6199.岸田首相への失望感



岸田首相になり、株価が下落して元の木阿弥に戻ってしまった。株
価を上げるには、野心的な経済政策が必要である。それを検討しよ
う。                    津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年8月16日は35,625ドルで最高値更新、9月24日は34,798ドルで
27日は71ドル高の34,869ドル、28日は569ドル安の34,299ドル、29日
は90ドル高の34,390ドル、30日は546ドル安の33,843ドル、10月1日
は482ドル高の34,326ドル。

原油とLNGガスの価格上昇で、世界的なインフレが起こり始めている
。そのインフレに対応するために金融引き締めに世界が動き、それ
による金利上昇で、株価が下がる展開になっている。

その上に米国は債務上限問題があり、共和党は債務上限の引き上げ
に対して反対の姿勢である。イエレン財務長官は10月18日が政府債
務がギリギリで、デフォルトになる可能性もあると警告している。

しかし、FRBは11月のFOMCでテーパリング開始を発表する予定である
。そのため、金利が上昇して1.56%まで上昇した。経済指標はまちま
ちで、悪い値が出ると株価が下がり、良い値が出ると上がる展開に
なっている。

しかし、神経質な株価動向であるが、徐々に株価は切り下げている
。下がると、押し目買いが入るが、徐々に資金枯渇になり、それも
できなくなる方向になる。ということで、買い場はまだ先である。

中国は、恒大集団の資産売却を銀行が買い取り、資金繰りを助けて
いるが、元建て債券の利息は払うが、ドル建て債券の利息は払わな
いで、海外投資家の切り捨てのようだ。地方政府は工事を継続でき
るように資金を管理する方向である。

ということで、LTCM型破綻処理に向かうようであるが、不動産業界
全体が恒大集団と同じような債務状況であり、破綻が続く可能性が
ある。

それより問題なのが、電力不足で工場の操業ができないことである。
中国は環境対策として石炭火力発電所の抑制に動いたことで、全国
の約3分2の地域で電力供給の制限という異常事態となっている。

もう1つが、中国は昨年10月、豪州産石炭を輸入停止したが、代替
輸入先が見つからず、石炭価格の上昇を招いている。中国の石炭在
庫量は、今後2週間で底を突くとの憶測も出ている。

このため、国内石炭鉱山企業へ石炭フル生産命令を出したが、それ
でも豪州からの石炭輸入を禁止している状態では、電力不足は当分
続くことになる。その結果、中国のPMIも50%以下と景気減速を示唆
している。

このため、中国の電力不足で世界の商品市場は揺らぎ、肥料からシ
リコンに至るまで値上がりした。世界的なインフレの原因にもなっ
ている。

欧州でも石油とLNGガスが高騰して、石炭への需要が多くなり、世界
的なエネルギー価格が上昇している。その上に、「脱炭素」運動で
、炭素エネルギーへの投資をしないので、供給が増えないことにな
り、当分、エネルギー価格の高騰が続く可能性が高い。そして、そ
の結果、インフレが続くことにもなる。

「脱炭素」運動の影響でインフレが起き、かつ工場の操業短縮で、
景気は落ち、スタグフレーションになるようである。急進的な「脱
炭素」運動が、世界経済を壊すことになるようだ。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、9月
14日は30,670円で31年ぶりの高値になり、24日は30,248円で。27日
は8円安の30,240円、28日は56円安の30,183円、29日は639円安の
29,544円、30日は91円安の29,452円、10月1日は681円安の28,771円。

8月30日から始まった日本株の大幅な上昇局面が終わり、岸田さんが
総裁選挙で勝ったことで海外投資家の失望売りで、菅首相の辞任表
明した後の8月30日の27,789円より安値になっている。10月1日は株
価の大幅な下落と台風の嵐で、2重の嵐を東京にもたらした。

10月1日と9月29日に、日銀は700億円のETF買いをしたが、それだけ
では下落は止まらない。

海外投資家の河野さんへの期待が大きかったことを示している。そ
れは、河野さんの主張が世界の主流の思想だからであるが、日本の
保守的な人たちからは、拒否されたことになる。

米国の株価下落、世界的な供給不足でのインフレ、米金利上昇での
円安、エネルギー価格高騰などとともに、日本の経済発展を疑問視
したことで、日本売りになってしまった。そして、円安は、一時112
円台になっている。

しかし、日本のチャンスが到来したようにも感じている。電力不足
の中国からの品不足、コロナ禍のアジアからの品不足で、日本から
の品物に世界は期待していることになる。その期待に添えれば、日
本は復活するはずである。特に素材への期待が大きい。

現時点では、自動車生産がマイナス7%になり、このまま続くと、日
本も成長全体がマイナスになる危険性もある。世界的なサプライチ
ェーンの見直しが必要であり、工場の日本回帰が必要になっている
ようにも見える。

そして、岸田さんの就任直後の暴落は、催促相場でもあり、金融利
得の増税などの発言や経済政策が増税によるからだ。修正や説明が
必要である。

日本型の新しい資本主義という概念はわかったが、その中身がまだ
見えていない。日本版「共同富裕」とも見える。

「共同富裕」は、「共同貧困」にもつながるので、どう経済成長を
させて、実現するかが問題である。この話はあとでする。

2.自民党総裁選挙結果
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総裁選挙では岸田さんが当選した。菅・二階政権から再度、安倍・
麻生・甘利主導の政権に戻った。岸田総裁は、岸田派から重要なポ
ストに人を出さなかった。細田派と麻生派が主流になっている。

しかし、麻生さんはお見事である。自派の河野さん支援と同時に、
大幹部の甘利さんと麻生さん自身を岸田さんの支援にし、どちらが
勝っても得をする構図を作り、政権を3Aで回す仕組みを作った。

河野さんを広報本部長というポストに左遷する代わりに、自派の議
員を重要ポストに送り込んでいる。

安倍さんも細田派の半分を高市さんと岸田さんに分けて配置して、
最後に、全員で岸田さん支援に向かわせるという戦術で、自派を主
流に戻した。それと、北村さんなど安倍政権で活躍した人を再度、
重要ポストに復帰させている。財務省主流から経産省主流に復帰さ
せた。

しかし、安倍さんが思い描く人事はできなかったので、一番勝った
のは、麻生さんだ。最初から安倍さんも岸田さんを応援するか細田
派の大幹部を岸田さん応援に回すべきであったが、安倍さんの脅し
で議員票の多くを岸田さんから高市さんに回した。このため、岸田
さんは、麻生さんには恩義を感じるが、安倍さんには恩義を感じて
いない。

二階派は、その点、重要ポストに就任できずで、最後の段階で岸田
さん支持にしたが、時すでに遅しである。主要ポストから排除され
た。一番負けた。

ということは、岸田政権は王政復古ととらえることができる。革新
的であるが説明不足な若手・実力者政権から、気品があり説明上手
な貴族政権になったことである。しかし、この政権変更で、海外投
資家は日本売りになっている。

菅首相辞任で、期待感から日本買いで株価は上昇になったが、元の
木阿弥状態になってしまった。自民党は衆議院選挙では勝つかもし
れないが、今までと違わない。このため、来年には自民党はまた、
支持されなくなる可能性がある。そのため、政治が安定しなくなる。

海外の報道機関の岸田さんの紹介でも、変化は起こらないとしたこ
とと、党員票が少ない国民の期待観のない勝利で、海外投資家は、
失望したようである。

トップの貴族と実力者のセカンドという院政政治体制にもなってい
ないので、岸田さんは早晩、人気がなくなるとみる。お灸を据えた
アクの強い河野さんを早く重要ポストに戻すべきである。アクが強
い分、魅力的な政策が実行できる。

しかし、河野さんは、世界的な「脱炭素」「脱原発」思想の流れと
同じ主張をしたが、党員票ではトップであったが、議員票は少なく
、議員票の獲得が今後課題であり、議員や官僚との関係を良好にし
ない限り、首相への道は遠いと見えた。ということで、議員や官僚
への傲慢な態度を改める必要があるようだ。

麻生さんは、河野さんを育てるためにあえて総裁選挙出馬を許した
可能性もある。麻生さんはその意味でも勝ったような感じである。

それと、河野さんの対中関係ももう少し、厳しくてもよいような感
じである。自民党のスタンスが対中関係で厳しい方向に大きく変化
していることを示した。

3.先祖帰りの技術開発政策が必要
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コロナ禍から抜け出して、やっと正常化が見える段階に来た。今後
は、GOTOトラベルやGOTOイートなどの30兆円以上の経済対策を打ち
、経済の正常化を真っ先におこなべきであるが、それだけでは日本
経済は縮小均衡になり、衰退を止められない。

産業育成政策が必要である。国家が主導した産業育成策をとり、再
度、日本を技術大国にするべきである。そのためには、戦後、日本
を技術大国にした原因を調べることだ。

その結果わかることは、研究中心の国有企業が必要ということであ
る。昔、日本が欧米諸国に追いついた原動力は、NTTと国鉄の研
究機関が民間企業へ開発した技術を渡して、民間企業を育成したか
らである。その仕組みを中国も韓国もマネして、日本を技術力で追
い抜いたのである。

韓国のようにLGとサクソンの民間企業へ研究資金援助して肩入れ
してもよいが、一番いいのが、NTTやJR、郵政は、現在でも準
国営企業でもあり、ここを使って研究開発して、できた技術を日本
企業に開放して、日本企業の実力を上げることだ。

それ以外、中国や韓国に技術力で追いつかないはずである。大胆な
研究開発投資を日本企業はしないので、準国営企業を使かって大胆
な研究開発費を行うしかない。自動車にはトヨタという巨大会社が
いるので、国家も支援して巨額の研究費をねん出できるが、他の会
社では無理である。

国が資金を出ないと研究開発費に投資できない。国の産業育成とい
う意思が重要なのである。

その上、事業サービスに必要な技術開発という動機がない国の純粋
な研究機関では、本当に事業で使える技術を開発できない。半導体
技術を追いつくにも、準国営企業で、そこに大胆な研究投資をする
ことである。政策の方向が悪いと資金を出しても研究開発で実用的
な技術はできない。

日銀が積極的にETF買いをしたことで、すでに株式保有率は高いので
、国が少し資金を出して、研究開発させる有望事業会社を50%以上
の資本を持つ準国有化すればよいのである。株価も上がり、産業育
成もできるということになる。一石二鳥だ。

しかし、100%国有化すると、社員が甘えるので止めた方が良い。国
は、あくまでも研究費の補助をするだけである。事業の儲けで、社
員の給与と3%程度の配当金を出すことを求めることだ。

実務を伴う準国営企業の研究機関を作り、その成果で豊かな日本経
済の道筋を付けるしかない。日本の成功をダメにしたのは、米国か
らの完全民営化要求で主要な研究機関を潰されたことである。

その機関とは、電電公社の通信研究所と国鉄の鉄道技術研究所であ
る。この2つが開発した技術が日本の繁栄を作り、この2つの機関
を潰されたことで、日本は長期衰退しているのである。

独占の弊害は、海外企業の競争会社を作ることで防ぎ、40%程度の民
営化で研究所を国主導で存続して置くべきを、完全民営化して競争
にさらして、金の卵を産む研究所をつぶしてしまった。

早く、そのことに気が付くべきであるが、米国に遠慮して、誰もい
わなかった。戦後の技術発展の仕組みをなぜ、誰も見ないのであろ
うか?

もう1つが、新しいデジタル庁である。この役所を研究開発の中心
にすることも必要であろうが、実務をちゃんとしないと絵にかいた
餅になるから、気を付けるべきだ。可能であれば、準国営のNTT
データとデジタル庁を統合し、事業運営と研究所にするのもいいか
もしれない。

日本の技術を広範に高めた研究機関を潰すための米国の要求を、あ
の当時は受け入れないと、日本たたきが大変になると思い、涙を飲
んだ。しかし、今は米国の目先の敵は、中国に変わったので、日本
の先祖帰りは、米国も歓迎なはずである。

技術的な戦いで、日米欧対中国の構図になったことで、昔に戻れる
素地ができている。この素地を生かした日本復活のシナリオが必要
なのである。

それ以外に、復活方法はないので、それ以外であれば、絵にかいた
餅になるだけであり、有効な国家政策とはならない。民営化後の日
本で、いかに研究開発分野で民間活力がないかを思い知ったはずで
ある。

それなのに、今でも研究開発での民間活力と騒ぐ人たちがいるが、
この20年間でダメであることを証明したはずだ。

もう、そろそろ目を覚ませ、日本の指導者たちと言いたい。

さあ、どうなりますか?




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