6183.日本は貧しくも心豊かな国に



日本の貧困化が進んでいる。海外からエネルギーと食糧を輸入して
いたが、それも円の価値が下がりできなくなってきた。このような
現状を基礎に日本をどうするのかを検討する。  津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年5月7日は34,777ドルで過去最高額になっていたが、6月18日は
33,290ドルで、21日は586ドル安の33,876ドル、22日は68ドル高の
33,945ドル、23日は71ドル安の33,974ドル、24日は322ドル高の
34,196ドル、25日は237ドル高の34,433ドル。

今週は、16日・17日のFOMCで2023年に2回の利上げを見込む意見が多
数になり、18日NYダウは大幅な下落になったが、今週はパウエル議長
の当分テーパリングは行わないという発言で沈静化した。金利も14%
で低金利になり、ナスダックは過去最高になった。しかし短期金利
は上昇して、長短金利のフラット化が起こっている。

住宅価格上昇で販売が落ちてきたし、それに伴い木材価格も大幅な
下落となっている。中古車の価格も下落している。全般的にコロナ
後の熱狂的な価格高騰が収まってきた。それに反比例するかのよう
に株価ももどったようである。雇用数は10月には正常化することに
なり、9月にはコロナショック効果もなくなる。

為替はドル高円安になっている。

しかし、コロナでデルタ株が出て、流行にし始めている。ワクチン
接種率が高くても、接種を受けていない人を中心に広がっている。
このため、米国でも接種を加速させたいが、ワクチン反対運動が起
きて、共和党支持者を中心に個人の自由という主張で接種が進まな
くなっている。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、6月18日は28,964円で、6月21日
は953円安の28,010円、22日は873円高の28,884円、23日は9円安の
28,874円、24日は0円高の28,875円、25日は190円高の29,066円。

日経平均は、月曜日は大幅な下落、一転火曜日は大幅な上昇で、そ
の後は平坦な相場展開。金曜日に29,000円回復となった。カラ売り
比率が50%以上の日があり、その買戻しが起きて火曜日は上昇したよ
うである。株価の一方向的な動きは、AI投資が取引の70%程度を占め
るので仕方がないようだ。AIの動きを読んで対応することである。

また、月曜日には、日銀は700億円のETF買いを実施した。TOPIXが午
前2%下げ時には、買いが入ることがわかった。

そして、イスラエルでも新規感染者数が増加してきた。ワクチン接
種とコロナ変異種とのスピード競争になっているが、日本でもワク
チン反対の運動が広がってきたことが気になる。

2.コロナ・ワクチン接種状況と選挙
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東京、神奈川、千葉、埼玉などの首都圏が感染拡大になっている。
他地域は感染縮小になっている。再度、首都圏だけ緊急事態宣言を
出す可能性が出てきた。

そして、ワクチン接種は、現状では1日100万回以上の接種であるが
、ワクチン在庫の関係から、これ以上の接種拡大はできないと、河
野ワクチン担当相はいう。1日150万回が限度だと。

このため、企業接種の新規申し込みを中止した。これにより、五輪
までに国民全体への接種割合は30%以下である確率が増した。

そして、この感染拡大時に東京都議会選挙が行われる。投票日は7月
4日であるが、小池都知事の過労からの入院で、小池都知事の応援が
期待できない都民ファーストの会の苦戦も予想できる。しかし、自
民党は前回大負けしたので、議席増にはなるが、期待値ほどには増
えないような気がする。

そして、都民ファーストの会を応援しない小池都知事が、自民党か
らの国政復帰を狙っているとすると、辻褄があうことになる。この
裏切りで小池さんの首相への道はなくなったと思う。しかし、もし
、都民ファーストの会への応援をすると、国政復帰時に自民党から
の出馬ができなくなる。

小池さんに優秀な戦略家がついていないことで、女性首相候補とし
ての小池アクターをうまく日本の国は、使えなかったことになる。
もったいない気もするが、どうしようもない。小池さんが戦略家の
いうことを聞かないからの可能性もあるからだ。

元に戻ると、専門家の7月上旬感染ピーク説は、実現しそうである。
そして、尾身会長の提言は正しいことが証明される。この状況を天
皇陛下もご心配しているようだ。

それに逆らって観客動員する五輪後には、感染者数は大幅な増加と
なるので、それを織り込む必要になってきた。このため、五輪直前
まで緊急事態宣言を出した方が良いし、五輪後も緊急事態宣言を出
して、衆議院選挙までの時期、感染者数の増加を抑えていくことで
ある。抑えた後に衆議院選挙をした方が良い。それと、やっと、ボ
ランティア全員のワクリン接種を行うとした。

希望的な観測を行う菅首相のギャンブルは、負けであるが、大負け
しない対策が必要になっている。安部前首相も助け舟を出して、「
自公で過半数なら勝ちである」というが、このレベルで抑える必要
が出ている。

しかし、なぜ、希望的な観測を何回も行うのであろうか不思議な感
じである。首相の取り巻きに戦略家がいない。または、菅首相が戦
略家を嫌っているからだとみる。その意味からリーダー失格だ。し
かし、リーダー合格の国会議員がいるのかどうかも定かではないこ
とも確かである。

今回の選挙で、野党は候補者一本化したら、政権を取れる可能性も
出てきた。自民党のギャンブルは失敗することが現時点で見え始め
ている。しかし、政権奪取後の共産党の処遇が問題になりそうな気
配であり、連合がそっぽを向いたら、野党も選挙で勝つことは不可
能になる。

安部前首相も「ポスト菅」を真剣に検討し始めているようだ。どの
候補でも菅さんよりは益しな気がする。そして、次の首相は、安部
さん再登場のつなぎ役である。

3.国家の大転換期に
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前回は、資源再利用(リユース・リサイクル)が進むことを話した
。日本には江戸時代という先行した完全循環型社会がある。それと
自給自足経済という、もう1つの社会であったが、日本の現状を見
ると、この地産地消経済に移行するしかない状況になっている。

日本の経済指標は、世界の新興国や途上国と同列に位置し始めてい
る。とうとう、日本は貧しい国になったようだ。海外旅行をすると
、欧米の物価が日本に比べて高いし、日本食を食べようとしても高
い。

日本は世界第3位の経済大国という幻想は、止めた方が良い。日本の
将来は、貧しくても心豊かな国という位置づけにして、それに対し
て、どのような政策をとるかが重要なのである。

もう、人口減少の日本は、経済大国を目指すこともできない。次の
目標を設定するしかない。そして、コロナで日本の脆弱性をイヤと
いうほど、国民も知ったはずである。もう幻想を抱いてはいけない。

その結果、自由貿易が国益ではなくなって、保護貿易が国益にかな
っていることになってきた。

貧困率は高く、給与は低い。年金支給額も低く、70歳まで働けとい
う。これらは、日本が貧乏になってきたことの証拠である。日本が
貧しくなるということは、海外から食糧、エネルギー、資源を持っ
てこれなくなるということだ。価格が上昇して、買えないからで木
材、ロブスター、牛肉、大豆、飼料、石油なども国内で調達にする
必要になる。

この意味で、今後は江戸時代と同じような国内での自給が必要にな
ってくる。高級品の果実や日本酒、ワイン、伊勢海老などは輸出に
特化すればよいのである。一般的な日本人には、手が出ないほど高
くすればよい。

一番問題であるのは、エネルギーの輸入であるが、これも太陽光発
電と水力発電、風力発電などで、国内の消費を賄うことができるよ
うになる。国内調達より安いなら海外から輸入してもよいが、それ
も徐々に難しくなる。円の価値が大きく下がって来るからだ。

この自給産業群を日本で作り、海外からの輸入を止めていくことで
ある。地産地消経済では、太陽光パネルなども国内で作るなど、国
内産業保護の重要な転換点になる。半導体産業も同様である。

中国は、安値で輸出して、世界から産業を奪取しようとしているが
、日本は自給自走経済にシフトして、自国の必需品は、自国で賄う
ことである。江戸時代の大蔵永常の「国産考」に従うことだ。

もう1つが、海上封鎖を中国にされても、日本は大丈夫しておくこ
とである。後十年もしたら、米国より中国の方が国力や海軍力が上
になり、海上の逆封鎖も起こりえる。可能性があることには安全保
障上の保険を掛ける必要がある。特に原油輸送ルートが危ない。

このためにも、経産省が企業指導を徹底的に行う必要がある。東芝
での指導のようなことも起こりえるが、国益を守る必要がある。し
かし、そのためには、資本構成にも完全な国営企業にしないレベル
での国家資本の投入をする必要がある。日銀の株式+GPIF+国家投
資機関などで、郵政やNTTと同じように半数を抑えることである。
国家資本主義にして産業育成を積極的に行う体制が必要である。

国益に関係する企業と純粋民間企業を分けて考える必要もある。国
益関与会社には、口もカネも出すことだ。この良い例が携帯会社へ
の口出しであるが、許認可を国がしているからである。

菅政権は、4つの分野を重点にするとした。グリーン分野、デジタ
ル・ガバメントの確立、地方創生、少子化であるが、この分野をど
う進めるのか具体策が必要である。

地産地消経済にすると、エネルギーと食糧などで分散化した社会の
方が効率が良い。江戸時代でも地産地消社会であるが、藩が地方独
立経済圏を作り、分散化した社会であった。

エネルギーと食糧を海外から無制限に入る時代は、都市で集中化し
た方が生産効率が良いが、エネルギーと食糧を自給する時代は、地
方分散の方が生産効率が良くなる。このため、地方分散社会になる。

このため、日本は自給自足経済になり、地方分散の鎖国経済になる
。企業も工場の国内への逆戻り現象が起きている。国内賃金が相対
的に安くなり、均一な労働者がいる日本の方が生産コストが低いた
めだ。

そして、地方の方が生活費が安くて、生活がしやすいので、工場を
地方に作り、都市から労働者を移住させて来ることになる。その上
、このコロナで東京は、パンデミックに脆弱であり、テレワーク化
が進み、地方に住む人たちも増えている。パソナが淡路島に移転し
たのは、その先駆けであろう。

日本の強みは、平均的で割かし高品質な労働者が、どこでも確保で
きる国であることで、国民の5%しかいない知能の優れている人の
国家ではなく、中の上な国民を中心とした国家であり、その人たち
に適合した国である。このため、多くの労働者が勤勉に働くことで
利益をもたらす農業や製造業などに適合した国なのである。

この人たちの国は、全員が日本的な規範を持った均一性のある社会
を構成している。

このため、国民の5%の優秀な人しか活躍できないITなどの分野では
、大きく遅れているし、この上の人たちの給与は、諸外国に比べて
も低く、中の下以下の人たちは、非正規社員化して給与も少ない。
反対に、中の上の人たちは、大企業で正規社員の給与で、一番高い
ことになっている。

このため、将来、日本から優秀な人は海外へ出ていくし、この人た
ちが蓄財して、帰国後、起業する国になる。日本は割かし優秀な人
がそろうし、海外から日本に来る人たちも中の上の人たちになる。
日本は、中流国家にしかなれないようだ。この国の構成がそうして
いる。

このため、日本をよりよくするには、下や中の下の人たちでも正規
の仕事できる環境を作り、生活できるレベルの給与も確保できるこ
とが必要である。ワーキングプアという存在は無くさないといけな
い。このためには、最低賃金を上げる必要にもなっている。そして
、貧困層には、人口減少対策からも育児給付や学童給付などを実施
することである。

逆に、IT企業は、世界から優秀な人を確保したければ、給与体系や
人事制度を世界に合わせる必要になる。

そして、企業も大きくしたいなら、海外で出ていき、給与体系も人
事体系も世界標準にして、トヨタのように国内部門と世界部門とを
分けた人事体系・給与体系を行う必要になる。

AI、ロボットなどの発達で、日本は人口減少になるが、中の上の労
働力もAIなどに置き換わることになる。しかし、あと10年ぐらいは
、置き換われないので、人口減少は日本の国力の劣化につながるこ
とになる。

このため、日本の江戸化をこの10年で進化させる必要があるのだ。
都市集中の時代から地方分散の時代に、コロナ後の時代は大転換期
になり始めるようだ。

もう1つ、金融緩和だけのアベノミクスが大失敗であったことが明
確化してきている。早く、このコラムが提案する産業政策を実行し
ないと、益々、日本は衰退していくことになる。

さあ、どうなりますか?



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