6174.米国の国家資本主義化



米国は中間層を構築する経済的な取り組みを行うとした。製造業の
復活と富裕層への増税を行うとした。今後を検討する。 
                      津田より

0.米国および世界の状況
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NYダウは、コロナで3月23日に18,591ドルまで急落したが、2021年4
月16日は34,200ドルまで上昇して最高額を更新。4月23日は34,043ド
ルで、26日は61ドル安の33,981ドル、27日は3ドル高の33,984ドル、
28日は164ドル安の33,820ドル、29日は239ドル高の34,060ドル、30
日は185ドル安の33,874ドル。

株価は34,000ドルから33,800ドルの間を一進一退の状況になってい
る。GAFAの決算発表で大幅な増益になっているが、株価はその割に
上昇しないか下落している。株価が大幅な増益を織り込んでいるか
らであろうか?

その中、米ダラス連銀のカプラン総裁は、金融市場に過剰なリスク
テークの兆候があるとして、金融当局が大規模な債券購入の縮小を
議論し始めるべき時がきたと発言したことも影響した。

バイデン大統領は、施政方針演説で、富裕層の大幅な増税と中間層
への優遇処置を発表している。左派色の強い政策に傾斜している。
最低賃金を15ドルにするとしたが、この分析はの後程。

1.日本の状況
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日経平均株価は、コロナで2020年3月19日に16,358円まで下げ、2021
年2月16日に30,467円と高値更新し、4月23日は29,020円で、26日は
105円高の29,126円、27日は134円安の28,991円、28日は62円高の
29,053円、30日は241円安の28,812円。

日経平均はレンジを下に抜けても、一進一退であり、29,300円から
28,500円と間になっている。

4月25日から5月11日の緊急事態宣言に突入したが、人出が減らずに
、延長の可能性が出ている。空運陸運の業績の落ち込みは、人出が
あり想定より少ない可能性があるが、旅行業界、レジャー関連と飲
食店業界は、大手でも倒産の可能性が出てきた。

そして、東京五輪開催の医療体制構築は、コロナ医療とワクチン接
種優先にするとできないことが明白であるが、五輪中止も決められ
ない状態である。太平洋戦争の終結をできなかった戦前の日本政府
と同じような状態になっている。日本人でもないバッハIOC会長まで
が精神論に傾斜している。

このため、株価もさえない状態だ。中国と米国経済が回復してきた
ので、輸出産業と巣ごもり需要でなんとか持ちこたえている状態で
ある。

2.一部の国民のための国家に、日本はなり下がった
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4月25日から5月11日まで東京、大阪、兵庫、京都には緊急事態宣言
が発令されたが、大阪で1000人以上の感染が続き、東京でも1000人
を超え始めた。緊急事態宣言は、延長される可能性が高まったよう
である。

今回のコロナ変異種は、今までのコロナとは大きく違い、3密でなく
とも、1密でも感染し、10歳未満の子供も掛かり、40歳代で重症化す
る。密集、密接、密閉の3つがなくとも感染する事例が多数出てき
たことで、事態を重く見る必要がある。

今後、感染者数が増加して、東京も医療崩壊になる可能性がある。
緊急事態宣言では、もう感染を止めることができない。よって、個
人の行動を抑制する法律の制定と私立病院にコロナ患者の受け入れ
を強制的にさせる病院法を制定して、個人行動の制限や病院の接収
もできる非常事態宣言の発令を視野に入れるべきだ。

全国的な医療崩壊になると、34万床のベットがあるので、そこを使
わない手はない。県を跨ぐ患者の移動もでき、国家主導で患者の配
分を決める事も必要になる。国家が有識者を集めて指揮する体制に
するしかない。

県中心の分権的な感染症防御から国家主導の感染症防御にすること
だ。医者や看護師の配分も国家が決める。非常時対応の法律の整備
が必要だ。資金を国家が出すことで、病院の経営的な面の心配もし
なくて済む事が重要である。

ワクチン接種管理システムも自治体、厚労省、内閣府の3本建てにな
り、自治体は、その入力の多くの時間を費やしている。総合的な政
府IT化の遅れもきたしている。この面でも国家主導の統一化が必要
になっている。

事態を軽く見ない方が良い。インド型の変異種では、アジア系人種
にあるとされるファクターXも効果がないことを証明している。イ
ンドと同じになる危険性を無視しないことである。mRNA型のファイ
ザー製ワクチン接種が遅れたことで、大きな被害を日本も受けるこ
とになる。よって、五輪などを準備している場合ではない。

そのため、ワクチン接種を加速させる必要もある。接種に自衛隊の
医師・看護師を動員するというが、高々全国で1000人程度であり、
かつ自衛隊の病院には多数の重症コロナ患者を受け入れているので
、動員できる人数は限られている。

このため、大阪と東京など大都市でしか接種センターを開設できな
いという。しかし、注射する人の人数が必要なのは、地方であるの
で、これだけでは接種が7月に終わらない。

その上に、五輪で、看護師を500名も取り、医師も相当数取るという
。首相は「現在休まれている方もたくさんいると聞いている。そう
したことは可能だ」と述べたが、ワクチン接種人員を増やす必要が
あり、休んでいる人を注射する人にしないといけないはずだ。

しかし、注射する人が足りないのに、その上に五輪を行うようだ。

五輪を無くして、それでも足りないので、医療行為の特例的な規制
緩和が必要になっているはずだ。薬剤師などを研修後、注射をする
人としていくことだ。それでも足りないなら、一般人をボランティ
アで募集することも最後の手段として検討しておくことが必要だ。

そして、ファイザー製ワクチンは、既に日本に5000万回分も供給し
ていて、菅首相がファイザーCEOとの電話会議で、そのことを指摘さ
れたようである。このため、日本への増量を約束しなかった。

このため、次に非難の先がEUになることを避けるために、EUも輸出
認証の数を公表した。結局、接種遅れは、日本の内部の問題である
ことが明確化したのである。ワクチンが足りないから、接種が進ま
ないのではない。

まだ、医療関係者の半分にもワクチン接種ができずにいる事実が、
悲しい現実を如実に表している。結局、注射できる人の動員数が徹
底的に足りないのだ。

医者が5月連休にも休み、動員数が足りなく接種もできず、日本全体
での組織的な取組みができていない。それぞれが自己の利益保全で
、規制緩和を拒否して、そのために、国民は大きな我慢を強いられ
ている。非常時には、自己の利益を無視する必要にあるのにである。

PCR検査も厚労省医官の利権保持で、なかなか拡大しなかったが、ワ
クチン接種でも、同じ構図を繰り返している。

一国の指導者に、利害関係者の反対を押切り、国全体の利益を優先
してくれと頼むと、現在の法律ではできないというに決まっている。

しかし、優秀なリーダーなら、早急に規制緩和や非常時対応の法律
を作り、周りから嫌われる覚悟で通すはずだ。小泉純一郎はそれを
したから、国民から絶大な支持を得たのだ。

法律を盾に、大組織関係者の利益を守っていると、大多数の国民の
不利益になることくらい、分かりそうであるが、できないのであろ
う。しかし、国民もバカではない。

国民は、そのような指導者を支持しない。よって、支持率が下がる
ので、泥縄式にできることをしているが、それだけでは解決しない。
どうして、今後の見通しを立てて、障害になっている原因を深堀し
、対策を立てないのであろうか?

このような日本の現実を見るにつけ、先進国を終わり、後進国にな
ったようだ。一部の人の利益だけが重要で、国全体の利益が蔑ろに
されている。その結果は、国家経済の大きな衰退になる。

3.バイデン政権の国家資本主義
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バイデン大統領の施政方針演説が出たが、新自由主義的な資本主義
の米国を大きく変化させて、オカシオ・コルテスやサンダースが主
張する左翼色の強い政策になったようだ。

国家資本主義とも言える強い規制がかかった資本主義で、中間層の
再構築を図るという。3つの柱があり、1つ目にはコロナ対策、特に
ワクチン接種で経済活動を正常化させるという目標。これは成功し
ている。NY市は、7月から経済活動の完全な再開をするとした。

2つ目にはインフラ投資てあり、特に道路や橋、通信と半導体、温暖
化防止に巨額の投資をするとした。特に半導体産業の再構築に費用
を掛ける。

3つ目にはファミリー・プランであり、中間層への保育負担軽減、介
護のための有給休暇制度、子育て世代の税免除などであり、この中
には、サンダースが主張した大学生の奨学金の減免も含まれている。

もう1つが、最低賃金を時給10ドルから2022年1月30日以降15ドルに
する。

1つ目は既に2兆ドルで実施済であり、2・3の施策に、4兆ドルの支出
を行うとした。この費用は、主に法人と富裕層への増税で賄うとし
たことで、相当に国家主導の経済システムになりそうである。貧富
の差を縮小させたいようである。

中国のような独裁色の強い国家資本主義ではないが、国家の指導力
が強い資本主義なるようだ。米国流国家資本主義で、ルーズベルト
のニューディール政策を思い出す。しかし、その時は景気が回復し
ないで戦争に突入した。

そして、バイデン政権の米国は、共和党の嫌う大きな政府でもある。
増税には議会の反対も予想できるし、民主党議員でも反対する人が
いるという情報もある。

特に上院では議席差がないので、1人でも民主党議員が反対すると、
この法案は通らない。このため、株式市場は議会を通らないとして
、バイデンの増税部分だけ無視している。インフラ投資部分は株価
に反映するという矛盾した行動を取っている。

株、木材、ビットコインなどが大幅に価格上昇しているが、パウエ
ルFRB議長は、現状を「フロス」と表現したが、金利ゼロを当分続け
、量的緩和も縮小しないとした。住宅バブル期に「フロス」と表現
したグリーンスパンは、その1年後にリーマンショクのバブル崩壊
に見舞われる。

この事例を思い出す。そろそろ、FRBもフロスということで、バブル
崩壊に注意が必要になっているようだ。

対して、日本は日銀がステルレス・テーパリング(沈黙で量的緩和
縮小)しているし、政府の支出を短期で600兆円までは大幅に拡大し
ていないし、できない。もう1つが、日本国債は国内で消化できて
いるが、米国は海外投資家の購入を必要としている。

日本は10年国債の金利をゼロ近くにできるが、10年米国債の金利は
ゼロにはできない。諸外国に米国債を買ってもらうためには、1.5%
以上の金利を付けておく必要がある。

この違いで、金利が安くなると、FRBが米国債を積極的に買う必要が
あり、このため、量的緩和縮小ができないことになる。それも600兆
円という膨大なドル発行になる。ドルの価値が下がり、ドルが売ら
れる展開になる可能性もある。

勿論、日本政府の国債発行量も増えるが、現時点で手持ちの国債を
日銀は大幅に減らしたところである。このため、買い余力がある。

数年前は、日本だけが財政出動と量的緩和を行い、円価値を下げて
きたが、米国も日本と同様な量的緩和と財政出動を急速に行ってい
るので、インフレになる確率が、日本より米国の方が大きくなって
いる。日本は30年掛けて、国債発行量をGDPの2倍以上にしてきたが
、米国は数年で日本を追い越すことになりそうである。

ということで、今までは日本は遅かれ早かれハイインフレになると
述べてきたが、先に米国がハイインフレになる確率が高まっている。

もう1つ、米国は最低賃金も上げる。日本の最低賃金は時給で東京
で1013円、秋田で792円であるが、米国は1550円以上である。

東京で5割増し、秋田では倍違う。このため、米国製造業は価格競争
力がない。このため、米国内産業を守るためには、輸入制限が必要
であり、関税を障壁する。日本企業は輸出ではなく、米国工場で生
産する製品を米国で売るしかない。そして、工場はロボットとAIで
構築して、人間を極力使わないことである。

その上、米国の製造業は80年代・90年代に無くなっているので、製
造業を復活するためには、日本企業が米国で生産することになる。

日本企業の利益率は上がるし、株価は上昇しているが、それに見合
ってくる可能性がある。これも数年前に述べたことである。それが
実現化することになりそうだ。

さあ、どうなりますか?



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