6216.株式資本主義の転換とは



岸田首相は株式資本主義を変えるという。資本の論理ではないとい
うことは、統制資本主義ということになる。その検討。 津田より

0.米国および世界の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2022年1月4日に36,799ドルと最高値更新となり、21日は34,265ドル
で、24日は99ドル高の34,364ドル、25日は66ドル安の34,297ドル、
26日は129ドル安の34,168ドル、27日は7ドル安の34,160ドル、28日
は564ドル高の34725ドル。

NYダウは、今週も下落方向であるが、1日の値幅が1000ドル以上にな
る日が多いなど、ボラの大きい展開が続き、28日は始めは下げてい
たが、500ドル以上の上昇になった。投資家は、この先に迷いがあり
、下げると買い、上がる売りと動揺が出ているが、FOMC後の一服感
からの買いで28日は上げた。

金利上昇に弱いグロース株中心のNASDAQは、最高値16212.23Pで、
28日は417P上げたが、今週末は13770Pまで下落した。現時点NASDAQ
の指数は、ゴルディロックスの−3σ線上にある。

大きく下げたことで買い場と見るコロナ後参入した大衆投資家が、
28日終了真近に大量買いで急伸した。今はまだ、下落すると買いを
入れる投資家がいるので、株価は少し戻すが、これが数回起こると
、買い手不在になる。そこが大底であるが、いまではない。

パウエルFRB議長は、利上げを急ぐ必要にある。物価は5.8%になり、
金利は0%と、実質金利は-5%と大きな乖離があり、物価高を止める
には、なるべく早く金利を上げ、かつ市場にある資金を回収する必
要がある。

しかし、フォワード・ガイダンスが無かったので、不透明感があり
、市場は金融政策を良くも悪くも見てしまうことになる。一方、FRB
は、政策選択肢を温存できたことになる。このため、市場の見方が
揺れることで、不安定な株価になる可能性がある。

このため、3月までに資産買い入れを止め、3月の利上げは確定で、
金利も0.25%の上げでは足りず、0.5%の上げも考えられるようだ。
確実に数回のFOMC後からは0.5%上げになると、見られる。

パウエル議長の会見で、すべてのFOMCの会合での利上げの可能性を
質問されたが、それを否定しなかった。ということは今年7回のFOMC
で利上げを行う可能性が出てきた。0.5%上げでも0.5×7=3.5%の金
利になるが、インフレ率5%に届かない。

このため、マルチコントラクション(複合政策)で臨むようである
。追加処置として資産売却をして資金の回収を行う必要があり、こ
の開始が6月以降であるが、その規模が大きいようである。

しかし、短期債の資産規模が大きいので、6月までに資産償却が起き
て、市場で資産を売る量は、それほど大きくないようだ。現時点の
FRBの総資産規模は8.9兆ドルであり、6兆ドル程度を資産圧縮するの
であろう。

しかし、次回3月のFOMC後も株価は大きな下落になり、フォワード・
ガイダンスがないなら、その後のFOMC後も株価は下落することにな
る。株価が下がっても、早くFOMCの意図を市場に周知する必要があ
るはず。

今2年債金利は0.2%から1.2%まで上昇したが、10年債金利は1.8%とあ
まり変わりがない。金利差は縮まっている。イールドカーブのフラ
ット化が起こっている。

金利上昇と資産売却とイールドカーブの完全フラットなどの現象が
出て、いつか、大暴落することになるが、今回の下落は、まだ始ま
ったばかりである。下落の道のりは長い。F&Gインデックスも31で、
恐怖度が足りない。大底では20以下になる。

その上に、金利上昇とFRBの資産である住宅債券の売却で住宅価格も
暴落することになる。米国民の資産の多くが、株と住宅であり、こ
の2つの暴落で、米国民は相当なダメージを食らう。

そして、株価以上に大変なのが、インフレで財政出動もできず、金
利も上昇して、貧富の差は拡大することになる。低所得者、年金生
活者、銀行などへの預金者が大変なことになる。

このようなことで、最悪政変などの事態も想定できることになる。

今までFRBは、株価の番人であったが、今や物価の番人になり、株価
の敵になったようである。景気を落とすことなく、金融政策を行っ
てほしいが、株価が落ちると逆資産効果が出て、景気も落ちること
が多い。インフレ下の景気減速というスタグフレーションになる確
率が高まっている。

米国SP500は、PER21倍であるが、日本株のPER13倍まで落ちる可能性
もあり、まだ相当な下落をしないと、行きつけない。NASDAQはより
酷いことになり、コロナ前の最高値9838Pまで落ちる可能性もある。

ここまで株価が下落しても、バイデン政権は株価にコメントを出さ
ない。株価よりインフレ対策が重要ということのようである。政権
もインフレ退治優先で株価に対して、厳しい。

米国投資家は、政権の助けもFRBの助けもなく、戦う必要になって
いる。早く、日本人投資家は米国株投資を引き払い、日本に戻って
くることを推奨する。

日本株のPERは低く、このような状況では、PERの低い株を選択する
必要があるが、バリュー株の代表であるコラコーラでも、配当利回
りは2%強程度であるが、日本株では4%以上の株はゴロゴロしている。

ウクライナ問題では、米国はロシアがウクライナに攻め込むと宣伝
しているが、ウクライナ政府は、米国のロシア批判は迷惑であり、
パニック的な状態ではないと宣言している。

そして、ウクライナとロシアは協議をして、落としどころを調整し
ている。ウクライナ問題は、ウクライナがNATO加盟国になることを
阻止する目的であり、ウクライナが加盟申請をしなければ良いこと
である。

ロシアが軍事力で、それを強要することに欧米諸国は反対している
が、ウクライナは、ロシアの要求を、しぶしぶでも受け入れる方向
のような感じだ。

しかし、軍事力の脅しが有効な外交的手段になることを、ロシアは
証明することになる。これが問題であり、中国なども軍事力で外交
交渉を今後、行う危険性が出てくることになる。

しかし、まだわからないこともあり、まだ注視する必要はある。

1.日本の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年9月14日、30,670円で31年ぶりの高値になり、2022年1月21日は
27,522円で、24日は66円高の27,588円、25日は457円安の27,131円、
26日は120円安の27,011円、27日は841円安の26,170円、28日は547円
高の26,717円。

1月27日は3%安で、27000円を割り込んだ。9月14日の高値3万670円か
らの下落率が14.6%となり、調整局面入りした。しかし、インフレ
は2%弱で、米国ほどには、物価高になっていない。米国株に連動し
て下げているだけである。特にグロース株が中心のマザーズ指数は
、27日728.25Pまで下げて、1年9ケ月半ぶりの安値になった。

マザーズ株の中心であるメルカリは11月に7390円であったが、1月27
日、3990円まで下げている。

そして、大幅な下げを記録した1月27日でも日銀のETF買入はなかっ
た。米国や中国のIT企業の株価が下げているので、ソフトバンクGの
株価も、1万円以上から4584円まで半分以下に下げた。クラウレ副社
長も辞任するとの報道であり、ソフトバンクGも大変なことになって
いる。

その上にオミクロン株流行で、東京の病床使用率が50%以上になる可
能性があり、そうなったら、小池知事は緊急事態宣言を政府に要請
するという。

これに対して、政府は緊急事態宣言には慎重である。経済の損失を
どの程度に抑えるのか、若い人達は軽症であり、自宅待機の日数も
減らす方向であり、比較的軽い病状のコロナに向き合う方法をデル
タ株のようにする必要はないはずである。

もし、人流を止めると経済的損失は大きくなる。この落ち込みで、
一層株価は下がることになる。

現状は、大幅下げの主な原因は、空売り比率が50%以上であり、下げ
た後に買い戻しで上がるが、それ以上の上昇はない。この状況が続
いているので、買い手不在の状況のようだ。そのためジリ下げの様
相である。

しかし、今までに多くの投資家が儲かっているので、退場者も少な
く、新規参入者はいないために買いが入らない。古くからの投資家
も見ているだけである。底値買いを狙っているが、上値を買う動き
はない。

このため、大底観がないので、当分、この様相が続くことになる。

この時の戦略は、大きく売られた時の底値買いで、戻したら売りを
丹念に続けて、持ち株の平均株価を下げるしかない。この持ち株の
継続的な上昇が起きるまでは、儲けより平均株価下げを優先して、
辛抱するしかないように見える。このためには、現金保有率を上げ
る努力である。そのためにグロース株の損切で現金を作るしかない。

その上に、岸田首相は株式資本主義の転換を宣言し、かつ自社株買
い牽制するので、株価に大きな影響を与えている。日銀は金融緩和
政策の見直しを表明していないが、実質的にテーパリングを開始し
ている。しかし、ETF買いという株価の番人を維持しているので、そ
の面では、米FRBより良である。

まだ、インフレが米国ほど深刻ではないからできるのであろうが、
ウクライナでの戦争になれば、原油や天然ガスの価格は一層上昇す
るので、今後、どうなるのであろうか?

2.株式資本主義の転換とは
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
株式資本主義を否定すると、資本の論理ではない論理で社会を制御
する必要になる。この基本は統制法だ。統制資本主義の構築が必要
になる。この統制法の制定には、江戸時代の思想が必要になるとみ
ている。

賃金を上げるにも、報酬と罰を設定する必要がある。公正取引委員
会などを使い規制強化に傾くことになる。大きな企業が中小企業の
価格を抑えることを止めるにも規制法が必要になる。規制=統制で
あるから、統制資本主義と言える。

このように、すべてのことに規制法の制定が必要であり、物価統制
法もそのうちに必要になる。新自由主義からの脱却とは統制資本主
義と言い直してみても良いはずである。

その統制法の裏付けは、倫理観なり、目指す社会なりを想定しない
といけない。この法律を守るのは人間であり、その人間の心に守る
意識があるかどうかも問題になる。

もし、人間として守れないと、闇取引が横行して、社会的な混乱が
起きることになる。やくざの横行にもつながる。この議論をしてい
ない。

泥縄式に規制法を作り、運用すると、統制法間に矛盾を起こすこと
にもなるので、新しい資本主義の目指す方向を明確化する必要があ
る。

もう1つ、1つ1つの統制法は、しっかり議論しないといけない。
統制法が社会的な理想と人間としての規則感、自由感との調和が取
れているかどうかのチェックが必要になる。

このような議論のベースが、人間社会の理想像や感情論、倫理観で
あろう。

もう1つ、IT技術の進展で、AI化が進み、エッセンシャルワーカー
と知的創造をする人たちの2つに労働が分解される方向である。管
理的な仕事はAIで肩代わりできる。

知的創造は、余暇と仕事を曖昧にするし、人的ネットワーク間での
知恵が重要になる。このため、自由な労働が必要な人たちであり、
一方、エッセンシャル・ワーカーは正規労働で規則正しく働くこと
が必要である。

この関係が、現在逆転していることで、社会がギクシャクしている。

ということで、この社会的な変化と、現状の法体系がミスマッチし
ている可能性もある。

このような広範な議論の上に、新資本主義(統制資本主義)の思想
が出てくることになる。

私は、江戸時代の石田梅岩の心学が見直されることになるとみてい
る。倫理と経済的合理性の調和がどうしても必要と思っているから
だ。

温暖化防止のグリーン経済は、石油を使えないことで、プラスチッ
クが使えないくなり、物の価値が上がることになる。

もったいないが、再度注目を浴びることになり、物が持つ徳性を再
度、定義されることになるとも思う。使い捨て経済からの脱却が必
要になっているのである。

次の時代を見た統制法を制定してほしいものである。そのための議
論をするべきである。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る