6205.岸田政権にインフレ対策はないのか?



2次岸田政権が始まった。しかし、岸田政権では分配が目立ち、産
業育成政策やインフレ対策がない。分配のみの補正予算は、日本の
貧困化を招くことになる。この政策を検討しよう。   津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年11月5日は36,327ドルの最高更新で、8日は104ドル高の36,432
ドル、9日は112ドル安の36,319ドル、10日は240ドル安の36,079ドル
、11日は158ドル安の35,921ドル、12日は179ドル高の36,100ドル。

NYダウは、8日に最高値更新したが、その後は下落に転じた。
米国CPIが1991年以来の6.2%と上昇で、1980年基準のCPIでは15%にも
なるインフレであり、インフレが加速している。このため、利上げ
が早まると予測されて、米長短金利が再度上昇した。

FRBは12月からテーパリングを開始すると表明したが、それに合わせ
ように、米財務省も米国債発行高を減らして、長期金利の上昇を抑
える方向で施策をしている。それでも金利は上昇している。

この結果、米国の長短金利が上昇したことで、再度ドル高になって
いる。

インフレの原因は、供給サイドの問題と輸送の問題であり、その原
因は、電力不足の中国やコロナ禍続く東南アジアの工場から製品が
、途中の船便やトラック運転士の不足もあり届かないことで、この
状態は当分続くことが見込まれる。

それと、原油の高騰である。この原因は脱炭素で、化石燃料への新
規開発ができないことである。シェールガスの産出量が、採算以上
の価格なのに増えない。投資会社が、シェール企業に金を貸さない
ことで、新規の井戸を惚れないことによる。よって、インフレは長
期に続く様相になってきた。

米政府の給付金バブルのおかげで、米国民の多くは、働かないでも
裕福になり、暇なので株への投資を増やしている。これと並行して
労働者が職場に戻ってこないとも言われている。早期に退職して戻
らないベビーブーマー達が多数存在しているようだ。

このために、暇な人たちの参加で、株式市場は盛況で、押し目は買
いと買いが入ることになる。

よって、FOMCのテーパリングでも株価が下がれば、FRBは何とかする
と確信しているので、株価は強いままで推移している。

中国の六中全会で「歴史決議」が採択されて、習近平国家主席の権
力集中が当分続くことになったようだ。当初、ケ小平の評価を下げ
て、毛沢東の業績を引き継ぐとしたかったが、反対派から意見があ
り、ケ小平の評価を下げられなかった。

ということで、毛沢東を中国の建国者、ケ小平を中国を豊かにした
人として、習近平を中国を強国にする人と3人を並べて、しかし、毛
沢東はトップであるが、ケ小平より上とはならず、想定していたよ
り、党内での反対が大きかったことがわかる。

恒大などの不動産会社に、債券発行を部分的に認めて、徐々に潰す
方向でバブルを徐々に小さくする方向になったようだ。もう1つが不
動産税を取り、住んでいない家に大きな経費が掛かるようにしたこ
ともバブルを小さくするのに効果ある。

不動産バブル解消に中国は、ハードランディングではなく、ソフト
ランディングに政策を移行している。

不動産税ができて、中国富裕層は、東京など世界の投資用マンショ
ン購入で資産を防衛しようとしている。このため、東京のマンショ
ン価格が上がっている。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、9月
14日は30,670円で31年ぶりの高値になり、11月5日は29,611円で、8
日は104円安の29,507円、9日は221円安の29,285円、10日は178円安
の29,106円、11日は171円安の29,277円、12日は332円高の29,609円。

11月第2週は、下げから始まったが、週間では、ほぼ横ばいになった
。中国の六中全会で社会主義的な政策が決定する可能性があり、一
番影響が出る日本企業に先物の売りが出て、大きく下げた。しかし
、六中全会の歴史決議も想定レベル以下であり、資本主義の否定で
はなかったことで、買い戻された。

もう1つの原因は、恒大のデフォルトが起きると見られていたが、11
月11日の利払いが実施されて、起こらなかったことである。

日本企業の空売りが下げの原因であるが、日本企業の8割の業績は好
調である。1割が下落、1割が見通しを出さないことで、この1割は利
益ゼロ換算になり、そして大きかったのが、中国投資企業の株価の
下落でソフトバンクGが3000億円の赤字に転落したことである。

これにより、EPSは2157円から2027円に下がり、このためPERは13.8
倍から14.8倍になったことで、売られたようにも見える。指数投資
の指標であり、これは大きい。

しかし、日本企業の8割が上方修正や見通しどおりであり、空売りの
買戻しが出て、金曜日は大幅な上昇になった。この結果、週間で見
ると変わらずになる。

今後心配なのが、企業物価で8%上昇にもなり、消費者物価上昇は0.6
%であり、コストの転嫁ができずに、企業収益が下がって行くことに
なる可能性と、一方円安で輸出企業は恩恵を受けることになる。

よって、この2つの要因で、企業の収益がどのように変化するか、注
意が必要になっている。

2.岸田政権は分配ばかり
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日本は給付金を十分に国民に実施しなかったことで、株価は上昇し
ていないが、今の状態の方が米国のバブリーな株高に比べて、正常
であろうと思う。

しかし、コロナが収まった来年1月に18歳未満の子供に付き1人10万
円が支給される。これは、遅いし、困っているときでもない。なに
がが変である。この10万円は貯蓄に回るだけでなので、半分をクー
ポンにするという。また、困窮家庭や学生にも10万円給付するとい
う。

そのほかに、介護士、看護師、保育士などの給与を上げるというが
、これは良いことであるが、利用者の料金を上げないで行うと、こ
れも一種の給付金である。

今困っているのは観光業関係者であり、早くGOTOトラベルを始める
必要があるのに、来年2月以降と当初言っていたが、クレームがきた
のか来年1月になった。困っている国民の声を反映するのが遅い。

今、コロナが下火になっているときに、観光業界に観光客を増やし
て、売上金を入れないと、来年中期に再度コロナが再流行したら、
観光業界全体が倒産してしまう事態が起こりえる。観光業を政府は
潰すことになる。

産業政策として、中小企業への250万円の支援金はあるが、これも産
業育成策ではない。給付金の一種であろう。1つだけ、コロナ飲み
薬の開発支援が盛り込まれたが、外国企業分の可能性もあり、国内
企業への支援でない可能性がある。

ということで、給付優先で産業育成政策がなにもない40兆円の補正
予算になってしまったようだ。

今まであった、国土強靭化、脱炭素での資源再利用、再生可能エネ
ルギー、半導体の国内企業育成などの言葉が見えないことになって
いる。

これでは、政策期待の手がかりを失い株価上昇も起きないことにな
り、新興市場は活気がなくなっている。

それより、日本のインフレ対策はどうするのかが見えない。原油価
格は上昇するし、日銀が量的緩和継続という限りは、円安に振れる
ことになり、輸入物価の上昇で、一層のインフレ懸念は大きい。

世界の中央銀行と同様に、日銀もテーパリングを公表する方向で、
政策を転換する必要になっているはずだ。そうすると、今までのよ
うな財政支出の膨張もできないことになる。もし、財政支出の縮小
をしないと、金利上昇になり、国債費の膨張になる。

MMTでもインフレが起きたら、財政支出の縮小が必要としている
ので、その理論を信じた人たちも、財政拡大から財政縮小方向での
主張変更が必要であるが、そのように見えない。

財政縮小の時期に来ているのに、給付金を配る日本は、世界の方向
と逆行しているように見える。これでよいのでしょうかね。

財政縮小でも増税でも、日本国民は確実に貧困化することになる。
今までの金融緩和と財政赤字垂れ流しの上に、製造業育成政策なし
の付けを払う時期に来たようである。産業政策なしでは、日本は確
実に衰退する。

しかし、円安になるということが悪いことだけではない。日本を再
度、輸出立国にするために必要なことでもある。輸出競争に勝つた
めにウォン安に韓国は為替介入しているが、日本は長年の量的金融
緩和で通貨膨張が起き円安になるので、為替操作ではなく米国も文
句が言えない。

3.インフレで米国の政治が変わる
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米国のインフレ加速で、バイデン支持率が落ちている。脱炭素によ
るガソリン価格の高騰で、民主党から共和党に支持が流れている。

それが原因で、バージニア州知事選で共和党候補が当選した。民主
党の地盤であるニュージャージー州知事選でも、共和党候補に詰め
寄られている。次期大統領選挙でのトランプ候補の当選可能性が増
している。

その上に、不動産価格の大きな値上がりで、配当利回り4%にするた
めに、来年3月の改定期に、家賃の大幅な上昇が起きて、家賃が払え
ずに、家を出る必要になる人や家族が増えることになりそうである。
これが原因で、米国民の不満が高まる心配がある。

このため、直近の中間選挙では、上院選挙で共和党が再逆転する可
能性が高い。下院でも共和党が議席数を増すことになる。

これらにより、欧州を中心とした過激な脱炭素運動も、米国で見直
しになる可能性もあり、日本も脱炭素の方向にシフトする必要はあ
るが、過激なシフトは指向しない方が良い。

勿論、2050年CO2排出ゼロの目標は堅持していくことであるが、着実
な削減を実行していくことである。

このような米国では、次期選挙でトランプ氏が大統領になる可能性
があり、大きな政策の変更もあると見て、準備していた方が良い。

日本は中国に代わる商品の供給国になるしかない。日本企業は円安
のなる日本に戻り、日本で生産することである。労働者不足の解決
のために、東南アジアの移民を受け入れていくことである。

コロナなどの疫病の対応では、先進国での工場しか有効ではないこ
とが、今回のことで十分わかったと思う。工場の国内回帰が必要で
あるので、円安の方向で政策をシフトして、政策検討を開始した方
がよい。

さあ、どうなりますか?



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