6222.キエフへのロシア遠征軍が窮地に



ロシアがウクライナに侵攻して、2週間以上がたち、南東部の侵攻
は順調で中部に拡大しているが、ベラルーシからキエフを目指した
ロシア軍が、ドローン攻撃とウクライナ軍の善戦で、キエフ包囲の
侵攻が遅れている。前回に続き、この戦争と世界構図を検討しよう。
                   津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、3月4日は33,614ド
ルで、7日は797ドル安の32,817ドル、8日は184ドル安の32,632ドル
、9日は653ドル高の33,286ドル、10日は112ドル安の33,174ドル、11
日は229ドル安の32,944ドル。

3月9日だけ株価は上昇したが、これはUAEが増産することを表明し、
ベネズエラの原油輸出の経済制裁を米国が解き、イランとの核合意
が近いことで、原油価格が130ドルから103ドルまで下落したことで
、インフレへの懸念が和らいだことによる。

3月16日のFOMCでは、3月0.25%の利上げは確実であるが、その後の利
上げは見送る公算も出ている。しかし、2年国債金利と10年国債金利
が、どちらも2%弱の水準になり、イールドカーブがフラット化してい
る。逆イールドになると、株価の暴落になると見られているので、そ
の動向で、株価の下落が止まらない。

2月米消費者物価指数は7.9%になり、40年ぶり大きな伸びであるが、
1ガロン7ドルの現状のガソリン価格や40%上昇の小麦価格がまだ反映
されていないので、3月CPIは10%以上になる可能性も出ている。イン
フレが8%弱上昇にも関わらず、金利は0%ということになっている。
これは日本も同じである。

それも、FRBは利上げを躊躇している理由が、利上げでもインフレは
収まらないとみるからである。

ウクライナ戦争の動向は、ロシア侵攻が進んでいるが、戦争事態で
は市場には大きな影響を与えなくなったようである。それより、戦
争の影響で、ニッケルや小麦、原油価格の高騰で、市場は景気後退
でのインフレリスクを問題視している。

しかし、ここで停戦の報道があれば、株価は大きく戻すことになる。
例え、ウクライナが降伏でも、戦争が終われば、物価高騰が緩和さ
れることで、インフレが収まるからである。

もし、核戦争の危険性が出れば、勿論、市場はパニックになり、一
層の株価下落になるが、現状の戦争状況では、株価は織り込んだよ
うである。まだ分からないが、3月8日が底であった可能性もある。

中国は、中立的な立場でロシアに対面している。ロシアの経済封鎖
が進行して、新興財閥オルガルヒの資産凍結も始まっている。ロシ
ア産商品の輸入禁止も徐々に始まっている。

このため、この余波が中国に来るのを警戒している。それと、台湾
侵攻でも、同じ事態がなることを中国は知り、自給自足経済構築を
進めることになる。

米国はロシア産原油を禁輸して、イランやベネズエラの経済制裁を
解いて、原油の輸出ができるようにして、そのぐ方向である。

特にベネズエラは原油埋蔵量が世界一であるので、米国の技術があ
れば、増産可能であるので、独裁国家であるが、当面問題視しない
ようである。

ロシア原油生産は、日500万バレルであり、イランは300万バレル生
産できるので、中国がロシア産原油を大幅な安値で買い、イラン産
やサウジ産を減らせば、その分をEUに回せることで、原油価格は
下がるはずである。

コモディティ価格上昇が起き、ニッケルは大幅な上昇で、ロンドン
市場で取引停止になっている。

小麦は、ウクライナが戦場になっているので、出荷ができずに世界
的な穀物価格の高騰は止めることができない。この影響は発展途上
国の政情不安定になる危険性がある。途上国や新興国の通貨危機の
再来も考えられる。

このように、戦争の余波が世界景気や政治に大きな影響を及ぼすこ
とになる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年3月4日は
25,985円で、7日は764円安の25,221円、8日は430円安の24,790円、
9日は73円安の24,717円、10日は972円高の25,690円、11日は527円安
の25,162円。

NYダウと同様に、10日だけ大幅な上昇をした。乱高下の相場になっ
ている。

円安になり、117円台になった。米国の10年国債金利が2%であるのに
、日本の10年金利は0.2%で、金利差が大きくなり、今後も当分円安
方向のようである。1ドル120円の可能性もある。

有事のドル買いでドルは強く、しかし、リスクオフの円買いは起こ
らず、円安方向に大きく振れている。ユーロも安かったが、ラガル
ドECB総裁が、インフレを無視できないと発言して、ユーロ安を止め
ている。

日本企業は中ロから撤退するべきであると前回述べたが、ユニクロ
はロシアでの営業を継続するとしたが、世界から不買運動が出て、
仕方なくロシアでの営業中止に追い込まれた。

2.日本の時代、統制資本主義の時代が来る
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このコラムでは、東西冷戦構造になるから、ロシアは勿論、徐々に
中国からも抜けるべきと提言してきた。手遅れになる前に、早期に
撤退することである。資産凍結になると、全損になるから、徐々に
それも早く、撤退する必要がある。

東西熱戦の時代になり、対ロ、対中の戦争時代が始まった。そして
、インフレの時代が来たことで、国家運営を安全保障中心に見直す
ことである。p.702で冷戦構造は、日本の復活に必要であると述べて
きた。その時代が、まさか、こんなに早く実現するとは思わなかっ
たが実現できた。

この時代では、国内消費財の国産化を急ぐことである。食糧の自給
、エネルギーの自給、物資の自給が重要であり、その意味では戦前
の1940年代の政策に逆戻りすることがある。国内生産で国民の命を
守る政策が必要であり、経済中心のグローバル化の時代は過ぎたこ
とを肝に銘じることである。

経済より安全保障で、国民の命が重要な時代になったのである。世
界のフェーズが大きく変化し、それに合わせて企業も舵を切る必要
がある。政府も、統制資本主義に舵を切り、物価統制や配給制度も
研究しておく必要になるかもしれない。

その結果、日本時代が来る。最大の都市鉱山を日本は持ち、コメと
いう食糧を持ち、米粉というパンの材料を持ち、コスト的に厳しい
太陽光などの再生可能なエネルギーの開発を促進でき、それができ
るまでは、原発という資産を持っている。再稼働させれば、エネル
ギーの多くを賄える。

運送費が高騰し、かつ円安になり、日本企業が日本で生産した方が
コストが安くなり、部品も完成品も一か所で作った方が安くなる。

日本企業の海外工場を畳み、日本に戻ってくるしかない。そして、
今までとは逆に、日本に移民を入れて労働力を確保するしかない。
海外工場では、政治が不安定で、何が起こるかわからないからであ
る。

3.キエフ遠征軍が窮地に
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在米ウクライナ大使館へ外人部隊志願の米国人は6千人で、うち半数
は兵役経験が無い等の理由で断念させ、およそ100名がポーランドに
向かっているという。米国からの参加者は多くて千名程度になるよ
うだ。

ウクライナ軍の練度が問題であるが、それをカーバーするほどの能
力がある義勇兵は、多くは来ないかもしれない。

しかし、ウクライナ国民は、「ロシア撃退可能」が9割となり、それ
を裏付けているのが、現状の戦闘状況のようである。ゼレンスキー
大統領も「われわれはすでに戦略的な転換点を迎え、目標に向かっ
て、勝利に向かって進んでいる」という。そして、米傭兵会社は、
すでに戦闘能力のある200人以上の傭兵をキエフに送っている。

プーチンは戦争に負けると命が危ないので、勝っている局面でキエ
フ遠征部隊の弾薬が尽きる前には戦争を止める必要がある。

また、露連邦保安庁(FSB)の情報機関のトップらを自宅軟禁処分と
して、ウクライナに関する誤った情報を報告した罪とした。そのほ
か、開戦に反対したロシア軍の将官8人前後がすでに解任されたよ
うだ。政権の内部粛清が開始されて、この戦争の失敗を部下にかぶ
せている。

逆に、ナビウリーナ中央銀行総裁は辞表提出したが、受領拒否され
ている。中央銀行の外貨準備の多くをロンドンなどに保管していた
が、その資産を凍結されてしまった。侵攻を事前にナビウリーナ氏
に知らされずに、大失態になっている。

その心情をベラルーシのルカシェンコ大統領に、停戦は近くなった
と話したような気がする。プーチンも自己の失敗を徐々に感じてい
るようだ。

ベラルーシ軍は、ロシアの要請でもキエフ遠征軍の支援を拒否し、
軍の300人がウクライナ義勇兵として、ロシアと戦うという。軍の拒
否でベラルーシからの補給ができなくなっている。しかし、プーチ
ンは、強引に補給やキエフ遠征部隊の援軍をルカシェンコ大統領に
求めた。このため、ベラルーシの参戦も考えられる。

「人道回廊」で停戦したが、停戦時に補給路も安全になるので、補
給が進むはずが、その後の戦闘でも激化していない。キエフ遠征軍
の被害が大きく、補給もないようだ。

戦車と一緒に輸送隊も多くのトラックに食糧や弾薬を積み込んでい
たので、この物資がいつ尽きるのかは分からないが、ドローン空爆
や対戦車ジェベリンや多数の兵器で、破壊が進んでいるようだ。1日
10台を破壊したとすると、10日で100台になり、遠征軍の多くを破壊
できる。それが証拠に、車列がなくなり、攻撃を避けるために森に
退避している。一部は泥濘に嵌り動けなくなり、放棄した車両もあ
る。

しかも、ロシア製のイグラ型携帯型防空システム(MANPAD)がポー
ランドやルーマニアなどから多数、ウ軍に供与されて、ウクライナ
軍将兵は使い慣れているので、それでロシア軍機を打ち落としてい
るので、ロシア軍機の支援をキエフ遠征隊は受けられないようであ
る。

しかし、最新鋭の兵器が苦戦なのに出てこない。何かが変である。
最新鋭戦闘機はどこにあるのか、古い防空システムを潜り抜けるは
ずが、どうもロシア軍近代化の多額の費用は、将軍や政治家の汚職
で、ほとんど実戦部隊の装備には回っていないようである。軍備は
古い。1980年代以前の兵器が多い。

このため、キエフ遠征隊は2002年期限切れの食糧を配布されただけ
で送り出されている。ロシア軍が弱いのは、将軍や政治家が汚職の
限りを尽くしたからで、ウクライナは汚職に助けられたとも言える。

反対に、欧米諸国から多量の兵器がウクライナ軍に供与されて、そ
れが戦場で使われている。いつか、戦況が逆転しそうな予感する。
ロシアは、いらだち、米国からの兵器輸送に対して攻撃すると宣言
し、また、同盟国軍であるイラン軍に、クルド人自治区アルビルの
米軍基地を攻撃させたり、戦線拡大も視野に米国との対決をも辞さ
ないようである。

しかし、NATO加盟国もロシア軍に対する評価を一変した。通常戦で
は、ロシア軍には負けるはずがないとなった。ロシア、恐れるに足
らずである。ソ連復興というプーチンの戦略全体が崩壊したようで
ある。

それと、戦車を守る歩兵を十分に付けないために、戦車は対戦車ミ
サイル・ジャベリンの餌食にされている。ロシア軍の戦術面での欠
陥も指摘されている。

そして、つい最近は、カラのトラックが放置されてるのをウクライ
ナ軍が捕獲している。相当な物資が消耗されていることがわかる。

これは、どうも、キエフ遠征部隊が窮地にあるような気がする。

このため、早くキエフを攻撃して、キエフを陥落させる必要になり
、攻撃を急いでいる。キエフ包囲のため、南に回り込みたいが、ウ
軍の抵抗も強くて、なかなか進まないようであるが、キエフから
15キロの地点まで来た。

この状況で勝っている東南部のロシア軍は、中部地域に進軍して、
キエフ遠征隊を助ける必要があり、急いでいる。それと誘導ミサイ
ルがなく、無誘導の爆弾になり、航空支援もない。軍近代化費用が
汚職されて、十分なミサイル数もないことが判明した。汚職で普通
の弾薬もなくなる可能性も出ている。軍事予算の多くが汚職で豪華
なヨットに化けていたようだ。

このため、ロシア軍の装備も兵数が足りなくなり、シリア兵と装備
を投入するが、言語が通じないので前線には投入できない。シリア
兵だけで組織した軍団を作るしかない。または、戦線が伸び切って
いるので物資の輸送路の守備しかできない。ロシア兵と連携した戦
闘はできないからだ。

しかし、まだ、ベラルーシ軍の参戦の可能性や相当な物量があるの
で、キエフを陥落させることもできる。すると、親露の傀儡政権を
立てられるが、もしキエフ遠征隊の部隊全滅になると、負けたこと
になり、プーチンの生命が危うくなる。

その前には停戦する必要がある。キエフ陥落を目指すが、全滅はで
きない。この微妙な段階になっている。このため、ロシアとウクラ
イナはオンライン形式による直接の停戦交渉を開始した。

キエフの攻防が勝敗を決め、停戦になるはず。その条件は、キエフ
の帰趨如何であろう。

しかし、ロシア軍がキエフを落として親露政権を立てても、ゼレン
スキー大統領が、西部の都市リビウに逃げ、そこでゲリラ戦を長期
に指揮すると、ロシアの国内経済が貧困化し、兵器弾薬も尽きてい
くことになり、長期戦での体力があるかどうかでしょうね。という
ことで、停戦がどこかで必要になる。

GDPが世界11位の国家は、どこまでゲリラ戦を戦えるのかは分からな
い。GDPトップの米国でさえ、ゲリラ戦では10年持たないからだ。

さあ、どうなりますか?



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