、9日は653ドル安の32,245
ドル、10日は84ドル安の32,160ドル、11日は326ドル安の31,834ドル
、12日は103ドル安の31,730ドル、13日は466ドル高の32,196ドル。

5月11日の4月米CPIは8.3%で、予想の8.1%より高い数字になった。3
月CPIは8.5%より低いが、FOMCで0.5%利上げを6月、7月にも行うこと
がほぼ確実になった。物価上昇を抑える金融引き締めが緊急的に行
われることになる。

このため、株価は5月5日から連続して下落して、3月8日の32,632ド
ルより低くなってしまった。年初来安値を更新し続けている。

F&Gインデックスは6まで低くなり、市場参加者はパニックを感じる
レベルになってきた。このところの株価下落は、追証の嵐になり、
投げ売りが出ているからである。また、益出しのためにマイクロソ
フトなどの優良株も下落している。

3月に株価維持のPKOをしたことで高止まりし、4月に株価が下落して
いる。このPKOをいつ再度実施するのか、市場参加者は見ているし、
この状況で、パウエルFRB議長もハト的な発言をした。

米国はウクライナ戦争で景気後退はしないはず。エネルギー価格は
高騰し、小麦価格も上昇し、防衛産業も強いので、米国経済には追
い風が吹いている。4月の財政収支は3082億ドル(約40兆円)の黒字
であり、頷ける結果になっている。

しかし、インフレが高まって、利上げを行うのでグロース株が下落
し、追証の嵐でレバレッジを掛けた投資家は、振り落とされたので
、底値になっている。

そろそろ、買い時が来たため、13日は反発した。この反発が続くか
どうかのようである。

中国はゼロコロナ政策を継続する方向であり、日本企業の上海工場
は全面的に停止している。北京も一部ロックダウンになり、こちら
も全面ロックダウンになる可能性がある。

欧米企業は、このロックダウン長期化で、撤退の可能性が出ている。
日本企業は、まだ撤退を志向しないが、どこまで耐えられるかでしょ
うね。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、5月6日は27,003円で、9日は684円安の26,319
円、10日は152円安の26167円、11日は46円高の26213円、12日は464
円安の25748円、13日は678円高の26,427円。

日本株も米株の下落に引きずられて、下落している。3月16日以来の
26000円割れになった。それと、ソフトバンクGの決算が出て、1兆7
千億円の赤字になり、N225のEPSは12倍台から悪化が予想できる。

しかし、2022年3月期連結決算、旧東証1部上場企業891社の当期利益
の合計は前年比31・8%増であり、1兆7080億円の赤字計上のソフト
バンクグループを除くと81・6%増と、大幅に伸びた。このため、来
季利益を減額予想で出す企業が多く、または予想未定の発表も多い
。しかし、増益企業も多数あり、その株が下落するなど、おかしな
ことになっている。米株下落に引きずられているようだ。

このため、米株が上昇になったので、13日は大幅な上昇になった。

しかし、岸田首相が英国訪問時、シティーで講演して、「インベス
ト・イン・キシダ」と言ったが、松野官房長官が金融所得増税を行
うと、海外投資家の期待を裏切る発言があり、株価の重しになって
いる。

2000兆円の金融資産から株式への投資にどのように誘導させるのか
の政策がないように見えてしまった。金融所得課税強化はするが、
金融資産から株式投資への優遇処置策も行うとして、期待をつなげ
る必要があった。

岸田首相には、投資家心理が分からない可能性があるし、周りの政
策助言者にも投資感覚がないような気がする。株価の大幅な上昇に
はならないかもしれない。

しかし、米国株下落で米債が買われて、10年国債金利が2.88%まで下
がり、ドル円の金利差が縮小したことで、1ドル127円に下落した。

円安が止まり、米株が底打ちで、日本株も底入れする可能性が高い
ようにも感じる。どこまで反発できるかでしょうね。

ソフトバンクGの決算はあるが、日本株は、PERが12倍台と割安にな
っている。戻りを試す方向のようである。

2.ウクライナ戦争の推移
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ウクライナ東部での戦争は、ウ軍が反転攻勢に出て、ハルキウ州全
体から、ロシア軍を追い出した。イジュームへの補給ラインの途上
にある国境の街ボルチャンスクまで15KMのところまで迫っている。

ロシア軍は、撤退で橋を壊しドネツ川に防御線を引き、そこで食い
止めたいようであるが、交通の要所であるボルチャンスクはM777榴
弾砲の射程範囲になり、補給路である鉄道線路や駅を砲撃できるこ
とになった。

このため、ドンバスに広く展開するロシア軍のメインの補給路が使
えず、補給が細って、ここに展開する20BTGの約2万人の軍の食糧も
補給できなくなっている。

その1つ、スラビアンスクに進撃していたBTGがドネツ川を渡河しよ
うとしたが、戦車などを破壊されて、車両を捨てて、撤退したよう
である。ウ軍は、複数の榴弾砲を個別に配置して、それぞれをデー
タリンクし統合して攻撃したことで、ロシア軍から見ると全方向か
ら車両に向けて弾が飛んできた状態になったようだ。

しかし、ドネツ川渡河失敗のイジューム突出部のロシア軍は、依然
川の手前に留まっている。この状況でロシアの潜水戦車部隊を投入
し、渡河し再度進撃するようである。が回り込んでイジュームを目
指して進撃しているウ軍に補給線を切られる可能性がある。

もう1つ、東部前線では人員の交代もなく、食糧や衣料などもなく
、士気は低下して、上部の命令に逆らうような部隊も出ているよう
で、BTGレベルでも前進命令を無視するようだ。

食糧もなく弾薬の補給もなし、ウ軍の精密な攻撃を見ては、兵が言
うことを聞かない。というように、東部に展開するロシア軍は、崩
壊する可能性が高くなっている。

ロシア軍全体でも、苦戦の情報が伝わり、頼みとしたシリアやアフ
リカの雇用兵の供給も最近では途切れ、兵員の補給もままならず、
戦争ではないので国民の徴用もできないし、ロシア兵の一部が除隊
を申し出ても、それを阻止することもできない。シリア展開のロシ
ア兵を全部ウクライナ戦争に投入したので、これ以上の兵員増強も
できないことになってきた。

このように、全体的な攻略失敗から、ゲラシモフ総参謀長が解任さ
れたようである。東部のイジュームを訪問した理由は、早期に東部
占領ができない時には解任すると言われていたことが明確化した。

一方、黒海では、スネーク島の攻防が広げられている。ウ軍はここ
を奪還して、対艦ミサイル「ネプチューン」でクリミア半島の黒海
艦隊を攻撃する計画であり、ロシア軍も必至に防衛しているが、TB2
の空爆で大きな損害が出ている。そして、「ネプチューン」で、黒
海艦隊の後方支援艦「プセボロド・ボブロフ」を撃沈したとウ軍は
発表した。しかし、逆にウ軍の上陸作戦も阻止されたようである。

ウ軍の人員、兵器の消耗も大きく、交換部品も底を着き、MIG29の稼
働もギリギリになり、F-16などの米国製戦闘機を要求してきた。ウ
軍も長期戦を見据えて、体制をロシア製武器から欧米製武器に置き
換える必要になってきたようだ。チェコは義勇兵を100名ウクライナ
に送るようであり、人員の増強も欧米諸国からに広がり始めている。

この全体状況で、5月9日の対独戦勝記念日で、プーチンは、戦争に
もせず、勝利宣言もせず、航空機の参加もなく、ベラルーシのルカ
シェンコ大統領など外国の首脳もゼロで、今後の計画も示せなかっ
た。行き詰まりが色濃く出たパレードになった。

この状態で、南部ヘルソンからロシア軍はオデーサ方向に攻撃をし
ているが、こちらは補給もあり、東部より状態は良いようである。
ウ軍主力も東部戦線に投入されているようであり、こちらは手薄な
のかもしれない。

プーチンも最後の望みとして、ロシア軍をトランスニストリアに送
り込み、ウクライナ西部の補給路を切断したいようである。このト
ランスニストリアには、現在ロシア軍1500名が駐屯している。
しかし、このロシア軍では、ウクライナ西部を攻略できないので、
ロシア軍を大量に送り込む必要がある。

しかし、そのような作戦は、ウ軍主力が南部に投入されれば、泡と
消えることは間違えない。しかし、そこにしか、特別軍事作戦での
明かりが見えないようである。

逆に、ゼレンスキー大統領の「クリミア奪還は近い」発言で、クリ
ミア半島では空港が閉鎖され、夏の観光客は半分以下になっている。
どんどん、ロシア人たちは逃げ出し始めている。地元民にZのステ
ッカーが配られたが貼らないし、Zのステッカーが貼られている車
にペンキを掛けたり、タイヤをパンクさせたりしているようだ。

もう1つ、プーチンの顔には死相が出ている。対独戦勝記念日の演
説を聞くと精彩がないし、甲状腺がんとかパーキンソン病とか白血
病とかの噂も出ている。プーチンが死ねば、次のトップは即座に戦
争を止めることができる。すべてをプーチンの失策として欧米諸国
との関係正常化が図れるからである。

そして、ロシア国内を見ると、トムスク、サラトフ、キーロフ、マ
リエル州の4人の知事が辞任の意向を示し、他にも複数の知事が辞
任の意向で、経済制裁の影響で地方経済が苦しくなり、ウクライナ
侵攻の不満もあり、辞任するようである。これに対して、プーチン
政権は必至に留任を説得しているようである。

戦争支持率も従前85%の支持率が75%まで落ちている。ウクライナで
の戦争状況をロシア国民は知らされていないにもかかわらず、徐々
に敗退していることが知れ渡り始めているようである。

その状況で、政府系報道機関にプーチン批判をする記事が出て、す
ぐに削除されたり、テレビ討論でも軍事専門家が、ウ軍が持つ欧米
兵器にロシア軍は勝てないと明言したりしている。この討論会では
、国民の反対運動に対して、大粛清をする強い指導者が必要との発
言もあり、国内での反戦運動が簡単には抑えられない状態になって
きたことを示しているようだ。

この上にフィンランドとスウェーデンが中立からNATO加盟に転換し
、英国との防衛相互協定も結び、ロシアと西欧の中立地点から、西
欧寄りにシフトした。これに対して、ロシアは軍事的対応も視野に
制裁をするというが、ウクライナ戦争で手一杯な状態で、どうフィ
ンランドに対応できるかでしょうね。

ロシア国内、国外でも戦争継続に疑念が出ているようである。

この状況で、米国のオースティン国防長官とロシアのショイグ国防
相は、ロシア軍のウクライナ侵攻開始後、初となる電話会談を行っ
て、オースティン氏はウクライナでの即時停戦を求めたが、進展は
なかった。まだ、ロシア軍は継戦のようである。

この戦争を止めるには、戦争に敗北するか、国民の所得が著しく減
少するか、政権内部の分裂しかないが、今は戦争を継続するしかな
く、プーチンの病死が早く来ないかと思う次第だ。

プーチン存命で戦争の敗北が近くなると、核兵器の使用や化学兵器
の使用などの手段を使う可能性も否定できない。早くプーチンの死
を願うしかないようだ。

3.日本再生
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前回は、日本の位置づけをローカル国家からグローバル国家にする
べきだとしたが、今回はもう少し具体的に述べたい。

岸田首相の英国での演説「インベスト・イン・キシダ」は、何を持
って言ったのか不明になっている。金融所得増税を行うというだけ
で、金融資産を株式投資へ導く政策を何も言わない。これでは、何
をもって、投資を呼びかけたのか不明になってしまった。

安倍元首相の「バイ・マイ・アベノミクス」では金融緩和をするの
で買いだと述べたが、今回は投資理由がない。

それと、日本経済復活で自民党は、田園IT化構想やエネルギー政策
などを出してきたが、視点が違う気がする。日本が先進国最先端に
いるような政策も必要であるが、それより、円安で生産コストが低
くなるので、普通の産業を日本に戻す方が先である。

もう1つが、イーロン・マスク氏も言うように、日本の人口が減っ
ている問題で一番緊急の政策課題であり、その政策がないと、日本
復活はない。

むしろ、日本消滅になる。人口減少で労働人口が減るのに、高齢者
が増加して、年金負担が重く、収入に占める税金の比率が40%以上に
もなっているので、労働人口層の消費が増えない。子供も作れない
という。

賃金水準も低下している。正社員の給与は上げているが、アルバイ
トや契約社員の賃金はそのままであり、正社員の数を減らして、そ
の分契約社員を増やすことで、全体賃金水準を下げている。このた
め、貧富の差が拡大しているし、契約社員など非正規社員数が増加
して、日本全体では、貧困化が進んでいる。

その上、日本の労働人口も減っている。賃金水準を上げるには製造
業を日本に戻すしかない。その上で工場を回すためには労働人口を
増やすことである。

経済安保の視点で、海外工場回帰を勧めても、労働者の確保ができ
ないと生産ができないことになる。工場も非正規社員で回すことに
なるが、それだけではノウハウの継承ができなくなる。

ということで、工場労働者の半分近くを正規労働者で維持して、そ
のほかの非正規社員を海外難民労働者で補うしかない。

このため、人口増加の政策が必要であり、難民を積極的に入れる政
策や、貧困な家庭への支援、特に母子家庭への積極的な支援が必要
である。子供がいることが、家庭において非常に経済的に助かる状
況を作り、貧困層でも積極的に子供を作れるインセンティブを増や
すことである。

「インベスト・イン・キシダ」の政策としては、金融資産から株式
投資への優遇策で、値上がり益か配当利回りを上げるしかない。企
業の先行投資に優遇処置をするとか、配当性向を上げた企業の税金
を減額したりして、投資企業の魅力を増すことである。

このような処置をして、日本株の上昇で、日銀やGPIFなどの持つ株
の価値を上昇させ、減少する年金資金を生み、国債償却の費用に充
当して、国家財政でも利益を回収できるようにすることだ。日銀の
手持ち株を売る必要があるが、大幅な上昇時には少しずつ売ること
である。

そして、日銀は政府に売却益を渡して、日本全体の借入金を減らす
ことで、国家財政の安定化を目指すことである。

円の価値が下がり、その分、株の価値が上がり、その売却益を日本
政府が利用しない手はない。

さあ、どうなりますか?



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