6219.世界経済の分岐点



世の中の分岐点に差しかかっている。米国の力が落ち、かつ中露が
暴走している。グローバル経済からブロック経済になり、金利上昇
や分断経済で、景気も落ちてくることになる。その状況を検討しよ
う。              津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、2月11日は34,738ド
ルで、14日は171ドル安の34,566ドル、15日は422ドル高の34,988ド
ル、16日は54ドル安の34,934ドル、17日は622ドル安の34,312ドル、
18日は232ドル安の34,079ドル。

1月催促相場の下落で、FRBは物価の番人ではなく、株価の番人であ
ることが分かったが、7.5%の物価上昇で利上げを年央には金利を1%
程度にするべきと、ブラード総裁が発言して、株価は大きく落ちた。

その上に、ウクライナへロシア軍が侵攻するということで、その情
報で益々株価は落ちる展開になっている。15日は、ロシア軍の一部
が撤退開始という情報で大きく上がるという一幕もあったが。

16日以降、ロシアのウクライナ攻撃が近いとして、リスクオフにな
ったのに、原油価格も下がることで、市場全体の方向がすべて下落
ということになった。というように、リスクオフと地政学リスクで
、穀物と金だけが上昇している。

そして、18日未明、ウクライナ軍が親露派の東部地域に攻撃したと
ロシアは発表して、東部地域の住民をロシア領内に退避させるとし
たことで、ロシアの侵攻開始が迫ってきたようである。

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ攻撃の決意し、態勢固めた
と、米政府も判断している。戦争開始を待つのみのようだ。

その状況で、G7外相会議でもロシアが侵攻したら、経済制裁を行う
と宣言して、軍事力による現状変更を阻止することで一致している
。ゼレンスキー大統領も会議に出て、ウクライナのEUやNATO加盟
を認める「回答」を求めた。

一方、プーチン大統領は、ミサイル演習で、欧米諸国がウクライナ
に軍隊を派遣したら、核攻撃を行うと脅している。

とうとう、中国の王毅外相も「全ての国の主権や独立、領土の一体
性の保護を訴えて、ウクライナも例外ではない」とした。やはり、
プーチンが習近平と会談後、怒って帰った理由が、中国の不支持で
あったことが判明した。

米国やEUへの輸出が止まる事態を避ける狙いがある。中国経済は、
輸出が大きな柱であり、それが止まる事態は避けるしかないからで
ある。

この状況になり、ロシアからの天然ガスが止まることになるので、
EUはイランとの核合意協定妥結を急いでいる。ロシアからの代替
として、イランからの天然ガスを使うようである。EUとイランと
は天然ガスパイプラインでつながっている。このため、原油価格も
下落しているのだ。

ロシアが戦争を始めると、中東地域の天然ガスと石油が重要になり
、中東の重要性が再度増すことになる。そして、中東とヨーロッパ
を結ぶパイプラインが通るトルコが脚光を浴びることになる。

米国からのLNGよりパイプラインの天然ガスの方が、断然安いので、
イランからの天然ガスにシフトするようである。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日、30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年2月10日は
27,696円で、14日は616円安の27,079円、15日は214円安の26,865円
、16日は595円高の27,460円、17日は227円安の27,232円、18日は110
円安の27,122円。

今週、株価は下落した。ウクライナへのロシア軍侵攻という情報で
、株価は攻撃情報で下げ、撤退などの情報で上げるなど右往左往し
ている。

それと、日本企業の四半期決算も終わり、企業業績は良かったのに
、株価は下落という状況である。EPSもソフトバンクGの大幅な減収
で2004円まで落ちたが、その後の決算で現在は2031円まで回復して
いる。標準的なPERは13.5倍なので、N225は標準的には27418円とな
るので、そのあたりが順当な株価ということであり、現状は、その
株価付近にあることになる。

このため、米国株は大きく下がっているが、日本株の下げは大きく
ない。地政学リスクが収まれば、27500円前後に戻ることになる。

しかし、マザーズの下げは厳しい。現時点708.81Pと700Pの節目を超
えて下げるようだ。このため、マザーズの多くの株が大幅な下げに
なり、マザーズでも企業業績が良い株には、割安感が出てきている。

米国は利上げが近いので、金利上昇でグロース株の現在価値が下が
るが、日本の日銀は利上げをしないというので、現在価値の減少は
起きないのに、海外投資家が売るので、下がっているだけである。

その結果、大きな成長をして現在黒字で、PER30倍以下の成長企業の
株価が低すぎる状況になっている。そろそろ、マザーズでも条件に
合った株はチャンス到来ですね。

株で儲ける基本は、安く買って高く売ることであり、話題の株は売
りで、大きく下げている株を買うことだとみている。そろそろ買い
時が来たような感じになってきた。

2.ロシアのウクライナ侵攻とは
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ロシアは「2015年のミンスク合意」の履行を求めている。東部の親
ロ派勢力地域に自治政府を作り、OSCE(欧州安全保障協力機構)が
きちんと監視することを決めている。しかし、NATO不拡大は、ロシ
アとドイツ・フランス間では合意していない。ミンスク協議の出席
者はロシア、ドイツ、フランス、ウクライナ、東部代表団であった。

この合意履行支持のために、米国も議会で東部地域の自治政府樹立
を支持する議会決議の審議を開始していた。ということで米国も「
ミンスク合意」を了解している。

何が問題化というと、ロシアが軍事力を使い、「ミンスク合意」の
履行を迫り、ウクライナ侵攻で、その履行を強制的に行うことなの
である。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、国民の期待するNATOへの加盟
を実現するために、東部の自治政府樹立を認めないために、「ミン
スク合意」の履行を、のらりくらりとかわして、東部地域の自治を
認めていない。

それだけではなく、親露派の大統領候補を拘束し、彼の経営するテ
レビ局を閉鎖に追い込んだ。という意味では、ゼレンスキー氏のや
り方も専制的ではある。

このため、米国は、ロシアの軍事力による現状変更を認めないが、
「ミンスク合意」履行は認める方向であり、議会も支持している。

ドイツ・フランスも「ミンスク合意」の会議に出ていたので、ロシ
アの立場も分かっているので、履行の方向で調整しようとしている。

このため、ロシアに対して、この2ケ国は、強硬ではない。軍事力
を使い履行を迫ることが問題だという立場である。

このような米国・ドイツ・フランスの姿勢に対して、ゼレンスキー
大統領は、これらの国に対しても、単独で外交交渉で解決するので
、「冷静になれ」と言う。

そして、ゼレンスキー大統領は、「条件が変わった。ウクライナ国
民がミンスク合意を認めないから履行できない。誰が署名したのか
は知らない」という。国際条約化した合意を反故にしようとしてい
るのだ。

しかし、ウクライナの位置と似ているポーランドでは、ウクライナ
と軍事同盟を結び、積極的に軍事物資を支援している。英国も反政
府のロシア人の避難場所であるので、この軍事同盟に参加し、軍事
物資の援助を積極的に行っている。しかし、ドイツは、この軍事物
資の輸送で自国内通過を認めなかった。

なぜ、ゼレンスキー大統領は、「ミンクス合意」を履行しないかと
いうと、自治政府には、国際条約の拒否権を持たせるので、NATO加
盟ができなくなるからである。

ウクライナの憲法では、NATO加盟を条項に謳っているので、ゼレン
スキー大統領としても、それを遂行しないといけないのだ。

しかも、NATO軍もロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナを助ける
ことはない。ロシアに対する経済封鎖を行うしかできない。米軍も
東欧に5千人程度の追加配備しただけである。このため、大国間で
の核戦争にはならない。

ロシア機甲部隊が、キエフを占領するのは、最短2日程度である。
その間で、どれほどの被害がロシア軍に出るのかが問題になるだけ
だと軍事専門家は言う。

しかし、ロシアの経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1以下
で、世界で12位。G7各国はもちろん、韓国よりも下回る。

ウクライナがキエフを捨てて、頑張り長期戦に持ち込むと、ロシア
の経済力では、経済が持たないことになり、停戦に持ち込むしかな
い。その時は、「ミンスク合意」は反故にできる。そして、ロシア
国内情勢も混乱にすることが確実である。プーチン失脚も考えられ
る。

このため、ゼレンスキー大統領は強気であり、そして、その裏付け
は、ウクライナ国民の期待が大きいからだ。ウクライナ国内での戦
争であり、ゲリラ戦になる。第2次大戦後では、始めてのゲリラ戦
がヨーロッパで行われることになる。

トルコもウクライナに味方して、義勇部隊で参戦する可能性もある
。トルコのエルドアン大統領の希望であるオスマントルコ帝国の復
活の道筋が見える可能性も出る。

トルコ系住民が多いクリミア半島分割ということだ。クルミア戦争
後で、トルコが再度領土にできる可能性が出る。その意義は、非常
に大きい。

米国が積極的に動くのも、ブリンケン国務長官が、ウクライナ系の
人であることの影響しているが、世界的な潮流を変えることができ
ることが大きい。

そして、米国は、現時点でキエフを捨てて、西部に大使館を移した。
ウクライナでの戦争が泥沼化すると、ゲリラ戦になり、その補給を可
能にすることで、ウクライナを支援することになる。

米軍には損害がないので、国内の反戦活動も起きないで、ロシアが
疲弊するだけである。その上、いらない兵器や弾薬を援助という理
由で、ウクライナに供与できる。在庫一掃だ。

米軍事産業は大きく儲かる。新兵器の実験場もできる。米国の景気
浮揚策もできる。2兆ドルのインフラ整備の予算も通らないが、戦
争経費は通ることになる。

そして、ロシア衰退で中露の経済力を落として置くことは、今後の
中露対欧米日の対決では有利になると見ているはずだ。世界戦略を
見た大きな括りで見ている。

しかし、トランプ前大統領は、これはヨーロッパの問題であり、米
国は手出ししないという。米国を再度、モンロー主義にしようとし
ているが、EUは関与してほしいので、米国の今の方針に従うしか
ない。

ここまで来ると、良いとか悪いとかの議論をしないで、両方の現状
をリアルに見る必要がある。この戦争の結果、世界はどうなるのか
を見ることである。視野を大きくしてほしい。

3.世界の分岐点にある
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新自由主義の資本主義では、貧富の差が拡大して、貧困層の反乱で
政府が混乱してしまうという反省で、持続可能な政治体制が必要で
あり、規制された資本主義を作る必要があることが、この30年程度
でわかってきた。

一方、社会主義国の中国とロシアも、資本主義を取り入れたが、こ
ちらも貧富の差が大きくなり、再度、社会主義に戻る方向になって
いる。

特に中国は共産党の指導と経済把握ができなくなり、再度、IT企業
の自由な経営に規制をかける方向である。不動産企業の融資も絞り
、土地バブルを潰している。

一時は、中国と米国が同じような資本主義になったことで、グロー
バル経済化が進んだが、先進資本主義国家も社会主義国家も、資本
の自由を縛る統制の方向である。

しかし、先進国は、貧富の差を縮小して政治的安定と経済発展のバ
ランスを重視した方向であるのに対して、社会主義国は一党独裁の
専制主義を取り戻して、貧富の差を縮小しようとしている。

貧富の差の縮小でもその方法が大きく違い、このため、イデオロギ
ーの違いから、経済関係も縮小方向である。特に、中国とロシアは
、自国民の目を経済的な面から自民族のプライドを高める方向で、
国民の支持を得る必要から、他国への侵略など、現状の変更を軍事
力で行う指向がある。

この部分で先進国は、専制国に対して経済制裁を行うことで、経済
が分離する方向にある。冷戦構造の再構築となる。

しかし、冷戦の経済体制では、企業利益は縮小していく。特に先進
国市場を失う中国とロシアは、自国企業の利益縮小となり、経済的
な豊かさを追及できずに、「共同富裕」という名の貧困の平等化に
なる。しかし、それでは国民の不満が解消できずに、自民族のプラ
イドを高める自国領土復活という動きを強めることになる。

ロシアと中国だけではなく、トルコやイスラム教原理主義者なども
自民族や自宗教のプライドという動きで、当分、戦争の季節を迎え
そうである。

景気後退後に、戦争になると見ていたが、その戦争が早くも始まるこ
とになるようだ。

一方、米国は、中国からの安い物品がなくなり、インフレ率が上昇
して、こちらも国民生活が大変なことになる。金利を上げると、景
気を冷やすので、金利も十分には上げられないし、株価も下がり、
可処分所得も減ることになる。

米国経済圏で安い物品を求めて、発展途上国でも民主的国家に日本
や米国企業の工場を進出させて、安い製品を作らせるしかないこと
になる。このことで、中国企業を排除して、日米の基幹企業の復活
が起きることになる。

その反対に、ブロック経済で経済規模が小さくなり、米国の巨大IT
企業の収益は、今後減少すると思われる。また、中国企業も販路が
発展途上国だけになり、儲けが小さくなる。

さあ、どうなりますか?



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