6180.経産省の産業政策



日本も米国同様な統制経済・国家資本主義になったようである。経
産省の発表した成長戦略が、国家指導の産業政策で、まるで昔の通
産省の政策になっている。今後を検討する。    津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで2020年3月23日に18,591ドルまで急落したが、
2021年5月7日は34,777ドルで過去最高額になっていたが、5月28日は
34,529ドルで、6月1日は45ドル高の34,575ドル、2日は25ドル高の
34,600ドル、3日は23ドル安の34,577ドル、4日は179ドル高の34,756
ドル。

6月4日発表の雇用統計で、5月非農業部門雇用者数が前月比55.9万人
増と失業率は5.8%となり、予想値より低いが、雇用者数は季節調整
前なら97.3万人増で弱くない。しかし、FRBがテーパリングをとる可
能性もないと、株価は過去最高値近くまで上昇した。

米国は特別給付金を9月6日まで出して、失業中の方が収入が高い状
態が続いていることと、公立学校の休校が続き、女性の就業が進ま
ないことが原因である。景気は回復基調であるので、企業の求人募
集は増えているが、雇用数は増えない。このことで、供給不足にな
り、物価は上がっている。

現時点、FRBは、毎月1200億ドルの国債と社債の買い入れをしている
が、買っていた社債ETFを売り、その分、国債を買い増すようである
。バイデン政権の支出で、国債発行が増えることになるので、政権
サポートの様相が大きい。ロシアは、米国債をすべて売り、中国も
新規の米国債買い入れはないので、日本とFRBしか米国債を買わない。

このため、バイデン政権は、FRBに対して、人種格差に責任を持つべ
きと発言して、黒人の失業率が高止まりしてる間は、金融緩和を続
けるべきとしている。

一方、2022年度の予算を660兆円支出する予算教書を議会に出したが
、共和党との協議を行っている。すんなりとは通らないようである。

まず、バイデン政権は、増税の縮小を提案した。これに対して、共
和党はインフラ整備の予算規模の縮小を提案したが、バイデン大統
領は拒否した。

欧州、米国、日本、台湾と中国は、コロナ後の経済立て直しは、半
導体産業の育成などに掛けているが、ロシアは今でも次の経済のテ
ーマがないので、その芽を持ってくる必要がある。また、日本をカ
モにしようとして、日本との平和条約交渉を継続するとプーチン大
統領は言う。

しかし、領土分割禁止の憲法改正で、交渉自体が無理である。しか
し、なぜ、今頃になってプーチン大統領は日本に交渉再開をいうの
かである。石油後のロシア経済立て直しの方策がなくなっているこ
とによる。

ロシア経済は石油と天然ガスの2本建てであるが、脱炭素経済に世
界がシフトすると、日本の企業の誘致が必要になる。しかし、平和
条約がないと誘致に日本企業が乗ってこないからだ。

一方、中国の習近平国家主席は、戦狼外交を止め、「より信頼され
、好かれ、尊敬される」中国のイメージにして、世界に受け入れら
れる外交にすると言ったとBBC。しかし、戦狼外交支持派が中国では
多数派であり、この2・3日を見ると変わった感じがない。

しかし、中国共産党内で議論が出ているような感じはする。戦狼外
交をしている限り、中国の孤立は深まるからである。双循環経済も
、米中対決ムードの中で、壁に突き当りそうである。

そして、米国は再度、コロナ感染症は武漢ウィルス研究所から流出
したウィルスであると指摘している。この面からも孤立が進んでい
くことになる。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、5月28日は29,149円で、31日は
289円安の28,860円、6月1日は45円安の28,814円、2日は131円高の
28,946円、3日は111円高も29,058円、4日は116円安の28,941円。

日経平均は、29,500円と28,500円のレンジ相場が続いている。しか
し、ワクチン接種の一日当たりの接種回数が上昇しているので、コ
ロナ被害企業の株が上昇した半面、コロナで潤った企業の株が下落
している。

EPSは2050円となり、現時点の株価のPER13倍で、割安と思えるが、
SBGの利益4.9兆円の持続可能性を市場は疑っている。

米雇用統計が無事に通過したので、6月7日の朝一番は株価が上昇し
て始まることになる。

2.コロナ・ワクチン接種状況と五輪開催
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6月20日までの緊急事態宣言は、北海道、東京、愛知、京都、大阪、
兵庫、岡山、広島、福岡、沖縄も含めると10都道府県。
6月20日までの蔓延防止等重点処置延長は、埼玉、千葉、神奈川、岐
阜、三重。このうち、沖縄の感染拡大が継続している。あとは減少
方向になってきた。

そして、ワクチン接種は、現状では1日80万回以上の接種で、着実に
6月中旬には1日100万回になるだろう。五輪も順調に開催できると、
思われていたが、尾身会長が、五輪について「今の状況でやるのは
普通はない」と断言した。開催するなら最小の規模で行うべきであ
るとした。

今、菅政権は、五輪開催したという実績が必要であり、規模は関係
ないし、1日接種100万回という実績ができればよいので、ここは尾
身会長の言葉を尊重して、無観客で最小化して開催して、五輪後の
感染者数拡大を避けたほうが良いと思う。

それと、ワクチンの大量輸出をEUがなぜ許可したかという理由を菅
首相は述べていないが、EUが日本に輸出量の6割を割いた理由は五
輪開催に資するためである。EU自体もワクチンが足りない中、大量
輸出したのは、IOCの助力があったことを述べるべきである。

恐らく、65歳以上へのワクチン接種が終われば、死者数は劇的に減
るはずだ。ワクチンが手に入り、接種が順調のためであるが、EUの
大量輸出に感謝するしかない。

しかし、五輪後感染者数が増加すると、選挙で負ける可能性が出る
。選挙が近いので、後ろ指を刺される政策はしないほうが良い。特
に影響力のある尾身会長の意見を聞かないで、そうなったとなれば
、致命傷にもなりかねない。

ここは安全サイドで行動したほうが良いだろう。あと少しで正常化
することは見えている。その後に経済活性化政策をすればよいから
だ。

この頃の菅首相の行動は、安部前首相の意見を聞き、その意見をも
とに政策運営をしているので、院政に戻った感じになっている。

その基本は、経済より命を大切にして、国民の不安を無くして、そ
の上で、経済を活性化させることであるが、その優先順位を菅首相
も理解し始めたことが大きい。

菅首相は気持ちが顔に出る。その顔は自信を取り戻してきた。やっ
と、菅首相の良さが出てきた感じになっている。菅首相は自分の考
えをごり押しすることで、周りが動くタイプのリーダーであり、安
部前首相は、皆の意見を聞いて、それを選択するというタイプのリ
ーダーであった。

この2つのタイプのリーダーの相互尊重で、政策が回ることが一番良
いが、やっと、菅政権でその形ができ始めている。菅首相は自分の
意見に反対する人に怒るが、その反対を利用することも考えたほう
が良い。

菅首相とそれを応援する安部前首相・麻生財務相という組み合わせ
が当分よいはず。そして、2024年再度トランプ大統領になったら、
安部さんの首相復帰が一番、日本にとってよい。

3.経産省の産業政策
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経産省の「経済産業政策の新機軸〜新たな産業政策への挑戦〜」は
、このコラムで主張していた産業政策を行う方向であり、2012年に
主張していた金融緩和で資金を作り、その金で産業政策を行うべき
であるとした提言をやっと実行するようだ。

黒田日銀の金融緩和は良かったが、アベノミクスの成長戦略は、ほ
とんど機能しなかった。それは安部首相が各省庁の意見を入れてし
まい優先順位がはっきりしなったことによる。

この点、梶山経産相は、日本の衰退が企業競争力の衰退で起きてい
ることを認識していることが大きい。菅政権で梶山さんを経産省の
トップにしたことは成功だと思う。

国家が中心に新機軸を立てて、それに民間資本も集めて産業力を強
化することになるという。昔の通産省のように国が主導することに
なる。民間だけでは、国内競争で疲弊してしまい、国際的な競争力
を失うことを経産省もやっと理解したようである。

そして、大きいのが、そのような国家主導経済を米国も実施するこ
とで米国から非難されないで、実行できることである。

政府による市場の創造で、政府もリスクを負う「起業家国家」、ク
ラウド・インなどの理念のもとに、意欲的な目標設定、産官学連携
、規制・制度見直し、国際標準化推進、民間資金の誘導、国際連携
等、イノベーティブな社会環境の整備に向けて政策ツールを総動員
すると宣言している。

そして、財政出動で大規模・長期・計画的というからすごい。

その1つとして、半導体分野の自給を目指して、資金を入れること
になる。

もう一度、日本の置かれた状態を見ると、衰退途上国の道を歩んで
いる。人口も減少して、最先端産業の企業力も弱り、徐々に日本の
企業が劣後になっている。

この状態を抜けるためには、国家の全体戦略を立てて、優先順位を
決めていくしかない。

国の安全保障上では、
1.エネルギー確保
2.食糧確保
3.資源確保
4.デジタル化:世界から遅れている。
で、この4つの産業優先順位が高い。特に半導体はIT化・AI化・制御
化で、その重要な装置に必要で、重要な資源である。人口減少社会
では、納税者が減り、行政の効率化が必要になる。そのテーマの中
心がデジタル総合政府の構築になる。

4つのうち、産業規模では、エネルギー産業が一番大きい。このエ
ネルギー産業は転換点に来ている。脱炭素経済に移行するために、
早急に確立することが必要な産業である。

日本では、太陽光発電・風力発電・地熱発電・水力発電の4つで、
行くしかない。

そして、太陽光発電のパネルを奈良県の面積分置ければ、日本の今
の家庭用総電力を賄えることはわかっている。しかし、夜の時間帯
に使用する分は、電池にためる必要がある。そのため、総コストが
大きくなる。このため、分散した家単位で電気の自給が焦点になる。

それと、自動車がEVになるために、そのガソリン分の電気は見込ん
でいないことと、工場分、交通分の電気が必要になる。この分の電
気を豪州の砂漠で発電して、日本に水素の形で持ってくることにな
る。

水素をアンモニアなどに加工して持ってくる方が輸送コストが安い
ので、そのような仕組みも作る必要がある。この全体系を国が主導
するべきである。

後の2つについては、次回で述べる。次回は植生文明の時代が来る
という私の構想を再度説明する。

さあ、どうなりますか?



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