6182.日本の資源再利用への道



日本の脱炭素経済への転換は難しい。そして、それを経済成長に結
びつけるには、相当な戦略的観点が必要になる。それを検討する。
                   津田より

0.米国および世界の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年5月7日は34,777ドルで過去最高額になっていたが、6月11日は
34,479ドルで、14日は85ドル安の34,393ドル、15日は94ドル安の
34,299ドルで、16日は265ドル安の34,033ドル、17日は210ドル安の
33,823ドル、18日は533ドル安の33,290ドル。

今週は、16日・17日のFOMCで2023年に2回の利上げを見込む意見が多
数になり、その前にテーパニングになると見ていた所、18日に米セ
ントルイス連銀のブラード総裁が、2022年に利上げを開始するのが
適切かもしれないと発言。その前にテーパニングが行われるとみて
、18日は米国のSQでもあり、市場はテーパー・タントラムを意識し
て、NYダウは大幅な下落になった。

この株価下落は、FRBが対応した動きを見せない限り、続くような気
がする。どこまで下げれば、FRBが手を打つのかに関心が集まるが、
10%程度下げるまで、期間としては6月末までは、打たない可能性も
ある。

この大本は、FRBが突然、方針を変えたようにも見えることである。
FOMC後の会見で、パウエル議長は「人手不足や供給に関わるその他
の制約は、インフレが我々の予想を上回り、長く残存する可能性を
高める」と発言し、これまでのインフレは一時的という見解を変更
した。この衝撃が大きかった。

このため、1週間で1100ドルも下落した。特に緩和縮小による金利
上昇を意識して、今まで活況なテスラをはじめとしたクリーンエネ
ルギー、電気自動車(EV)、大麻株や特別買収目的会社(SPAC)に
投資が集中していたが、この株価の下落につながっている。インフ
レが起きるとみて投資していたコモディティの下落も大きかった。

外交では、欧米日のG7サミット後、バイデン大統領は、ロシアのプ
ーチン大統領との首脳会談に臨んだ。この会談で核軍縮の対話を継
続することになった。関係を継続して、米ロ対決にはしないようで
ある。人権の価値感外交と勢力均衡の2つを同時に遂行している。

米国の思惑は、ロシアを中国から引き離して、中国の孤立化を促進
したいし、ロシアとしても中立で、米中対決の枠外にいて、欧米と
の関係を修復して、経済制裁解除を進めたいからである。

そして、米国は10月G20サミットで、米中首脳会談を計画して、中国
の譲歩を引き出したいようである。国際政治も目が離せない。

1.日本の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、6月11日は28,948円で、14日は
213円高の29,161円、15日は279円高の29,441円、16日は150円安の
29,291円、17日は272円安の29,018円、18日は54円安の28,964円。

日経平均は、週前半は上昇し、週後半は下落になって、ほとんど変
化なしになっている。週前半はワクチン接種加速で景気が良くなる
との思惑で上昇し、週後半はFOMCのテーパリング観測で、NYダウが下
落した影響で下げになった。21日の朝も大幅な下げから始まるよう
である。

今週21日からは、企業接種も本格的に始まり、オリンピックの開催
もほぼ決まり、それへの期待感が出てくる可能性もある。五輪で世
界に日本が紹介されることは大きい。NBCは、過去最高の広告が集ま
っているという。五輪開催は大きな効果を生むはずである。

株価上昇のはずですが、日米の株価動向の分離が起きるかどうかで
しょうね。起きれば、株価は上昇する。日本の個人投資家のガンバ
リいかんにかかっている。本当の日本の独立を株式市場で果たすこ
とが、今後の日本経済の道のりにも重要な気がする。日本の価値を
日本人が気づけるかどうかでしょうね。

2.コロナ・ワクチン接種状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
6月21日からの緊急事態宣言延長は沖縄のみとなった。蔓延防止等重
点処置は、東京、大阪、兵庫、京都、愛知、福岡、北海道、神奈川
、千葉、埼玉、岐阜、三重になる。

そして、ワクチン接種は、現状では1日100万回以上の接種であるが
、65歳以上の高齢者でも約30%の人が接種を拒否しているようである
。企業接種は1200万人であり、3000万人高齢者の80%と1200万人の企
業関係者の接種が五輪前に行われるようである。

五輪前に、全人口の30%が接種した状態にはなる。海外の接種と感染
者数の関係を見ると、40%以上になれば、著しく感染者数が減少する
が、30%のレベルではそれほどには感染者数が低下しない。

もう1つ、英国で感染者数が増加してきて、デルタ株の感染力が大
きく、ワクチンを接種しても感染していることによる。ワクチンの
効果を乗り越えて、感染拡大しているようにも見える。専門家は7
月上旬にもピークが来ると警鐘を鳴らしている。

その前提で、尾身会長の提言を見ると妥当な内容である。無観客や
地域住民の参加しかない五輪大会にするべきというのは、理解でき
る。

ここは、安全サイドに進めるべきであり、無観客も覚悟していた方
が良い。そして、この結果、GOTOトラベル・イートの開始は、五輪
後感染者数が、増加すると秋に始められないことも考えられる。

感染者数は増加するが、重症者数や死亡者数は減ると思うが、接種
拒否の30%の65歳以上高齢者には重症・死亡の危険があり、広くは開
始できないことになる。

飲食業界と旅行業界の復活活性化が遅れることで、倒産が増えるこ
とになる。ワクチン接種したワクチンパスポートを持つ旅行者にだ
け、GOTOトラベルを開始しても良いのでないかと思う。
この予約時に接種の有無を確認する必要がある。この確認システム
も今から構築開始する必要がある。

次の衆議院選挙は、五輪後感染者が増えるか、増えないかで結果が
大きく違う。今回の選挙で、野党の候補者一本化ができると、自民
党も簡単には勝てない。20議席から30議席減が普通の場合でも
予想できるし、菅首相の演説にはメリハリがないので、実績で示す
しかない。現時点の支持率30%では50議席以上も減少するはず。

それを踏まえ考えると、五輪後感染者数が増加すれば自民党の負け
、自公で過半数は維持するとは見るが、激増なら過半数割れもあり
うる。この場合でも、維新の会を政権に引き入れて、政権を維持で
きるとは思うが、大負けになる。

逆にワクチン効果で、感染者数が大幅に減るなら、自民党が勝つ可
能性が高い。この時は、菅政権は五輪開催と、コロナからの経済復
活の実績で、支持率も上がり勝つようだ。

しかし、菅首相は、希望的観測がお好きで、ギャンブルもお好きな
ようですね。選挙に負ければ退陣になる。もしかして、首相を止め
たいのかしら。

このため、9月選挙敗北時の次の首相候補を用意する必要になる。
河野ワクチン担当大臣が最適であるが、選挙後でもあり、3年間で
あれば、岸田さんの可能性もある。

幹事長人事も面白い。二階さんの続投か、甘利さんになるか、岸田
さんが首相時には甘利さんであろう。

二階さんのGOTOトラベルのゴリ押しや親中的な対応は、日本の国益
にとっては大きな損であるが、寝業師の駆け引きで調整能力がある
ので、今まで幹事長ポストを維持してきた。この調整能力は、ほか
の人にはない。

3.脱炭素化経済への道のり(資源再利用)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「人新世の資本論」を読んだが、今の資本主義に変わる社会主義に
は無理があると思った。このため、資本主義変革から脱炭素化社会
に向けての道筋を見つける必要がある。

ただ、参考になる考え方がいくつかあった。大量にある物には資本
主義では商品価値がないが、それを使った使用価値を高めると、人
には安くて有益だということ。このため、「ラディカルな潤沢さ」
を意図的につくることだという。

これに該当する物は、太陽光、風などの自然エネルギーや水資源、
都市部ではゴミなどもこれに該当するようだ。この有効利用が必要
なのである。

今後、これらの潤沢にあるものを商品価値はないが、使用価値のあ
る有益なものに変換させて行く社会になる。これは、江戸時代の完
全循環型社会かつ植生文明の世界をどう再度構築するのかというこ
とになる。

江戸学を多数、このコラムでは検討してきた。
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/index231htm#edo

資源再利用も多数、このコラムで検討してきた。
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kankyou.htm

そちらも見てほしいが、江戸時代は上の階層の武士たちが、豪勢な
暮らしをしないで、規範を持った生き方をしていた。

その規範が論語であり、この階層がいたことで、社会全体でも豪勢
な暮らしを避ける傾向があった。商人たちが豪勢な暮らしをしてい
ると、突然、武士政権が資産没収を行うので、商人たちも見た目は
質素にしていた。この規範の基礎に、わびさびの文化がある。

この社会構造を現代化できないかと思うが、第2次大戦前までは、
日本の中にその伝統が残っていたが、戦後は米国風の社会になり、
この伝統もなくなっている。

現在、また、この質素な社会を作る思想が必要である。質素な生活
に価値があるというような価値観が必要なのだ。江戸時代までの日
本が持っていた価値観の現代化はできるはずだと思っていたが、世
界的な動向がやっと、日本の価値を認め始めている。大宮の盆栽村
に行くと、外人の盆栽を作る職人が多数いるようだ。

その上に、脱炭素化は、江戸時代と同じような定常化社会が必要で
あるが、日本はすでに、人口減少で定常化経済になっている。この
状態で、資源の完全リサイクル化を行えば、新しい資源を必要とし
ない。この点、日本は有利な状態にある。

今回は、この資源再利用の方法を考える。リユース、リペア、リサ
イクルの3つがあるが、車などの耐久財ではリユース、リペアは、
当たり前であるが、衣料品やペットボトルなどの生活必需品でも、
この動きが出てきている。

メルカリ、ブックオフや多くの中古品を扱う店ができている。Tシャ
ツなどの服などは100円以下の値段がついていて、新品に比べて5分
の1程度の値段で売っている。家電、家具なども多い。衣住の分野で
増えている。

というように、中古市場が立ち上がり、リユースが定着し始めたよ
うである。江戸時代と同じような衣料品の中古市場ができ始めてい
ることになる。リユースには、その前にリペアが必要であり、洗濯
とボタン付けを行っているという。

人口減少であり、死んだ母や父の物を持ち込む人が多いようだ。息
子たちには、ゴミのような品物を買い取ってもらい、お金をもらえ
るので、持ち込まれるようだ。

トヨタは、KINTOというサブスクを始めたが、中古車もトヨタ
本体がKINTOでサブスク化するという。ここでもリユースとリ
ペアをトヨタ本体が行う方向である。日本の方向は省資源化・リユ
ースに向いていることになる。

今後、消費の半分をリユース市場が占める可能性もあるとみる。

リサイクルでは、資源系ゴミでは、分別がキーであるが、この分別
にAIが登場して、AI組み込み機械により分別した資源チップが出て
くるようになっている。これにより人件費を削減している。

このチップを加工すると、また元のペットボトルやナイロン糸にで
きるようになった。鉄、銅、アルミなどの資源も回収されてきてい
る。レアメタルでもニッケル、インジウム、クロム、コバルト、モ
リブデンなどが成功している。その意味では、都市鉱山化が進んで
いる。

しかし、この再資源化には、広く分散しているゴミを集める仕組み
と、それを分別する企業、分別したチップを再資源化する企業の複
数の企業の連携が必要になる。この連携でコストがかかるので、再
資源化コストが高いことになっている。分別などの人件費削減、連
携企業数の削減や大規模化によるコスト低減が必要だ。ここにはイ
ノベーションが必要のようだ。

下水処理場も化学工場のようになっている。下水からリンを取り出
して、農業肥料にするようである。下水から肥料を作るということ
は、江戸時代の糞尿を集めて肥料にしていたことの現代版を行って
いることになる。

食品ゴミも飼料や肥料にできるので、ここでも分別が必要である。

しかし、再資源化は、大量のエネルギーが必要になる。このエネル
ギーを得るためには、太陽光発電を広範囲に行う必要がありそうだ
。1つのアイデアは、半農半電を行い、畑に太陽光パネルを設置し
て、農業の採算性を高めることであろう。

というように、静脈系企業が最先端になってきたようである。この
資源リサイクル分野は、エネルギー分野なども含めて、日本を大き
く変えることになるようだ。江戸時代の完全循環型社会にするべく
、大きく企業が知恵を絞っている。

10年前から大きく前進しているようだ。一歩一歩、完全循環型社会
に近づいているようだ。日本の江戸化が進めば、その技術は世界展
開できることになる。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る