6189.中国経済の落とし穴



中国の市場経済社会主義から、非市場主義への転換で世界の経済状
況が大きな変化をきたすことになる。その検討。 津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年7月23日は35,061ドルで過去最高値に、26日は82ドル高の
35,144ドル、27日は85ドル安の35,058ドル、28日は127ドル安の
34,930ドル、29日は153ドル高の35,084ドル、30日は149ドル安の
34,935ドル。

7月第5週は、中国の教育・IT企業への締め付けが明確化して、それ
への懸念から株価は下落したが、米国金利が低水準になり、FOMCも
何事もなく通過し、4−6月期決算で企業業績は上昇で、5500億ドル
規模のインフラ投資の法案も通ることになり、株価は上昇で過去最
高を更新した。

そして、現時点でFOMCは利上げができない。それは米国財務省、企
業、家庭ともに膨大な債務があり、利上げすると、破綻になるから
である。

しかし、住宅価格の上昇などインフレがひどくなり、米セントルイ
ス連銀のブラード総裁はテーパリングを今秋開始することを要求し
ているが、FRBパウエル議長は、8月26日から始まるジャクソンホー
ルで、今後の政策を話すとした。また、次期FRB議長との噂のブレイ
ナード理事は、テーパリング開始基準を満たすには一段の雇用改善
必要と述べている。これは、FOMCでの議論が紛糾している可能性が
ある。

それでも、米国株3指数ともに、最高水準にある。米国金利が低下
したのは、資金が株2対債券1の割合で買われているためであり、
金融機関の資金運用難が続いている。しかし、リスクオフになると
、株も債券も売られることになる。

その上に、米国での懸念に人口増加が止まったことも加わるようで
ある。

そして、バイデン大統領は、中間選挙に向けて、失業率を下げる必
要があるが、まだ、失業率が高い状態が続いている。このため、子
供養育支援金を配り、支持率を上げたいようである。

一方、SECが中国企業の上場審査を厳格にするとした。米中対立で、
米国市場への中国企業の上場ができなくなる方向になり、中国市場
への海外からの投資開放が必要になっている。

しかし、中国は経済システムを市場経済から非市場経済にシフトす
るようであり、海外投資家は、恐ろしいので投資できない事態にな
っている。この詳細は後で

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、7月20日は27,388円で当面の安
値、21日は27,548円で、26日は285円高の27,833円、27日は136円高
の27,970円、28日は388円安の27,581円、29日は200円高の27,782円
、30日は498円安の27,283円で2年ぶりの安値になった。

コロナ感染拡大と自民党政権の支持率低下で、海外投資家は0.7兆円
もの資金を流出させ、日経平均は下落が続いている。もう1つが月
末下落というアノマリーもあり、30日は大きく下落した。

その上、今週は上海総合指数と香港ハンセン指数の大幅な下落で、
日本企業にも影響があるということで下落した。特にソフトバンク
Gの株価は、滴々などの中国新興企業への投資が大きいので、大きな
下落になった。

今後、日本企業の4-6月の業績発表が8月に出てくるので、その業績
を見て株価は動くことになる。特に注意が必要なのが、中国ビジネ
スの割合が大きな企業の業績見通しであろう。

中国とのビジネスでは、共産党の指示が出ると、上場廃止もあり、
安定的な企業経営ができなくなるリスクが認識された。この影響を
中国に進出している企業は受けることになる。

もう1つ、8月はショックが多い。ニクソンショックは1971年、リー
マンショック前兆のバリバショックは2007年、2019年には米中貿易
摩擦など8月には事件が多い。今年はこの上に、米国債務上限問題が
8月には出てくることになる。

2.コロナ感染の拡大
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東京オリンピックで日本の金メダル数は過去最高になっているが、
東京はコロナ新規感染者数が4000人を越え、8月中旬には新規感染者
が1万人を超えると試算されている。少し前の欧米と同じような感染
爆発だ。

そのため、緊急事態宣言が東京、大阪、神奈川、千葉、埼玉、沖縄
に拡大して、まん延防止等重点措置を北海道、石川、兵庫、京都、
福岡に8月2日から8月31日まで出すことになった。

世の中的には、緊急事態宣言でも危機感もなくなり、コロナ防止の
ルールも守られなくなったようだ。特に飲食店が8時以降も開き、酒
も提供している。どこが緊急事態宣言なのかわからなくなっている。

そして、オリンピックもクラスターが選手村で起これば、中止にな
る可能も出るが、現時点ではバブル方式の防止処置が効いているよ
うだ。

しかし、選手村の食堂などでは、選手たちが固まって食事などをし
ているので、危険だという人もいる。事実、選手村の大会関係者が
コロナに感染している。このため、五輪の無事終了を祈るしかない。
このまま感染者が増加すると、パラリンピックの中止が議論される
ことになる。

そして、ワクチン接種を40歳以上まで早く行う必要を、このコラム
では主張していたが、やっと菅首相も同じ趣旨の指示をしたようで
ある。しかし、死者数の少ない状態を、菅首相も言及しない。前の
感染拡大期とは違う。40歳50歳の人は重症化しても死ぬ人は少ない。

その上、40歳50歳の重症者数を減らすために、アストラゼネカ製ワ
クチンを40歳以上に接種して、接種を促進するようだ。もう1つが
抗体カクテル療法の積極的な使用で中等症患者を重症化させないと
した。今後、益々、死者数は減るし、重症者も減る。

現実は、緊急事態宣言でも夏の観光地のホテル予約率は正常化して
、都内の人出も減らないで、経済の正常化が一歩先に進んでいるが
、早くそれに追いつくような感染防止・重症化防止を整えてほしい
ものである。コロナ感染拡大で株価が下がるということは、現実と
は違うような気がする。

そして、このコロナ感染症を普通の風邪にするには、ワクチンと特
効薬が必要であると述べてきたが、この2つが揃ってきたことにな
る。この治療実績を見て、効果があれば、インフルエンザ級の感染
症にすることで、ウィズコロナの時代を作り、保健所の体制から「
かかりつけ医」の体制に戻すことである。治療体制も平常化させる
べきである。

そして、正常化後は、毎年、コロナワクチンを定期的に接種するこ
とだし、その体制として国産ワクチンの整備が重要である。それと
、憲法改正を含む感染症の有事法制も作る必要がある。

3.中国の経済システム変更
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ケ小平は、「韜光養晦」と言い、爪を隠し、才能を覆い隠し、時期
を待つ戦略ということで中国を強国にして、それから米国と戦うと
したが、その時期が来たと習近平国家主席は判断したようである。

資本的な経済システムから新しい社会主義の形を作ろうとしている
。その基盤は大多数を占める貧困層の要求に即した国の形を作り、
それを共産党がコントロールすることだとした。この考え方自体は
、毛沢東と同じであり、習近平は今の体制・秩序を毛沢東時代の中
国共産党国家体制に戻すことを狙っている。

このため、集団指導体制から独裁体制にして、経済的な理由から反
対する江沢民一派などの不満分子を徹底排除して進める必要になっ
ているようである。

毛沢東の思想を現実的な形にしたのは習近平であると歴史に刻みた
いのであろう。

このため、市場経済から完全な共産党統制経済にして、習近平に盾
突く人たちを取り締まる方向で対応するようである。

もう1つ、現時点、人口減少であり、人口を増やす必要があるが、
教育費が高騰していて、子供を生まないような雰囲気であり、その
ため、教育費を下げる必要になっている。

教育費で一番お金がかかっているのが、塾や学習教材などであり、
その費用の低減化のために、塾や教育資材の企業を非上場にして、
かつ、政府の指示を徹底して低価格にさせるようである。当然、企
業は、黒字化が難しくなる。

IT企業が、政府の指示を無視して米国市場へ上場するのも、取り締
まる。人民元のデジタル化のために、仮想通貨を取引するIT企業を
取り締まり、またIT企業には中国や他国のデータが集まり、それを
米国に見られるのを恐れているようである。

このような中国共産党の意向で、企業経営に介入することで、企業
利益が減少すると、上海総合指数も香港ハンセン指数も大幅な下落
になり、人民元も下げた。その分、仮想通貨が上昇した。

下落が大きかったのは、教育株、ヘルスケア株であり、その他では
中国の不動産開発大手の中国恒大集団の危機が深刻化で不動産株も
下げた。

この下落でアルケゴスのようなファンドの破綻も心配されたが、次
の日に国家ファンドが買い上げて、株価を上げた。

逆に米国は、米国内への中国企業の参入で、米国のデータが中国に
取られるのを警戒している。中国企業の経営状況も水増しなど、多
くの問題点があり、米国市場から中国企業を追い出し初めている。

というように、デカップリングの次の段階にきて、中国が市場経済
とは違う経済システムになり、普通の意味での株式市場を有した資
本主義とは違う経済システムになったようである。

エドワード・ルトワックの「ラストエンペラー習近平」(文春新書
)によると、中国が強国になればなるほど、弱くなっているという。

戦狼外交で、中国は同盟国をなくして、孤立化しているが、それは
武器の数等で戦術的に強国になったかもしれないが、戦略的な意味
では、弱国になってしまったことになるという。

インドの空軍機は、ロシア製戦闘機であり、キルジスに空軍基地が
ある。ロシアの支援がないとそのようなことはできない。これによ
り、ロシアは中国の真の同盟国ではないことがわかると。

中国は相手の反応(リアクション)を考えていない。特に南シナ海
での強硬な対応で、弱小な周辺国は米欧日の陣営に追いやり、国内
の少数民族を迫害して、国際社会から批判を受けている。

ASEANでもラオスとカンボジアしか同盟国がない。ミャンマーはロシ
アに支援を求めている。中国寄りの弱小国は数が少ない。

もう1つが、中国は、今までの兵器基準で軍備を整えているが、戦
場の主役は交代している。特にAIとドローンであるが、この兵器よ
り、進んだ兵器が出てくる可能性もある。その対応ができるかどう
かだ。

中国は、空母を4隻も持つ予定であるが、太平洋に出ないと意味が
ない。この空母の補給のために、同盟国の港を確保する必要があり
、そのために太平洋の諸島国に援助を行っている。しかし、覇権を
求めないという言葉と矛盾することになる。

このようなことで、中国の習近平主席は、中国共産党の最後の皇帝
であると論評のようだ。もし、詳しく知りたいなら、この本を買い
求めてほしい。

そして、中国がどこに向かうのか、気になるところでもある。

さあ、どうなりますか?



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