6210.日本衰退を見越した環境整備



移民政策を打たないと、日本の衰退は決定的になる。その場合、ど
のような準備をしておくべきかの検討をしよう。   津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年11月8日は36,432ドルの最高値更新で、12月10日は35,970ドル
となり、13日は320ドル安の35,650ドル、14日は106ドル安の35,544
ドル、15日は383ドル高の35,927ドル、16日は29ドル安の35,897ドル
、17日は532ドル安の35,365ドル。

NYダウは、FOMCの結果を受けて大きく上昇した。テーパリングの加
速と利上げの前倒しは、企業の借入コストを上昇させるので、利益
が減り、株価には良くないことであるが、逆に上昇している。

この場合は、利上げでも景気は上昇するからとみて、株価は維持と
なるはずが、長期金利が1.4%と1.6%から下がり、短期金利は0.7%へ
上昇している。ということで、債券市場は、景気が将来悪くなると
みている。株式市場と債券市場の見方が逆になっている。

債券市場参加者はプロが多く、将来予測が確実であるが、株式市場
参加者は、ロビンフッドのような大衆投資家で、押し目には買いと
いう楽観的な見方になっているので、違うことになっている。

このため、NADAQは、15日FOMC後で327P上げ、翌日16日に385Pの下げ
で帳消しにしているし、NYダウも17日に532ドル安になっている。グ
ロース株には金利上昇は、バリュー株より悪影響が大きく出るので
、NYダウより大きく落ちることになる。これが正しい反応のようだ。

評論家は、15日の上げはヘッジ売りの解消の買戻しで上げただけで
あり、今後手持ち株の売りで、市場はテーパリング加速を織り込む
ことになるという。

今後、テーパリングを2022年3月に終了して、6月には利上げが始ま
ることになる。しかし、企業業績は落ちることになるので、株価は
下がるはずだ。

そして、長短金利のイールドカーブはフラット化してくることにな
る。このフラット化が起きると、株の暴落サインとなり、10%程度の
下げを予想できる。

株価暴落になると、FRBは再度金融緩和にシフトせざるを得ないが、
インフレがまだ高止まりしていると、インフレを加速させることに
なる。

FRBは、金融緩和か利上げかの厳しい選択を迫られることになるし、
その時までに、株式市場も、ベア・マーケットになっているはずだ。
スタブフレーションにもなっていることになる。そろそろ、ベア・
マーケットへの準備をする時期かもしれない。

もう1つ、不安なのが、イスラエルが、イラン原子力施設への空爆
を計画していることだ。このため、イスラエルは、イランと友好関
係にある中国との関係を強化して、空爆時でも中国からの非難をか
わす狙いのようである。

このため、最先端軍事技術が中国へわたっている。これに米国は神
経を尖らせている。

ロシアのウクライナ侵略、中国の台湾侵略、イスラエルのイラン空
爆と戦争の芽が世界同時多発的に出ている。

スタグフレーション後の世界大戦争も準備されてきている。不安な
時代が到来している。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、9月
14日は30,670円で31年ぶりの高値になり、12月10日は28,437円で、
13日は202円安の28,640円、14日は207円安の28,432円、15日は27円
高の28,459円、16日は606円高の29,066円、17日は520円安の28,545
円。

FOMC後の16日に29000円を回復したが、17日は日銀のCP買い入れ中止
で、520円の下げになった。日銀は利上げができないので、日米で金
利差が拡大して円安になると見られるが、為替は115円から113円に
むしろ、円高方向にシフトした。

日銀は、初めから出口戦略を取れないが、米国も量的緩和からの出
口戦略は、今まですべて失敗している。このため、市場は利上げが
できっこないと見ているようだ。それがドル円相場の安定になって
いるようにも見える。

日本はオミクロン株の市中感染もなく、コロナ新規感染者数も低く
、本来なら株価も上昇するはずが、NYダウとNASDAQの下落に引きずら
れて落ちている。特にマザーズであり、965p以下になり年初来安値
を更新している。グロース株の下落が止まらない。その上に12月中
旬以降に多数のIPOが出て、下落に拍車を掛けている。

そして、JR東日本などの鉄道会社は、2022年3月のダイヤ改正で運転
本数を減らす方向であり、日本社会が大きく変化してきたようだ。
感染者数が減っても、通勤客数が元には戻らないという。

飲食店もコロナ前の水準には戻らないようである。コロナ前の7割程
度だという。

この上に、円安に伴う物価上昇になり、販売価格に転嫁できないた
めに、企業は経費削減で、職場のスペースを半分程度にして、家賃
を減らしたり、営業接待をへらしたりのようである。このため、飲
食店も夜の宴会需要が減っている。忘年会も1次会はあるが、2次会
がなくなったと皆が言う。

このため、ワタミは、夜の居酒屋から昼の昼食需要にシフトして、
生き残ろうとしている。ファミリーレストランは、外食需要から冷
凍食品の中食需要にシフトしている。この飲食業界は、大きく変貌
しているようである。

今後、オミクロン株の市中感染も出てくると思われているので、ま
たもや、テレワークになるかもしれないようだ。GOTOトラベルを早
期にしなかったことで、資金の枯渇になり、ホテルや旅行・陸運業
界は、大変なことになりそうである。

コロナ禍が、いつまで続くのかわからないことになっている。この
ため、温泉地の旅館の閉鎖・倒産も多くなり、廃墟化している温泉
地も多くなってきた。

早く、コロナがインフルエンザ級の疾病になることを願うしかない。
そのための飲み薬も出てきた。しかし、この分野での日本企業の開
発力の無さが目立っている。欧米は国が主導して開発しているが、
日本政府は長期の支援をしていなかったことで、決定的な遅れにな
ってしまった。

その典型がアンジェスだ。一時2000円の株価が現在368円である。
コロナ・ワクチン期待で株価を上げていたが、今もって、臨床試験
が終わらないことで、期待が失望になっている。DNAワクチンとい
う新技術には時間がかかる。いち早く政府の支援があれば、このよ
うなことにはならなかったはずである。

その一方、日本の従来企業は、日本離れと本格的な世界展開で、海
運・鉄鋼・商社などの企業が息を吹き返している。この上に円安と
なり、円建てでの利益も増加することになる。

このため、円安は日本の世界企業にとっては追い風となる。よって
、日本のバリュー株は上昇の可能性が出てきた。

もう1つ、米国は中国からの製品輸入を止めて、民主主義国からの
輸入を増やす方向である。このために、円安になって、価格が安く
なった世界展開している日本企業から買う方向である。

サプライチェーン混乱回避や円安で、日本の工場も息を吹き返す可
能性が出ている。このようなことで、グロース株からバリュー株へ
シフトする動きが鮮明になっている。

2.日本衰退を見越した環境整備
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日本は分岐点にいる。経済衰退か経済大国への復活かであるが、オ
ミクロン株で外国人原則入国禁止で、岸田政権の支持率が上昇して
いる。

この支持率上昇は、高齢者を中心に、移民に対して拒否感が強いか
らであるが、その上に、その拒否感を説得するような変革マインド
を持った政治家もいない。ということは、今後も日本の衰退は止ま
らない。

このため、岸田政権も14業種への家族同伴での外国人長期滞在を認
めたが、議論をしないで、こっそりと許可して、移民政策への転換
という非難を避けようとしている。

しかし、今後超円安になり、賃金レベルが韓国や台湾、欧米諸国に
比べて見劣りする日本には技術者や資格者は来ないという。すでに
移民緩和が遅かったのである。

その結果、労働力不足と消費不足から日本が貧しくなるのは確定的
になり、それでも幸せを感じられる国家をどう作るのかの方向に検
討をシフトするしかないようだ。

この一番の原因が、人口減少の加速だ。直近10年では、人口減少は
100万人程度であり、それほどの人口減少にはなっていないが、今後
、人口減少の本番を迎える。

70歳〜74歳の人口は、968万人もいる。1945年から1950年までの団塊
の世代であり、後5年後には80歳から75歳になり、1年間で200万人弱
もいる。0歳から4歳児は450万人であり、生まれる数は1年間90万人
弱であり、5年後から、人口は年間100万人強の減少となるはずであ
る。

100万人が年間240万円消費していると、消費額の減少は2.4兆円とな
り、その消費財の生産過程の生産倍率が3回転としても、7.2兆円ほど
のGDPが減ることになり、年間10兆円の減少となる。GDP500兆円で年
間2%づつ減少することになる。

10年もすると、20%以上の減少になることで、日本の衰退は決定的に
なる。このようなことは人口統計を見ればわかることである。もう、
GDP縮減の埋合せの積極的財政出動もできなくなる。

勿論、毎年100万人以上の移民を入れば、人口的にはトントンになる
が、それを許す国内世論や賃金水準の状況でないなら、衰退は確実
に起こることになる。

この国力衰退で、何が起きるかというと、優秀な若者は、英語力を
身に着けて、海外で活躍するしかないことになる。優秀な若者は、
米国のハーバード大やMITや英国のケンブリッジ大で学ぶことになる。

そして、卒業後は海外企業で働くしかない。日本企業で働くとして
も、日本企業自体が日本から飛び出して世界でビジネスしているの
で、日本企業の海外駐在員となる。

中間クラスの若者も日本の大学に入ったとしても、英語で教育する
ことになり、日本企業の世界展開需要を満たさないといけない。小
学生時代から英語力を付ける必然性が出てくる。

日本の大企業は、日本市場がやせ細るので、日本離れを加速してく
るからだ。このため、日本は衰退するが、日本企業の株価は上昇す
る可能性もある。日本の大企業の力と日本の国力とは大きな差が出
てくる。企業は日本から離れて活躍するので、飛躍の可能性もある。

日本にいるのは、日本語だけしか使えない人たちであり、この人た
ちの賃金はインフレでも上がらず、貧しいが、それでも生活ができ
、充実した人生を送れるように、日本政府は準備することである。

ということで、海外企業や日本の大企業の社員とそれ以外の日本人
では、歴然とした年収の差が出てくる。日本国内いる5%の金持ち層
と海外にいる日本人5%と、残り90%の貧乏人の2極分化状態になる。
もし、日本いる5%の人たちに高額な税金をかけると、この人たちは
、すぐに海外に逃げ出すことになる。

ということで、選挙権のある90%の日本に住む貧乏な日本人の国家で
、その人たちにサービスを行うのが、政府の仕事であるから、日本
衰退の準備をする必要があるのだ。その見返りとして90%の国民から
も税金を取るしかない。

まず、衣食住を十分に準備することと、エネルギー確保となる。
この準備が衰退時でも必要になる。円安で海外の産物価格は高騰し
ているので、国内産業の再構築が必要になる。

住は、人口減少になり中古住宅は、今後ともに余ってくるので、リ
ノベーションして住むことだ。木材価格も上がり、新築は相当な値
上がりになる。木材も日本材が中心になる。

このための林業活性化が必要になり、山の所有権を統合して、大き
な面積で事業ができる、採算が取れなるようにすることだ。このた
め、個人所有を禁止してもよいかもしれない。企業所有でない山林
の国有化を行うことも視野に入れた再生策が必要になる。

衣は、リユースである。この分野が充実してきている。古着屋が江
戸時代には相当数あったが、その時代が再来している。この証拠に
ハードオフや、セカンドストリート、トレジャーファクトリーでも
店の中心は衣料品であり、買っている人も多い。ユニクロやワーク
マンも買う人が多いが、そこより安く、いい物がある。

そして、食であるが、国内食糧が中心になる。超円安で海外のもの
が高くなり、国内産で生きるしかない。そうすると、その中心は、
コメであるが、米粉にしてパンや麺などにして食べることになるの
であろうが、栄養的には不足する。

栄養的には玄米が重要なことになる。ここでも江戸時代に戻ること
になりそうだ。一汁一菜に戻る時には、玄米が栄養的にはベストに
なる。

肉も牛・豚は高くて、庶民が口にできるのは、鳥、ジビエになるの
であろう。海産物も徐々にシフトしてくる。世界が食べないタコや
イカや深海魚などになるしかない。冷凍技術が進み、海産物で今ま
で捨てていた物まで商品化できるようになるし、するしかない。

その他、たんぱく質の補給に、昆虫食も出てくる。蜂の子の漬物な
ど、今後どこかで製品化することになると思う。

一方、マグロやブリなどの高級魚は、輸出品となる。果実も輸出品
となり、日本の外貨獲得に貢献することになり、庶民が口にするも
のではなくなる。庶民が口にできるのは、規格外の果実などである。

この国内食糧生産の農業と太陽光発電の土地の取り合いが起きるこ
とになる。その法律を整備しておくことが重要である。国民の食糧
確保と同時に安価なエネルギー確保も重要な政府の仕事になる。

エネルギーは、太陽光発電が中心であろう。東北の日本海側と北海
道の留萌周辺では風力発電が採算に乗るが、東京までの電力線整備
が必要になる。石油など化石燃料は、新規の投資がされないことで
、今後価格高騰が続くことになる。再生可能エネルギーへの転換は
国策になる。

そして、政府は、今後、10年から20年後の日本衰退時のあるべき姿
を描き、それに向けて国内整備を今のまだ経済余力がある内に、整
備して置く必要がある。

赤字路線になるような新幹線整備などの無駄な工事ではなく、衰退
時に必要になる産業構築と世界に飛躍する企業支援に予算を充てる
べきである。企業が世界で活躍すると、法人税が入るので、日本の
衰退時でも大きな財源となる。

その整備なく、衰退すると地震や台風などの災害で飢饉になり、大
きな人的被害を起こすことにもなる。その結果は、より大きく日本
衰退を起こすことになり、衰退を加速させてしまう。ということで
、江戸時代の東北諸藩と同じような国になりはしないかと心配にな
っている。

もう、日本は発展途上国の心配と同レベルの心配をしないといけな
くなる可能性があり、為政者は覚悟が必要である。

また、国防に大きな予算を割けなくなり、国際情勢でも、日本は受
動的対応に終始することになる。世界もいやな時代になるのに、日
本は、その時代を丸腰の状態で迎えることになりそうである。

保守派政権で、無為に過ごした10年間、日本は移民政策もせず、企
業支援もせず、ただ、財政出動で過ごしたことで、日本は衰退を確
定的にしてしまった。その反省からでしか、日本の存続は成しえな
いと思う。

さあ、どうなりますか?



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