6177.コロナ後の世界と日本の秩序構築



やっと、全ての国民へのワクチン接種のめどが立ち、コロナ後の日
本や世界の動向を検討しよう。    津田より

0.米国および世界の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
NYダウは、コロナで3月23日に18,591ドルまで急落したが、2021年5
月7日は34,777ドルで過去最高額になっていたが、5月10日は34ドル
安の34,743ドル、11日は473ドル安の34,269ドル、12日は681ドル安
の33,587ドル、13日は433ドル高の34,021ドル、14日は360ドル高の
34,382ドル。

5月7日は過去最高値であったが、10日から3日続落になり1000ドル程
度の下げになった。バイデンの増税やファミリーオフィスへの規制
強化などの他に、4月CPIが前年比4.2%増、前月比0.9%増になり、物
価上昇が強すぎで、長期金利1.69%まで上昇し株価も大幅な下落にな
った。

このインフレ圧力で、FRBは23年まで緩和縮小はないと言っていたが
、金融の正常化に向かうことになると市場は見たことで、大口投資
家と投資AIは、先物で大量の売りを仕掛けて、その結果売りが売り
を呼んだ。特に高レバレッジを掛けている投資家はロスカットせざ
るを得ないことになっているはず。

その結果、心配なのがアルケゴスのようなファミリーオフィスの投
資失敗が起きないかが心配である。現状で世界的には2300兆ドルの
債務、デリバティブ、未積立債務の総量があり、いつ崩壊してもお
かしくない状況になっている。簡単に考えない方が良い。

13日、14日は切り返したが、当分上げ下げの大きな値動きの相場が
続くことになりそうである。逆張りの投資がよいかもしれない。順
張りの投資では、売ってやられ、買ってやられになる。

1.日本の状況
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、5月7日は29,357円で、10日は
160円高の29,518円、11日は909円安の28,608円、12日は461円安の
28,147円、13日は699円安の27,448円、14日は636円高の28,084円。

今週、日経平均は3日大幅続落で2050円ほど下げた。14日は切り返し
たが、コロナ禍が続く日本の株価は低調のままである。この状況を
終わらせるためには、ワクチン接種を急ぐことである。それしかな
い。

一方、企業決算が出て、非製造業は減収や赤字になり、製造業は増
益や過去最高益になっている。今期の予想もECなど巣ごもり消費に
沸いた企業は減益予想になっている。

EPS=1600円で、PER=16倍程度まで下がり、株価としても適正な水
準になってきた。しかし、今までの平均的なPERは、15倍程度であり
、EPSが18000円になっても、過去の実績ではPER15倍では株価は
27,000円であるし、PERが16倍でも28,800円であり、3万円には届か
ない。

3万円に乗せるには、一層の企業業績UPかインフレなどの要素がない
と無理である。

2.コロナ後の世界
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
緊急事態宣言の東京、大阪、兵庫、京都、福岡、愛媛に追加して、
北海道、岡山、福岡にも宣言が発令された。蔓延防止等重点処置も
、神奈川、千葉、埼玉、愛知、岐阜、三重に群馬、石川、熊本が追
加された。

しかし、ワクチン接種が本格化して、今年度内には日本も接種が完
了するようである。65歳以上に7月末接種完了という公約は、現状で
も1日30万接種しかできていないので、無理かもしれない。

しかし、あと数か月で、日本も集団免疫ができて、正常な生活に戻
れる事が見えている。五輪には間に合わず、五輪開催は微妙である
し、開催した場合でも、感染拡大時期に開催することになる。しか
し、全体的には、あと少しの辛抱である。

ということは、コロナ後の日本と世界がどうなるのかを検討した方
が良い。コロナ前に、このコラムでは日本は統制経済になると見通
したが、米国も財政出動と金融緩和で、新自由主義経済からバイデ
ン流統制経済で、トランプ政権と同じような米一国主義に変わりが
なく、製造業と財政の立て直しが必要になっている。

コロナ前には、日本だけが統制経済になり、日本だけが衰退するの
かと思っていたが、語弊があるかもしれないが、丁度良くコロナ・
パンデミックになり、世界が新自由主義経済から当分、統制経済に
なる方向が確定した。その面ではほっとしている。

新自由主義経済の中心である金融資本主義を止めて、米国でも国家
主導で製造業中心の中産階級に恩恵がある国作りが必要になってい
る。新興国で生産することで安くできる経済を志向していたが、コ
ロナで必需品が供給されなくなり、必需品は自国で作ることが必要
となった。

しかし、平常時は自国製品より、新興国製品の方が安くなり、市場
から自国製品は駆逐されてしまう。そのため、高関税などの輸入制
限が必要になる。ということで、グローバル経済からナショナル経
済にシフトし、保護貿易にならざるを得ないようだ。今後、この方
向で世界は動き始める。

もう1つが、低所得者層の困窮と富裕層の資産拡大が起きて、貧富
の差が拡大している。この差を解消しないと、選挙で勝てないこと
になり、貧富の差を無くす政策が必要になっている。

ということで、富裕層には増税、低所得者層には賃金を上げるか給
付でバランスを取る。社会主義者バーニー・サンバースの提唱した
経済政策が米国で採用になり、この政策が世界的に定着することに
なる。

このため、東南アジアに進出した日本企業にも利益に多大な増税が
待っている。早く、日本に戻ってきた方が良い。賃金上昇にもなる。

その一環として、イエレン財務長官は、法人税の世界的な基準を決
めて、それに従わない国は制裁すると脅す。というように社会主義
的な政策を米国が採用することで、新自由主義的な経済国は、世界
からなくなる。国家間の自由競争もなくなる。

中国は、社会主義に資本主義の良いところを入れた経済で、経済成
長を遂げてきたが、米国が社会主義的な方向にシフトしたことで、
中国もIT企業の統制を強化して、より厳しい統制経済にするようで
ある。民主国の国民がみると、中国の「悪の帝国」化が進むように
見える。

しかし、このような経済政策は、株価には良い影響はない。法人税
が増税になり、利益は確実に減ることになるし、富裕層は所得税の
安い国に移住することが考えられる。移住時に罰則金を取ることに
なると思う。

政府が企業経営に口出すことにもなり、利益を求めた自由な経営が
できなくなる。しかし、世界はその方向に向かっている。

そして、労働生産性が上がらずに給付や給与を増やす経済は、持続
可能ではない。労働生産性を上げるには、最大の供給国を潰して、
生産量を増やすことであり、米国は、「悪の帝国」と見える中国潰
しになる。戦争か世界的な対中保護貿易で潰すことになる。

ということで、いやでも地政学リスクが増大するし、している。自
国国民の不満を解消するには、外に敵を作り、愛国心を煽り、不満
を政府ではなく敵国に向かわせることで、国のトップは安泰になる。

この最初に出てきたのが、中国の南シナ海や台湾海峡での軍事行動
であるが、これに米国、日本、豪州などが対抗して、米国は中東派
遣軍をアジアに振り向ける必要から、中東から撤退している。「悪
の帝国」中国潰しを行うためである。

しかし、この撤退はもう1つの目的があり、米軍撤退で、タリバン
がアフガニスタンを支配すると、そこにアルカイダや原理主義戦闘
集団が入り込み、そこを根城に東トルキスタン(ウイグル)独立運
動が起きることを期待しているようにも見える。

しかし、米軍が中東からいなくなることで、イランが断然有利にな
っている。この動きを受けてパレスチナとイスラエルが再度の紛争
状態になっている。

イスラエル・ネタニエフ首相の東エルサレムやヨルダン川西岸への
入植地拡大政策は、非常に危ないと思っていたが、とうとう米軍が
中東に居なくなることで、火が付いた格好になっている。米国以外
の国は、イスラエルの入植地拡大政策が問題の根本にあることを知
っているので、イスラエルに味方しない。

そして、米軍が中東から居なくなることを見越して、サウジがイラ
ンと対話し始めている。トルコもイランとサウジを結びつけるよう
だ。現時点で、この地域の盟主になりたいトルコは、反イスラエル
になっている。イスラエル周辺国で戦争参加をしないのはエジプト
しかない。

一方、ハマスのロケット弾が複数テルアビブに着弾しているので、
イスラエル政府も住民に対して、防空壕に入っているよう促してい
る。対ロケット弾防御のアイアンドームでも90%の確率でしか防
御できずに、10%は着弾している。ロケット弾を同時に大量に発
射することで、アイアンドームをすり抜ける作戦のようである。

このロケット弾の発射地点を占拠しないと、止まらないので空爆、
砲撃などをイスラエルも行うしかないようだ。地上戦を今は回避し
ているが、ロケット弾が止まらないと、地上戦になる可能性もある。

アジアでの戦争より前に、中東での戦争が起きる可能性が高いよう
な感じがする。そして、イスラエルも今までとは違い、戦争で負け
る可能性もある。イランの核ミサイルを防御できないし、中国やロ
シアも出てくる可能性がある。シリアに展開するロシアは直ぐに戦
争に参戦することになる。ロシアと言う強敵がいるので、今までと
は大きく違う。

このため、バイデン米大統領も、イスラエルのネタニヤフ首相、パ
レスチナ自治政府のアッバス議長と電話会談し、事態の沈静化を図
りだした。アジアの他に中東でも戦争になると、米国は2正面作戦
になり、中国との軍事的な脅し競争に負けることになる。

世界は、戦争の時代になったと感じるのは私だけでしょうかね。
そして、その準備を日本もしないといけないことになる。新しい
駐日米国大使が着任するが、日本に平等な日米同盟の真の価値を
問うことになる。というように、コロナ後の新世界秩序構築で、
世界は動き始めている。

3.コロナ後の日本
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
米国に比べても、コロナ敗戦国・日本は戦後処理が山積である。

当初、コロナ感染者数が欧米に比べて少なく、感染症対策よりGOTO
トラベルなど経済政策を優先したことで、感染者数が大幅に増加し
てしまった。そして、地方へコロナを広めた。

開戦直後は優勢で推移したことで、日本は漫然としていた間に、米
国は軍備を揃えて、戦争中期には軍事で圧倒した太平洋戦争と、同
様だ。

今回も、米国は当初、コロナ死者数が増加したが、トランプ大統領
がワープスピード作戦で、1兆円の資金を提供してワクチンを作り、
工場建設にも資金を供与し、最後には特別認可で逆転した。

日本はアンジェスなど初期にワクチンが開発できていたが、治験な
どで日本は資金面での援助や特別認可をしないで、ワクチンを手に
入れることができずに、コロナ禍を早期に抜け出せないことになっ
た。その上、変異種が出て、感染スピードも早くなり、40歳代でも
重症化する事態になった。このため、太平洋戦争後、始めての敗戦
、コロナ敗戦とも言われる惨敗になったのだ。

という事で、このコロナ敗戦で、日本の構造を大きく変えないとい
けないことが分かった。

1つに、1年間で100兆円以上も使った財政をどうするのかを考えな
いといけない。特別コロナ国債を日銀が買取り、永久国債にして放
置すればよいのだ。今までの国債の積み上げも30年もかけて積み上
げたことで、インフレ圧力が大きくない。ここが米国とは違う。

そして、当分、増税を言い出さないことである。特に米国からの投
資を呼び込むことである。本当は米国脱出の富裕層の取り込みもし
たいが、対中戦争前線の日本に来るとは思わない。

富裕層の所得税は少し上げてもよいが、あまり効果がない。それよ
り、財政の正常化を行うことで、赤字幅を1割程度にすることでし
ょうね。徐々にインフレが起きることになるが、年間2%程度であり
、円安になることで、輸入品価格が上昇して、流出した製造業、食
料や木材など国内産業が復活することになる。この意味は日本が貧
乏国になることでもある。また、1次2次産業国家になる。

2つにはIT化の遅れが明確化したことだ。
ITを進めるためには、入力を1つにしないといけない。このためには
、政府の縦割り構造に横ぐしを入れる組織が必要であり、デジタル
庁ができ、今後、縦割り組織に横ぐしを入れる施策が必要になるが
、その横ぐしはマイナンバーである。

それを基に、デジタル統合政府と言う仕組みを作ることにある。こ
のためには、相当な権限をデジタル庁トップに与える必要がある。
このため、コロナ敗戦の今しかできない。

3つ目は、危機時の国家体制が出来ていないことである。私権の制
限を含む権限を危機時には国家が持つ必要がある。それと、平時の
法体系を危機時は停止できる権限を国家が持つことだ。

危機時に首相に独裁権を与える必要がある。そして、いかに迅速に
対応処置を取れるかが勝負である。危機時に根回しや説得が必要な
ことになっている現状はおかしい。

この危機時でも利権擁護する業界団体も非常に問題である。このた
め、ワクチン接種も時間だけかかることになって、五輪開催も際ど
いことになっている。

しかし、最大の問題は経済的な回復をどう図るかであろう。終息後
、早くGOTOトラベル・イートを行い、観光業、飲食・ホテル業界、
陸運業などを支援することだ。消費マグマが消費者にもあり、大爆
発することになる。それまでは、この業界に金融支援を継続するし
かない。

さあ、どうなりますか?



コラム目次に戻る
トップページに戻る