6227.「戦争の時代」の経済理論



ウクライナ戦争で「戦争の時代」になった。戦争の時代は、それに
適合する経済になる必要がある。それを検討する。津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、3月8日は32,632ド
ルまで下落したが、4月8日は34,721ドルで、11日は413ドル安の
35,308ドル、12日は87ドル安の34,220ドル、13日は344ドル高の
34,564ドル、14日は113ドル安の34,451ドル。

4月11日週は、ウクライナ戦争も利上げや資産売却も織り込み、5月
のFOMCを待つ状態である。米10年債利回り2.83%と米国債利回りが
上昇すると米株価は下げ展開になる。長期金利3%の声も聞こえる状
態になっている。NASDAQなどのグロース株は今より下げることにな
りそうである。事実、半導体株は好業績にも関わらず、下げている。

金利が3%になると、債券の方が利回りが良くなり、米株全体が株安
にもなる可能性があり、注視が必要である。しかし、4月18日になる
と納税申告も終わり、新しい投資に投資家が向いてくるので、4月後
半は上昇しやすいとも言われている。

3月CPIは8.5%と上昇した。これにより、戦争によるインフレをFRBも
警戒することで、3回以上の0.5%利上げになると市場は覚悟し始めて
いる。戦争よるリセッションの可能性もあることでワーセッション
なる言葉も出てきたが、これはおかしい。

このウクライナ戦争は長期化することで、世界にも大きな影響が出
てくる。この影響を最小限度にとどめるための施策が必要な「戦争
の時代」が到来した。このため、米国も戦争経済に移行することに
なる。日本も早く戦争経済にシフトすることであるが、その議論が
ないのが、心配である。

それと、フィンランドやスウェーデンもNATO加盟機運になり、戦争
による世界の二分化が進むことになる。中国への経済制裁が徐々に
議論されてきている。

中国は、ゼロコロナ政策で上海をロックダウンし、続いて西安をロ
ックダウンにしている。45都市でロックダウンが行われ、対象者が
3億7300万人に上るという。このため、中国経済も落ち込み、利下げ
を行う事態になっているが、3月の製造業生産高は増えている。この
原因は後で述べる。

この観点から見ると、中国も世界もリセッションの方向でもないよ
うにも感じる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、4月8日は26,985円で、11日は164円安の
26,821円、12日は486円安の26,334円、13日は508円高の26,843円、
14日は328円高の27,172円、15日は78円安の27,093円。

11日の週は、27000円台を回復した。ドル円は126円台になり、円安
が進んでいる。黒田日銀総裁は、それでも金融緩和を続けるという
ので130円までには確実になるようだ。

鈴木財務相は、悪い円安との認識を持つが、金利が上昇すると国債
費が財政を圧迫するので、それもできない。為替介入という手があ
るが、長くは続かない。米国の利上げで金利差は拡大するので、円
キャリートレードが起こり、円で借りて世界で運用すると、当分円
安は進むことになる。

電気代も上がり、エネルギー価格が上昇し、食料品の価格も上昇し
て、円安であることもあり、貧困層は困窮化が進むことになる。こ
れへの対応をFTなども戦争経済に移行するべきという議論が起きて
いる。この戦争経済については、後に議論する。

2.ウクライナ戦争の推移
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徐々にロシア軍の欠点が見えてきている。敵探査能力の欠如、通信
環境の不備、現場での三軍連携ができていないことであり、この欠
点をどう克服するのか、見えていない。

ウクライナ軍は、NATO軍と情報連携して、ロシア軍の動きを把握し
ているが、東部では把握できないでいる。このため、ロシア空軍機
の制空権が確立され、空爆ができるようである。

しかし、露巡洋艦「モスクワ」が、ウ軍の対艦ミサイル「ネプチュ
ーン」により沈没した。この艦は防空レーダーでウクライナ南部を
監視して、ウ軍の航空機に対する防御をしていたが、この機能をな
くした。

ということで、英国供与の対艦ミサイル「ハープーン」を使う必要
もなく、自国のミサイルで戦果を挙げた。露黒海艦隊の船はウクラ
イナ沿岸に近づけなくなった。

また、これにより、南部でもロシアの航空優勢がなくなり、南部オ
デッサ港の攻撃が難しくなったようだ。

この中、東部へのロシア軍大攻勢が始まると欧米情報機関が予測し
ているが、その攻撃を邪魔するべく、ウ軍は、ロシア国内にも攻撃
をしているようである。この攻撃は、中距離榴弾砲でおこなうしか
ないはず。鉄道の爆破は、米英宇の特殊部隊が行ったとされている。

東部でも徐々に、ウ軍は中距離砲で攻撃に転じているようだ。ロシ
ア軍は犠牲を出しても、大軍勢で攻めるしか手がないようである。
ということで、再度、キエフ侵攻と同じようなことになりそうであ
る。

ウ軍もそのようにするためには、東部での監視レーダ網の構築が必
要である。NATO軍のAWACSレーダーは東部まで届かないので、ドロー
ン搭載レーダーという手もあるが、大型のドローンでないと難しい。

NATO軍のAWACSがウクライナ上空まで来て、東部も監視することだと
は思うが、ウクライナ南部を監視していた露巡洋艦「モスクワ」の
沈没で、飛行可能となったような気もする。

ロシアは、米に武器支援の停止を要求して、要求を受け入れないな
ら「予測不能な結果招く」と脅した。

そして、東部でのロシア大攻撃でも成果が出ないと、本当に戦術核
使用の可能性が高まることになる。

第3次世界大戦にならなければよいと願うしかないですね。もし核使
用なら、NATOは参戦するが、その時、中国は参戦するかどうかで、
世界大戦になるかどうかが決まる。

中国が参戦しなくとも、米軍はロシア参戦になる。在日米軍はシベ
リア出兵ですかね。自衛隊は、後方支援や北方四島、樺太などの守
備などに回ることになる。そうなってほしくないが可能性はある。

3.「戦争の時代」の経済理論
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戦争になると、ある国の生産能力が落ち、かつ、軍事・難民などの
消費が増えることになる。このため、供給力が落ち、需要は拡大す
るので、戦争当該国以外では、景気が良くなるはずだ。

今、経済学者・評論家は、世界がリセッションになると、不景気に
なると騒いでいる。それは間違いだ。どうして、戦争特需というこ
とを見ないのか不思議である。戦争が始まって以来、現在までに米
国は50億ドルの兵器をウクライナに供与している。

対戦車ミサイルのジェベリンは、1発1600万円もするが、5000発以上
も供与している。そのジャベリンを1ケ月で400億円以上も使っている
計算になる。

というように戦争は、当事国にとって、非常にカネのかかる行為で
ある。T-72やMIG29を出した東欧諸国に代わりの米国製戦闘機や戦車
を安値で渡している。米国軍の装備から出したので補充のため、国
防総省はメーカーを呼んで、増産の指示を出している。

侵略戦争を起こしたロシアより、ウクライナを助ける欧米の方が最
新鋭兵器なんでカネを使っている。戦争は最大の公共事業である。
この効果は絶大だ。

米国は、現在までの供与総額0.5兆円であり、欧州諸国も0.2兆円程
度の供与をしている。まだ、2ケ月ですから、年間では5兆円以上の供
与になるはず。

このため、米国では、財政拡大で国債買取の金融緩和を行い、それ
を中和するために大幅な利上げになる。長期国債金利も上がること
になる。FRBは、今の内に資産縮小をしないと資産が大幅に増えるこ
とが予想できるので、5月から資産売却としたのである。近い将来は
資産が積上がることになる。年末までには株価も元に戻すはず。

別の見方をすると、ウクライナのGDPは1,555億ドルで20兆円であり
、IMFによると、この半分がなくなる。人口4,159万人で500万人が他
国に避難している。ロシアのGDPは14,785億ドルで177兆円でこの20%
がなくなる。ということで、35兆円と10兆円の45兆円の穴が開く。
この穴埋めを世界が行うとみるべきである。2国以外での経済効果は
大きいとみるべきだ。

ということで、軍需企業だけではなく、食料品、衣料品など多品目
の供給が必要であり、これだけの追加供給の必要が出て、米日欧な
どの多くの企業に大量のカネが来るはずだ。

ロシアサイドでは、中国企業やインド企業に、大量のカネがバラか
まれている。このため、中国もインドもロシアを非難しないのであ
る。この両方の経済圏での経済効果は大きい。特にロシア経済圏の
効果が大きいので、発展途上国や新興国は群がる。

今までのグローバル経済では、逆で世界全体で生産力が上がり、消
費は一定なので、供給>需要になり、コストの安い国に生産が移り
、このためデフレになっていた。

しかし、戦争になると、逆で供給<需要となるので、インフレにな
るので、物価高騰を抑えるために、自国の安定的な供給が必要にな
る。フェーズが移ったのだ。この指摘をしないのは、経済学者の怠
慢だ。

このため、戦争の時代は、この供給<需要の状況を見越した経済対
策を打つ必要がある。グローバル経済の時代は、供給力を削減する
ために価格競争をさせて、工場を減らす必要になる。このため、自
由化が必要で価格競争させることが正解になる。

しかし、戦争の時代は供給<需要になり、供給力を上げる必要にな
る。この時は、安定供給の方が正解で、自由化は間違いになる。

戦争の時代になり、本格的な統制経済の時代になったのである。こ
のコラムでは、前から統制経済になるとしてきたが、とうとう、そ
の時代が来たようである。

このため、供給安定のためには、価格を自国のコスト水準まで上げ
て、自由競争ではなく、安定供給のために寡占化させることが正解
になる。電気の小売り自由化を即座に止めて、九電力会社の地域優
位を復活させる必要がある。

ベンチャー電力企業が小売りするなら、電力を自前か再生エネルギ
ー企業と個別契約して、小売り電力と自前電力が等価までしか小売
りを認めないことで、自由卸市場電力は短時間の不足分しか買えな
いようにするしかない。

その上に、九電力会社の原子力発電を再稼働させて、地域優先で電
力の安定電力確保を義務付けることである。または、小売りの自由
化をなくしていくことだ。戦争が続く限り、安定供給力重視の政策
で行くことである。

その他のエネルギーも供給を増加させることである。太陽光発電、
風力発電などの一層の拡充が必要である。石油やLNGなどの輸入は、
公的企業が一括で行うことである。その企業を政府が統括して、価
格をコントロールするしかない。

木材も足りない。国内の林業を活性化させる必要がある。国内林業
を育成することである。若者を都市から山に呼び戻すことである。
機械化と林道の整備が必要であり、木材工場も必要になる。

そして、輸入木材も価格管理するべきである。安定供給するために
は、輸入木材に国内木材と同価格になるようにするしかない。勿論
、木材切り出しなどの合理化・機械化を行い、価格を下げる努力を
しても埋められない部分の価格差を無くすことである。

食糧も同じであり、供給力の拡充が必要であり、安定価格制度を作
り、耕地面積の拡大と機械化による収益の拡大を政府が支援するこ
とである。補助金ではなく、広大な耕作面積を容易に確保でき、機
械化投資の支援を行うことである。

海外から輸入する食料品は、国内生産価格より安いなら、差額分を
政府が逆ザヤになる時に補填のために、貯蓄することである。物価
統制の仕組みを作り、安定供給と価格安定を優先に経済政策を打つ
ことである。

もう1つ、円安の時代になった。戦争と円安で、工場の日本回帰を
促進する必要がある。このためには、労働者不足解消が必要であり
、このためには、ミャンマーやウクライナ、ベラルーシ、ロシアな
ど専制的支配者と専制主義国からの攻撃から逃げる人たちを、優先
的に日本に来てもらえる環境を整える必要がある。難民支援を積極
的に行うことが日本の問題解決にも役立つことになる。

この人たちとともに、高学歴の人たちも入ってくるので、この人た
ちが日本で企業を起こすための資金も集められる仕組みが必要であ
る。英語環境を整える必要もある。日本は安全であり、環境を整え
ると、多くの人たちが日本を目指してくることになる。

東京を国際都市にするという構想は、進めるべきである。観光とし
ては、多くの地点が手を挙げているが、ビジネス環境は東京しかで
きないかもしれない。

しかし、文化的な違和感がある人たちは難民でも入れてはいけない
。イスラム教文化と日本の文化は大きく違い、文化摩擦が起きるこ
とになる。このため、仏教国やキリスト教国の移民難民を受け入れ
ることである。

円安の時代では、インバウンドも有望である。観光資源が豊富にあ
り、日本人の感覚やおもてなし力は高いレベルにあるからだ。

円安と「戦争の時代」に合う経済政策が必要であり、その構築を早
期にするべきである。しかし、統制経済化するのは、世界的に供給
が足りないものだけである。G7としての地位を守るために、自由貿
易を堅持することは国益上、必要である。

この体制は、民主主義国と専制主義国との戦争が続く間、続くこと
になり、相当長期になると思われる。民主義国のリーダーとしての
地位を確保する必要にもある。

さあ、どうなりますか?



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