6221.泥沼化するウクライナ戦争



ロシアがウクライナに侵攻して、一週間以上がたち、キエフ包囲も
できず、攻撃が停滞している。一方、東南部の作戦は順調であり、
ヨーロッパ最大級のザポロジエ原発を抑えた。東南部はロシア優勢
で、しかし、キエフ近郊はウクライナ軍が善戦している。この戦争
と世界構図を検討しよう。          津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2月25日は34,058ド
ルで、2月28日は166ドル安の33,892ドル、3月1日は597ドル安の
33,294ドル、2日は596ドル高の33,891ドル、3日は96ドル安の33,794
ドル、4日は179ドル安の33,614ドル。

3月2日だけ株価は上昇したが、これはパウエルFRB議長が国会の証言
で、3月0.25%の利上げとなると明言したことで、利上げの速度は遅
く、資産売却はしないで、資産買い入れを止めることで、資産の縮
小を行うとしたからである。

しかし、それ以外は、ロシアのウクライナ侵略に伴う経済制裁で、
世界経済の縮小や戦争で原発攻撃をしたことで、株価は下落してい
る。戦争の推移が世界の株価に大きく影響している。

2月の雇用統計は、非農業部門就業者数が67万8000人も増え、失業率
も3.8%に低下した。これを受けて株価は上昇すると思いきや、同時
に起きた原発攻撃を受けて、179ドル安になった。雇用統計が材料に
ならないほど、皆の関心はウクライナ戦争になっているうおうだ。

それと、24日有事のドル買いが起き、10年国債金利は2%から1.73%ま
で下がり、しかし2年債は1.49%と利上げを見込んで上がり、イール
ドカーブはフラット化してきた。

混沌としたマーケットを反映して、F&Gインデックスは18まで下降後
、21まで戻した。しかし、地政学リスクの今後は読めない。底にな
ったかどうかが見えないようである。普通は20以下になると底とい
うが、戦争などの常識では測れないことがあり、読めないという。

小麦などの穀物、原油、金属などのコモディティの価格が上昇して
、それに伴い資源国通貨が上昇、資源会社の株価も上昇している。

EUはロシア原油を制裁で買わないことにするためには、イランから
の原油・天然ガスが必要になり、イラン核協議の合意が成立した。
イラン制裁解除で、イラン産天然ガスをEU諸国は使うことのようで
ある。その分、中国への輸出が減り、中国はロシアから天然ガスを
買うことになる。

ロシアの原油取引の決済する最大の銀行を除いた銀行のSWIFT排除も
決まり、中国の国際決済システム(CIPS)とロシアの国際決済シス
テム(SPFS)が接続され運用を開始した。ドルの一極体制から、人
民元・ルーブルとの2極体制になることを意味する。

どちらにして、中露の国際決済システムと欧米日などの国際決済シ
ステムが分離することになる。このため、ロシアの経済制裁は、大
きな抜穴があり、効果が限定的になる。まず初めに、最大銀行の
SWIFT排除をしないといけないが、ドイツが抵抗している。

しかし、この一連の制裁により、ロシア国債のデフォルトは確定的
で、3月16日に1.17億ドル利払いをしないようである。そこでデフォ
ルトになる。

ルーブルも大幅な下落で、防衛のためにロシア中銀は、金利を9.5%
から20%にしたが、ルーブルの価値は大きく下げたままである。

もう1つ、ウクライナ戦争が当初、短期で終わると、市場は見てい
たが、露宇の停戦交渉を見ると、長期戦になりそうである。プーチ
ンは、停戦条件で折れることはない。目標を貫徹すると仏マクロン
大統領との電話会談で、宣言している。

一方、中国は、ロシアが制裁されて、ロシア製の製品が安くなり、
それを買いまくっている。中国はロシアを支持する方向ではないが
、ロシアを助けている。

このため、今後はロシア・ベラルーシの制裁から、中国への制裁に
発展することになる。東西冷戦構造が出来上がる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日に30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年2月25日は
26,476円で、28日は50円高の26,526円、1日は317円高の26,844円、
2日は451円安の26,393円、3日は184円高の26,577円、4日は591円安
の25,985円。

NYダウと同様に、ウクライナ戦争の推移で下がり、パウエル議長の
議会証言で上げた。4日は原発攻撃のため、AI取引のためにAIは、大
幅な売りを仕掛け下げた。どちらにしても、戦争の推移により、株
価は大きく動くことになる。ボラの大きな展開になる。

近くの戦争は売りで、遠くの戦争は買いであり、日本株も上げてい
たが、ロシアの原発攻撃で株価は大きく下げた。有事のドル買いで
ドルは強く、円も強いので、動かずであるが、ユーロは安い。

米サキ報道官は、「岸田首相は世界のリーダーとして、行動してい
る。」と評価したが、日本はロシアとの経済関係は限定的であり、
米国の政策に追従できるからである。一方、ドイツは天然ガスをロ
シアに依存していたために、ロシア制裁に躊躇している。しかし、
そのドイツも政策を転換した。しかし、日本ほどのスピードはない。

ドイツが中心に反原発、脱炭素化を推し進めてきたが、この政策も
見直しになり、当面は原発を生かす方向になり、脱炭素での石油離
れも見直しになる。

プーチンは、戦争に負けることはできないので、交渉でも強硬な条
件を維持している。実際、東部南部戦線では勝っているので、諦め
ることはできない。10年戦争になる可能性も出てきた。

その視点から、早期に日本企業は中ロから撤退するべきである。こ
のコラムでは、東西冷戦構造になるから、徐々に中国から抜けるべ
きと提言してきた。手遅れになる前に、早期に撤退することである。

東西冷戦の時代になり、再度、インフレの時代が来たことを肝に銘
じる必要がある。1980年代の政策に戻る必要がある。

2.東西冷戦構造になる。
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バイデン大統領は、米軍をウクライナに送らないと、プーチンに直
接言い、ロシアを侵攻させる糸口を開いたことは、確かである。

このため、ロシアはウクライナに侵攻したが、キエフでの戦闘に負
けると思っていなかったことで、誤算を生じたが、戦争に負けると
プーチン自身の命に関わるので、戦争を停止できない。

ウクライナが負けるまで、戦争を継続することになる。プーチンに
は出口がない。このため、欧米日の経済制裁は徐々に増してくるの
で、中国への依存度を増していくことになる。

バイデン大統領は、インフレも戦争も、プーチンのせいにできるの
で、中間選挙対策にもなる。米国の分断も幾分か緩和されることに
なる。敵がいれば、まとまれる。

パウエルFRB議長も、インフレはFRBの責任ではないとして、暗にロ
シアのせいと言っているのであろう。戦争で国民の目を外に向けさ
せる政策を米国は、自国の犠牲者なしで、行えることになった。

表では、NATO軍はウクライナ戦争に介入しないとするが、裏で米軍
兵が大量に義勇兵として、ウクライナ戦争に参加することになる。
米軍事専門会社が、ソロスなど富裕層からの依頼で送り込むからで
ある。

すでに米兵3千人を含む1万5千人の義勇兵がウクライナに入国したと
いう。この連中は戦争のプロであり、ゲリラ戦への転換ができるこ
とになる。

これって、ロシアが得意としたハイブリッド戦争をウクライナで、
米国が行うことである。反対に、ロシアのハイブリッド戦争を主導
してきたロシア軍参謀総長ゲラシモフ氏は、正規戦に反対したよう
で解任された。

ロシアは、ウクライナ侵攻では正規軍が中心になり、キエフ侵攻軍
には、急遽集めた新兵を送り込んでいる。キエフ攻略は簡単に済む
とみていたことがわかる。

ウクライナ軍主力も東南部戦線であるので、この見方もわかるし、
現状の状態を、ロシア軍は主力のウクライナ軍を打ち破って、東南
部で占領地域を広げているので、負けているとはみなしていない。

このため、プーチンもロシアが最終的に勝つと、まだ、考えている
はずだ。欧米メディアの報道は、ウクライナ寄りすぎる。この戦争
は、そう簡単には、終わらない。10年戦争になる。ロシアのクーデ
ターでプーチンが殺されるまで続くことになる。

しかし、ウクライナは国が徹底的に荒廃される。ゼレンスキー大統
領は、「ミンスク合意」を履行して中立化した方が、国民の犠牲者
が少なく、国が荒廃しなかった。国民もNATO加盟に熱を入れずに、
ロシアに譲歩した方が、結果的には良かったような気がする。

しかし、荒廃を少なくする方法は、ウクライナ軍の補給が尽きると
負けて戦争は終わったことだ。しかし、戦争終了で荒廃が止まるは
ずが、世界から補給物資がウクライナに送られ、義勇兵も来るので
、戦争は長引くことになる。その補給ルートはポーランドであり、
次の焦点はポーランドへのロシアの行動になる。

事実、ロシア外務省は、ウクライナに武器を提供する国に対し、ロ
シア軍に対して武器が使われた場合は相応の責任を負わせると警告
した。この一番の目標は、ポーランドになる。

日中戦争で、補給ルート阻止のために、日本軍が東南アジア侵攻を
した理由でもあり、補給ルートを止めることが重要とみると、次の
焦点は、ポーランドになる。

ポーランドは、ウクライナ国境で鉄道線路も繋ぎ、鉄道で物資を大
量にウクライナに運べるようにしている。この補給を止めないと、
ロシアは勝てない。

この補給ルートを止めるために、戦術核ミサイルを使うことも想定
する必要がある。ポーランドは、NATO加盟国であり、全面戦争にな
るが、ロシアが勝とうとすると、その可能性も出てくる。プーチン
は自分が死ぬなら、道連れにする可能性もある。ロシアの負けが見
えた時点が危ない。

このため、米国はプーチンの精神状況を調査する必要性を見ている。

もう1つが、ロシア軍事専門家は、ロシアの弾薬の消耗で、今後3
週間で停戦するというが、プーチンが生きている限り長期戦になる
とみる。プーチンは負けるとクーデターで殺されるからだ。死に物
狂いで戦争遂行を行う。

すると、ロシアは1日150億ドルの戦費が必要であり、戦争物資を優
先するので、国民への物資の不足が出て、かつ、ルーブルの価値が
大幅に落ちて輸入もなくなり。国民生活は相当に苦労する。EU諸国
はロシア向けの船便を止めたことで、日用品もなくなる。

これに、いつまでロシア国民は耐えられるかである。国民の不満爆
発でクーデターになる可能性もあり、精神状況と、国民の不満の両
方を見ないといけなくなる。

すでに、富裕層のロシア人たちはフィンランドに脱出している。こ
の動きも加速する。ロシアの国力消耗と貧困化が進む。

そして、反対に世界は、ロシアに資金や物資を補給する国にも経済
制裁を行うことになり、その対象国に中国も含まれることになる。
これは東西冷戦構造になる。世界の分断で、グローバル経済は崩壊
する。中国からの安い物資がなくなることになる。

このため、世界的にインフレが加速する。日本は貿易量の多くを中
国依存であるが、それがなくなる。代わりに、円安になり、中国で
生産していた物品の多くを日本で作ることになる。人手はロシアや
ウクライナ、中国などからくる難民、移民たちがいる。

ロシア包囲網に加わらないのは、インド、中国、中東やイスラエル
、トルコなどであり、トルコはウクライナ軍にドローンを大量に供
給し、かつ操縦士も送り込んでいる。一方、ロシアやイランからの
パイプラインがトルコを通るので、経済的な関係もある。トルコは
両方から利益を得ることができることになるが、米国の説得でロシ
ア寄りから脱却した可能性もある。

イスラエルは、ロシアに電子兵器を補給していてお得意先である。
それと、中東での戦争時、ロシアの参戦を恐れている。

米国は、2正面作戦を行う必要になり、その分、戦略が分散して、
日本やインド、豪州などの負担が増えることになる。

日本は、中国と北朝鮮に加えて、ロシアにも対することになる。3
正面作戦となり、苦しくなる。恐れていた事態になってきた。

さあ、どうなりますか?



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