6200.新しい日本型資本主義とは



岸田首相の所信表明で言われた日本型の資本主義とは何かを検討し
よう。                    津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年8月16日は35,625ドルで最高値更新、10月1日は34,326ドルで
、4日は328ドル安の34,002ドル、5日は311ドル高の34,314ドル、6日
は102ドル高の34,416ドル、7日は337ドル高の34,754ドル、8日は8ド
ル安の34,746ドル。

米雇用統計で19万人増となったが、予想は45万人増であったので、
大幅に少ない。失業率は4.8%で、予想5.1%であり、こちらは良くな
っているが、労働市場に参加できない人が多数いることを暗示して
いる。統計値が弱かったので8日は8ドル安となったが、景気見通し
が強弱入り乱れている。

この状況で、原油と天然ガスの価格が大幅な上昇となっているので
、インフレが到来している。こうなると、テーパリングを早め、利
上げをするしかない。これを見越して、米長期金利は上昇し、ドル
高になっている。今後しばらくは、炭素エネルギー開発投資はでき
ないので、エネルギー価格は高止まりするようである。

そして、長期金利上昇で、理論株価は減少するので、ハイテクの高
PER株や赤字株などを中心に大幅な調整局面に来ている。このため、
NASDAQの下げが続いている。

米国の債務上限問題は、共和党が12月までの先送りで合意したこと
で当面は問題がなくなった。しかし、12月までこの問題は継続して
、長期金利の高止まりは続くことになる。株価はだらだら下がって
いくことになるようだ。

その上、FRBのパウエル議長の任期が来年に迫ったが、カプラン連銀
総裁とローゼングレン連銀総裁、それとクラリダ副議長の倫理規定
違反が判明して、パウエル議長の責任を問題視して、続投に不透明
感が出てきた。

このパウエル議長は、インフレが続くと議会証言したことで、米民
主党左派が引き締め方向に向かうと、議長の継投に難色を示してい
る。

FOMC内では、パウエル議長はハト派であり、利上げを抑えてきたが
、パウエル議長からブレナード理事が議長になると、よりハト派に
なり、インフレを加速させて、スタグフレーションに突入する心配
が出るような気がする。

長期金利は2つの要素で決まる。1つには公定歩合であり、もう1
つがインフレ予測である。このため、利上げをしなくてもインフレ
懸念になると、長期債は売られて、長期金利は上昇する。このため
、利上げがなくとも長期金利は上昇して、株価は下がることになる。

恒大問題では、不動産業界全体でデフォルトが起きる可能性が出て
いるし、中国での勝ち組を叩く方向での経済政策をとるので、高額
製品の消費が落ちている。

ドイツ8月PMIは7.7%減で、中国への輸出分で15%減となり、中国の景
気が大きく落ちていることが想像できる状態になってきた。

このため、習近平国家主席は、国内景気が落ちて、不満が出ている
ので、国内の不満を解消させるために、台湾統一を行うと宣言した
。国内景気が落ちたことによる不満に対して、国民の目を海外に移
すという歴史上で、何遍も見てきた光景を、また再現させている。

このように全体的な世界景気はピークを打ち、今後落ちていくこと
になる。このため、株価も高い位置にあるので、見直しがされるこ
とになるし、動乱を呼び込むことになる。いやな時代が到来しつつ
あるような気がする。

1.日本の選挙に向けて
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、9月
14日は30,670円で31年ぶりの高値になり、10月1日は28,771円で、
4日は326円安の28,444円、5日は622円安の27,822円、6日は293円安
の27,528円、7日は149円高の27,678円、8日は370円高の28,048円。

岸田首相が決まってから8日続落で、12年3ケ月ぶりの下げになった。
菅首相不出馬で上げた分を帳消しにした。この間、2700円以上も下
げた「岸田ショック」である。分配と成長というが、株式市場にと
っては、大きな過重がのしかかってきた。

この大きな過重は、金融所得への課税強化であり、一律5%の引き上
げになる可能性が高いようである。これに反発したように見える。

岸田派の山本衆院議員は、株式譲渡益や配当金など金融所得への課
税について、現行の一律20%(所得税15%、住民税5%)から25%
程度への引き上げが適当だとした。この発言は岸田首相の意を受け
てしたものと思われる。

貯蓄から投資へという掛け声で、一般投資家が増えてきた。この人
たちへの裏切りである。課税率が少なくなる所得1億円以上の所得
のある人たちへの金融所得増税には賛成するが、金融所得一律増税
には、反対という人たちが多い。累進制の導入をするべきだ。

もし、このまま、この一律増税を修正しないと、衆議院選挙で、自
民党は、大幅な議席数を失いかねない。年金生活者の半分程度とサ
ラリーマンの半分程度は投資をしている。

この人たちの票を失うことになる。多くの人が今回は自民党に入れ
ないという。投資家は、今まで自民党支持であったが、今回は違う
ことになる。

立憲民主党の枝野党首は、岸田首相の「分配と成長」の国づくりは
、菅直人政権で言っていたことであり、所信表明演説で具体策がな
いと批判している。目指す方向は野党も一緒をいうことである。そ
れほど、岸田政権の方針は野党である。しかし、それでは自民党支
持者を失うことになる。

自民党の支持者を敵に回すことは、自民党の崩壊になる。岸田政権
は自民党から野党への政権交代をしたような感じであり、今までの
自民党支持者は離れ、社会的弱者で今まで野党支持の人たちが自民
党支持者になる。野党票を取りに行って、自民党票を手放すという
ことになる。

下手をすると、政権を失うことになる。なんで、この時期に山本衆
院議員は、多くの自民党支持者を敵に回すことをいうのか、よくわ
からない。

コロナ禍で傷ついた飲食業界や旅行業界に給付金を出さないことで
今回は自民党に入れないとした人たちを助ける必要があるが、その
財源を得るために、より広範な自民党支持者を敵に回す気のようだ。

野党は、この部分を選挙の一大争点とするべきである。これは自民
党の大きな失点になる。そして、自民党支持者の多くの票を得るこ
とができるはずだ。

岸田首相は、金融所得税の累進制での増税と修正して、離反する支
持層を少なくするべきである。もし、あいまいにすると、国民は一
律増税ととらえて、自民党には投票しない。結果は見えている。

2.新しい日本型資本主義とは
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「分配と成長」は、非常に良いことである。中間層にサヤ寄せして
、中間層の厚みを増やすことは重要である。目指す方向は、大賛成
であるが、どのように実現するかでしょうね。

基本は、公と民のバランスをどう取るのかである。公の仕事がうま
くいかないなら、民の仕事として規制緩和をする。今、見直しはコ
ロナ禍で保健所のボトルネックが発生していた。この部分を民に回
すしかない。

コロナ自宅待機者への食糧供給や、病院手配と病状確認などは「か
かりつけ医」や地域ボランティアなどを指定して、保健所のネック
を解消しないと、無用な死者を出すことになる。規制緩和が必要な
ことになっている。

保育所も規制緩和で民に任したことで数を充足できたが、保育士の
数が足りなく待遇改善をするべきだが、補助金を増やしても民の儲
けになり、保育士に補助金が回らないことになる。それなら、公が
出るしかない。規制強化である。

このように問題解決するために、公と民を組み合わせることだ。

民でうまくいかない問題は、公が出るしかない。貧富の差が拡大す
るのは、分配がうまくいっていないからで、その部分には、公の仕
事である。一番日本の成長に必要な研究開発は、民だけでは足りな
く、公が出ていくことであるが、純粋な公だけでは、基礎と応用研
究の2つをつなぐことができない。このため、準公という存在も必
要になる。

もう1つが、人間は金に目がくらみ、公の汚職や民間の詐欺や過剰
債務などが起きるので、それが起きたときは、権利・権力を移動す
ることも必要になる。

このため、公と民の権利の循環が起きている。規制強化と規制緩和
を使い、その調整をすることである。今は、民の権利が大きくなり
、貧富の差の拡大や国民の利益を阻害しているので、世界的に規制
強化の方向になっている。

もう1つ、日本では、権力が官邸に集まり過ぎて、政治家の腐敗が
大きくなり、その浄化が必要な時期であり、岸田政権のように官邸
から党や官僚に権限移譲は良いような気がする。

観点は違うが、3つ目は、非正規社員と正規社員の格差であるが、
企業もテレワークしやすいようにジョブ型の仕事にシフトさせてい
るということは、社員全員を非正規社員にして、管理職以上を正規
社員にすることで、非正規と正規の差をなくすしかない。これで、
日本企業内での格差は、なくなる。

そして、国としては最低賃金を上げることで、全体の賃金を上げて
、貧富の差を縮小させるしかない。

新しい日本型資本主義とは、日本に生きる人たちが全員、笑顔で過
ごせる人間中心の資本主義を作ることである。イデオロギーではな
く、そこに生きる人たちの多くが、満足ではないが不満ではない社
会にすることだ。

そのためには、累進制度をしっかり作る必要がある。社会保障費の
ような一律の税金のようなものではなく、相続税や所得税のような
累進課税、使う分に課税する消費税、贅沢品に課税するぜいたく税
などという累進的な課税システムにすることである。贅沢品に課税
する分、食糧には課税しないことである。この仕組みを作るにも、
マイナンバー制度で、収入を捕捉する必要がある。

最終的には、ベーシック・インカムは必要になると見る。最低保証
で、そのあとは個人の努力という世界であろう。

さあ、どうなりますか?



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