6201.分配より成長の方が必要



岸田政権も野党も分配中心の公約になっているが、今一番必要なの
がパイを増やすこと、経済成長をどうするのかである。これを検討
しよう。                   津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年8月16日は35,625ドルで最高値更新、10月8日は34,746ドルで
11日は250ドル安の34,496ドル、12日は117ドル安の34,378ドル、13
日は0ドル安の34,377ドル、14日は534ドル高の34,912ドル、15日は
382ドル高の35,294ドル。

原油が82ドル台になり、一時84ドルにもなって、インフレ傾向にな
っている。このため、11月FOMCでテーパリング開始を発表して、12
月から開始することは、ほぼ間違いことになっている。

そして、米国の小売業売り上げが9月が予想外の0.7%増になり、こ
の2日は株価が上昇している。長期金利も1.6%から1.53%に下落した
ことで、NADAQも上昇している。

しかし、中国の電力不足による工場の操業停止で、供給に問題が出
て、米CPIは5%になっているが、同様に中国PPIも5%であり、米中は
一蓮托生の関係になっている。中国の生産品の多くが米国に供給さ
れているからである。

このため、バイデン大統領も対中政策で、圧力緩和の方向に向かっ
ている。貿易協定も再度始め、米国の農産品やエネルギーの買い入
れを中国に迫るとしている。

もう1つが、シェールガスへの新規投資をバイデン大統領は制限し
たことで、ガソリン価格が上がり、バイデン大統領の支持率が下が
っている。しかし、民主党左派の影響で、脱炭素を推し進める必要
から、シェールガスへの投資制限を外すことができない。
しかし、このまま、中間選挙を迎えると、民主党は共和党に負ける
可能性が出ている。

3つ目が、このように供給が絞られているので、米国の来期企業業
績が心配になってきている。PERが30倍と株高の状態を保てるのかで
ある。

その上に、FRBは、国債買い入れをテーパリングで徐々に縮小するこ
とと債務上限問題から、果たして新ニューディール政策としてのイ
ンフラ投資ができるのかしらという疑問が出てくる。

一方、中国の恒大問題は、人民元建ての社債の利子は払うが、ドル
建て債の利子は払わないようである。また、中国人民銀行は、恒大
の倒産では金融市場の混乱を起こさせないとした。

ということは、恒大の倒産が秒読みの段階になっていることと、他
の不動産会社も倒産するようである。不動産業の経済規模は、GDPの
30%程度であり、大きな経済衝撃になる可能性がある。

しかし、中国は資本主義ではなく、社会主義国であり、習近平が決
めれば、断固として行うようだ。そして、国民の多くを占める貧困
層は、拍手喝采なのであろう。

そして、11月の党大会では、歴史の修正が行われて、ケ小平の位置
づけが社会主義を放棄して、資本主義を入れ、毛沢東の理想から大
きくそらしたという罪人となり、中国の偉大な指導者は、毛沢東と
習近平の2人しかないとなる。そして、習近平は永久政権になり、
死亡するまでトップでいる。まるで中国皇帝だ。

権力を固めるために、全国の銀行に調査に入り、不正で蓄財した政
治家を洗い出して、すべて断罪に処するようで、文化大革命バーシ
ョン2を進めるようだ。習近平側近以外の人間は、金持ちにはしな
いということである。しかし、前回の文化大革命のように、高級技
術者(知識人)を殺すことはない。

というより、中国はハイテク技術に資源を集中して、経済規模の拡
大にまい進するようである。娯楽も禁止であり、社会主義バーショ
ン2を目指すようだ。目指す方向は、ハイテク社会主義であろう。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、9月
14日は30,670円で31年ぶりの高値になり、10月8日は28,048円で、
11日は449円高の28,498円、12日は267円安の28,230円、13日は90円
安の28,140円、14日は410円高の28,550円、15日は517円高の29,068
円。

岸田首相が決まって下げた株価は、10月14日に解散したことで一転
上昇している。過去の選挙期間中の株価は、すべて上昇しているの
で、上げは続くとみられる。裏でGPIFが買い入れを増やしているよ
うな気がする。

海外投資家は、買い越していないのに値上がりが急である。個人投
資家は、そこまで積極的ではないし、上げる材料がないのに、上げ
ている。これに伴い、海外投資家の空売りの買戻しを誘い、株価は
上昇したものと思われる。

ということで意図的な株価上昇であり、選挙後に企業業績が悪けれ
ば、株価は下がり、業績が良ければ株価は維持することになる。

しかし、114円台の円安になり、日本もインフレになる。輸入物価の
大幅な上昇が起きて、国民の生活は苦しくなる。苦しくなると、一
番先に節約するのは、飲食費になる。ということで飲食業界は、一
難去って、また一難に遭遇する可能性がある。

早く、GOTOイートやGOTOトラベルを開始するか、借金を肩代わりす
るかして、旅行業界と飲食業界を助けないと、この2つの業界は、
決定的に没落していくことになる。

GOTOであると、需要の先食いが心配であるが、債務の肩代わりは規
律のゆるみが出るので、どちらも問題点はある。しかし、それを行
わないと、業界の存亡に関わる事態になる。

業界の衰退が起きると、インフレ下での景気後退になり、スタグフ
レーションになる、一番心配していた状態に日本は遭遇することに
なりそうである。勿論、株価も下がることになる。

ということで、分配より経済成長が必要な理由でもある。

2.分配より経済成長を
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自民党も野党も分配を公約して、経済成長の具体策がない。これで
は、日本は「共同貧困」化した社会になる。野党では日本維新の会
が構造改革と言うが、この具体策もないし、構造改革は、さんざん
今まで実施してきたが、国鉄民営化、電電公社民営化、郵貯民営化
のような大規模な改革でしか経済成長ができていない。どちらにし
ても、明確な経済成長の具体策がないことが問題なのである。

日本の人口が減少しているから経済成長は無理とか、物価を上げれ
ば経済成長できるとか、どうも頓珍漢なことを言って、まともな議
論を聞いたことがない。

日本が輝いた30年前は、どうであったかだ。この時代を思い出して
、日本経済を復活した方が良い。勿論、問題点が除去する必要はあ
るが、この時代の日本を研究して、中国も韓国も経済成長してきた。

その中核の考え方は、輸出立国である。日本の輸出はGDPの11%と小
さいので、この輸出を増やすことが必要なのである。農業でも工業
でも優秀な商品を作り、世界に売ることである。

円安にして輸出を増やすことはできるが、東南アジア諸国の労働賃
金との競争で負けるので、円安での輸出増はできない。

ハイテク製品やグローバル経済の元でのサービスの世界展開をする
しかないが、ITサービスでは米国に勝てない。

よって、技術的なハイテク製品を作り、世界に輸出するしかない。
これができているのが、半導体のウエハー生産の信越化学とサムコ
である。これに続く企業を各分野で作り、日本で生産しても勝てる
製品を作ることである。

農業食品分野では、旭酒造の獺祭やニッカの赤ワイン『YUHZOME』で
あろうが、大量生産ができない。このため、工業分野での製品を作
るしかない。

ということで、ハイテク製品を開発して、かつ世界で売れる製品を
作るためには、実用化研究と基礎研究をリンクして行う必要がある。

しかし、民間企業では、研究開発の多額の投資はできないので、研
究開発の補助金が必要になる。しかし、現時点を見ると、研究開発
が製品化に結びついていない。

補助金があると、それを狙って、利益を出す指向になり、結果が実
用化に結びつかず、無駄な補助金となってしまっている。これを是
正しないと、難しい。

米国の軍事研究や、韓国の民間企業の製品技術開発への補助、中国
の国営企業での研究などの方向でしか、実用化に結びついていない
。日本の研究開発は、何かが中途半端である。このため、研究開発
が実用化に結びつかずに、他国に先を越されることになっている。

半導体の製造では、技術力のある企業は、キオクシアしかないが、
そのキオクシアもWDに売り払うというし、何かが変である。日本の
経済成長には、産業振興が必要という概念がなさすぎである。

・矢野財務事務次官の投稿について
安倍政権での問題は、金融緩和すれば、経済成長するというトンで
もな経済理論を信じて、経済成長もなく20年を棒に振っている。こ
の延長上にMMTがあり、高市さんが主張していた。

その上、今回の選挙では、野党も与党も分配高を競っているが、矢
野財務事務次官の投稿は、途中の論理にはおかしいところもあるが
、その趣旨は、プライマリー・バランスを早く取り戻さないと、財
政破綻を起こすということだ。この投稿が問題になっているが、私
は、基本的にその通りであると思っている。

しかし、コロナ禍で傷ついた業界や個人に給付金や支援をすること
は必要であり、30兆円規模の補正予算は実施するべきである。

その代わり、当面の処置として、日銀が持っている国債を金利ゼロ
の永久国債にして保留することで、予算規模を小さくして、その予
算規模でのプライマリー・バランスを早期に取ることである。

いつまでに、プライマリー・バランスを取ればよいかは、見えない
が、米中で中央銀行バブルが崩壊すると、日本国債の金利も上昇す
ることになるが、国債を無限に日銀が買い付けることでしか、金利
上昇を防ぐことができない。

金利上昇すると、国債費が膨大になり、プライマリーバランスはで
きないことになる。財政規模が急膨張して、財政破綻を起こしてし
まうことになる。

しかし、日銀の無限買い取りでは、日本は超円安になり、ハイイン
フレ状態になる。これは、昔から警告していた。すぐそこに、その
状態が来ているような気がする。非常に危険な状態になっている。
この問題意識は、矢野事務次官を一緒である。

ハイパーインフレにはならないが、円高74円の3倍程度の1ドル=
250円程度の円安にはなり、価格は今の2倍程度のハイインフレには
なる。しかし、ハイインフレになると、国債の重みが軽くなるので
、財務省にとっては良いことになる。景気は大幅なダウンになる。

日本だけではなく、世界的な現象となる。日本の真似をして、数年
で大量のお金を市中に出した付けの回収のためである。

しかし、ハイインフレになると国民は大変である。借金の踏み倒し
が起きるようなものだからである。このため、現金預金で持つのは
、今後は危ないような気がする。しかし、株も一度、大暴落する。
しかし、現預金を違い、物価が上昇すると、それに合わせた格好で
上昇するので、目減りが少なくできる。

大都市の不動産や国債以外の金融資産で持つことを強くお勧めする
が、ハイインフレになると、多くの日本国民は貧乏になる。1700兆
円のほとんどを銀行預金で持っているし、その金利はゼロであるの
で、実質850兆円に目減りするからだ。

というように、残された時間が少ない。早く、成長戦略を実行しな
いと、日本の没落はすぐそこにある。

・経済成長戦略
成長戦略は、日本が持つ技術を世界トップにして、その技術で作る
製品を世界に売ることである。輸出立国でしか、日本がこの状況を
抜け出すことはできない。

今、世界の関心は、温暖化防止で太陽光などの自然エネルギーの研
究開発であり、欧米や中国なども世界的な製品を作るので、日本も
追いかけて、世界に売り出す製品を作るというが、それは相当に無
理だと思う。

この分野は、理論が固まってきて、安値競争になっているので、日
本企業の出る幕がない。勿論、再生可能エネルギーを使うことを否
定しているわけではない。再生可能エネルギーを使えば、輸入する
石油や天然ガスの量を減らせるので、貿易収支は良くなる。

が、日本で再生可能エネルギーの新製品を製造しても世界に売れな
いということである。日本国内で売るにしても価格が高いことにな
る。

6Gなどの分野は、日本企業の勝つ余地があるし、半導体製造でも
勝てる余地がある。経済規模が大きいのは、自動車であるが、現時
点で電池で負けた。鉄系リチウムイオン電池の価格が安く、その電
池を使ったEVしか生き残れない。

ということで、リチウムイオン電池で負けたので、電気自動車でも
中国勢の力が強くなっている。ハイブリット車で優位なトヨタの時
代は、今後長くは続かない。

しかし、日本の固体型電池で、鉄系リチウム電池をひっくり返すこ
とができれば、日本のEVに勝つチャンスはある。そのため、この
分野は負けられない。

しかし、この分野の開発は、安全性を重視して慎重に進めているが、
スピードを早めていくことである。そうしないと安全性無視の中国
が先に製品化して中国国内で実績を積み、世界に供給開始するから
である。

そのような時代であり、早く次の産業規模大きな分野で日本優位商
品を作らないと、日本の地盤沈下は止まらない。危機意識をもって
、取り組むことである。

そのためにも、日本が勝てる産業規模の大きな分野への重点指向で
、産業育成を行うことが重要なことになっている。

さあ、どうなりますか?



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