6198.中台のTPP加盟申請



中国と台湾がほぼ同時にTPP加盟申請をした。これをどう見るか
が問題で、それを検討しよう。    津田より

0.米国および世界の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年8月16日は35,625ドルで最高値更新、9月17日は34,584ドルで
、20日は614ドル安の33,970ドル、21日は50ドル安の33,919ドル、22
日は339ドル高の34,258ドル、23日は506ドル高の34,764ドル、24日
は33ドル高の34,798ドル。

先週は恒大集団の債務不履行問題で倒産危機になり、20日に600ドル
超も下げたが、恒大集団が利払いしたことが好感されて、FOMCでテ
ーパリングを11月にも開始と、22年中にも利上げというアナウンス
でも上昇した。

しかし、恒大集団の利払いは今後続くので、いつかは破綻すること
になる。それでも米国への影響は限定的と市場はみなしたようであ
る。

中国政府は地方政府機関に破綻の準備をしろと通達を出している。
まずは、工事の完工に必要な資金を確保して、償還や利払いなどへ
の資金流出を防げという。不動産のバブル崩壊は、波及範囲が広く
、すべての分野でバブル崩壊を引き起こし、その阻止には多くの困
難が待ち受けることになるので、建築業者や資材業者の倒産を防ぐ
必要があるからだ。

そして、この状況を1989年の日本のバブル崩壊を周小川元人民銀行
総裁は研究して、中国当局が資金を出し続けると、ミンスキーモー
メントに遅かれ早かれなると警告していたが、とうとう、その時を
迎えたようである。

しかし、この状態でもFOMCは、11月にもテーパリングを開始とし、
かつ2022年にも利上げを開始すると発表したのに、株価は下落しな
かった。普通は金利が上昇して株価は落ちるはずが、そうなってい
ない。リスクオンの状態が続いているのは、明らかにおかしいので
、いつか強烈な下げになる可能性がある。その上に11月には連邦債
務上限問題も出てくる。インフラ投資もできないことになる。

テーパリング開始が早まったことは、インフレが続く予想に変化し
て、FOMC内タカ派が勝ったからのようだ。英国でも中央銀行がテー
パリングの前に利上げ方向のようである。英国は景気が下降してい
るのに、インフレが収まらずに、利上げを至急行う必要になってい
るからだ。

ということで、世界の中銀が利上げ方向にシフトし始めている。中
国の状況や米国の状況から利上げをするしかない。この中でトルコ
中銀だけが金利を1%も下げて、トルコリラが下落して、最安値にな
っている。

米国の利上げで、新興国は通貨不安が起きないように利上げが必要
になる。すると、経済への影響が大きくなり、世界的な経済調整局
面になる可能性も出てきたように感じる。

ということで、バブル末期になってきたようである。バブルは、ジ
ョンク債市場から崩れるので、ジャンク債の動向に注意が必要にな
っている。

そして、この状況で9月26日ドイツの選挙があり、緑の党がどこまで
票を伸ばすかも焦点の1つになる。緑の党が連立与党になると、地
球温暖化政策が加速して、経済の構造を変化させることになるから
だ。

1.日本の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、7月20日は27,013円で8ケ月ぶり
の安値、9月14日は2月16日の高値を超えた30,670円で31年ぶりの高
値で、17日は30,500円となり、21日は660円安の29,839円、22日は
200円安の29,639円、24日は609円高の30,248円。

先週は、恒大集団の倒産かというショックで21日に660円も下げたが
、24日には恒大集団が利払いをしたことで安心感から急騰している。

しかし、これは過剰な空売りの買戻しであり、急速な上昇は続かな
いはずで、ダブルトップを形成後、下落するように思う。

しかし、コロナ禍でワクチン接種率が米国を上回り、急速に新規感
染者数を縮小させている。このことで、経済活動を正常化させれば
、なんとか、企業業績を拡大させられると思う。そうすれば、下落
幅も小さくて済むことになる。

しかし、世界的な中央銀行の量的緩和がなくなり、コロナバブル相
場は終了する。業績相場にすんなりと移行できるかが勝負であるが
、この見合いで、株価は動くことになる。

その上、恒大集団の倒産の可能性は依然あり、これに連鎖して、不
動産会社の複数が倒産して、工事会社も倒産して、多くの業界に連
鎖が広がることになる。ということで、中国経済のバブル崩壊が起
こる可能性は、依然高い。この影響を日本は受ける。

習近平国家主席も「ブラックスワン」や「灰色のサイ(クレー・リ
ノ)」のような事象に備える必要があるとした。しかし、その方法
がどういうものであるかは、今一わからない。普通は1998年LTCM型
の破綻処理と思われるが、1989年日本型のバブル崩壊になる可能性
も依然としてある。

米国は、LTCM危機に対して、FRBによる利下げや大手銀行による救済
融資、LTCMの緩やかな解体などにより、何とか金融不安を起こさな
いで済んだ。そのような処理をして、日本への影響を少なくしてほ
しいですね。

2.自民党総裁選挙で、野党との差が見えなくなった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
総裁選挙では4人が立候補しているが、野田さんは、出馬が遅れた影
響が大きく、あまり票が集まらないようである。

高市さんは、安倍前首相の応援で票の上積みが起こり、党員票では
岸田さんを抜く勢いになっているようだ。河野さんは党員票で圧倒
的に優位であるとみられたが、あまりにも酷いネガティブキャンペ
ーンで、党員票が目減りした感じを受ける。反対に、高市さんの応
援団が嫌いな人も相当数いるようだ。

ということで、どうも、河野さん、岸田さん、高市さんの三者での
争いになってきたが、1回目で過半数を超える人がいないようであ
る。

決選投票は、1つに河野・岸田、2つに河野・高市、3つで岸田・
高市の3つの組み合わせがあるが、1の場合は、高市さんの票が岸
田さんに回るので、岸田優位になり、2の場合は高市さんの応援団
を嫌うために、岸田さんの票が割れるので、河野さん優位になり、
3の場合は、可能性としては低いと思うが、河野さんの票は岸田さ
んになり、岸田優位となる。

ということで、河野・高市での決選投票となると河野さんの芽が出
てくる。他では、岸田さんが優位となる。

安倍さんの頑張りで、河野さんの芽があることになる。高市さんは
河野さんより岸田さんの票を相当に食ってしまったと思える。

年金改革など、河野さんは50歳代以下の若者を意識した政策で、若
者層を狙っているが、もし、河野首相になると、野党は改革を自民
党に取られてしまい、苦戦になるような気がする。

というより、野党と自民党の差が見えないことが問題である。米国
では、共和党の国民に干渉しない小さい政府対民主党の国民を保護
する大きな政府という明確な相違点がある。

それに比べると右派の高市さんは、まるで民主党の左派オカシオ=
コルテスさんと同じ主張(MMT賛成)をして、大きな政府指向である。
自民党右派は米民主党左派と同じようで飛んでも思想という感じだ。

自民党右派は、財政再建の芽が潰し、バブル崩壊寸前の時代にその
状況を酷くする人たちと見えてしまう。野党の同様であり、日本の
終焉が近いように感じる。

中国対応するスタンスも、野党は河野さんと同じようであり、野党
と与党の差がない。特に両民主党との差を見つけずらい。

共産党との違いは、企業姿勢であるが、労働組合をバックにしてい
る両民主党は自民党と同様である。ということで、自民党の河野さ
んと高市さんの違いの方が、野党と与党の差より大きい感じがする。

共産党は、非正規社員やそれ以下の人たちを代弁するので、自民党
との違いが明確である。しかし、共産党支持層が大きくないことで
、政権を取れない。

立憲民主党は、共産党と組むというが、主張の差が大きいので、労
働組合は反発することになる。

総裁選挙後の衆議院選挙が面白くなってきた。河野さんだと野党は
大変である。岸田さんであると年金改革をぶつけることができ、若
者層の票を狙える。

3.米中対立とTPP加盟申請
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中国と台湾がTPP加盟申請をした。その前に英国がTPP加盟申
請をしている。環太平洋経済連携であるが、英国の参加で世界規模
の経済連携になると見える。

一方、米国はTPP加盟を拒否している。トランプ前大統領が米国
一国主義で、保護貿易にシフトして製造業の復活を目指したからで
あるが、バイデン政権も同様な経済政策を継続して、米国の製造業
復活を目指しているからである。その意味では米国一国主義である。

米国内では貧富の差が開いて、その差を解消しようとしている。主
に巨大IT企業への増税と規制強化、製造業復活である。それと相
似形で中国も「共同富裕」という政策で、貧富の差を解消しようと
している。

その取り組み方の差とは、資本主義内で取り組むバイデンと資本主
義を捨てて、社会主義で取り組む習近平、同じような目標に対して
、違う方法で行っている。

この2人は同じ目標点を目指している同志である。その感覚があり
、バイデン大統領は、本気に中国対決とはならないようである。中
国からの裏金の匂いもする。ということで、米中対決を望んでいな
い。

それに対して、どうも気になるのは、日本のタカ派評論家の強気な
発言や高市さんの発言であり、米バイデン政権の目指している方向
とは違う。尖閣への防衛は必要であるが、あくまでも防衛であり、
対決を煽ることはない。

貧富の差拡大のそもそもの原因は、米国が中国に新自由主義的資本
主義を押し込んだことで、米中は、どちらも貧富の差が拡大したの
である。米国は富裕層の相続税を取る方向で検討しているが、富裕
層への税金が少なかったことによる。

日本は新自由主義的資本主義を徹底しなかったことで、貧富の差は
拡大したが大きな差ではなく、何とか自由貿易ができる資本主義の
中での取組みで、解消を望めるレベルにいる。

英国は、新自由主義を徹底したことで、自国産業を破壊して、製造
業を外資に頼る必要があり、このため、日本などの資本と技術の出
し手を求めて、TPPに加盟してくるようである。

TPP自体が対中国戦略の中心として、米国が企画したが、ウッド
ロウ・ウィルソン米大統領が国際連盟を提案しながら、国際連盟に
加盟しなかったように、このTPPに加盟をしていない。

中国の目的は、米国が加盟しない空きに、TPPの理念を中国に有
利な方向にねじ曲げることである。アジアの盟主として、環太平洋
を取り仕切りたいのであろう。

台湾は、中国が加盟すると、加盟できなくなるので急遽、加盟申請
したようである。

というように、TPPをめぐる駆け引きで、世界の今後が見えてく
る。そのキー・ポイントは、貧富の差の解消方法である。日本も差
の解消で、年金改革や所得税の改革などを行う必要があると見えて
いる。世界的に富裕層の冬の時代が来る予感がする。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る