6225.新世界秩序に向けて



ロシアはウクライナ侵略戦争継続のためにラブロフ外相が、中国な
どを訪問して、世界秩序変更を述べている。しかし、ロシアの思惑
とも違う新世界秩序の方向に動き始めた。その検討。津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、3月8日は32,632ド
ルまで下落したが、25日は34,861ドルで、28日は94ドル高の34,955
ドル、29日は338ドル高の35,294ドル、30日は65ドル安の35,228ドル
、31日は550ドル安の34,678ドル、4月1日は139ドル高の34,818ドル

3月8日から順調に株価は上昇している。4月1日の雇用統計も 43.1万
人増、失業率3.6%、労働参加率62.4%、平均時給(前年比)5.6%と予想
値を同じ程度であり、5月のFOMCでの0.5%利上げの予想は持続した。

しかし、米ISM製造業景気指数は、3月57.1(前月の58.6)と低下し
た。しかし、指数は50が景気拡大・縮小の節目であり、米経済の
11.9%を占める製造業の拡大を示している。

このような指標を受けて、4月1日の株価は上昇している。

3月8日からPKO部隊の裏PPTが始まったが、このPPTも終わったようで
、この一週間、思ったほどには株価は上昇していない。

その上、2年債と10年債の金利逆転が起きていて、逆イールドが発生
して、市場関係者は、1年以内に景気後退が起こるのではないかと心
配している。しかし、ゴールドマンサックスもパウエル議長も否定
している。

インフレになると、金融緩和はできないので、景気維持が難しくな
る。インフレ防止から金利を上昇させると、株価の暴落になる。

このため、ブレパン・ハワード氏は、インフレが1970年の再来とな
ると予測して、このインフレが暴走して、それを抑えるには、金利
20%という高金利にする必要があるという。

1970年のようなことはできずに、FRBは何もできなくなる可能性があ
り、インフレ暴走で、現金を持つことは、資産維持の上で好ましく
ないことになるが、株価も景気後退で大暴落する可能性があり、資
産維持ができない。

その上にウクライナ戦争で、原油価格や穀物価格も上昇しているの
で、益々ドルなどの物に裏付けられていない通貨は、価値の維持が
難しいことになっている。

このため、ドル基軸通貨体制の変更が必要になっている。それが新
世界秩序変更のトリガーになる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月9日は
24,717円の底値になり、25日は28,149円で、28日は205円安の27,943
円、29日は308円高の28,252円、30日は225円安の28,027円、31日は
205円安の27,821円、4月1日は155円安の27,665円。

3月9日から株価は上げてきたが、今週は配当権利落ちもあり下げた
。株価は中国PMIが49.5となったことで大きく下げる局面もあった。
中国は「ゼロコロナ」政策で上海もロックダウンになり、経済活動
が制限されている。

それと、世界が利上げに動く中、日銀は金融緩和のままで、黒田ラ
インと言われる125円まで一時円安が進み、鈴木財務相の円高けん制
発言や岸田首相と黒田日銀総裁の会談などで、現在は122円になって
いる。

しかし、日銀は金融緩和の方向性を変えていない。このため、基調
としては円安の方向である。榊原さんは、130円が介入ポイントにな
るとの述べている。

しかし、ウクライナ戦争によるエネルギー価格の上昇、穀物価格の
上昇の上に、円安による輸入物価高騰というインフレ促進の状況が
続くことになるが物価上昇2%程度であり、米国のような物価7%上昇
にはならないと、日銀は方向を変えないようである。

このため、日銀の金融緩和は金利上昇を抑えるであり、国債発行額
がGDP200%以上であり、物価安定のために岸田首相もロシアのサハリ
ン2からの撤退もしないし、水産物の輸入制限もしないと言う。世
界のロシア制裁から少し外れることになっている。

原材料高で、日銀短観の2022年度の経済見通しは、企業の経常利益
が1.4%減になるとなり、株価が抑えられている。

2.ウクライナ軍の反撃に対応し始めたロシア軍
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ウクライナ軍のMi-24が、ロシア領内ベルゴロドの石油貯蔵所を爆撃
炎上させたが、ロシア軍は撃墜しなかった。その理由は、自国機と
間違たのと、低空飛行して、レーダー網にひっかからないようにし
たためだとした。

しかし、ウクライナ軍は、ロシア内攻撃を否定している。この日に
マリウポリへの人道回廊設置が、仏マクロン大統領と露プーチン大
統領の間で決まったが、軍部は人道回廊を作ると、マリウポリのウ
軍に補給ができることで、反対した。

しかし、プーチンからの絶対命令であり、これを回避するためにベ
ルゴロドの石油貯蔵所を爆撃されたことにして、プーチンを説得し
たようである。

その証拠にロシア発表の映像では、どこか河原でガソリンを燃やし
た映像に似ている。

ロシア軍は、キエフ近郊や南西部ミコライフから撤退して、南東部
に軍を集中させるようである。東部とクリミア半島の回廊を支配し
て、ウクライナを分断国家化する方向に、戦争目標をシフトしたよ
うである。

当分、一進一退の展開になり、ウ軍の新兵が訓練を終えてから戦場
に出てくるまでは、この展開が続くことになる。それまでは、今ま
での戦力で維持する必要があり、ウ軍は厳しくなる。

このため、長距離砲、中距離ミサイルなどの提供を欧米は検討して
いるし、ミグ戦闘機の提供も検討している。とうとう、ウ軍にも本
格的な攻撃兵器が必要になっている。しかし、この訓練が必要で、
時間が必要になる。

一方、ロシア軍も戦車中心の機動部隊単独で攻めるのはなく、歩兵
を伴い攻撃する方向に変化するので、戦車が簡単に餌食にならなく
なる。

また、NATO軍早期警戒空域での制空権確保を諦めて、東部の空域で
の活動で、制空権を確保して有利に陸戦部隊をサポートする体制に
シフトしたようである。このため、ロシア軍の劣勢はなくなる。

ウ軍に必要なのは、戦車や装甲車、長距離砲、高高度対空ミサイル
とレーダーであり、ジャベリンやスティンガーでは戦況の改善がで
きなくなってきたようである。

ロシア軍の戦術改善が効果を発揮することになる。このため、ウ軍
も戦術変更をしないと勝てない。当分、膠着化した状態が続くこと
になる。この間、両方に大きくの戦死者が出ることになる。

このため、ロシアは、17万人を徴兵する。シリア人など海外雇用兵
部隊は、日当のためであり、前線では尻込みして使えない。オセッ
ト人兵士ら300人は、戦場から離脱して、南オセチアに逃げ戻ったよ
うである。

補給部隊には、中国製機器メンテや供給のために、元中国軍人の雇
用兵が来ているが、これも前線には出ていかない。

このため、プーチンの命令で動く、ロシア人が必要になっている。

3.「戦争の時代」が新世界秩序を誘導する
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露ラブロフ外相は中国とインドを訪問した。ロシア経済維持のため
に、ガスと石油を売り込んでいる。石油1バーレルが35ドルとい
う魅力ある価格で提供するために、インドも中国も大量買いに走っ
ている。それも決済は、ルーブルや、ルピー、人民元建てという。

また、プーチン大統領は、非友好諸国に対して天然ガスの代金をル
ーブルで払えと宣言した。

そして、ロシアの売り込みに、危機を感じたサウジは、原油を人民
元建てで売ると中国に提案している。

今まで、ドルが基軸通貨である理由は、原油売買が基本的にドル決
済であることだが、このドルと原油のつながりがなくなることを意
味している。

もう1つが、ドルの基軸通貨としては、米国国債の保持で外貨準備
をした方が、流動性が高く、売りやすいこともあったが、米国のド
ル決済禁止との制裁をGDP11位のロシアに行ったことで、今後、中国
でも米国債を買う動機がなくなる。ドルでの外貨準備が意味を持た
ないことになる。

そして、ロシアへの制裁を行う国は、欧米日韓台など西側諸国だけ
であり、世界の多くの国は制裁に加わらない。このため、世界的に
ドル建ての外貨準備をする国は減る方向で、特に世界に多い専制国
では、人民元での外貨準備などになる。

特に中東では、今まで米友好国と思われたサウジやイスラエルが、
ロシアに配慮している。米国は自国の石油と天然ガスで自給できる
ので、中東から米軍を撤退させたことが大きい。

このため、サウジとイスラエルはイランとの対決で、ロシアを頼る
しかなく、脱米国になっている。米国の誤算であり、対中シフトし
たことで、中東諸国の支持を失った。このため、原油とドルの結び
つきもなくなり、ドル基軸通貨制度も危機になっている。

しかし、今後、原油から再生可能エネルギーにシフトするが、端境
期には、混乱が生じる。その1つが、ロシアの危機感であり、それ
でウクライナに侵略したが、ドル基軸通貨制度も危機に直面してい
る。

米国の覇権は、ドル基軸通貨制度によるので、この崩壊は米国の覇
権の危機でもある。

もう1つが、米国や日本、欧州などの金融緩和で、通貨価値が著し
く低下して、それが原因でインフレになっている。このため、ドル
などの通貨全体の信任も落ちてきた。

この原因は、国内経済の活性化で自国通貨を大量に国民にバラまい
たことであり、世界基軸通貨は、どこかの国の通貨ではなく、価値
が減少しない通貨にして、そのために政治家の人気取りができない
必要がある。

しかし、このような世界的に信任される通貨が現在ない。一時、仮
想通貨であると言われたが、価値の変動が大きく、信任を得ること
はできなかった。

残すは、商品バスケットに連動した通貨しかない。金に連動した仮
想通貨などが出ているが、それでも小麦や原油の物価変動に弱いの
で、このため、複数の商品の平均値に連動した通貨が次の通貨制度
の形になるのではないかと思う。

これを米欧日など民主国家の国際組織が今のIMFのような組織を作り
、世界基軸通貨として規定することである。ということで、世界基
軸通貨制度になる。IMFと同様に各国が資金を出し合い、設立するし
かない。

もう1つ、世界の安定に寄与するのは軍事力であるが、NATO軍のよ
うな複数民主主義国の軍隊の複合体で、専制主義国の侵略を防ぐ必
要になっている。

民主主義国は、企業の他国進出で経済的合理性を追求するので、軍
事力による他国領土を取る理由がない。侵略国と侵略される国両方
の経済力を奪うので、経済合理性からできない。

国民の豊かさを犠牲にできないからである。しかし、専制国は経済
合理性より、自国民のプライドを重視して、他国への侵略を行うの
で、民主主義国も専制主義国の侵略を防ぐ必要がある。

逆に、専制国同士は協力ができない。ロシアのプライドと中国のプ
ライドは違い、反米という弱いまとまりはできるが、それの結合は
弱い。

ソ連時代は、共産主義というイデオロギーがあり、世界をまとめる
原動力があり、強敵であったが、そのイデオロギーがなくなり、専
制主義国はナショナリズムをベースにするしかなく、世界的な結合
力をなくしている。

このため、世界の民主主義国が合同軍の組織を作り、その会議が国
連を代替することになる。今のように米軍が中心では、米国民の福
祉レベルが犠牲になっているので、米国民の不満が増大して、この
仕組みも永続性がない。

というように、世界の覇権は、世界の組織で担保する新世界秩序に
なり、これに向けて、西側諸国はロシアの侵略戦争をトリガーに結
束した行動をとる必要になっている。その時、日本だけが憲法9条
を盾に加わらないことはできない。

そして、次の中国が台湾侵攻を行う前に、この世界的な枠組みを完
成してほしいと思う。そうすれば、中国の侵攻作戦ができないこと
になる。

どちらにしても、新しい世界が見えてきている。

さあ、どうなりますか?



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