6181.脱炭素経済への転換



日本の脱炭素経済への転換は難しい。そして、それを経済成長に結
びつけるには、相当な戦略的観点が必要になる。それを検討する。
                   津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年5月7日は34,777ドルで過去最高額になっていたが、6月4日は
34,756ドルで、7日は126ドル安の34,630ドル、8日は30ドル安の
34,599ドル、9日は152ドル安の34,447ドルで、10日は19ドル高の
34,466ドルで、11日は13ドル高の34,479ドル。

10日に米CPI(消費者物価指数)の発表があり、5月の消費者物価上
昇率は前年同月比5.0%に達し、4月から0.8ポイント拡大した。しか
し、米10年国債金利は1.45%と金利が低下した。為替も1ドル109円50
銭内外で動かなかった。

米国は9月6日までの特別給付金で、失業中の方が収入が高い状態だ
が修正する動きが出てきた。共和党州知事の25州が6月・7月に特別
給付を止めると宣言した。失業保険支給額はは週351ドルで特別給付
金は週300ドルであったが、これをやめると求職に動き始めると期待
される。

これにより、景気は回復基調で、企業の求人募集も増えているので
、雇用数は増える。このことで、供給不足での物価上昇は収まる可
能性が高い。

現時点、FRBは、毎月1200億ドルの国債と社債の買い入れをしている
が、財務省が民間企業への補助金を出しているが、その資金が銀行
に積み上がり、銀行も運用先がないのでMMFに積み上げている。これ
をFRBは、リバースレポオペで資金回収している。実質的テーパリン
グをしている。このため、米10年国債金利の上昇も起きていない。

欧州、米国、日本は、G7サミットで「新太平洋憲章」を宣言して、
対中包囲網を作る方向である。

一方、中国は、反外国制裁法を成立させて、中国敵視する国の中国
国内資産の凍結などを行うとして、戦狼外交を継続するようである
。世界に受け入れられる外交にすると習主席は言ったが、逆の動き
になっている。

今後、中国から資産引き上げを行う欧米企業が出てくることになる
とみるし、日本企業も引き上げの方向で動かないと、反外国制裁法
の適用を受け、資産没収になる危険性が高い。

少なくても、今から中国へ進出するのは止めた方が良い。日本政府
は、反中陣営の中心にいるので、いつ資産没収になるかわからない。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、6月4日は28,941円で、7日は77
円高の29,019円、8日は55円安の28,963円、9日は102円安の28,860円
、10日は97円高の28,958円、11日は9円安の28,948円。

日経平均は、29,100円と28,800円の狭いレンジの相場になっている。
これに連動して、ドル円の為替も動かない。日本株に買い材料がな
いため、海外投資家は、1200億円の売越しになっている。

その上に、日銀が日本株を売り越した。5月にはETFを買わなかった
が、290億円ほど株を売っている。私が提案した日銀も高いときに少
しずつ売り、暴落時に大量に買うようだ。やっと、実行に移したよ
うだ。ということで、日銀のテーパリングも次の段階に来たようで
ある。

ということで、日銀は買わないので、海外投資家が日本株を積極的
に買うまでは、日経平均も今の位置を上下するしかないようである。

しかし、ワクチン接種の一日当たり100万回以上と接種回数が上昇し
ているので、秋の回復が意識されてきた。いつ、海外投資家が買い
になるかわからない。逆に海外投資家の売り越しが続くと日経平均
は大きく下落することになる。

しかし、長期的な金融緩和が続いていることから、円は下落してい
き、現金や銀行預金で持つのは、資産価値の減少になるから、金や
株・不動産などの資産に転換する必要がある。このため、株はいず
れ上がっていくことにはなる。

2.コロナ・ワクチン接種状況
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6月20日までの緊急事態宣言は、北海道と沖縄以外は解除されるよう
だ。東京、大阪は、蔓延防止等重点処置に移行するという。重症者
数も1000人以下になり、65歳以上の感染者数も減ってきている。

そして、ワクチン接種は、現状では1日100万回以上の接種で、着実
に増加している。14日からは企業での接種が開始するし、大規模接
種会場では空きが出てきて、64歳以下の人たちへの接種が開始され
る。菅首相も10月・11月には希望者全員のワクチン接種が終わると
いう。やっと、日本も秋には正常化するようである。

尾身会長の提言を取り入れて、五輪も順調に開催できるようだ。大
会関係者・選手にもワクチン接種を行い、安全な大会への準備が整
うことになる。

次に、いつ、GOTOトラベル・イートを開始して、飲食業界と旅行業
界を復活活性化するかに焦点が移っている。65歳以上の高齢者と旅
行関係者への接種が終われば、開始しても良いのでないかと思う。

とすると9月であろう。この予約は3ケ月前なので、そろそろ、アナウ
ンスした方が良い。その宣言で五輪も開催できるということを国民
に知らせる効果も出る。

反対に、五輪開催反対の野党は、このまま主張すると選挙で負ける
ことになるので、内閣不信任案を出して、早期に選挙に持ち込んだ
方がよいかもしれない。自民党は、今の選挙にするのかどうかでし
ょうね。しない方が良いのであるが、二階幹事長が複数回も言って
いるので、面白いことになる。

今選挙をしないと、菅政権は五輪開催と、コロナからの経済復活の
実績で、9月以降の選挙では勝つことになる。

もう1つ、このパンデミックでの失敗を教訓に次のパンデミックが
来た時に備える国家体制の変革をすることである。有事法制、医療
機関への命令、個人の自由の制限、疾病の司令塔、感染症ワクチン
と治療薬の研究体制などを確立してほしいものである。

3.脱炭素経済への転換
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前回、国の安全保障上では、エネルギー確保、食糧確保、資源確保
と世界から遅れているデジタル化が必要と述べた。

この上に、欧米諸国は、脱炭素経済に向かい、関税障壁を作り、非
脱炭素社会からの輸入を止める動きをしている。脱炭素経済は、石
油経済より効率は、大きく劣ることになるので、2つの経済圏に分
離することになる。

それでも、温暖化防止のために欧米諸国は結束して脱炭素経済にシ
フトしていくというのである。

もし、日本が石油経済に留まるなら、それは欧米との貿易ができな
い鎖国・後進国経済になるしかない。ここがわからないで、非効率
だから、日本が衰退するという評論家は、全体像を見ていないこと
になる。

欧米の人権重視に向かないで、人権問題で態度を決めないファース
トリティーニングが良い例で、株価は大きく下落しているし、欧米
店舗での売り上げは確実に落ちることになる。経済と政治がリンク
している。中国は政治問題を貿易禁止という手段で対応しているが
、その考え方を欧米もすることになる。

このため、企業は、欧米でのビジネスを優先するか、中国のビジネ
スを優先するかの踏み絵になっている。

その上に中国で、反外国制裁法ができ、日本政府が対中政策で中国
の利益に反すると、日本企業の中国資産没収も考えられる。政治と
経済が分離ではなく、リンクしている。

このため、欧米との関係が深い日本も脱炭素経済にシフトするしか
ないのだ。しかし、2024年にトランプ氏が米国の大統領に再度なっ
たら、状況が大きく変わる可能性もある。

このため、再生可能エネルギーでは、太陽光発電・風力発電・地熱
発電・水力発電、バイオ発電の5つであるが、電力会社のコストと
しては、原子力発電のコストである1KWHで10円以下にする必要があ
る。無理をしない方向でエネルギー転換をすることである。

そして、クリーンの定義にもよるが、原子力発電を含めることにな
りそうである。小型原子炉を米国を中心に開発しているが、1つの
選択肢になる。

しかし、この10円以下に捕らわれないのが、一般消費者への電気料
金で1KWHで24円程度なので、家庭用の電気をまず再生可能エネルギ
ーにして、なるべく地産地消にすることである。

とすると、雪のない地域では、太陽光発電と電池の組み合わせにな
る。リチウム電池の価格が急激に下落しているし、太陽光パネルの
価格も下落しているので、2009年の鳩山内閣の「地球温暖化対策」
の当時とは状況が大きく違う。

その当時と同じ対策と非難する評論家がいるが、この12年のコスト
低減を見ないで評論しているように思う。やっと、一部の使用で経
済的にペイできるレベルになっている。

地域全体で蓄電するなら、NAS電池やレドックスフロー電池などの大
容量の安い電池もある。全戸で太陽光パネルを設置して、使い切れ
ない電気は、地域の電池にためて、それを夜に使う仕組みを整える
ことである。

そして、電力調整用にはバイオ火力発電や水素燃料電池を持ってお
けば、安心である。このコントロールを行うソフト開発が必要にな
る。

もう1つが、地産地消で行うので、地域電力会社を設立して、巨大
電力会社から独立した方が良い。巨大電力会社も地方の小さな地域
の収支は赤字になっているので、独立に賛成するはず。

しかし、日本全体の電気となると、足りないので、安い電気が手に
入る砂漠での発電と、その電気を水素に変えて日本に持ってきて、
FCV車や工場や都市で使うことである。その水素を電気に戻すでもよ
い。

留萌とその沖の風力発電の電気は、北海道では電力線の容量が足り
ずに、電力出力制限になっている。これも水素にして、タンカーで
東京に持ってくることも考えた方が良いと思う。低コスト電力なの
で、もったいない。

食糧確保問題では、2050年には、地球上の人口が100億人になり、食
糧不足が起きると言われ、かつ、農業と太陽光発電との土地の奪い
合いになる。このため、大量の植物飼料を食べる牛や豚肉は、植物
由来の肉か培養肉になるが、昔から日本には植物肉があった。金沢
で麩から作った代替肉を食べたことがある。

この技術は、発展すると思ったが、不二製油が大豆ミートを作り、
米国ではビヨンドミート、インポッシブルフーズで代替肉を作って
いるが、不二製油の方が先であるし、日本の麩からの肉の真似であ
る。それがあたかも米国が先というマスコミの報道に違和感を覚え
る。

次に昆虫食や微生物食があり、ユーグレナのミドリムシの食用化が
一歩以上も前にいる。ユーグレナは、ミドリムシから燃料を作ると
いうので、EVではなく、内燃機関の車がそのまま、脱炭素車になる
可能性もある。コストがどれだけ下がるかでしょうね。藻からの燃
料はコストが下がらないことで頓挫している。

微生物から有効な物質を作る技術は、日本の得意芸なはずである。
蚕から有益なたんぱくを作る技術もあり、医療関連タンパク質生産
を行っている。

漁業では、天然魚がいなくなり、養殖魚になっていくが、ここでも
環境負荷の少ないオキアミや小型の魚になるとみている。深海魚も
海藻類も食べていくしかない。

農業の比重が大きくなるが、日本は耕作放棄地が拡大しているので
、その土地を有効利用することである。中山間部の地域では森林化
や果樹園にして、平野部は田畑にすることだ。

今後、食糧価格が上昇してくるし、大規模な金融緩和をする円とド
ルの長期的下落が起きるので、今から準備していた方が良い。企業
の農業参入も広範に認めるべきだ。日本で食糧を大量生産した方が
、海外からの輸入品より安くなる。企業的にも採算がとれる。

人工光合成は、自然界の効率より高い効率でたんぱく質を生成でき
れば、食糧も燃料もそれに頼ることができるが、まだ先のようであ
る。それなので、微生物や植物でたんぱく質を光合成してもらうし
かない。効率的な微生物を探す競争になる。その1つがミドリムシ
なのでしょうね。

現時点で、脱炭素社会にするなら、石油文明から植生文明に戻るし
かない。効率は落ちるが、その効率が落ちないようにデジタル化や
リサイクル化などを組み合わせていくしかない。

資源確保問題では、材料は多くを都市からの回収ごみからの再生に
なる。それと木材からのセルロース・ナノファイバーになる。まだ
、コストが高いが、コスト低下の研究が加速している。日本は大量
のごみや木材を出しているので、そのうちに自給体制ができること
になる。

その一歩として、ペットボトルの完全循環と、ナイロンの完全循環
が確立した。ペットボトルは、最初ウツミが開発したが、今は帝人
が大型の再生工場を作り、ポリエステルをジメチルテレフタレート
に戻し、再度そこから成形するケミカルサイクルを確立した。

ナイロンは、東レがカプロラクタムに戻し、そこから成形するケミ
カルサイクルを確立している。このため、欠損する少ない量を石油
から生成するだけなので、石油からの生成量が少なくなる。

このように徐々にプラスチック類も完全循環が確立していくことに
なる。

しかし、世界から遅れているのが、デジタル化でしょうね。マイナ
ンバーを管理して総合政府窓口を作り、すべてをそこから申請でき
る仕組みを作る必要がある。それも全国の自治体や各省庁で一緒の
入力方法にする必要があり、そのソフト開発の標準化が必要である。

地方自治体のシステムは、クラウド化して、全国一律にするべきで
ある。そうすれば、申請を一本化できるし、法律改正のコストも少
ししかかからない。

労働生産性向上のためのドローン、自動機械、ロボット、AIなどを
発展させて、人口減少の日本でも経済規模を維持して、1人当たりの
GDPを上昇させていくことである。

さあ、どうなりますか?



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